『アメリカの実例に見るLGBT問題』エドワーズ博美(メリーランド州立大学講師)
令和5年「祖国と青年7月号」
LGBT法案の危険性
LGBT理解増進法案が6月9日(2023年)衆議院内閣委員会で賛成多数で可決された。自民、公明、維新、国民民主の四党が与党の修正案で合意した。この後、四党は修正案を衆議院を通過させ今国会で成立させる見通しだという(2023年6月9日現在)
安全保障問題が山積する昨今の現状において、ここまでLGBTに固執する政治家の意図が分からない。人権、人権と声高に叫ぶが、日本の安全保障が確保されなければ、人権など露と消えていく、ロシアによるウクライナ侵攻、中国によるウイグル問題、北朝鮮による拉致問題、世界各地で起きている深刻な人権侵害に比べてLGBTの人権が日本でどれほど侵されているというのか
虎視眈々と日本の領海を狙う中国や、核兵器を開発する北朝鮮に対する安全保障は大丈夫なのか。国内に目を向けても問題は山積している。近年では筆者の地元でも中国人による土地買収や上海電力によるメガソーラー買収問題が後を絶たず、国土が内部から侵攻されていくのを日に日に感ずる。こうした問題が手つかずにもかかわらず、LGBTを声高に叫ぶ政治家はお花畑に住んでいるとしか思えない。
修正案では特定の団体が行政からの補助金を受け取るのを防ぐための与党案の「民間の団体等の自発的な活動の促進」との表現は削除されたというが、それで安心できるのか。
セクシャルマイノリテイ支援全国ネットは「LGBT等電話相談業務委託」という名目で、東京都より令和4年度に443万円を受け取っている。社会的包摂サポートセンターは令和2年度分の「SNSを活用した性自認および性的指向に関する専門運営業務」として627万円の委託契約を東京都庁と交わしている。両団体とも以前の住所は女性シェルターネットやColabo等と同じ。
文京区本郷1丁目35番28号メゾンドール本郷302だ。法案成立前でさえこれだけの公金がLGBT関係に流れている。いったん成立すれば、左翼団体はこれを幸いに種々の名目で公金を搾取するのは目に見えている。
たとえ耳当たりの良い修正案をしたところで、LGBT法案が危険法案であることに変わりない。LGBT活動家が長年暗躍してきたアメリカ社会で今何が起きているのか。それを参考にしながらLGBT問題について考察していきたい。
LGBT教育を学校に持ち込む弊害
LGBTと一言に言うが、その実態は何だろうか。Lはレズビアン(Lesbian)Gはゲイ(Gay)の略LもGも同性愛を意味し、Bはバイセクシャル(Bisexual)の略で両性愛を意味する。
これらは詩的指向と呼ばれているもので、自分が愛する対象が同性か両性かというだけで自分自身の性を否定するものではない。
しかし、トランスジェンダー(Transgeender)の略で使われるTは、生まれもった性と性自認が一致しない性同一性障害と呼ばれている、トランス女性と言えば、生まれた時の性は男性で性自認は女性を意味する。今、種々の問題が報じられているのはこのトランス女性に起因するものが多い、
こうしたトランス女性の人権を考慮する余り、彼らに女性トイレ使用を許可したり、性自認が女性だと言えば、たとえ性犯罪者であっても女性刑務所に収容したあげく囚人がレイプされたり、女性スポーツへの参加を許可して本来なら勝てるはずの女性選手が勝てなくなったりしている、性自認に寛大なアメリカや西欧社会ではこうした問題が後を絶たない。少数のトランス女性の人権を尊重するに余り、他の多くの女性の人権を疎かにされたのでは本末転倒としか言いようがない。被害を蒙っているのは女性ばかりではない。子どもにもその皺寄せはいっている。
アメリカの学校現場では、トランスジェンダーを救え”、性別違和”を訴える子どもは、教師が親の同意もなく本来の性別とは違う性別で呼称したり、六歳の子どもでも自分で性別を決めさせたりしている。
神経科学者でジェエンダー、セックス、性指向を専門とするデボラ・ソー博士は著書(1)の中でこう指摘する。
「逆の性になりたいと希望する殆どの子ども達は成長するとともにそうした希望は無くなり、自分が生まれた性に違和感を抱かなくなる」それにも関わらず、こうした子ども達をいとも簡単に性転換させてしまう昨今の風潮に対して、こんな矛盾点を指摘する
