「依頼人を裏切った弁護士懲戒処分例」 
 (刑事弁護の心構え)第四十六条  弁護士は、被疑者及び被告人の防御権が保障されていることにかんがみ、その権利及び利益を擁護するため、最善の弁護活動に努める
(1)スピード違反裁判の弁護人「機械で計っているのだから間違いない」 2009年5月号

 懲戒を受けた弁護士 堺和之 登録番号 24315  京都弁護士会 懲戒の種別 戒告
処分の理由の要旨
(1)被懲戒者は2006年の公務執行妨害被告事件における弁護人であったが被告人が公訴事実の一部を否認しているにもかかわらずそれを認める弁論をしたまた、被懲戒者は被告人に対し検察官取調証拠の同意不同意の意味について十分な説明をせず全部同意し、後に被告人の意思で被告人質問が実施されたが自らは被告人質問を求めないなど不利な弁護活動を行った

(2)被懲戒者は2006年の横領被告事件における被告2名の弁護人であったが、被告人らが横領行為の対象となった動産の所有権の帰属という犯罪の成否にかかわる根本問題を争っているにもかかわらず1回打ち合わせをしたのみで書証の謄写もせず第一回公判期日にのぞみ弁論においては被告人らが争っている動産の所有権の帰属の問題は何も触れず、また被告人らへの証拠内容についての説明も行わないまま検察官取調請求証拠も全部同意した
(3)被懲戒者は2005年の道路交通法違反被告事件における弁護人であったが被告人が速度につき公訴事実の一部を否認しているにもかかわらず、検察官取調請求証拠について被告人に対し書証に同意することの意味を説明せずに全部同意し、公判廷において「機械ではかっているから間違いない」等と発言し、被告人に不利な弁護活動をおこなった
(4)略  処分の効力の生じた日   2009年1月23日 200951日  日本弁護士連合会

2)被告人が無罪を主張、弁護人が有罪の控訴趣意書提出 2013年6月号
1 懲戒を受けた弁護士 香川県弁護士会氏 名  佐 藤 利 男 登録番号 34929 事務所高松市高松町  佐藤利男法律事務所
2 処分の内容 戒告
3 処分の理由
被懲戒者は被告人Aの控訴審における国選弁護人に選任されたが20111018Aが無罪を主張しているのにもかかわらず、実質的にAが有罪である旨の主張を含む控訴趣意書を裁判所に提出した。
4 処分の効力を生じた年月日 201322020136月1日   日本弁護士連合会
(3) 依頼人の秘密を暴露 2009年12月号

氏名 豊島哲男 登録番号 18529 大阪弁護士会  懲戒の種別  戒 告
3 処分の理由の要旨
被懲戒者は2003年4月15日ころ市会議員であった懲戒請求者から懲戒請求者の運動員らの選挙違反事件の弁護を受任し、その報酬として金2000万円を受領したが、この金員は懲戒請求者のあっせん収賄事件の賄賂として贈賄側から出損されたものであった。2006年6月20日懲戒請求者は上記選挙違反の弁護報酬2000万円のあっせん収賄事件で逮捕され被懲戒者は同事件につき弁護を受任した
被懲戒者は検察庁から再三にわたって上記弁護士報酬について事情がわかる上申書を書いてほしい、上申書が提出されないなら取り調べ調書を作成する旨の連絡を受けた。そのため2006年6月29日被懲戒者は懲戒請求者に対し上記弁護士報酬についてその経過を上申書で提出するがよいか、その上申書は裁判の証拠にもなる旨の説明をしたが上申書の文面ないしその具体的内容を懲戒請求者に示さないまま真摯な同意を得ることなく上申書を提出した。上記上申書の内容は懲戒請求者等の自白と概ね合致するものの、その補強証拠となるものであり、また懲戒請求者の賄賂の認識を認定する間接事実を多数含むものであって、被懲戒者が職務上知り得た秘密に該当するものであるからこれを検察庁へ提出するには具体的に説明して懲戒請求者の真摯な同意を得ることをようするものであった被懲戒者はこれを怠ったものであり被懲戒者の上記の行為は弁護士職務基本規定第46条に違反し弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する4 処分の効力の生じた日2009年8月31日
 

