令和4年9月22日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 令和4年(ネ)第3379号 損害賠償請求控訴事件(原審・東京地方裁判所令和 4年(ワ)第1498号)
口頭弁論終結日 令和4年8月25日
判 決
控訴人 福永活也
被控訴人 同訴訟代理人弁護士 高橋雄一郎
主 文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴人の当審における拡張請求を棄却する。
3 当審における訴訟費用は、控訴人の負担とする。
事実及び理由。
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は、控訴人に対し、20万円及びこれに対する令和3年10月4日 から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え(控訴人は、当審において、 原審における令和4年2月20日を起算日とする遅延損害金の請求を、このように拡張した。)。
第2 事案の概要
(以下において略称を用いるときは、新たに定義するもののほか原判決に同じ。)
1 本件事案の概要は、1頁25行目末尾に行を改めて次のとおり加えるほかは 原判決「事実及び理由」第2の1に記載のとおりであるから、これを引用する。
「 原審が、控訴人の請求を棄却したところ、控訴人は原判決のうち原判決別紙投稿記事目録記載4の投稿についての控訴人の請求を棄却した部分を不服として控訴し、被控訴人に対し、20万円及びこれに対する令和3年10月4日 (投稿が行われた日)から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求めた。原判決別紙投稿記事目録記載1ないし3及び5の各投稿に関する請求は、当審の審理の対象ではない。」
2 「前提事実」、「争点」及び「争点に対する当事者の主張の要旨」は、次の とおり補正し、後記3を加えるほか、原判決「事実及び理由」第2の2、3並 びに 4 (2)及び(4)に記載のとおりであるから、これを引用する。 (1) 2頁5行目の「「ひとり親支援法律事務所」」の次に「(以下「本件法律事務所」という。)」を加える。 (2) 5頁13行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
「 本件記事4–1は、「福永活也被害者の会代表幹事」を名乗る山口三尊(以下「山口」という。)が、同月3日午後8時48分にツイッターの自身 のアカウントからツイートしたものであり、山口は、これと同旨の投稿を、 自らが管理するブログ上にも行っている。(甲17、18、乙30)」 (3) 6頁5行目冒頭から同行末尾まで及び同7行目冒頭から同8行目末尾までをそれぞれ削り、同6行目の「(2)」を「(1)」に、同9行目の「(4)」を「(2)」にそれぞれ改める。 (4) 17頁9行目の「(2) 争点(2)」を「(1) 争点(1)」に改める。 (5) 23頁11行目の「(4) 争点(4)」を「(2) 争点(2)」に改め、同13行目の「本件記事1から」から同14行目の「また、」までを削り、同15行目の 「これらにより」を「これにより」に、同17行目の「少なくとも100万 円」を「20万円」にそれぞれ改め、同18行目冒頭から同19行目末尾ま でを削る。
3 当審における控訴人の補足的主張
本件記事4には、本件法律事務所に入所する弁護士に対して、同事務所への入所という一点をもって、それ以上の個々の事情を問わずに一律に懲戒請求を行う旨が記載されており、これを閲覧した弁護士は、通常、本件法律事務所に 入所した場合には、懲戒請求についての理由の有無を問わず、被控訴人等から 懲戒請求を受けることになると認識する。そうすると、当該弁護士が、本件法律事務所への入所を検討している場合には、懲戒請求を受けることによる社会 的信用の低下や負担、制約に鑑みて、本件法律事務所への入所を躊躇し、避け るおそれがあり、これにより、控訴人の弁護士を採用する業務が妨害される。 仮に控訴人のその他の言動によって本件法律事務所への入所を躊躇する弁 護士が存在し得るとしても、本件記事4を閲覧することにより本件法律事務所 への入所を躊躇する弁護士も存在し得ることからすれば、本件記事4の投稿は違法性を帯び、不法行為となる。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も、控訴人の請求は理由がないものと判断する。