「トランスジェンダー活動家達の偽善は明瞭だ・・医者は成人した女性が避妊手術や子宮切除を望んでも、三十歳になるまでそうした決定をさせないのに、LGBT活動家達は八歳の子ども達でさえ逆の性別を選び、そのための医学的プロセスを開始するには充分成熟しているという。」
多くの子ども達の性別違和の原因が、学校現場での教育にありことは間違いない。LGBTイデオロギーにかぶれた教師達はこうした考えを学校現場に持ち込み幼い子ども達を洗脳している。
アメリカの学校現場の性教育では「トランスジェンダー」や「同性愛」を普通の感情として教えているが、同性愛を奨励する危険性について、ファミリー・ウオッチインターナショナル代表のシャロン・スレイタ―氏は著書の中で次のように指摘する。
「子ども達に同性愛を奨励することで、子ども達はそれを試してみようとする。そうしたことが危険なのは、試しに薬物を使用して薬物常用者になってしまうのと同じだ。」
同性愛になるとうつ病、問題行動、薬物使用、高い自殺願望といった危険性が増加するという統計も出ている。学校現場で教えるべきは、こうした危険性についてだ。トランスジェンダーを美化したあげく、最近のイギリスでは「16歳から18歳までのテイーンエイジャーの10人に1人はジェエンダーを変えたい」という統計まで出ているという、LGBTが若者の間でトレンド化している。
学校現場で教えることの弊害は他にもある。以前、友人の一人がこんなことを言っていた「学校では同和教育さえしなければ、娘たちが自分たちが同和地区出身だと知ることはなかったのに・・・」
LGBT教育も同じことが言えるのではないか。同性愛とかトランスジェンダーとか知らない子どもにこうした知識を与えることで、かえって差別意識を植え込むことにならないと言えない。学校現場でLGBT教育をすることで、子ども達は成長過程で経験する”性別違和”をLGBTと勘違いしたり、知ることによってかえって差別意識が目覚めたりする。
修正案では、保護者の理解と協力の必要性を明記しているというが、LGBT問題を学校教育に持ち込むことの弊害は予想以上に大きいということを肝に銘ずるべきだ。子ども達に教える大切なことはもっと他にたくさんあるというのに・・・
子どもに性転換を推奨する大人たち
米国精神医学雑誌(American Journal of Pasychiatry)の研究では”性別違和”を訴える患者の61%は他の精神的疾患を抱え、このうちの75%は”性別違和”自体がパーソナリテイー障害、気分障害、精神病性障害といった他の病気の症状である。という
それ以外にも、性暴力の被害者であった女性の中には、こうした経験から男性になりたいと思う人もいる。性転換後も多くのトランスジェンダーが幸福感を味わえないのは”性別違和”の根本原因が解決できていないからだとソー博士は指摘する。
また、米国小児科学会(Amerikan College of Pediarticians)によると、二次性激抑制ホルモンを服用している子ども達は骨粗しょう症、気分障害、脳卒中、認知障害などの副作用を経験しているという、性転換後のホルモン療法を長く続けていると、心臓発作、糖尿病、血栓、癌等にかかる危険性が増えるともいう。性転換のホルモン療法を思春期に開始した子ども達の場合、例えその後、性転換治療を公開しても元に戻すことはできないことを思うと、やみくもに性転換を推薦する活動家達の罪は重い。
アメリカでは子どもの時の”性別違和”は以前は成長過程と見做されていたが、今では性転換をして矯正すべきものと考慮されるようになってきた。
テキサス子供病院で11歳に子どもに対して行われている性転換治療を内部告発した人の会話をジャーナリストのクリストファー・ルフォ氏が紹介している.下記に要点を列記する。
「私の職場には悪魔がいるとしか思えない。自分は逆の性別で生まれてきたと感じる子ども達を大人達は“肯定”しそれに付け込んで金儲けをしている。」「(性転換した揚げ句)子ども達は今から10年後に自分には生殖力がなくて子どもがもてないことに気付き。性的に不能で普通の人間でないことに気付くだろう。こうした現実を知った時、彼らは自暴自棄いなるだろう」
「性転換治療をする医者は活動家で、彼らは医学界、メデイア、ビックテックなどからの賞賛に有頂天になり、自分達がしていることが世界を変えて、歴史に名を遺すと信じている。彼らは神になったつもりでいる」等々。