4)無罪だったけど、ほんとうは違うんだよね 2006年9月号
1懲戒を受けた弁護士  野崎研二  11310 第二東京 2処分の種別 戒告
3処分の理由の要旨
被懲戒者は2003520日に発行された単行本の執筆部分において依頼人Aが殺人等事件で控訴審で逆転無罪となった後に別の殺人未遂等事件を起こして有罪判決の宣告を受けた経緯を概説し、逆転無罪となった事件もAが真犯人であったかのような記述を行った。また被懲戒者は記事として週刊誌に掲載。公表されることを認識しながら記者に発言し週刊誌の200523日号に単行本と同内容の記事が掲載された。元弁護人が判決確定後であっても無罪判決に対して疑問を差し挟むような被告人にとって不利益な言動を行うことが許されることとなれば、弁護人と被告人らとの信頼関係の確立が困難となり、ひいては刑事弁護制度の存在を根幹から揺るがす結果となり同制度の公正円滑な運用を阻害する4処分の効力の生じた日 200666日 200691
 
(5)被告人の意に沿わない弁護人 クスリのくまさん 2001年1月号
1 懲戒を受けた弁護士   久万知良 223742 処分の種別 戒告
3 処分の理由の要旨
被懲戒者は1998318日ヘロイン密売容疑で逮捕された懲戒請求人の弁護人となり、同人の第一審判決言渡まで弁護活動を行ってきたものであるが、懲戒請求人が容疑事実を頑強に否認し、絨毯の販売をしていたに過ぎないと主張していたにもかかわらず、求刑通りの刑が言い渡されれば懲戒請求者に酷な結果になり同人が可哀想であるとの考えのもと、第一審公判で被告人である懲戒請求人の意に沿った無罪の主張を裏付ける弁護活動をしなかった
4処分の効力の生じた日 2001111日 日本弁護士連合会
(6)未必の故意ではなく確定的殺意の犯行であったと弁護人 2001年9月号
1 懲戒を受けた弁護士    武部富男  102572 懲戒の種別  戒告
3 処分の理由の要旨
被懲戒者は1999413日懲戒請求人Aに対する現住建造物等放火、殺人、殺人未遂被告事件の控訴審の国選弁護人に選任されたところ、Aが放火を認めるものの殺人についての故意を否定して殺人の未必の故意を認定した一審判決を事実誤認として最後まで争いたいとの意向を表明しているのにAに殺意がなかったと主張して原判決を打ち破ることを不可能と考え、事実を認めて刑の軽減をはかる努力をすべきであるとの判断のもと、Aの言い分や弁解を真剣に聴こうとせず、Aからの第1回公判前の再度の接見要請にも話が合わないし事態を紛糾させるとして一切応じず、第1回公判の弁論において「弁護人としては被告人は確定的殺意で犯行を行ったと考えていますので未必の故意を認定した原判決には事実誤認があります」と発言したものである。
4処分の効力が生じた日 2001531200191日日本弁護士連合会」
(7)私は無罪といったはずだが! 2001年7月号

