弁護士懲戒請求の実務研究⑫ 調査期日

 

先日あるブログに次の内容が投稿されていました。

(大量懲戒の関係の情報を投稿しているブログです)

 お世話になっております。
> 先程、第一東京弁護士会の調査通知の件の、続報です。
> 登校後、事務局様より、電話での連絡がありました。
> 出席することはないし、返信の葉書を出す必要はない、とのことです。
> 逆に、狙われる恐れがあるからだとのことでした。
> この場を借りて、改めてお礼申し上げます。
> ありがとうございました。1. 2020-02-03
 960人の会の者です。
本日2020年(令和2年)1月31日の日付で〒100-0013東京都千代田区霞が関1-1-3 弁護士会館内 第一東京弁護士会 様 より調査期日通知なるものが届きました。調査期日は令和2年3月18日(水)午前11時 第一弁護士会会議室 にて行うので令和2年2月17日迄に出欠の回答を願うとの事でした。
 差出人は、第一東京弁護士会綱紀委員会 委員長 安藤真一 様 でした。今回は第一弁護士会綱紀委員長印と割印が押されておりました。

以上引用

 

何か驚かれているようですが、狙われるなどの心配はございません。

これは綱紀調査・調査期日と呼ばれるものです。

弁護士懲戒請求の流れ(綱紀委員会)

1 懲戒請求書を所属弁護士会に提出

2 受理されると受理書が届きます。

3 綱紀委員会に懲戒が付されます。審査開始

4 綱紀委員会は2名の担当を決めます。

5 担当委員は対象弁護士に答弁書(弁明書)の提出を求めます。

6 担当委員は懲戒請求者を呼び出し事情を聴取します。

7 担当委員は対象弁護士、懲戒請求者の主張を取りまとめをします。

8 綱紀委員全員が出席する委員会で担当委員から提出された文書で審議、判断し裁決をし、「懲戒相当」また「懲戒しない」の議決書を作成します。

(全体会議は月に1回しかありません)

9 「議決書」が懲戒請求者に送付されます。 

10「懲戒相当」の場合は次に懲戒委員会に審議が付されます。

ここまでが単位弁護士会の綱紀委員会の流れ

 

6 担当委員は懲戒請求者を呼び出し事情を聴取します。

これが「調査期日」と呼ばれるものです

懲戒請求を申し立てたのですから、本来であれば懲戒請求者は、やっと事情を聴いてくれると勇んで弁護士会に赴くものです。

ブログの

出席することはないし、返信の葉書を出す必要はない、とのことです

は本来、懲戒請求者の立場であればおかしいものです。出頭しないから「懲戒しない」という事にはなりませんが、出頭できなければ文書で懲戒に至った事情等を送付すべきです。

では、なぜ上記のブログ記事のような内容になるのでしょうか

それは、各弁護士会によって、調査期日の取扱いが違うからです。

 

東京三会も対応が違います。

東京弁護士会、第二東京弁護士会に調査期日はありません。

ある日突然議決書が届きます。

第一東京弁護士会は必ず調査期日を設けます。事情を聴取された後に全体会議に掛けられますのでだいたい議決日が想像できます。

他の弁護士会で調査期日を設けているのは当会の経験上、大阪、京都、兵庫、岡山の各弁護士会です。新潟はありません。(綱紀委員の判断で事情聴取や質問状を送付する場合があります)

約1時間2人の綱紀委員から事情を聴取されます。細かいことまで聞かれて刑事の取調べのようだったと感想を述べた方もおられます。当然ですが、懲戒出してよかった、弁護士会の対応もよかった、またやろうと思わないように憎まれ役を演じるのが綱紀委員の務めでもあります。

開始時間まで一言も話さず挨拶もせず委員は名刺も出しません。当然、お茶も出ません。(兵庫はお茶が出ました)先ず綱紀委員が必ず懲戒請求者に向かって必ず言うのは、「ここはあなたの質問を受けるところではない。」と言渡して懲戒請求者に一切の質問をさせません。

最近、懲戒請求書を行政書士や弁護士に代筆させている方もおられるようですが、調査期日に出頭される方は時系列や証拠など頭に入れて、委員からの質問にうまく答えられるようにしてから、出頭されたがよいと思います。

 

弁護士懲戒請求手続の研究と実務

4 綱紀委員会の調査

  • 調査の方法

調査手続の流れ

綱紀委員会の調査は一般的に次のようにして行われる。

まず、弁護士会から調査を求められた事案について、懲戒請求者、対象弁護士等、懲戒事由に該当する事実がそれぞれ特定されているかどうか、懲戒請求者、対象弁護士等について適格性があるかどうか等を実質的に調査する。

特に懲戒事由に該当する事実が特定されているかどうかの点は綱紀委員会の調査の段階では、綱紀委員会の事実認定の対象を画するとともに対象弁護士等の防御の対象を明示することになり、その後の手続においても、懲戒処分の議決の効力が生じる範囲を画する等極めて重要な意義を有するため格別の留意が必要である。

次に対象弁護士等に弁明書の提出を求める等して争点を整理する。

争点が一応整理されたならば、調査期日を定めて懲戒請求者、対象弁護士等、参考人を呼び出してその供述を聴取して調書を作成(録音する弁護士会もある)したり、証拠の提出を求める等して懲戒事由に該当する事実が存在するかどうか、それが懲戒に該当する非行といえるかどうかについて調査を進める。この調査の段階では除斥期間満了の有無も調査する。

調査が終了すれば議決をし、これを弁護士会に報告する。

調査期日における調査については委員のうちから主査を決めてこれにあたらしめ、その結果を綱紀委員会に報告させて、これをもとに議決する扱いをする会もある。

また、会員数が多いため懲戒事件の数も多い弁護士会では、綱紀委員会の定例開催日を設ける等、多数事件の調査の効率化を図っている。部会もこのような効率化(審理の迅速・充実)に資するものとして平成15年法改正で導入された制度である。(平成15年改正前にも部会を置き事案を調査させていた弁護士会があるが、この「部会」は綱紀委員会としての議決をすることができず、最終的には全体会で議決を行わなければならなかった)