日本で法案が可決されて学校現場でトランスジェンダーが美化された場合、昨今の欧米社会のように子ども達が安易に性別を変更したり、周囲の大人達がそれを肯定し性転換を助長したりする風潮が起きないと言い切れるのだろうか。悪魔の囁きに乗るべきではない。人間は神になれないのだ。
フロリダ州知事「世界が狂ってきている」
トランス女性の女性スポーツへの参加に関しては、2015年に制定された国際オリンピック委員会のガイドラインでは、「過去1年間においてテストステロンのレベルが10nmol(nanomoles)(liter)とされている、」しかし、優秀な女性選手でさえ1,68nmolしかないことを思えば、あまりにも不公平だとソー博士は憤る。
スウエーデンのガロリンスカ・インステイチュートは「トランス女性が男性ホルモンを抑制しても筋肉の強さまで減退させることはできない」と言っている、いくら人工的に性転換をしたところで、生まれ持った生物上の性による身体的特徴を抹消することなど出来ない。一部の人の公平さを求めることが、時として他の多くの人に不公平さを与えるのは世の常だ。
こうしたことから、今アメリカの多くの州では「子どもに対する性転換治療の禁止」や「トランス女性による女子スポーツへの参加禁止」等の条例が制定されてきている。(Let kids be Kids)と称する条例に署名したフロリダ州のデサンチイス知事は「世界が狂ってきている中、フロリダは正気を保てる避難所であり正常を守る城壁であり続ける」という。
日本はLGBT法案を可決して、狂った社会の仲間入りするのか、それとも正気を保ち続けることができるのか、今その岐路に立っている。現在、アメリカの17の州が子どもに対する性転換治療を規制する条例を制定し、12の州が同じような条例を考慮している。トランス女性によるスポーツに関しては20以上の州が規制している。
さらにトランスジェンダーで問題なのはその人が「性同一性障害」と医者が判定したトランスジェンダーなのか、ただ単に女性になりたい、男性になりたいでなってしまった人なのか、女性になることで性的興奮を覚えるオートガイネフイリアと呼ばれる人なのか、外見では判断できないところにある。
本当に障害を持ち苦しんでいる人達に対する差別は許されないが、当事者でも法案に反対して次のように言っている、「このような法律がなくても日本では特段不都合が生じていない」「慎ましやかに静かに生活していた人達が白い目で見られたりして迷惑だ」等。こうしたことからLGBT当事者と活動家をはっきり分けて考え、活動家達の隠された意図や目的を把握する必要があるのではないかと考える。
「LGBTの人達の人権を守ろう」「差別をなくそう」といったスローガンの下に彼らが目指す社会とは一体どんな社会なのか、多くの人が息苦しさを感じ始めている。
活動家による「キャンセルカルチャー」
活動家達の目指す社会を知る上で参考になるのが、彼ら(彼女たち)の常套手段を理解することだ。
2010年頃からアメリカで問題になってきている動きに「キャンセルカルチャー」というのがある。自分達に不都合な考え方や意見を主張する人達を手段を選ばずに抹殺するやり方だ。過激フェミニスト達は1980年代からすでにこの手法を頻繁に使用している。「家庭内暴力の加害者=夫、被害者=妻」という構図を作り上げたフェミニストに対抗して、「家庭内暴力に性差は関係ない」と主張した二人の社会科学者がその後、個人的脅迫や学術的発表の妨害にあうようになり、家庭内暴力の加害者であるという噂までたつようになった。
2020年12月にハーバード大学のマーク・ラムザイヤ―教授が、米学術ジャーナルで「慰安婦は契約を結び売春婦として働いていた」とする内容の「慰安婦論文」を発表したが、その後、脅迫状や殺害予告などのメールが届いたのは我々の記憶に新しい。これに対して、ラムザイヤ―教授は毅然とした態度で臨みキャンセルされずにすんだのは幸いだ。
同じような手法がLGBT問題においても使われている。大学現場でLGBTに批判的な意見を述べたり研究をしたりすることで攻撃の対象にされ、抗議、異議、検閲に見舞われるのが常態化しており」、トランスフォビア(トランスジェンダー恐怖症)というレッテルまで貼られるという。
こうしたキャンセルカルチャーの標的にされ失職するのを危惧するあまり、多くの教授が正当な意見さえ口に出すのを躊躇するようになっている、前述のソー博士が大学で研究者や教授の道ではなく、ジャーナリストとしての職業を選んだのも、学校現場での息苦しさに嫌気がさし、キャンセルカルチャーに屈して常識ある意見が言えない教育現場に絶望したからだという。