1処分を受けた弁護士 湖山久 16669 第一東京 2懲戒の種別 戒告

3処分の理由の要旨
被懲戒者は詐欺事件の被告人5人中、懲戒請求人を含む3名の弁護を受任し懲戒請求人らとの間で、罪状を認め情状を立証するとの方針を打ち合わせたが、199825日の第1回公判期日の罪状認否において、受任した3名のうち懲戒請求人を除く2名が公訴事実を全面的に認めたのに対し懲戒請求人は詐欺の故意も共謀もなかったとして陳述したのであるから、その段階で改めて懲戒請求人の真意を聞き従来の弁護方針を再確認するべきであったのにそれを怠り、従来の情状を立証するとの方針に変更がないと漫然と考え、書証の取り調べにすべて同意したものである
4処分の効力が生じた日200151日 200171日日本弁護士連合会
(8)無罪と言ってるのに~ 2004年10月号
1懲戒を受けた弁護士 藤本健子 13720 第二東京2懲戒の種別   戒告
3懲戒の理由の要旨
被懲戒者は懲戒請求者にかかる邸宅侵入、覚せい剤取締法違反、業務上過失傷害、道路交通法違反および窃盗の各被告事件の私選弁護人であった。
しかしながら被懲戒者は20001016日の公判における最終弁論において、懲戒請求者が否認して争っていた覚せい剤所持については罪状認否と同じ主張を繰り返したのみで懲戒請求者の弁明供述に沿う証拠に基づいた具体的な無罪弁論をせず、また、懲戒請求者が否認して争っていた邸宅侵入については有罪を認める旨の弁論を行い、さらに情状については懲戒請求者に宛てた私信をワープロで打ち直し、これに懲戒請求者に署名させたものを弁論要旨に添付して朗読させるというのみでこの余の懲戒請求者に有利と思われる情状について弁論を行わなかった。もっともこのような弁護活動が直ちに判決の事実認定及び量刑について懲戒請求者に不利益に働いたということはなかった、
4処分の効力が生じた日 2004623日 101日日本弁護士連合会
(9) おれの考えは違う! 2016年8月号
1 処分を受けた弁護士氏名 西山司朗 登録番号15089 香川県高松市紺屋町5 西山司朗法律事務所
2 処分の内容      戒 告
3 処分の理由の要旨
被懲戒者は2010年10月1日懲戒請求者らから損害賠償請求事件を受任し2011年11月25日に訴訟を提起したが懲戒請求者らが被懲戒者の行った調査結果に不満を持ち更なる調査を要望したにもかかわらず、懲戒請求者らに対し、主張立証方針について十分な報告と説明を行わず、懲戒請求者らの意向を尊重した立証方法の協議、調査等の訴訟活動を行わなかった。また、被懲戒者は懲戒請求者らの意思に反する証人尋問申請や証拠提出等を行った。
4処分が効力を生じた年月日 2016年4月13日  2016年8月1日 日本弁護士連合会
(10)ここまでやるか! 2017年8月号

1 懲戒を受けた弁護士   氏名 岩﨑章浩  登録番号 49819 事務所  京都市下京区中堂寺南町134 HERO法律事務所        

2 処分の内容      戒 告
3 処分の理由の要旨
被懲戒者は、弁護人を受任した建造物侵入被疑事件及び窃盗被疑事件の被疑者Aから、子である懲戒請求者に現金を差し入れてもらうよう連絡を取ってほしい旨の依頼を受けたが、懲戒請求者の戸籍の附票の写しや住民票の写しを取り寄せて住所を調査した上で手紙を郵送するなどの方法を取ることなく、2015年10月22日Aから懲戒請求者の子Bらが通うと聞いた小学校宛てに、小学校の関係者には、懲戒請求者の実父であり、Bらの祖父でもあるAが、上記事件の罪で逮捕され、警察署に留置されている事実を推認することができる内容の文書を送付し、懲戒請求者らのプライバシーの権利を侵害した。
 4処分が効力を生じた年月日 2017年4月19日 2017年8月1日 日本弁護士連合会
(11)依頼者の希望の事件処理をせず逆に依頼者の不利になることを行った 2017年9月号
処分を受けた弁護士氏名 石井晋一 登録番号 34582 事務所 神奈川県横浜市中区山下町223-1         
山下町綜合法律事務所        
2 処分の内容  戒告
3 処分の理由の要旨
被懲戒者は2011年9月頃、懲戒請求者から、A及びAの経営する会社Bに対する7190万円の貸金等の回収について相談を受け、懲戒請求者が代表取締役である会社Cと顧問契約を締結し、2012年1月7日、上記貸金等の回収に関する仮差押さえ、訴訟、強制執行等について包括的に委任契約を締結し、その後着手金210万円及び実費30万円の計240万円の送金を受けた。
被懲戒者は同月末頃、A及びB社を債務者として仮差押さえの決定を受けたが奏効しなかった。
被懲戒者は2013年2月8日、懲戒請求者からメールで仮差押さえの取下げを依頼された際に、「わかりました。手続きを進めます。ただし費用等はお願いします」と応答したが、費用等とは何を意味するかを明確に提示して、速やかに取下げをするよう努めるべきであったのに、具体的な提示をせず取下げの意向に応じなかった。
また被懲戒者は当初の予定とは異なり仮差押えしか行っておらず上記資金の回収は全くできていないこと等から、訴訟を提起しないまま同年3月27日に懲戒請求者によって仮差押えが取り下げられたことが分かった時点で、清算について具体的な提案をし、依頼者の意向を確認し、実費清算及び着手金の一部を返還することが求められていたにもかかわらず、これを怠った。
さらに、被懲戒者は同年6月25日、懲戒請求者の夫D及びDの父Eを代理して、懲戒請求者に対して懲戒請求者がC社の代表取締役の地位を濫用してAに対して7190万円の貸付けをしたことが業務上横領に当たり、また懲戒請求者から何ら資金を回収していないことで更に損害を与えている等として、懲戒請求者の取締役解任を目的とするC社の株主総会の招集を求める等の内容を記載した内容証明郵便を送付した。被懲戒者の上記行為は弁護士職務基本規程第22条、第27条第1号及び第45条に違反し弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。4処分が効力を生じた年月日 2017年5月22日 2017月9月1日   日本弁護士連合会
(12) あなたは検察の味方? 2018年2月号 
処分を受けた弁護士氏名 土橋 伸吾 登録番号37549事務所 福井市宝永3-4-6 つちはし法律事務所     
 
