【高裁判決書】控訴人 山口敬之

令和5年ネ5666 高裁第8民事部  平成30年ワ第39896 17部

原告・控訴人 山口敬之 

代理人 大西達夫、渡邊泰範、内田 智

 

被告・被控訴人 小林善範、小学館 

代理人 竹下正巳、山本博毅、多賀亮介、瀬田英一、高橋賢生

令和5年10月19日地裁判決 令和6年5月23日高裁判決

地裁主文

1 被告らは、原告に対し、連帯して132万円及びこれに対する平成29年7月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。

3 訴訟費用は、これを10分し、その1を被告らの負担とし、その余を原告の負担とする。

4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することかできる。

高裁主文

1 被控訴人らの控訴に基づき、原判決を次のとおり変更する。

(1) 被控訴人らは、控訴人に対し、連帯して100万円及びこれに対する平成29年7月4日から支払済みまで年5部の割合による金員を支払え。

(2) 控訴人のその余の請求をいずれも棄却する。

2 控訴人の本件控訴を棄却する。

3 訴訟費用は、第1、2審を通じ、これを11分し、その10を控訴人の負担とし、その余を被控訴人らの負担とする。

4 この判決は、第1項(1)に限り、仮に執行することかできる。

事実及び理由

第1 控訴の趣旨

1 控訴人 

 (1) 原判決を次の通り変更する。

 (2) 被控訴人らは、控訴人に対し、連帯して1100万円及びこれに対する平成29年7月4日から支払済みまで年5部の割合による金員を支払え。

(3) 謝罪文掲載

(4) データの削除

2 被控訴人ら

 (1) 原判決中被控訴人ら敗訴部分を取り消す。

 (2) 上記部分につき、控訴人の請求を棄却する。

第2 事実の概要

 略

 平成29年7月号「ゴーマニズム宣言 禍々しき安倍政権」

 1コマ 70頁

「そしてこの2人は、安倍政権の提灯ジャーナリスト、山口敬之のレイプ事件にも関りがある。」

 2コマ 71頁

「山口敬之は、ジャーナリスト志望の女性の酒に、睡眠薬を混ぜ、意識をもうろうとせ、ホテルに連れ込んでレイプ行為に及んだ。

 3コマ 71頁

「この事件には、逮捕状まで出ていたのだが、山口が北村滋に相談し、中村格が捜査に介入して逮捕状を取下げさせ、事件を握りつぶしてしまった。

 中村は、これが自分の指示だとあっさり認めている。それはもっと上の者をかばっているのだろう」

4コマ 71頁

 「安倍政権は警察権力を使ってレイプ魔を救う。なんというおぞましい禍々しい政権か!」

5コマ 71頁

  「逆に政権に都合のいい人物を守るためなら凶悪犯罪でも平気でもみ消す!

  公安警察が「公」を安全に」にするための警察なら必要だが、「政権」の犬として一般市民に牙をむくのなら、国民の敵とみなされるだろう。」

6コマ 72頁

「もし「共謀罪」が成立すれば、共謀罪摘発を担当するのは警察庁組織犯罪対策部長、つまり権力のためにレイプ事件をもみ消した中村格なのだ!  

 間違いなく共謀罪は権力に都合の悪い人間を潰すために使われる!」

第3 当裁判所の判断

1 当裁判所は、原審と異なり、控訴人の請求は不法行為に基づく損害賠償として被控訴人らに対し連帯して100万円及びこれに対する不法行為の日である平成29年7月4日から支払い済みまで改正前民法所定年5分の割合による遅延損害金を支払うことをもとめる限度で、これを認容することが相当であると判断する。その理由は、次のとおり、補正し、後記2及び3のとおり、当審における当事者の主張に対する判断を加えるほかは、原判決「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の1~7まで(原判決16頁12行目から48頁12行目まで)記載のとおりであるから、これを引用する。

以下引用

第3 当裁判所の判断

1 争点1(本件表現は、原告の社会的評価を低下させるか)について

 略

2 争点2(本件表現は、公共の利害に係る事実を摘示し、もっぱら公益を図る目的でなされたものであり、摘示事実が真実であるか又は真実と信じるにつき相当の理由があるか。)について

