大相撲土俵の女人禁制 兵庫県弁護士会が「女性差別」と声明

神戸新聞

大相撲土俵上の女人禁制廃止に向けた会長声明 

2019年(平成31年)3月5日
 兵庫県弁護士会会長 藤 掛 伸 之 

〈声明の趣旨〉
 日本政府は,日本相撲協会に対し,土俵上の「女人禁制」を撤廃するよう指 導する等,あらゆる措置をとることにより,これに影響された性差別を助長する偏見の除去に努めるべきである。 
また,日本相撲協会は,土俵上での挨拶・表彰等の行為について,力士では ない一般の男性に許しながら,女性であることのみを理由に女性にはこれを許さず排除することが「女性に対する差別」にあたること,性差別が,個人の尊 厳と平等原則からなる公序に反することを認識し,この慣行を廃止する方向で 速やかに検討を進められたい。〈声明の理由〉 2018年4月4日,京都府舞鶴市での大相撲春巡業で,挨拶中に突然卒倒 した男性の舞鶴市長に土俵上で救命処置を施した女性に対し,土俵から降りる よう指示をするアナウンスが繰り返しなされた。その翌々日の4月6日,宝塚場所では,男性市長は土俵上で挨拶をするのが通例であるにも拘わらず,中川 智子宝塚市長は開催市代表の挨拶を土俵下で行った。海外メディアは,日本に おける女人禁制は女性差別を助長する慣行であると批判的にとらえて報道した。日本が憲法13条(個人の尊重原理),同14条(法の下の平等原理)に基づ く男女平等原則を国際社会とともに推進するため1985年に批准した女子差 別撤廃条約は,「女性に対する差別」を,「性に基づく区別,排除又は制限であって,政治的,経済的社会的,文化的,市民的その他いかなる分野においても, 女性が男女の平等を基礎として人権及び基本的自由を認識し,享有し又は行使 することを害し又は無効にする効果又は目的を有するもの」と定義している(同条約第1条)。 そして,日本政府は,締約国として,女性に対するあらゆる形態の差別を非 難し,差別を撤廃する政策をすべての適切な手段により,遅滞なく追及するこ とを合意して,私人間の性差別であってもそれを禁止する立法その他の措置 を取るほか,個人,団体又は企業による女性に対する差別を撤廃するための すべての適当な措置をとること,女性に対する差別となる既存の法律,規則, 慣習及び慣行を修正し又は廃止するためのすべての適当な措置を取る義務を負い,両性いずれかの劣等性若しくは優越性の観念又は男女の定型化された役割 に基づく偏見及び慣習その他あらゆる慣行の撤廃を実現するため,男女の社会 的及び文化的な行動様式を修正する目的のためにすべての適当な措置を取る義 2 務を負い,その履行状況につき審査と勧告を受けることになっており(同条約 2条・5条・17条以下),この条約上の義務は国内の法律を上回る法的効力がある(憲法98条)。 日本政府を含む締約国が,「女性に対する差別」の撤廃・廃止に向け,このよ うに広範な措置を取る義務を受け入れたのは,もとより「女性に対する差別」の撤廃が公法関係並びに法的関係に限定した取り組みでは奏功しない事実を踏 まえ,その必要性と重要性を承認したからである。 本件は,女性であることを理由に男女のうち女性のみを大相撲の土俵から排除するものであるが,広く日本文化に根差した「国技」と認識され,公営放送 で日常的に中継されている大相撲において,土俵から女性を排除するという慣 行は,「両性いずれかの劣等性若しくは優越性の観念又は男女の定型化された役割に基づく偏見」を助長・固定化することに大きな影響力を発揮し,「女性が男 女の平等を基礎として人権及び基本的自由を認識し,享有し又は行使すること を害し又は無効にする効果又は目的を有する」から,「女性に対する差別」に該当する。 女性に対する差別は女性の基本的人権の侵害であるから,「神聖」「伝統」「多 数者の支持」等を理由に正当化することは許されない。 また,女性に対する差別を撤廃するために,上記の私人間の性差別を禁止 する立法等の措置,個人,団体又は企業による女性に対する差別を撤廃する 措置とともに,女性に対する差別となる既存の法律,規則,慣習及び慣行を 改める措置を取る義務を怠り,女性に対する差別となる慣行を放置することは,憲法13条・14条・98条,女性差別撤廃条約第1条・2条・5条,並びに, 女性に対する差別を撤廃し男女が共同参画する社会の形成を目指した男女共同 参画基本法 1 条・3条・8条に照らして許されない。
 よって,日本政府は,日本相撲協会に対し,女性を排除することが日本国憲 法と同条約の禁止する女性差別にあたり,公序良俗を害する事実に基づき,土俵上の「女人禁制」を撤廃するよう指導する等,あらゆる措置をとることによ り,これに影響された性差別を助長する偏見の除去に努めるべきである(男女 共同参画基本法第4条・8条・11条)。 
また,日本相撲協会は,「神聖な戦い,鍛錬の場」であるはずの土俵上での挨拶・表彰等の行為について,力士ではない一般の男性に許しながら,女性であることのみを理由に女性にはこれを許さず排除することが「女性に対する差別」にあたること,性差別が,人権及び基本的自由の主体として女性がそれを認識, 享有,行使することを害し又は無効にするゆえに,個人の尊厳と平等原則から なる公序に反することを認識し,この慣行を廃止する方向で速やかに検討を進められたい。
 以 上

「大相撲土俵上の女人禁制廃止に向けた会長声明」
http://www.hyogoben.or.jp/topics/iken/pdf/190305seimei.pdf
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弁護士自治を考える会
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兵弁会長声明ということは、兵弁の会員の意見を聞かれ機関の議決を経てお出しになった。兵弁会員全員の判断ということですね