2020年の共和党全国大会でトランプ前大統領は「キャンセルカルチャーの目的は真面目なアメリカ人達に、解雇されたり、辱められたり、社会から疎外されたりするといった恐怖を与えること」であり「それは政治的武器」であり「全体主義に匹敵する」と言っていた。「人権を守ろう」「差別をなくそう」と声高に叫ぶ人達が、自分達の主張を通すために不都合な意見を抹殺し、多くの人の人権などお構いなしの行動をしている、まさに彼らが信奉する共産主義者や全体主義者の手法だ。
「多様性という言葉に騙されるな」
活動家達が使う詭弁の一つに「多様性」という言葉がある。「多様な家族」という詭弁を使った過激フェミニストたちは、男女共同参画社会基本法が制定されるや否や、この言葉を学校現場で普及させ、子ども達を洗脳し、基本家族だけではなく何でもありの家族を推奨してきた。その揚げ句、未婚の若者が増え、適齢期になっても結婚しない男女が山のようにいる、少子化対策といった小手先の政策に右往左往したところで、結婚する男女が減少傾向にある昨今、日本の未来は危うい。
「多様性」という言葉はLGBT問題でも使われている。例えば自民党が2016年5月24日に発o表した「性的指向・性自認の多様な在り方を受容する社会を目指すための我が党の基本的な考え方」という文章がある。要するに現状では学校や職場・社会生活などにおいて、当事者の方々が様々な困難に直面しているので、性的指向・性自認の多様な在り方をお互いに受け止め合う社会を目指すべきだ。という。
そもそも「多様性」とはそれほど重要なことだろうか。世の中には多様な意見、視点、価値観があるが、それらを全て受け入れる必要などどこにもない。もし子ども達が「学校で勉強することに価値を見出せない」と言った場合、親は「じゃ、行かなくても良い」とはならないはずだ。そんな親は親失格である。勉強することによって人生の選択肢が広がり、子どもは学校にいくべきであるという社会の規範を教えるのが親の務めだ、
「多様な家族」を教えるのではなく「結婚して家族を持つことが、人間にとって社会にとってどれほど有意義なこと」かを子ども達に教えるべきだった。同性案や性同一障害者の中には身体的医学的にどうにもならない人もいるだろうし、そんな人を差別するのは許されることではない。しかし、性的指向や性自認を多様性の選択肢の一つであるかのように子ども達に教えることの弊害は前述したとおりだ。
最近、ミネソタの民主党議員の中に「小児性愛も多様な性指向の一つだ」と主張した人がいるという。性指向の一つとすることで、小児性愛者が差別されることなく大手を振って子ども達と性交を楽しめるという訳だ。多様な意見を尊重して行き着く先の社会に道徳や規範など微塵もない。ちなみに、国連主導で提唱されている「包括的性教育」も、小児性愛者が子どもに過激な性教育をすることで自分達の欲求が満たされる社会を作り上げるために提唱したものであることも付け加えておく
男女共同参画に代表されるフェミニズムも包括的性教育も、そして昨今のLGBT運動も、全ては左翼活動家による政治的運動であり、行き着く先は息苦しいだけの全体主義社会だ。LGBT活動家の目的は差別をなくして住みよい社会を作ることではない。究極の隠された目的は、社会の規範をなくして伝統文化を破壊することだ。アメリカではその過ちに気付き、多くの州や政治家は是正への一歩を歩みだした。
日本はそれを尻目に、狂った社会へと突き進むのか。少子化に伴う労働人口減少に対処するために外国人労働者を受け入れるという。スパイ防止法も外国人による土地購入も制限できない現状で外国人を受け入れLGBT同様に彼らの多様な在り方や生き方を受け入れていたら、日本の伝統的な家族などは露と消えていくだろう。
今、日本は岐路に立っている。欧米で起きている種々の問題を肝に銘じてLGBT問題に対処し、日本の伝統文化をこれから先も守り続けていくために何ができるのか、一人一人が知恵を出し合って喫緊に対処する時ではなかろうか。
手遅れになる前に、、、
エドワーズ博美
昭和29年、山口県生まれ。メリーランド大学大学院臨床心理科修了。アメリカ心理学会会員。2003年以降「世界紳士録」名前掲載。現在メリーランド大学講師