その理由は、次のとおりである。
2 認定事実
次のとおり補正するほか、原判決「事実及び理由」第3の1に記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 24頁1行目冒頭から27頁17行目末尾までを削り、同18行目の「(2)」を「(1)」に改め、同行の「株式会社小さな一歩」の次に「(以下「小さな一 歩社」という。)」を加え、同19行目末尾に行を改めて次のとおり加え、 同20行目冒頭に「(2)」を加える。
「 小さな一歩社が提供する「養育費保証サービス」(以下「本件サービス」 という。)の概要は、同社が、養育費債務者からの保証委託に基づき、養育 費債権者との間で保証契約を締結し、養育費債権者に対して、15%の保証 料を天引きして保証債務を履行するとともに、取得した求償権を養育費債務 者に請求するというものであり、小さな一歩社は、令和2年6月に同サービスの提供を開始したが、令和3年9月28日に新規申込みを停止している。 (甲35、36、乙14)
本件法律事務所は、小さな一歩社による本件サービスに関して、養育費債権者が養育費債務者との交渉や合意書の作成等を依頼するために弁護士の紹介を希望する場合の紹介先とされていた。(乙27)」 (2) 28頁25行目の「である。」の次に「また、上記文書は、本件サービスを注意喚起の対象として明記しているものではない。」を加える。 (3) 29頁8行目末尾に行を改めて次のとおり加え、同9行目冒頭から30頁13行目末尾までを削る。
「(4) 被控訴人は、同年4月1日付けで、控訴人が所属する東京弁護士会に対し、控訴人を懲戒対象者とする懲戒請求を申し立て、その理由として、本件サービスは養育費請求権という他人の権利を実質的に譲り受け、業として養育費回収を実行するものと評価できる場合に該当し、弁護士法73条、弁護士職務基本規程11条に抵触するものであるところ、控訴人が小さな一歩社と提携し、実質的に養育費債務者から弁護士報酬の支払を受けてい るのは弁護士法26条に違反するとともに、控訴人が小さな一歩社から事 件の周旋や依頼者の紹介を受けているのは同法27条及び72条、弁護士職務基本規程11条ないし13条に違反するなどと主張した。(乙27)
その後、山口も、同年5月17日付けで、東京弁護士会に対し、本件法律事務所に勤務する同会所属の弁護士1名を懲戒対象弁護士とする懲戒請求を申し立て、その理由として、小さな一歩社の業務は弁護士法73条に違反しており、本件法律事務所に勤務する弁護士は控訴人とともに同社と提携しているから同法27条に違反するなどと主張した。(乙32)」 (4) 30頁14行目冒頭に「(5)」を加え、同21行目末尾に行を改めて次のと おり加え、同22行目冒頭に「(7)」を加え、同26行目の「本件記事1に は、」から31頁4行目の「(甲16)、」まで及び同7行目冒頭から32頁18行目末尾までをそれぞれ削る。 「(6) 被控訴人は、同年10月4日、ツイッターの被控訴人アカウントから、本件記事4–1をリツイートし、同日、本件記事4–1に対するコメントとして本件記事4–2の投稿をした。
3 争点(1)
(本件記事4の投稿は、控訴人に対する不法行為を構成するか)について
(1) 本件記事4は、「弁護士の皆様へ」との表題で、本件法律事務所に入所した場合、特段の事情なき限り弁護士懲戒請求をする旨を述べる山口によるツイートである本件記事4–1をリツイートした部分と、「10人入ったら、 半分やりますよ」「・・・あっ、被調査人の名前を連ねるだけで足りますね」 などと述べる本件記事4–2から成り、記事全体としては、専ら弁護士を名宛人として、本件法律事務所に入所した場合には特段の事情がない限り懲戒請求を行う意思があることを述べる本件記事4–1に賛同し、そのような弁護士を懲戒請求の対象に加える意思を表明するものと解される。
