大量懲戒裁判・北海道訴訟・札幌地裁判決文 判決言渡 10月18日

判決文令和3年10月18日判決言渡 令和元年(ワ)損害賠償請求事件 口頭弁論終結日 令和3年7月5日  
          判 
当事者の表示 別紙当事者目録のとおり
          主 文
1、被告らは、原告池田賢太に対し、被告(選定当事者)らについては各選定者のために、連帯して、33万円及びこれに対する平成30年3月22日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2、被告らは、原告島田度に対し、被告(選定当事者)らについては各選定者のために、連帯して、33万円及びこれに対する平成30年3月22日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。 
3、被告らは原告皆川洋美に対し、被告(選定当事者)らについては各選定者のために、連帯して、33万円及びこれに対する平成30年3月22日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。 
4、原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
5、訴訟費用は、これを85分し、その84を原告らの負担としその余を被告(選定当事者)らについては各選定者のために、被告らの負担とする。
6、この判決は1項ないし3項に限り、仮に執行することができる。 
 事実及び理由
第1 請 求
(主位的請求)
1 被告らは、原告池田賢太に対し、被告(選定当事者)らについては各選定者のために、連帯して、550万円及びこれに対する平成30年3月22日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告らは、原告島田度に対し、被告(選定当事者)らについては各選定者のために、連帯して、550万円及びこれに対する平成30年3月22日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告らは、原告皆川洋美に対し 被告(選定当事者)らについては各選定者のために連帯して、550万円及びこれに対する平成30年3月22日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。                      

事 案 の 概 要

第2 事案の概要  
1 本件は、弁護士である原告らが、被告ら及び選定者ら(以下、併せて単に「被告ら」という。)が原告らの所属する弁護士会に対して行った、原告らを対象とする各弁護士懲戒請求が違法であり不法行為に当たるとして、
(1)主位的に、被告らの行為が共同不法行為に当たるとして被告らに対し連帯して各原告につきそれぞれ慰謝料500万円及び弁護士費用50万円並びにこれに対する平成30年3月22日(不法行為の後の日)から支払い済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める事案である。
(2)予備的に被告らの行為が共同不法行為に当たらないことを前提に被告らそれぞれに対し、各原告につきそれぞれ慰謝料50万円及び弁護士費用5万円並びにこれに対する平成30年3月22日(不法行為の後の日)から支払い済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める事案である。
2 前提事実(証拠を掲記していない事実はいずれも当事者間に争いがないか、弁論の全趣旨により容易に認められる、)
(1)当事者 
ア 原告らは、いずれも、札幌弁護士会に所属する弁護士である。
イ 被告らは、いずれも、札幌弁護士会に対し原告らを対象として弁護士法第58条1項に基づく懲戒請求を行った者である(以下被告A、B、C、D,E,Fの6名をを併せて「被告A」といい被告(選定当事者)G、H,I、J、の4名を併せて「被告Bら」という)
(2)日本弁護士連合会中本和洋は平成28年7月29日付けで「朝鮮学校に対する補助金停止に反対する会長声明」(以下「本件声明という」)を発出した、(甲1)
(3)原告らを含む7名の弁護士は平成29年9月25日、任意団体A,C(Counter-Raist Action Colletiveve,対レイシスト行動集団、以下「本件団体という)の代理人としてツイッターアカウントをロックしたことについて、そのロックの解除等を求める内容証明郵便を送付し、その旨が本件団体のホームページに掲載された(甲5)。
(4)同月29日、「余命3年時事日記」と題するブログ(以下「本件ブログ」という)において、「第6次告発が確定した。」「懲戒請求にしても告発にしても、無理にすることはない。できることはやる。できないことはしないということで是々非々に対応されたい」などとして、原告らを含む多数の者に対する懲戒請求や告発を暗に呼びかける投稿がされた(甲6)
(5)被告らを含む960名(以下「被告ら960名」という)は本件ブログによる上記(4)の呼びかけに応じ、本件ブログの運営者から提供された、原告らを懲戒請求する旨の懲戒請求の様式(甲14。以下「本件懲戒請求書書式」という。)を用いて、同年10月頃から同年12月頃にかけて、札幌弁護士会に対し、原告らについて弁護士法第58条1項に基づく懲戒請求を行った(以下、被告ら以外が行ったものも含め、まとめて「本件懲戒請求」という。)
本件懲戒請求様式は懲戒請求者の署名押印部分及び日付欄以外は不動文字で記載され、懲戒事由として次の記載がされていた。
「懲戒事由」
日本弁護士連合会会長 中本和洋名義で発出された、違法である朝鮮人学校補助金支給要求声明に賛同し、その要求活動の実現を推進する行為は、傘下弁護士の確信的犯罪行為である。
また任意団体「(Counter-Raist Action Colletiveve,」(対レイシスト行動集団。(C,R、A,C)のツイッタージャパンに対する通知書代理人については国際テロリストとして告発されている弁護士が含まれており、公序良俗に反する品行のみならず、テロ等準備罪に抵触する可能性まであると思量する。一般国民として看過できるレベルをこえているので、ここに理由と説明を添えて懲戒請求をするものである。
被告らは、本件懲戒請求様式に、各々懲戒請求者に署名押印をして本件ブログ運営者の指定先に郵送し、懲戒請求者は同指定先において被告ら以外の者らが送付した懲戒請求者とともに取りまとめられ、被告960人分が一括して札幌弁護士会に提出された(以下まとめて「本件懲戒請求書」という)
(甲14,22)
(6) 平成30年3月22日付けで、札幌弁護士会から、原告らに対し本件懲戒請求の調査開始通知書が送付された(甲15~17)。
(7)平成30年4月23日付けで、原告らは札幌弁護士会に対し、本件懲戒請求について、原告らにつき懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当とする旨の議決をし、同年6月29日付けで、札幌弁護士会は原告らをいずれも懲戒しない旨決定した(甲19の1~21の2)

