日弁連の「依頼者保護給付金制度」に反対するという元弁護士会長らが全国の会員に送ったビラ!

【依頼者保護給付金制度】
弁護士被害者1人あたり上限500万円 弁護士一人につき2000万円を上限にして支払われる制度
声明の趣旨
日弁連の会員の一般会費を財源とする依頼者保護給付制度の創設に反対する。
声明の理由
(1)弁護士の横領その他これに準ずる行為によって依頼者の財産が失われた後、弁護士会が給付金を支給しても、既に失われた弁護士への信頼が回復するわけではない。まずは横領等弁護士による不祥事が行われないようにするためにはどうすべきか、根本的な原因を究明し予防する方途をこそ実践すべきである。
事実関係を調査すれば弁護士の不祥事増加の背景に弁護士過剰供給があることが明確となる。弁護士過剰政策を改めることなく、弁償金で市民の信頼をつなぎとめようとすることは本末転倒である。弁護士の過剰供給については手をつけようとしないで依頼者保護給付金制度を導入しても解決にならず状況は悪化するばかりである。
(2)後日、給付金が支給されても一旦損なわれた信頼は容易に回復されない。給付金には上限があり必ずしも全額補てんされるわけではない
財源が一般会員の会費であり、予算は増大する一方である。
(1)依頼者保護給付金制度は他の弁護士の責任を、罪のない一般会員に連座させて責任を取らせることを意味する。
他の弁護士が事件を受任したかどうかを知る由もなく、他の弁護士の業務を監督する権限も義務も会員にはない。高額な会費を支払っている一般会員の会費が不祥事を起こした弁護士の後始末に使われるのである
強制加入団体の一般会費は会員の仕事と活動のために使われるべきである
(2)弁護士の不祥事の最大の原因である過剰な弁護士供給を止めなければ、ますます経営難の事務所が増加し、今後も不祥事が多発することは明らかである
訴訟事件が激減し弁護士数が激増している現状において、今後、弁護士による不祥事が減少する要因はない。
依頼者保護給付制度を一旦導入すれば「日弁連の予算が足りないから制度を廃止する」などということは許されない。一旦創設した後に廃止乃至縮小化することはかえって弁護士に対する社会的信頼を失いかねいからである。依頼者保護給付制度を一旦導入すると予算が膨れあがろうと維持し続けなければならない。
高額な会費が会員の急増にもかかわらず高止まりのままである。過去の不祥事懲戒事例を参考に年間1億円の予算を見積もっているが、それにとどまる保証はない。
懲戒に上がらない不祥事事案が顕在化することも予想され、年間予算は
「天井知らず」である。その結果、会費は高止まりのままとなり、弁護士の所得が低下する中で、会費の負担ばかりが増えかねない。ますます優秀な弁護士の志願者が減少する。
指導監督義務と給付金制度の関係、弁護士自治との関係
(1)業者に対する指導監督機関が指導監督義務違反が認定されないのに責任を負わされたり、見舞い金を支払う制度は存在しない。
司法書士の成年後見人推薦団体だる公益法人成年後見人センターリーガルサポートは任意加入団体であり2か月に一度推薦した成年後見の通帳の写しを提出させ、それをチェックしており、対象事案も成年後見に限られている。予算も年間2000万円に達するまでのキャップ制を採用している。依頼者保護給付金制度には予算の上限がなく「横領その他に準ずる行為」と構成要件も明確ではない。損害額認定等の問題でもある。
(2)自分が責任を負う根拠及び不祥事を防ぐ契機がないのに不祥事を起こした弁護士のために一般会員の会費が使われることに対する会員の反感は極めて高い、「この制度が導入されるのならば、強制加入団体自体を止めるべきである」等反発もある。
弁護士自治に対する脅威は弁護士の経済力の低下と不祥事の増加にあり、これらの弊害を抑える政策をとらない限りは危機に晒されたままである。
不祥事増加の根本原因は弁護士の激増とその結果としての弁護士過剰であり、まずは、これを解消することに日弁連は全力を傾注するべきある。依頼者保護給付金制度を創設することは、真面目に弁護士業務を営む一般会員の反感を買うばかりで弁護士会の求心力を弱め、弁護士自治を内部から崩壊させかねない。
依頼者保護給付金制度は創設すべきではない
2016年9月28日 法曹人口問題全国会議
法曹問題全国会議
共同代表のみなさん
小出重義弁護士・埼玉弁護士会元会長(自由法曹団)
纐纈和義弁護士 愛知県弁護士会元会長
立松彰弁護士(千葉県弁護士会)
辻公雄弁護士(大阪弁護士会元副会長・自由法曹団)
事務局長
武本夕香子(兵庫県弁護士会元会長)
及川智志(千葉県弁護士会)
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