前記2の認定事実によれば、控訴人が営む本件法律事務所は、小さな一歩社が提供する本件サービスに関して、養育費債権者が養育費債務者との交渉 や合意書作成等を依頼するために弁護士の紹介を希望する場合の紹介先とされていたところ、日本弁護士連合会は、弁護士会会長宛てに、いわゆる「養育費保証サービス」に関する注意喚起文書を発出しており、同文書において、 「養育費の支払いを業者が権利者に対して保証し、同保証に基づき業者から権利者に支払いがなされた場合に、義務者に対してこれを請求することを基 本的スキームとし、業者が手数料や保証料の名目で金員を取得する」との形態の養育費保証サービスについて、養育費請求権という他人の権利を実質的 に譲り受け、業として養育費回収を実行するものと評価できる場合には、弁護士法73条(譲り受けた権利の実行を業とすることの禁止)、弁護士職務基本規程11条(非弁護士との提携)に抵触する可能性があり、付随的サービスとして養育費に関する交渉、書面作成を弁護士が行うサービスを提供する際、弁護士紹介の対価の授受が行われていると評価される場合には、法律 事務の有償周旋として弁護士法72条に抵触する可能性があるなどと指摘した上、弁護士会員に対する注意喚起及び業者からの協力要請への慎重な対応 の周知を依頼している。
そして、被控訴人自身、控訴人が所属する東京弁護士会に対し、小さな一歩社と提携している控訴人に弁護士法26条、27条及び72条違反があると主張して、控訴人を懲戒対象者とする懲戒請求を申し立てており、山口も、同様の理由で、本件法律事務所に勤務する弁護士1名を懲戒対象者とする懲戒請求を申し立てている。
(2) そうすると、被控訴人が本件記事4を投稿したのは、被控訴人らが、控訴人や本件法律事務所の勤務弁護士が本件サービスに関して小さな一歩社と提 携していることを理由に、実際に、同人らを懲戒対象者とする懲戒請求を申し立てていることや、「ひとり親支援法律事務所」という本件法律事務所の名称に照らして、同事務所が本件サービスに関する案件をその業務の中心とするものと容易に理解されることを踏まえ、同事務所に入所する弁護士に対して、上記と同様の理由で懲戒請求する意思があることを表明するためであると認められ、本件記事4の表現が穏当なものといえることにも照らせば、 被控訴人が、本件法律事務所の業務を積極的に妨害する目的で、このような 投稿を行ったとは認め難い。
また、本件法律事務所は、本件サービスに関して、養育費債権者が養育費 債務者との交渉や合意書作成等を依頼するために弁護士の紹介を希望する場合の紹介先とされているところ、日本弁護士連合会が、「いわゆる「養育費保証サービス」」が弁護士法72条、73条及び弁護士職務基本規程11条に抵触する可能性がある旨の注意喚起文書を発出しており、本件サービスについても、上記文書の対象に当たる可能性は否定できないことに照らすと、被控訴人による懲戒請求が事実上又は法律上の根拠を欠くものであるとはいえない。
さらに、本件記事4の投稿により、実際に、これを見た弁護士が本件法律事務所への入所を躊躇して控訴人に問い合わせをするなど、控訴人の採用業 務に現実的な支障を生じたことを認めるに足りる証拠はない。
上記のとおり、被控訴人による本件記事4の投稿が本件法律事務所の業務を積極的に妨害する目的によるものとは認め難く、被控訴人らが控訴人を懲戒対象者として行った懲戒申立てが事実上又は法律上の根拠を欠くということはできず、本件記事4の投稿により控訴人の採用業務に現実的な支障を生 じたとも認められないから、本件法律事務所が本件サービスに関する案件を その業務の中心とするものと理解されることを踏まえ、同事務所に入所する弁護士に対して懲戒請求する意思があることを表明する本件記事4の投稿が 控訴人の営業を妨害するものとして不法行為を構成すると認めることはでき ない。したがって、控訴人の請求は、争点(2)について判断するまでもなく理由がない。
(3) 控訴人は、本件記事4には、本件法律事務所に入所する弁護士に対して、 同事務所への入所という点のみをもって一律に懲戒請求を行う旨が記載されており、これを閲覧した弁護士は、本件法律事務所に入所した場合には、懲戒請求についての理由の有無を問わず、被控訴人等から懲戒請求を受けることになると認識するから、本件法律事務所への入所を躊躇し、避けるおそれ があると主張する。