原 告 の 主 張

3 争点及びこれに関する当事者の主張
(1)本件懲戒請求は被告らの共同不法行為にあたるか
(原告の主張)
ア、弁護士法第58条1項に基づく懲戒請求が事実上の根拠を欠く場合において、請求者がそのことを知りながら又は通常人であれば普通の注意を払うことによりそのことを知り得たのに、あえて懲戒を請求するなど、懲戒請求が弁護士懲戒制度の趣旨目的に照らし相当性を欠くとみとめられるときには、違法な懲戒請求として不法行為を構成すると解するのが相当である(最高裁平成19年4月24日第三法廷判決・民集61巻3号1102頁。以下「平成19年最判」という。)
本件懲戒請求では、懲戒事由として、①原告らが違法な朝鮮人学校補助金支給声明に賛同、容認し、その活動を推進したこと,②原告らが国際テロリストとして告発されている弁護士とともに本件団体の代理人となり、ツイッタージャパン社に対し本件団体のツイッターアカウントの凍結に抗議する内容証明郵便を送付したことは公序良俗に反する行為でありテロ等準備罪に抵触する可能性もあることなどを挙げているが、いずれも事実上又は法律上の根拠を欠くことが明らかであり、かつ、被告らはそのことを知っていたか、または通常人であれば普通の注意を払えば知り得た。
したがって、本件懲戒請求を構成する各懲戒請求はそれぞれ単独で不法行為にあたる。
イ、本件懲戒請求につき、懲戒請求書の文面が同一であること、全ての懲戒請求書がとりまとめられた上で一括して送付されていることからすれば本件懲戒請求につき、各懲戒請求間に客観的関連共同性が認められる。
また、被告ら960名が相互に氏名等を認識していなかったとしても、被告らは本件ブログの閲覧や書き込みを通じて本件懲戒請求を行うことを共謀したと評価できるから、主観的関連共同性も認められる。本件懲戒請求は本件ブログの呼びかけに基づき、人種差別意図をもって、多数人で懲戒請求を行うことにより対象弁護士に大きな脅威を感じさせる効果を企画して行われた。これらによれば、懲戒請求者全員が本件懲戒請求によって生じた損害の全部について連帯して責任を負うべきである。
 被 告 ら の 主 張
(被告Aらの主張)
ア、本件懲戒請求に関する不法行為の成否について、原告らが主張する平成19年最判における基準は、最高裁平成23年7月15日第二小法廷判決・民集65巻5号2362頁(以下「平成23年最判」という)によって、実質的に変更されているため、本件懲戒請求が不法行為にあたるかを判断するに際しては、平成23年最判の基準に従うべきである。したがって、原告らの負担する精神的苦痛が社会通念上受忍すべき限度内である場合には不法行為にあたらないと解すべきであるところ、本件において原告らが被った負担は受忍限度の範囲内であるから、本件懲戒請求は不法行為に当たらない。
イ、被告Aらはそれぞれ個別に本件懲戒請求の内容に共感して懲戒請求書を送付したにすぎず、本件ブログの閲覧や書き込みを通じて人種差別的な意図に基づき本件懲戒請求を行うことを共謀したという事実はない。
