弁護士の懲戒処分を公開しているブログです。
当会に寄せられる弁護士の事件処理で多い苦情、離婚事件で相手方代理人が勤務先に書面を送付、架電やメールをしてきた
「この職員は離婚事件で裁判になっている」
「裁判に真摯に対応しない」
「今、どこの支店にいるのか?」
「あなたの会社に勤務する〇〇は養育費を払わない」
当事者のなかには本社勤務から地方に左遷となったり、航空自衛隊員が地上勤務になったり、職場に居づらくなったというケースがあります。
(条解弁護士法 第5版 日本弁護士連合会調査室編)
弁護士法第23条 (秘密保持の権利及び義務)
弁護士又は弁護士であった者は、その職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、義務を負う、但し、法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
【1】本条の趣旨
依頼者は、法律事件について、秘密に関する事項を打ち明けて弁護士に法律事務を委任するものであるから、職務上知り得た秘密を漏らさないことは弁護士の義務として最も重要視されるものであり、また、この義務が遵守されることにより、弁護士の職業の存立が保障されるものといえる。(P166 一部引用)
弁護士は依頼人の秘密は護るが相手方の秘密は保持する必要がない。守秘義務違反とは依頼者の秘密を護るためにあるものである。懲戒請求の申立てでこういう答弁をしてくる弁護士もいます。
条解 弁護士法 P169
日弁連の綱紀委員会は「弁護士の守秘義務は、その職務上の最も基本的かつ重大な義務であり、守秘義務の対象・範囲は依頼者はもとより第三者の秘密やプライバシーにも及ぶことは当然とされている」として、離婚事件の相手方が勤務先に送付しないよう求めているにもかかわらず、相手方の勤務先の電子メールアドレスに事件に関する電子メールを送信したことは、勤務先のサーバーの管理者によって管理・チェックされている限りにおいて、本条の守秘義務違反に該当すると評価している(平成23・11・16議決IV155 頁)(以下略)
本条の解釈として考えるに、本条が文言上依頼者の秘密に限定していないことからすると、必ずしも依頼者の秘密に限定されるとは解されない。そして少なくとも弁護士の職務あるが故に取り扱う情報については、その職務に対する信頼を維持する観点から、依頼者以外の秘密をも含むものと解される、もっとも限定説の説くように、守秘義務の本質は、依頼者の弁護士に対する信頼を保護するところにある。よって依頼者と同様の信頼関係があるわけではない者の秘密をどの程度保護すべきかについては、後述する「正当な理由」の解釈の広狭に影響し、個別具体的事案に応じて検討する必要があると解される
氏名 大本力 23709 東京 戒告
処分の理由の要旨(1)被懲戒者は、2018年7月30日、緊急性、必要性がなく正当な理由がないにもかかわらず、懲戒請求者の代理人であるA弁護士の承諾を得ることなく、直接懲戒請求者に対しBの代理人として子らの引渡しを求める内容証明郵便をその勤務先に送付した。(2)被懲戒者は2018年7月12日から同年9月18日までの間、懲戒請求者の代理人であるA弁護士との文書でのやり取りの中で「極めて短絡的な発想」、「明らかに可笑しな主張」、「貴殿は本当に資格がある弁護士か」等記載したファックスを送付し、懲戒請求者の代理人としての能力や執務内容自体を非難し、人格、名誉を繰り返し誹謗中傷した、2021年1月号
氏名 白井博文 30230 山口県弁護士会 小野田市民法律事務所 2戒告
処分の理由の要旨 被懲戒者は、A及び懲戒請求者間の離婚請求事件におけるAの訴訟代理人であったところ、Aと懲戒請求者が離婚訴訟中である旨記載した上、証拠収集の必要性及び相当性を認めるに足りる事情がなかったにもかかわらず、懲戒請求者の源泉徴収票を送付するよう、求める書面を懲戒請求者の勤務先に郵送した。
懲戒処分の公告 自由と正義 2011年4月号
1 氏名 松崎龍一 25578 東京弁護士会 河辺法律事務所2業務停止2月
3処分の理由
(1)被懲戒者は2009年5月11日Aから夫である懲戒請求者Bとの間の離婚事件を受任し同月12日国家公務員であるBの勤務先に電話してBの直属の上司であるCに対し未だ警察の捜査すら行われていないにもかかわらず恣意的な独自の判断に基づいてBが犯罪行為を行っていると話しBの名誉や信用を毀損した。
(2)被懲戒者はCはBの任命権者ではないためBを懲戒する権限もBの職務外の行為について調査する権限もないにもかかわらず、被懲戒者がCに対しBが犯罪行為を行っていることを通知したのであるからCは事実関係の有無等を調査し懲戒処分その他の必要な措置を採らなければないらないのに漫然とこれを放置したなどの理由で同年6月29日BとCについて国家公務員法による懲戒処分を求める申告書を提出しCらの名誉を侵害した。4 処分の効力を生じた年月日 2011年1月12日
懲戒処分の公告 自由と正義 2011年1月号
氏名 大山良平 16584大阪弁護士会 大山綜合法律事務所2 業務停止2月
処分の理由の要旨・(1) 被懲戒者は懲戒請求者とその妻Aとの間の離婚請求事件等のAの訴訟代理人であったが、控訴審において2,009年10月ころ準備書面に「最低で筋の悪い依頼者」などと懲戒請求者の人格及び名誉を毀損うる記載をした。