しかしながら、本件法律事務所への入所を検討する弁護士が本件記事4を閲覧した場合には、そのような記事が投稿された原因やその問題性の有無などを自ら調査検討するものと考えられるところ、被控訴人が本件サービスに 係る小さな一歩社との提携を理由として控訴人を懲戒対象者とする懲戒請求をしていることは、被控訴人らによるツイッターやブログの記事等(甲2 19、乙29ないし32)を検索すれば容易に判明するものであり、これに
加え、日本弁護士連合会が発出した前記注意喚起文書(弁護士であれば当然に閲読する機会があるものと考えられる。)の内容に照らすと、本件記事4 において、本件法律事務所に入所する弁護士に対して、特段の事情がない限り行うとする懲戒請求は、専ら上記のような理由に基づくものと容易に理解 できるといえる。
したがって、本件記事4を閲覧した弁護士が、同記事について、本件法律事務所への入所という点のみをもって、理由の有無を問わず一律に懲戒請求 を行うとの趣旨であると理解するとは考え難く、控訴人の主張は、採用できない。
第4 結 論
そうすると、控訴人の請求を棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却すべきであり、また、控訴人の当審における拡張請求も、理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第4民事部 裁判長裁判官 鹿子木康
裁判官 田中正哉
裁判官坂本三郎は、転補のため、署名押印することができない。
(注意) 「 本件記事4–1」のSNSの投稿は「福永氏の事務所に入所した弁護士は非弁行為を行うのであり入所した場合は懲戒請求を申立てる」という趣旨
こんな報道もありました。
春、出会いと別れの季節である。世間を数々騒がせたZOZO前社長の前澤友作氏(45)も剛力彩芽(28)と再び別れの道を選んだ。だが、それのみならず、自身が設立し、喧伝していた養育費取り立てビジネスからも手を引いていたのだ。くっついたり、別れたり、実に“忙しい”二人である、「月には一緒に行けない」
剛力は今回前澤氏に2度目の別れを切り出す際、こう言ったとか言わないとか。宇宙へ飛び立つには訓練が必要だ、すると女優業が続けられなくなり、その危機感が今回の別離につながったと報じられているが、正直なところ「どっちでもいい」あるいは「どうでもいい」というのが世間の反応ではないか。
一方で彼はビジネスに関しても「別離」を決断していたという。
『前澤さんは最近、自身の会社の経営から密かに離れていたのです』と語るのは、事情に詳しい法曹関係者
「『株式会社小さな一歩』といって、離婚した人を対象にした養育費取り立てサービスを事業とし、前澤さんが昨年5月に設立しました、離婚相手からの養育費取立てを代行し、その代わり受け取る側が毎月の養育費の15%を『小さな一歩』に支払うというものでした、
ひとり親支援を謳っていたものの、今年の2月末に前澤さんは人知れずその役員を辞任していたのです」
厚労省によれば、母子家庭の8割以上が養育費を受け取れない状況にあり、深刻な社会問題となりつつある。会社設立当初、前澤氏は雑誌のインタビューで≪日本社会の課題を解決する事業がしたかった≫ と、その意欲を語っていたのだが・・・・・・
前澤氏サイドに尋ねると「昨年、13の事業への出資が決まり、1事業のみに独占的に時間を割くことができなくなったため取締役から退任することになりました。しかし、出資者という立場から今後も継続的かつ積極的に事業に関与してまいります」と書面で回答があった。
『業務がない』
始末が悪いのは、その際でトラブルも起きていたことだ。司法ジャーナリストが言う。「この養育費取り立てサービスを行う『小さな一歩』の事業を巡り、東京地裁での裁判が進行中なのです」被告は「小さな一歩」が委託していた大本総合法律事務所、原告は人材派遣会社のパーソルテンプスタッフ株式会社だ。
「大本は昨年6月の事業開始後、数千件単位で委任を受けると『小さな一歩』から言われ、それを見込んで原告の会社に社員の派遣をお願いしていました。しかし、9人の派遣社員が架電やデータ入力など行うはずが、依頼が少なすぎて、業務がない状態が続いていました。」