被告Aらに、他の本件ブログ閲覧者らと共同して本件懲戒請求を行うという意識はなく、主観的関連共同性は認められない。また、本件各懲戒請求書は本件ブログを介して札幌弁護士会に送付されているが、これが単なる事実上のとりまとめである可能性もあり、そうだとすれば客観的関連共同性もみられない。
(被告Bらの主張)
ア、平成19年最判は判断を誤っている、弁護士に対する懲戒請求はその懲戒請求が虚偽の事実やねつ造証拠に基づいておこなわれたことにより、懲戒権者が誤った判断をする現実的危険が生じた場合等のみ、不法行為を構成すると解すべきである。本件においては、原告らは、本件懲戒請求につき綱紀委員会の調査を受けたにとどまるから本件懲戒請求は不法行為とならない。
イ、本件声明は違法な朝鮮学校への公金支出を助長するとともに、北朝鮮の利益を代弁する政治活動であるから、違法である、原告らは本件声明の発出主体ではないが、弁護士会の会員として本件声明に対し賛同を表明することはもちろん、黙認放置すること自体、懲戒事由にあたる、また本件団体は突然テロを引き起こす恐れのある団体であり、同団体の代理人を務めた原告らも、同団体と深い関係がある可能性があるから、テロに関与している可能性がある。
したがって、本件懲戒請求で挙げた懲戒事由はいずれも事実上又は法律上の根拠を欠くものではないから、最判19年の判断枠組みにおいても不法行為にならない。
ウ、原告らは本件懲戒請求につき綱紀委員会の調査を受けたにとどまるから、その弁明の負担は平成23年最判にいう受忍限度の範囲内であり、本件懲戒請求は不法行為とならない、
エ、弁護士会に対する懲戒請求は憲法16条の請願にあたるから、これが不法行為となるのは、実質的な損害が発生した場合に限られる。本件懲戒請求は原告らに実質的あ損害を生じさせておらず、不法行為は成立しない。

損 害 原告らの主張

(2)損害 
(原告らの主張)
ア、慰謝料 各原告らにつき連帯して500万円(主位的請求)、各原告につき懲戒請求毎に50万円(予備的請求)
960名もの面識のない者らにより明らかに不当な懲戒請求を受けたことにより、原告らは強い恐怖を感じ、原告らや家族らに敵意を向ける可能性がある者が多数存在することや、そのような人物が身近に現れても認識ができないことに不安を感じるなどして、平穏な生活が侵害されるとともに弁護士としての業務を妨害された、その他にも、多数人から懲戒請求を受けたことによる社会的評価の低下や、利益相反の確認作業、弁明書作成の負担といった損害が生じた。また本件懲戒請求は原告らの人種差別の根絶を目指す活動を理由に行われたものであり、マイノリテイの支援者に攻撃を加えることにより支援活動を委縮させ、もってマイノリティに対する人種差別を維持し固定化する目的で行われたものであるから、人種差別目的で行われたというべきであり、人種差別撤廃条約の趣旨に照らして、慰謝料の増額理由とされるべきである。
したがって、被告らの不法行為により各原告が被った精神的苦痛を慰謝するに相当な額は500万円を下らない。
本件懲戒請求が共同不法行為とならない場合、個別の懲戒請求が人種差別目的で行われたことを踏まえれば各懲戒請求により被った精神的苦痛を慰謝するに相当な額はそれぞれ50万円を下らない。
イ、弁護士費用 連帯して50万円(主位的請求)各人5万円(予備的請求)