(1)本件表現に関する自室の公共性及び公益目的

中略

もっぱら公益を図る目的に出たものと認めるのが相当である。

(2) 本件摘示事実1の真実性について

(1) 本件摘示事実の真実相当性の抗弁について

 ア 本件摘示事実1について

被告らは、本件摘示事実1のうち、原告が睡眠薬を入れた酒を女性に飲ませて意識を朦朧とさせたとの事実については、真実相当性の抗弁を主張していないから、これを認める余地はない。

   なお、本件摘示事実1のうち、その余の事実については、真実性の抗弁が認められるから、判断を要しない。

 イ 本件摘示事実2ついて

  ◆◆以下削除 被告らは、本件摘示事実2の重要部分について、真実相当性の抗弁を主張する。

   この点、前記前提事実のほか、証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件漫画の執筆なし本雑誌の発行当時、週刊新潮の記事を皮切りに、本件被疑事件に係る逮捕状の執行が中村の介入によって中止されたことや、原告が本件被疑事件について、北村に相談したことなどを含む複数の報道がされたこと、本件女性が、記者会見において、具体的かつ詳細に本件性行為の被害を訴えていたこと、被告らは、これらの報道の少なくとも一部や記者会見の内容に接して、本件漫画を執筆し、本件雑誌を発行したことが認められる。

しかしなから被告らは、上記以外に、本件性行為ないし本件被疑事件については何ら取材行為を行なっていないから、本件摘示事実2の重要部分を真実であると信じるにつき相当の理由があるとは認められない。

 したがって、被告らの上記主張は、採用することができない。 以上削除◆◆ ★★ 

以下挿入 被控訴人らは、本件摘示事実2の重要部分について、これが真実であるかと信ずるについて相当の理由があるとの主張をする。被控訴人らの主張は、要旨、被控訴人小林において、上記週刊新潮の記事やその後にされた各種報道のほか、本件女性の記者会見における発言等に接し、本件漫画を執筆したというものである。

確かに、上記前提事実のほか、証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件漫画の執筆又は本件雑誌の発行当時、週刊新潮の記事を皮切りに、控訴人が本件被疑寺家について北村に相談し、安倍政権の関係者であり、警察幹部である中村の介入により、本件被疑事件についての控訴人に対する逮捕状の執行が中止されたことについての報道が相次いでされたこと、本件女性が記者会見におい具体的かつ詳細に本件性行為に係る損害を訴えるとともに、控訴人に対する逮捕状執行の直前に、捜査員から、上からの指示により逮捕することができないと伝えられていたことを述べていることを認めることができる。そして、これらの事実によれば、広く社会において、警察幹部の権力の濫用により政権に近いジャーナリストの準強姦という重大な犯罪に関する被疑事件がもみ消されたのではないかという疑惑がもたれていたということができる。

しかし、広く社会においてこのような疑惑がもたれていたとしても、そのことから直ちにその疑惑の内容が真実であるとの証明がされるものではないことは当然である。週刊新潮の記事においては、上記(4)のイのとおり、控訴人が週刊新潮の記者に誤送信したとされる上記メールの画像が掲載されているが、その宛先である北村が具体的に誰であるのかということは、不明であるというほかなく、内閣情報官である北村であると判断する根拠は十分ではない。また、同様に、本件女性が伝えられたとする捜査員の発言も、逮捕状の執行の中止を命じた主体について具体性を欠くものであって、これをもってしても、少なくとも中村が捜査に介入したということまで具体的にうかがい知ることは困難である。このほか、これらの記事、報道がされるに至る具体的な取材行為の全貌もまた、必ずしも明らかではない。他方で、被控訴人らにおいて上記以外に本件性行為や本件被疑事件についての何らの取材行為をしていないことは、当事者間に争いがない。そうすると、被控訴人らは、結局のところ、上記記事やその後にされた報道の内容を裏付けの有無等の検証なくそのまま信じたにすぎないのであって、被控訴人らにおいて、本件摘示事実2の重要部分が真実であると信ずるにつき相当の理由があるとまではおよそ認め難い。

したがって、被控訴人らの上記主張は、採用することができない。

(6) 以上のとおりであるから、本件摘示事実1のうち、控訴人が睡眠薬を混ぜ入れた酒を女性に飲ませて意識をもうろうとさせたとの事実に関する部分と本件摘示事実2の摘示は、控訴人の名誉を棄損するものであって、被控訴人らは、これにより控訴人に生じた損害を賠償すべき責めを免れない。  以上挿入★★ 