派遣期間は6月8日から翌月9日までの約1か月。「結果的に派遣社員の報酬の支払いをめぐり大本と原告の間でトラブルに発展しました。そして、パーソルが大本に9人分の正規の報酬約346万円の支払いを求めて、東京地裁に提訴したのです」(同)
現在は大本が和解を持ち掛けているというが、原告のパーソルはそれを拒否し、平行線の状態が続いている、
前澤氏は再来年、スペースXの宇宙船で月へと向かう。彼が主張した≪日本社会の課題≫は解決しなくとも「2023年宇宙の旅」というわけだ。
東京弁護士会会長殿
懲戒請求者 個 人
対象弁護士 弁護士 福永 活也(登録番号 第40925号)
東京都港区北青山二丁目14番4号The ARGYLE aoyama8階
ひとり親支援法律事務所
第1 懲戒請求の趣旨
弁護士法第26条、第27条、第72条の違反、及び弁護士職務規定第11条、第12条、第13条、第29条違反につき、弁護士法第56条による東京弁護士会所属、福永活也弁護士の懲戒を求める
第2 懲戒請求の理由
1 株式会社「小さな一歩」の非弁行為
(1) 東京都港区に本社を置く株式会社「小さな一歩」(以下「一歩社」という。)は、「養育費あんしん受取サービス」(以下「本件サービス」という。)と称するサービスを展開している。これは、離婚後に養育費を支払うべき人(以下「養育費債務者」という。)から何らかの事情により養育費を受け取ることができていない人(以下「養育費債権者」という。)との間で保証契約を結び、養育費相当額を養育費債権者に保証することを目的としたサービスである。同社のHPには「あなたが受け取れていない養育費を、私ども「小さな一歩」が元パートナーに代わってお支払する保証サービスです。」「養育費を受け取れていても、支払いが遅れたり滞ったりで安定しない場合、養育費の取り決めた金額の満額を受け取れていない場合なども、受け取るべき適正な金額の養育費を、決められた日に安定的に受け取ることができるように支援します。」と記載されている(甲1)ただし、保証期間は原則として2か月のみであり、実際は養育費の保証というよりも回収代行に近いサービスとなっている。
(2) ところで、令和2年7月17日日弁連業務第1課から、各弁護士会会長に宛てて、「いわゆる『養育費保証サービス』に関する注意喚起について(情報提供)」(以下「注意喚起」という。)と題する文書が通知されている。
注意喚起の中では、「養育費保証サービス」を「養育費の支払いを業者が権利者に対し保証し、同保証に基づき業者から権利者に支払いがなされた場合に、義務者に対してこれを請求することを基本的スキームとし、業者が手数料や保証料の名目で金員を取得するもの」と定義し、このような「養育費保証サービス」は、「少なくとも養育費請求権という他人の権利を、保証契約に基づく求償権取得という形式を取ることで実質的に譲り受け、業として養育費回収を訴訟・交渉又は強制執行によって実行するものと評価できる場合には、弁護士法73条(譲り受けた権利の実行を業とすることの禁止)、弁護士職務基本規程第11条(非弁護士との提携)に抵触する可能性があります。」としている。
(3) これに照らして本件サービスを見ると、一歩社は養育費債権者と保証契約を結び、養育費債務者から支払われていない養育費を保証金として養育費債権者に支払い、そこから「保証料」の名目で15%ないし25%の金銭を取得している(甲1)。そして、保証によって生じた養育費債務者に対する求償権について、一歩社はひとり親支援法律事務所(以下「ひとり親事務所」という。)に依頼して、養育費債務者に請求している。このことは、ひとり親事務所が養育費債務者に送付している受任通知書(甲2)及び、「弊社、
大本事務所に、保証人としてお客様にお支払いした養育費(求償権)を元パートナーに請求等する依頼を行っておりました。」「今後、弊社はこの依頼について、大本事務所に代わり、新たな法律事務所に依頼することといたしました。」とする一歩社のHP(甲3)によって証明される。これはまさに注意喚起の述べるところの「養育費請求権という他人の権利を、保証契約に基づく求償権取得という形式を取ることで実質的に譲り受け、業として養育費回収を訴訟・交渉又は強制執行によって実行するものと評価できる場合」に該当する。
2 福永活也弁護士の弁護士法26条等違反