損 害 被告らの主張

損 害
(被告Aらの主張)
ア、本件懲戒請求により、原告らの社会的評価が低下したとはいえない、原告らお作成した弁明書は極めて簡単な内容であり、その作成負担は軽い。原告らは利益相反の確認作業をいうが、具体性を欠く、本件懲戒請求の懲戒事由は、実際に懲戒されるかもしれないという不安が生じる余地すらない内容であり、人種差別的意図を有するものでもないから、本件懲戒請求により原告らが精神的苦痛を受けたとしても、強いものではない。
イ、本件懲戒請求と人種差別は無関係である、本件懲戒請求において、被告Aらは、朝鮮学校や本件団体につき原告らと異なる政治的見解を表明したにすぎない。
ウ、本件懲戒請求は、「懲戒すべきでないことが一見して明らかであると認めるとき」に該当し、札幌弁護士会の会規上、弁明書の提出を求めないことができる場合にあたる。また札幌弁護士会弁護士全員に対してなされた大量懲戒請求につき、懲戒請求として扱わず、意見として処理した例もある。したがって、仮に原告らが弁明書の提出等により精神的な損害を受けたとしても、それは札幌弁護士会が本件懲戒請求を懲戒請求として扱い、弁明書の提出を求めたことによるものであり、本件懲戒請求とは因果関係がない。
(被告Bらの主張)
ア、原告らは本件懲戒請求が人種差別目的であることが慰謝料増額理由になると主張する、しかし本件ブログが排外的な主張を掲載していたとしても、被告Bら及び選定者らは、本件ブログの主張とは関係なく、単なる閲覧者であるし、原告らは人種差別につき具体的な例を示しておらず、立証されていない
イ、仮に本件懲戒請求により原告らに損害が生じたとしれも、それは札幌弁護士会が必要もないのに原告らに弁明を求めたことによるものであり本件懲戒請求とは因果関係がない。

第 3 争 点 に 対 す る 判 断

第3 争点に対する判断
1 認定事実
後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
(1)本件声明は文部科学大臣が平成28年3月29日に朝鮮学校をその区域内に有する28都道府県知事宛てに、朝鮮学校の運営に係る特性を考慮した上、補助金の公共性、教育振興上の効果等に関する十分な検討と補助金の趣旨・目的に沿った適正かつ透明性のある執行の確保を要請する「朝鮮学校に係る補助金交付に関する留意点について(通知」(以下「本件大臣通知」)を発出したことを受け、同通知には、憲法、教育基本法、国際人権(自由権・社会権)規約、人種差別撤廃条約、子どもの権利条約との関係において問題があることなどを指摘した上で、政府に対し、同通知の撤回を求めるとともに地方公共団体に対して、朝鮮学校への補助金の支出について、憲法上の権利に配慮した運用を行うことを求めるものであった(甲1)。
(2)原告らが、平成29年9月25日、本件団体の代理人としてツイッタージャパン社に対して送付した内容証明郵便の内容は、ツイッターアカウントのロック解除、担当者及び責任者の氏名開示、ガイドライン開示を求めるもので、その文面に特段、不適切な表現は使用されていない。(甲5)
(3)被告らは、本件懲戒請求に先立ち、懲戒事由の事実上又は法律上の根拠について、特段の調査を行わなかった。(弁論の全趣旨)
(4)原告らは札幌弁護士会綱紀委員会から「弁明書における事実の認否は『否認する』という紋切り型のものではなく、事情を含めてお書きください」などと記載された書面で弁明書提出を求められ(甲10弁論の全趣旨)原告らは、同年4月17日付けまたは同月23日付けで、それぞれ3~4ページの弁明書を提出した、(甲11~13)
(5)原告らは相応の時間を費やして、上記(4)の弁明書を作成した(甲36~38)