3 争点3(本件表現は、違法な名誉感情侵害及び肖像権侵害に当たるか)につい

  (1) 本件表現における絵画表現(本件絵画表現)及び文字表現は、以下のとおりである。本件絵画表現を通じて描写されている男性は、その容貌等に照らし、控訴人であると認めることができる。

   ア 本件絵画表現1及び文字表現

     本件絵画表現1は、上半身にジャケットとYシャツのような衣服を着用しながら、下半身には衣服を着用していないように見える控訴人が、安倍元総理の似顔絵が描写された提灯を掲げて、自身の陰部付近を隠している状態を表したものである。また、本件絵画表現1には、「安倍政権の提灯ジャーナリスト・山口敬之のレイプ事件にも関わりがある」との文字表現が添えられている。

   イ 本件絵画表現2

     本件絵画表現2は、上半身裸の控訴人が白目で笑みを浮かべながら、女性に覆い被さって性交している状態を表したものである。

   ウ 本件絵画表現3

     本件絵画表現さんは、北村及び右手で書類を握りつぶす中村の前方で、小柄にデフォルメされた控訴人(ワイシャツ及びジャケットを着用しており、下半身には衣服を着用しているか否かは判然としない姿で描写されている。)が安倍元総理の似顔絵が描写された提灯を高く掲げながら安どする状態を表したものである。本件表現全体の文脈や本件表現3の文字表現の内容を踏まえると、本件絵画表現3は控訴人が本件被疑事件について北村にに相談し、それを契機として中村が本件被疑事件を握りつぶし、そのことを知った原告が安どする様子を描写したものであると認めることができる。

    エ 本件絵画表現4及び文字表現

      本件絵画表現4は、陰部付近が黒塗りされ、かつ、極端に小柄な姿にデフォルメされた全裸の控訴人が巨大な安倍元総理の舌の上で両手を挙げて小躍りする状態を表したものである。また、本件絵画表現4には、「安倍政権は警察権力を使ってレイプ魔を救う」「なんというおぞましい禍々しい政権か!」との文字表現が添えられている。文字表現全体の文脈や本件表現4の文字表現の内容を踏まえると、本件表現4における「レイプ魔」は、本来性行為をした控訴人を指し、本件絵画表現4は、安倍政権によって本件被疑事件に係る処分を免れた控訴人の心境をやゆしたもものであると認めることができる。

    オ 本件絵画表現5

      本件絵画表現5は、本件絵画表現4と同様に、陰部付近が黒塗りされ、かつ、極端に小柄な姿にデフォルメされた全裸の控訴人が書類を塗りつぶす巨大な拳の上で両手を挙げて小躍りする状態を表したものである。本件表現全体の文脈や本件表現5の文字表現の内容を踏まえると、本件絵画表現5は、安倍政権によって本件被疑事件に係る処分を免れた控訴人の心境をやゆしたものであると認めることができる。

    カ 本件絵画表現6は、本件絵画表現及び本件絵画表現5と同様に、陰部付近が黒塗りされ、かつ、極端に小柄な姿にデフォルメされた全裸の控訴人が真正面を向いて右手で書類を握りつぶす巨大な中村の方の上に乗り、中村の顔を向いて笑みを浮かべる状態を表したものである。本件表現全体の文脈や本件表現6の文字表現の内容を踏まえると、本件絵画表現6は、中村によって本件被疑事件に係る処分をまた抜かれた控訴人の心境をやゆしたものであると認められる。

(2) 以上の事実関係の下、控訴人は、本件絵画表現が違法に控訴人の肖像権を侵害するものであるとの主張をする。しかし、控訴人の上記主張は、採用することができない。その理由は以下のとおりである。

  ア 人は、自己の容貌、姿態を描写したイラスト画、漫画等の絵画表現についてみだりに公表されない人格的利益(肖像権)を有するが、人の容貌等を描写したイラスト画は、その描写に作者の主観や技術が反映するものであり、それが公表された場合も、作者の主観や技術を反映したものであることを前提とした受け取り方をされるものである。そのため、上記イラスト画、漫画等の絵画表現を公表する行為が社会通念上受忍の限度を超えて不法行為法上違法と評価されるか否かの判断に当たっては、上記イラスト画、漫画等の絵画票県゛はその描写に作者の主観や技術を反映するものであり、公表された場合も、これを背前提とした受け取り方をされるという特質が考慮されなければならないというべきである(最高裁平成15年(受)第281号同17年11月10日第1小法廷判決・民集59巻9号2428頁参照)。