(1) ひとり親支援法律事務所の福永活也弁護士は、令和3年3月より一歩社と提携関係にあり(甲4)、一歩社に対して申し込みをした顧客の紹介を受け、顧客との間に、養育費債務者との間の合意書の作成について委任契約を結んでいる(甲5)。
(2) 上記委任契約書の第2条2には、「元配偶者との間で合意できた初年度のみ金3万円(税込み)を成功報酬とし、養育費の合意書作成以降、実際に養育費が回収できた限度で請求するものとする。」と記載されているが、これでは実質的に弁護士報酬を支払っているのは養育費債務者となり、弁護士法26条(汚職行為の禁止)違反である。
(3) 同委任契約書の第2条2「養育費の合意書作成以降、実際に養育費が回収できた限度で請求するものとする」との報酬説明は非常に曖昧であり、また、同条3「仮に予期せぬ事態が生じて乙の負担が高額となる場合には別途協議する。」との記載は、高額で無い場合の説明が全くなされていないことから、弁護士職務基本規程第29条違反である。
3 福永活也弁護士の弁護士法27条等違反
(1) 弁護士法27条では、弁護士が法73条の規程に違反する者から事件の周旋を受けてはならない旨を定めており、これは法73条に違反する行為を直接的、間接的に助長する弁護士の行為を禁止することで、同条の違反行為を防止することを目的としている。また、弁護士職務基本規程11条は、弁護士法73条の規程に違反を疑うに足りる相当な理由のある者から依頼者の紹介を受けることを禁じており、法27条に比べて禁止される提携の対象・行為を拡張しているのである。
(2) 一歩社の提供する本件サービスは、上記1で述べたとおり、注意喚起の挙げる事例にほぼそのまま該当するものであり、法律の専門家である弁護士であれば、このサービスが弁護士法73条に違反すること、あるいは少なくとも違反すると疑うに足りる相当な理由があると判断することは容易である。
しかしながら福永活也弁護士は、弁護士法73条に違反あるいは少なくとも違反すると疑うに足りる相当な理由のある一歩社から、事件の周旋あるいは依頼者の紹介を受けていたことになり、弁護士法27条及び弁護士職務基本規程第11条に違反していることは明白である。
4 福永活也弁護士の弁護士法72条違反の可能性
(1) 注意喚起は「業者によっては、養育費保証サービスの不随サービスとして、養育費を定めた文書が存在しないときに、養育費に関する交渉、書面作成を弁護士が行うサービスを提供するところもあります。その際に、名目のいかんを問わず弁護士紹介の対価の授受が行われていると評価される場合には、法律事務の有償周旋(非弁提携)として弁護士法第72条に抵触する可能性があります。」とも指摘がされている。
(2) 本件において、一歩社は、「お客様に大本事務所をご案内し、お客様だ大本事務所に委任される場合には、元パートナーとの養育費合意書の作成についての委任関係を結んでいただいておりました。」「今後、弊社はこの依頼について、大本事務所に代わり、新たな法律事務所に依頼することとなりました。」(甲3)と述べており、一歩社が上記注意喚起の前段部分のいう「不随サービス」に該当するサービス提供を行っていることが示されている。
福永活也弁護士も、養育費を定めた文書が存在していない一歩社に依頼した養育費債権者の為に、養育費債務者に対し受任通知書を送付していることから明らかである(甲6)。
(3) そうなると、福永活也弁護士が、一歩社から、名目のいかんを問わず弁護士紹介の対価の授受が行われていたものと評価される場合は、法律事務の有償斡旋(非弁提携)として、弁護士法72条に違反することになり、弁護士職務基本規程第12条、第13条違反も疑われる。
上記2(2)、(3)で述べたとおり、養育費の合意書が存在していない一歩社の顧客の弁護士費用は、回収できた養育費から支払われることになるのだから、養育費の取り立て代行を弁護士が加担していることは明白である。
5 その他補足
(1) 上記4については、一歩社がひとり親事務所と提携する前に提携していた、弁護士法人大本総合法律事務所(以下「大本総合」という。)が、株式会社テンプスタッフ(以下「テンプ」という。)から346万円の派遣料未払いで訴えられている訴訟(東京地裁、令和2年(ワ)32488民事7部)からも疑いが濃厚であると思われる。