(2) 被懲戒者は上記事件の控訴審判決が懲戒請求者に対する慰謝料請求を認容するものであったが仮執行宣言が付されておらずかつ未確定であってしかもAに対する面談強要禁止の仮処分手続きにおいてAが直接懲戒請求者の勤務先に赴いて取り立てをする旨を記載した請求書を懲戒請求者の勤務先に送付し懲戒請求者代理人弁護士からの抗議後も執拗に直接取り立てる。旨の書面をフアクシミリで送信した。4 処分の効力を生じた年月日2010年10月14日
処分が取り消しとなった例
神奈川県弁護士会がなした懲戒の処分について同会から以下のとおり通知を受けたので、懲戒処分の公告公表に関する規定第3条第1号の規定により公告する
1 処分を受けた弁護士氏名 佐藤隆志 登録番号49778 事務所 山本一行法律事務所
2 処分の内容 戒 告
3 処分の理由の要旨
被懲戒者はAの代理人として申し立てた、Aの夫である懲戒請求者を債務者としたAと懲戒請求者の子Bらの監護者指定等申立事件の審判前の保全処分事件について2016年8月26日、本案審判確定までの間、Bらの監護者をいずれもAと仮に定め、懲戒請求者はAに対しBらを仮に引き渡せとの保全処分を命ずる審判を受けたが、同月27日、被懲戒者及び懲戒請求者の代理人C弁護士が立ち会っていた場ではBらがAに引き渡されなかったことから、被懲戒者からC弁護士に対して1週間以内の引き渡しを要請する等していたところ、その際、D幼稚園にに通園していたBの同月29日以降の通園先がE幼稚園であることを知ったため、同月28日、電話連絡をするなど他に代替方法があったにもかかわらず、普通郵便で、E幼稚園園長親展とせず、懲戒請求者に係る秘匿情報をマスキングもしないで上記審判の審判書全文を、E幼稚園に対し送付した。被懲戒者の上記行為は弁護士法第23条に違反し弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。4処分が効力を生じた年月日 2018年4月26日
2018月8月1日 日本弁護士連合会
神奈川県弁護士会が2018年4月26日に告知した同会所属弁護士 佐藤隆志会員(登録番号249778)に対する懲戒処分(戒告)について同人から行政不服審査法の規程による審査請求があり本会は2019年6月11日弁護士法第59条の規程により、懲戒委員会の議決に基づいて、以下のとおり裁決したので懲戒処分の公告及公表等に関する規程第3条第3号の規程により公告する。
記
1 採決の内容
(1)審査請求人に対する懲戒処分(戒告)を取り消す。
(2)審査請求人を懲戒しない
2 採決の理由の要旨
(1)本件は、審査請求人が別居夫婦の妻の代理人として、夫である懲戒性請求者との間の子供の親権、監護の指定申立事件の本案事件及び審判前の保全処分事件(子の監護者の指定及び子の引き渡し。以下「本件保全処分」という)の手続を行っていたが、本件保全処分の審判書(以下「本件審判所」という)全文を幼稚園。(以下「本件幼稚園」宛てに送付した行為(以下「本件行為」という)が懲戒請求者の名誉毀損又はプライバシー侵害に害するとして懲戒請求がなされた事案である。
(2)これにつき、神奈川県弁護士会は審査請求人の本件行為は、守秘義務(弁護士法第23条)社会正義を実現すべき義務、誠実、公正に職務を行う義務(同法第1条)弁護士職務基本規程第1条及び第5条)に違反し同法第56条第1項に定める「品位を失うべき非行」に該当すると判断した。
(3)本件審判書は第三者への開示、漏洩から保護されるべき程度が高い文書である、本件審判書の全文を開示する状態で本件幼稚園に送付した審査請求人には、弁護士法第23条の守秘義務違反があったと認められ神奈川県弁護士会の認定に誤りはない。
(4)しかし,次の事情が認められる。
本件保全処分が発令された翌日である2016年8月27日土曜日の午前11時、審査請求人及び依頼者(懲戒請求者の妻)が子の引き渡しを受けるべく懲戒請求者宅へ赴いたが、午後6時まで待機するも引き渡しが受けられなかった。その際、懲戒請求者の代理人弁護士の発言から、本件幼稚園への入園手続がその時点で撤回又は取消しがなされていないことを知った審査請求人は新学期が始まる同年9月1日までに懲戒請求者が行った入園手続を撤回させるために、本件審判書全文の送付により本件幼稚園に具体的な事情を知ってもらった上で、監護権のない懲戒請求者の入園手続は無効であることを理解してもらう必要があると考え、本件行為に及んだものである。当時の状況からすると、審査請求人が緊急性があると考え、確実性を考慮して本件行為に及んだことは、酌むべき事情といえる。
(5)本件は審査請求人の経験不足及びプライバシーへの配慮の欠如により生じた事案であり、懲戒請求者の個人情報が明示された本件審判書全文を第三者に送付した軽率な行為であったが、審査請求人の反省の態度も顕著であり、本件幼稚園の園長以外の第三者に本件審判書の内容が開示された事実は見受けられず、実害は発生していないことに鑑み、審査請求人を懲戒しないとするのが相当である。3 採決が効力を生じた年月日 2019年6月14日 2019年8月1日 日本弁護士連合会