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弁護士後見人不祥事問題の対応

日弁連委員会ニュース   2017年7月1日

 

日弁連は2014年に続き2017314日付けで各弁護士会宛て『弁護士後見人の不祥事防止・早期対応策の取組について』を要請しました。この間、弁護士後見人による大きな不祥事が何件も発生している状況と、各弁護士会において不祥事防止の体制整備が十分に進んでいない現状を踏まえ再要請することになったものです。

 

今回の要請は2014年要請で打ち立てた後見人不祥事防止対策5項目の実施を改めてお願いする内容が中心ですが、この5項目を各弁護士会が財源、マンパワーが十分でない中、また会員のコンセンサスを得ながら、合理的かつスムーズに実施できるよう(2014年要請を「入口問題」とするのであれば、「出口問題」という位置付け)いくつかの施策やツールを作成し、併せて提供させていただきました。今回の要請のポイントは以下のとおりです。

5項目の再要請

 

 

2014年要請の5項目とは
①質が担保された後見人等推薦名簿の整備
②早期発見、早期対応のための家庭裁判所との対応、調整関係の確立
③弁護士会における早期発見、早期対応のためのチェック・助言体制の整備④家庭裁判所への後見人等候補者の弁護士会推薦方式の推奨,
⑤弁護士後見人の研修体制。OJT、相談支援体制等の抜本的強化、です。

 

弁護士会において質の担保された会員を掲載した「名簿」を作成し弁護士会と家庭裁判所が連携し「名簿」管理をとおして後見人不祥事の防止、早期発見を行う方法を基本としています。多くの弁護士会では既に名簿を作成し対応していますが、弁護士会支部にまで手が回っていない弁護士会も多いことから、この1年間で、支部対応も含め5項目についての体制整備も改めてお願いさせていただきました。

 

この点、多くの弁護士会から、「名簿」を活用した体制整備を図るにあたっては、会規、規則等の改訂が必要となるのでモデルを示して欲しいとの要望があり当センターにおいて「成年後見人等名簿登載・推薦に関する条項モデル案」を作成し、併せて情報提供させていただきましたので参考にしていただければと思います。

 

 
後見人ガイドラインの作成
 
弁護士は「専門職後見人」とされていますが、何をもって『専門職』なのか、これまで指針や標準的なルールはありませんでした。そのため弁護士後見人の質はバラバラでありそのことが不祥事問題に発展したことも否めません。

 

そこで、各弁護士会において、上記5項目の体制整備の一環として弁護士後見人としての最低限の行動指針を定めていただきたく「後見人ガイドライン」の作成を要請させていただきました。この点についても多くの弁護士会からモデル案を示して欲しいとの要望があり当センターにおいて「後見人等ガイドライン案」を作成し情報提供させていただきましたので参考にしていただけばと思います。

 

 
家庭裁判所との協議

 

不祥事案件の中には家裁のいわゆる「一本釣り」で弁護士会の関与のないまま適切ではない弁護士が後見人等として選任されていたり、後見人等に対する監督権を有する家裁による不祥事発見が遅れた等の理由により損害が拡大してしまったりするケースがあることが確認されています。

 

5項目②に関連しますが弁護士後見人の不祥事の防止、早期発見するためには弁護士会と家庭裁判所との連携が不可欠です。

 

そこで、今般、最高裁判所事務総局家庭局の協力を得て弁護士会と家庭裁判所とで
  1. 適切でない弁護士が選任されない仕組み
  2. 不正情報や報告書遅滞情報等のリスク情報の共有
    の共有の二つをテーマし協議会を開催していただくことを要請しました。

 

「保証機関型信用保険を活用した弁護士後見人による財産侵害防止及び権利回復の新制度」について
 
 さらに5項目を実施しても、なお被害が発生する場合に被害者を救済する趣旨から当センターでは、信用保険を活用した新制度を検討しているところです。この新制度は会員の負担を伴うものでもあること等から各弁護士会においてどのような制度が望ましいか具体的な仕組みを含め検討依頼させていただきました

 

今後各弁護士会での議論状況を踏まえ、このような制度を採用するのか否か、採用する場合にどのような内容にするのか議論していきたいと考えています。

 

 
最後に

 

専門職後見人の専門割合が年々増加しており(平成28年度は8048件となり5年前の約25倍)また昨年施行された成年後見制度利用促進法により、弁護士、弁護士会の果たすべき責務が従来にもまして増大していくことが予想されが人権保障の最後の砦である弁護士が判断能力に困難を抱え自ら声を上げることのできない被後見人の財産を侵害することは絶対に許されません。

 

弁護士後見人の不祥事問題は弁護士自治の問題とも関連づけられて議論され、もはや弁護士個人のとして放置できない状態に至っており、日弁連や弁護士会が組織的に対応なければならない問題となっています。

 

各弁護士会におかれましては、この点にご理解いただい5項目の体制整備にご尽力いただきますよう改めてお願いいたします。
 
 
以上、具体的対応策は何もなく、とりあえず先延ばし一番早い対策は、ハンコと通帳を持つ人間を分ける!