争 点 に 対 す る 判 断

2 争点に対する判断
(1)本件懲戒請求は被告らの共同不法行為にあたるか 
ア、 弁護士法第58条1項は「何人も、弁護士又は弁護士法人について懲戒の事由があると思料するときは、その事由の説明を添えて、その弁護士又は弁護士法人の所属弁護士会にこれを請求することを求めることができる」と規定するところ、同項に基づく請求が事実上又は法律上の根拠を欠く場合において、請求者が、そのことを知りながら又は通常人であれば普通の注意を払うことによりそのことを知り得たのに、あえて懲戒を請求するなど、懲戒請求が弁護士懲戒制度の趣旨目的に照らし相当性を欠くと認められるときには、違法な懲戒請求として不法行為を構成する(平成19年最判)
この点、被告Aらは、平成19年最判が平成23年最判によって実質的に変更されたため、本件懲戒請求が不法行為に当たるかは、平成23年最判が示した基準に従って判断すべきであると主張し、被告Bらも、平成23年最判を前提とした主張をする。しかし、平成23年最判は、弁護士に対する懲戒請求そのものでなく、第三者に対し弁護士に対する懲戒請求を呼び掛けたことについての不法行為責任が問われた事案において、弁護士の受けた精神的苦痛が社会通念上受忍すべき限度を超えるとまではいえない旨判示したものであり、その判示内容をみても、平成19年最判の判旨示したものであり、その判示内容をみても、平成19年最判の判旨と相反するものではないことが明らかである。したがって、被告らの上記主張はいずれも採用できない。
イ、前提事実(5)によれば、被告らは原告らが本件声明について賛同、容認し、その活動を推進したこと(懲戒事由①)及び国際テロリストとして告発されている弁護士とともに本件団体の代理人としてツイッタージャパン社に対し内容証明郵便を送付したこと(懲戒事由②)が弁護士としての品位を失う行為(弁護士法56条1項)に当たるとして、本件懲戒請求をしたものと解されるから、以下、これらの懲戒事由につき検討する、
(ア)懲戒事由①について 
本件声明は、文部科学省が、朝鮮学校が所在する地方公共団体に対し朝鮮学校への補助金交付について十分検討し、適正かつ透明性のある執行を確保するよう要請した本件大臣通知を発出したことについて、法的な観点から問題点を指摘し、政府に対し、本件通知の撤回をもとめるとともに、地方公共団体に対し憲法等の趣旨を踏まえて適正な補助金交付がなされるよう求めるものであるところ、その内容に照らすと、原告らがこれに賛同、容認し、その活動を推進する行為をしたとしても、そのことが弁護士としての品位を失うべき行為にあたると解する余地はなく、本件懲戒請求は懲戒事由①について事実上又は法律上の根拠を欠くことは明らかである。
(イ)懲戒請求②について 
懲戒請求②について、原告らが、本件団体の代理人としてツイッタージャパン社に対しアカウントのロック解除等を求めたという点は、弁護士としての通常の範囲内の行為であり、その文面も特段、不適切な表現は使用されていないから、弁護士としての品位を欠く行為に当たらない。
また「C,R,A,Cのツイッタージャパンに対する通知書代理人については国際テロリストとして告発されている弁護士が含まれており」という点については、告発の内容や人物の特定すらされていない上、仮に原告らが何らかの罪で告発されている人物の特定すらされていない上、仮に原告らが何らかの罪で告発されている人物とともに代理人を務めたとしても、それだけで弁護士としての品位を失うべき行為に当たるとはいえない。
そして、上記内容証明郵便の送付がテロ等準備罪に該当しないことも、一見してあきらかである。
(ウ)そして被告らは本件懲戒請求に先立ち懲戒事由の事実上又は法律上の根拠につき特段の調査を行っておらず、被告らがいずれも法律的な専門的知識を有していないことを踏まえても、本件懲戒請求をするに際し、その懲戒請求に事実上又は法律上の根拠がないことについてやむを得ない誤解に陥っていたような事情は認められない。
したがって、被告らは、本件懲戒請求が法律上の根拠を欠くことを知りまたは通常人の普通の注意を払えば知り得たにもかかわらず、本件懲戒請求をしたと認められる。
(エ)以上によれば本件懲戒請求は、弁護士懲戒制度の趣旨目的に照らし相当性を欠くと認められ、違法な懲戒請求を構成する。

