正義の味方はなぜ堕ちた

 
ブログ版 追跡AtoZ  急増する弁護士トラブル
 東京千代田区の法律事務所に所属する50代の弁護士が今年5月、業務停止の処分を受けた。実は、処分を受けるのはこれが4回目だ。6年前、裁判所に提出する書類を偽造し、文書で注意される戒告処分。2年後、再び戒告。さらに次の年、引き受けた依頼を放置し業務停止3ヵ月となった。そして今年、業務停止4ヵ月の処分を受けた。この弁護士に被害を受けたという女性は、弁護士会の処分が甘すぎると話す。
 「まだまだ被害者が出てくるのが目に見えているので許されない。普通の会社員とかサラリーマンとは全然違うんだなと思います」
 4回目の懲戒処分を受けているこの弁護士。業務停止期間を終える今月、弁護士としての仕事を再開できるようになる。
 弁護士会の懲戒制度は情報公開も不十分だ、と指摘するのは京都市の会社員・市井信彦さんだ。市井さんは以前、ある弁護士の懲戒請求を行なった。相続トラブルの相談に乗ると持ちかけてきた弁護士が実は相手側の弁護士だとわかったからだ。この弁護士は処分を受けた。しかし、処分の情報は国の官報と日弁連の機関誌に載るだけでほとんど知られず、仕事ができなくなることもない。
 この実態はおかしいと感じた市井さんは3年前、ブログで情報発信を始めた。過去10年の懲戒処分を自分で調べ弁護士の実名と処分の内容を掲載している。悪質な弁護士による被害を防ぐには処分の情報を弁護士会がもっと広く知らせるべきだと考えている。
http://dol.ismcdn.jp/mwimgs/8/8/240/img_88c3167e439ffc98329eff0ad8e328af8205.jpg 弁護士会として積極的にこの問題に取り組んでいく姿勢を示した日弁連の宇都宮会長。市民派弁護士としての手腕が問われている。
 急増する弁護士トラブル。そして市民から効果に疑問の声が上がっている懲戒処分。山積する課題をどうしていくのか。日本弁護士連合会の宇都宮健児会長は次のように話す。
 「本来市民の権利の救済をしなければならない弁護士が、かえって損害を与えているのは深刻な事態だ。弁護士会としては社会正義の実現という弁護士の使命を研修で徹底して伝えていく。また、弁護士の懲戒処分の情報公開のあり方についても検討したい」
 社会正義を実現するという使命をどう果たしていくのか。競争が激しさを増す時代だからこそ、弁護士1人1人に市民と向き合う姿勢が求められている。
(文:番組取材班 植松由登)

NHK情報番組「おはよう日本」にも紹介されました