2 処分の内容      戒 告
3 処分の理由の要旨
(1)被懲戒者は、懲戒請求者の夫Aが逮捕勾留され起訴された窃盗等の事件についてAの私選弁護人となり、2014年3月14日に委任契約書や報酬見積書を作成することなく、起訴後の弁護費用として21万円を受領し、その後、Aが強盗致傷等の罪で追起訴された事件についてもAの私選弁護人となったが追起訴された事件が先に起訴された事件と共に裁判員裁判で審理されることになったことから、これらの事件の私選弁護人を辞任し、同年5月8日にAの国選弁護人に選任されたところ、Aから受領した上記弁護費用を委任契約書や報酬見積書を作成することなく、またその清算をすることなく、余罪の起訴前弁護費用に振り替え、他方、法テラスから国選弁護人選任後の起訴事件の被告人弁護に関する国選弁護報酬を受領した。
(2)被懲戒者は、上記(1)の事件の控訴審でも国選弁護人に選任されたところ、第一審判決後の2015年2月頃に被害者から弁償いかんによっては嘆願書を書くと言われ、かつAからも支払契約書を作成してもらってくることを依頼され、同年3月中にはこれを行う旨約束していたところ、懲戒請求者及びAが再三催促したにもかかわらず、同年6月末頃まで被害者に支払契約書を提示せず、示談の話もしなかった。また、被懲戒者は控訴趣意書を裁判所に提出する際には事前にAに閲覧、確認させ、Aの考えを適切に反映したものにする旨同意していたにもかかわらず、Aに事前に閲覧させることなく、Aが第一審において主張していた共犯関係の解消についての主張を行わない内容の控訴趣意書を裁判所に提出しAから追加の主張を求められたことにより、同年6月29日に共犯関係の解消についての主張を追加した控訴趣意書補充書を裁判所に提出したものの、翌30日の第1回公判期日における裁判所からの求釈明に対し、追加した主張について「実行犯との共謀が解消されたことを前提にする事実確認の主張をするものではない」と答え、さらに被懲戒者は、書証や被告人質問について、事前に証拠取調請求をせず、検察官に対する事前開示することもなく、第1回公判期日に証拠取調請求を行い、そのためほとんどの申請証拠の採用が見送られた。加えて被懲戒者は上記事件の控訴審においては判決言渡日の前日である同年8月5日まで保釈申請をしなかった。
4処分が効力を生じた年月日 2017年10月25日2018月2月1日   日本弁護士連合会