共 同 不 法 行 為 の 成 否

ウ、共同不法行為の成否
前記認定事実によれば、本件懲戒請求は、本件ブログ提供者の提供した、同一の内容の懲戒事由等が記載された本件懲戒請求書様式を用いて作成された本件各懲戒請求者が、本件ブログ運営者の指定した郵送先に集められた上で、一括して札幌弁護士会に送付して行われており、客観的に見て1個の不法行為であると評価できる、したがって、本件懲戒請求中の各懲戒請求は客観的に関連し共同して原告らに損害を与えたものであると認められ、共同不法行為を構成する。

損 害

(2)損害 
ア、慰謝料 各30万円 
証拠(甲36~38)によれば、原告らは、同時期に960名もの多数人から本件懲戒請求を受け、その内容も原告らの行為が確信的犯罪行為であるとか、テロ等準備罪に抵触する可能性があるなどと指摘するものであることに鑑みると、本件懲戒請求により、原告らが不安感を覚え、相応の心理的負担を被ったことは容易に認められる、また原告らに本件懲戒請求に対する弁明書の作成や、利益相反の確認作業等、本件懲戒請求に対する対応にある程度の負担が生じたことも認められる。 
しかし、他方で本件懲戒請求の内容に照らすと、原告らが実際に懲戒を受けるおそれを感じていたとは考えにくく、また原告らの平穏な生活が具体的に侵害されたことを認めることもできない。また弁護士懲戒制度の趣旨目的を勘案すれば、原告らの本件懲戒請求に対する対応は必ずしも過大な負担であるともいえない。
これらの事情を総合考慮すれば、本件懲戒請求により原告らに生じた精神的苦痛に対する慰謝料の額は、各30万円と認めるのが相当である。
この点、原告らは、本件懲戒請求は原告らの人種差別の根絶を目指す活動を委縮させるなど人種差別目的で行われたものであり、この点を慰謝料増額の算定にあたり考慮すべきである旨主張するが、原告らは弁護士であり、本件懲戒請求によって原告らの上記活動が具体的に委縮させられた事情は認めがたいから仮に原告らが主張する事情がその背景にあるとしても上記慰謝料増額をさらに増額するまでの事情とはいえない。
なお、札幌弁護士会が本件懲戒請求を懲戒請求として扱わないことができ弁明書の提出を求めないことができたとしても、札幌弁護士会にはそのように扱う義務はなく、本件懲戒請求の実際の取扱いも通常予想される範囲内であるといえるから、本件懲戒請求と原告らの損害の間の相当因果関係を否定する事情とはならない。
イ、弁護士費用 各3万円 
本件事案の内容、認容額その他本件に現れた一切の事情を考慮すると被告らによる不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は、各3万円と認めるのが相当である。
結 論
第4 結論 
以上によれば、原告らの各請求は、主位的請求につき、不法行為に基づき連帯して各33万円及びこれに対し不法行為の後の日である平成30年3月22日から各支払い済まで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、その限度で認容し、その余はいずれも理由がないからこれを棄却するとして主文のとおり判決する。
札幌地方裁判所民事第2部 
            裁判長裁判官  右田晃一
            裁判官     伊藤吾郎
            裁判官     宮原祥子