(2) 原告テンプの主張は、大本総合との間で、令和2年6月4日に9名のスタッフを派遣する契約を結び、6月8日から就業開始。業務内容は、養育費の支払いを受けていない債権者に代わって義務者に電話連絡を行うというものである。
被告の大本総合は、一歩社から養育費の請求について千件単位で委任を受けると言われ態勢を整えたにも関わらず、6月は一歩社からの依頼はなく、売上が立たず手元不如意であった。結局12月末に一歩社と委任終了し、借金を背負っただけだったと主張している。
(3) そもそも、弁護士以外の者に養育費の催促を行わせる行為は弁護士法72条に違反している。尚且つ、一歩社からの依頼が無いと売り上げが立たないという大本総合の主張は、弁護士法27条違反であることを自らが認めていると言わざるを得ない。引き継いだひとり親事務所も、大本総合と同様に、弁護士以外の者が法律行為を行っている可能性は非常に大きいのである。
第3 結 語
一歩社は、申込者数1万4千人もいる大規模な養育費保証会社であるのだが、「放置されている」「元配偶者から連絡がきた」「解約を申し出たら保証金の一括返金を求められた」「しつこいSMSで突然の取り立てがあった」(甲7)など、関わった方々の苦情は後を絶たない。
生活に困窮しているであろう顧客が、これ以上苦しめられることが無いよう厳重な処分を求める。なお、この問題は、対象弁護士の品位の問題だけではなく、大規模な非
弁行為・非弁提携の可能性があり、非弁取締委員会と情報共有を行って頂きたい。以上
7月17日日弁連事務総長は「養育費保証サービス」について注意喚起を各弁護士会長に通知しました。ある会員がSNSで公開しました。
弁護士会長殿 2020年7月17日 日本弁護士連合会 事務総長 渕上玲子
日頃から、当連合会の活動にご理解をいただき、誠にありがとうございます。最近、いくつかの事業者から発表されたいわゆる「養育費サービス」について、弁護士会からその違法性についての検討依頼が、業務・非弁・非弁提携問題等対策本部に寄せられています。
養育費保証サービスとは、養育費の支払いを業者が権利者に対し保証し、同保証に基づき業者から権利者に支払いがなされた場合に、義務者に対してこれを請求することを基本的スキームとし、業者が手数料や保証料の名目で金員を取得するものです。この養育費サービスを実施する業者が法的検討も不十分なまま、当連合会の会員を巻き込んで、さらに、地方公共団体との連携を公表するといった動きもみられます。
しかし業者の中には、高額な手数料や保証料を掲げるものがあるなど、このような保証サービスが真に子の利益に資するのか、下記のような法的問題点も考えられます。
つきましては、会員に対し養育費保証サービスの問題点について注意喚起をしていただくとともに、こうした業者から協力を求められた場合には慎重に対応するようご周知いただきますようお願い致します。
記
1 養育費保証サービスは様々な形態が想定されるようですが、少なくとも養育費請求権という他人の権利を、保証契約に基づく求償権取得という形式を取ることで実質的に譲り受け、業として養育費回収を訴訟。交渉又は強制執行によって実行するものと評価できる場合には、弁護士法73条(譲り受けた権利の実行を業とすることの禁止)、弁護士職務基本規程第11条(非弁護士との提携)に抵触する可能性があります。
2 業者によっては、養育費保証サービスの付随サービスとして、養育費を定めた文書が存在しないときに、養育費に関する交渉、書面作成を弁護士が行うサービスを提供するとこともあります。その際に、名目のいかんを問わず弁護士紹介の対価の授受が行われていると評価される場合には、法律事務の有償周旋(非弁提携)として弁護士法第72条に抵触する可能性があります。 日本弁護士連合会業務第1課
注意 上記懲戒請求は東京弁護士会綱紀委員会で審査中
福永 活也は事務所名称「ひとり親支援法律事務所」東京都港区北青山二丁目14番4号から下記に変更されています。
控訴人
福永活也 40925 福永法律事務所 東京都渋谷区幡ヶ谷3-61-1 メトロレジデンス幡ヶ谷101
被控訴人代理人
高橋雄一郎 登録番号30781 東京弁護士会 高橋雄一郎事務所 東京都大田区蒲田5-24-2 損保ジャパン蒲田ビル9階