  そして、本件表現は、上記1(1)ア(イ)及び(2)ア(ア)において、認定・説示をしたとおり、控訴人に関する事実を摘示するものであるが、それと共に、その内容に照らし、安倍政権による権力の濫用の疑惑を指摘して、これを批判し、警鐘をならすことをその趣旨、目的とする風刺画としての側面を有するものでもあることは、明らかである。このような権力の濫用に対する批判、警鐘という本件表現の趣旨、目的、それ自体、民主主義の社会において正当なものとして尊重されるべきものである上、本件の事実関係、すなわち、上記2(5)において認定をしたとおり、広く社会において、警察幹部の権力の濫用により政権に近いジャーナリストの準強姦という重大な犯罪に関する被疑事件がもみ消されたのではないかという疑惑がもたれていたことに照らすと、このような疑惑に対する批判、警鐘を取り下げ府本件表現は、具体的な主題の選択という点においても、正当というべきである。

 イ そこで、以上を踏まえ、更に本件絵画表現の具体的描写について検討をする。

   本件絵画表現においては、控訴人と認めることができる男性が全裸又は半裸の状態で、笑みを浮かべながら女性と性交し、安倍元総理の似顔絵の書かれた提灯を持ち、又は書類を握りつぶす拳の腕小躍りをするなどの状態が描写されていることは、上記(1)において認定したとおりである。そして、これらが控訴人を醜悪に描写し、やゆするものであることは、否定できない。

しかし、警察幹部の権力により政権に近いジャーナリストの準強姦という重大な犯罪に関する被疑事件がもみ消されたのではないかという疑惑とこれに対する批判、警鐘という本件表現の主題に照らすと、全裸又は半裸、笑みを浮かべながらする性交、提灯、小躍りといった控訴人に関する上記認定のような姿態は、被控訴人小林が読者に対して本件表現によって端的に伝達しようとする上記主題を象徴的に表現するものというべきである。この点において、本件絵画表現における控訴人の具体的描写は、いずれも風刺画におけるデフォルメとして重要な意味があるのであって、上記主題を表現するものとして必要な限度を超えるものではなく、上記主題を逸脱するものでもない。また、本件性行為が本件女性の同意のないままにされものであることは、上記2(3)において認定をしたとおりであり、その犯罪行為としての重大性や悪質さは、いうまでもない。そうすると、控訴人は、本来、厳しい非難を免れない立場にあるところでもあって、以上に認定、説示をした諸事情を併せ考慮すると、本件絵画表現のいずれについても、上記のとおり、本件表現について、別途名誉棄損等が成立する部分があったとしても、それ以外に、その公表が控訴人の受忍すべき限度を超える違法なものであるとまではいえないというべきである。したがって、本件絵画表現の公表が違法に控訴人の肖像権を侵害すると認めることはできない控訴人の上記主張は、採用することができない。

 (3) また、控訴人は、上記のとおり、本件絵画表現の公表が違法に控訴人の名誉感情を侵害するとの主要をする。

   しかし、肖像権につき説示をしたところは、名誉感情の侵害の有無の判断においても、同様に当てはまるというべきである。上記(2)において説示をした諸事情に照らすと、上記のとおり、本件表現について、別途名誉棄損等が成立する部分があったとしても、それ以外に、控訴人の主観的な名誉感情の侵害という面においても、本件絵画表現が社会通念上受忍すべき限度を超えるものということはできない。

   したがって、控訴人の上記主張も、採用することができない。

 (4) さらに、控訴人は、本件表現1の「安倍政権の提灯ジャーナリスト」という文字表現及び本件表現4の「レイプ魔」という文字表現の公表が違法に控訴人の名誉感情を侵害するとの主張もする。

   このうち、本件表現1の「安倍政権の提灯ジャーナリスト」という文字表現は、控訴人をめぐる一連の報道等上記認定の諸事情に照らし、正当な言論の範囲を逸脱するものであるということはできない。

   これに対し、本件表現4の「レイプ魔」という文字表現は、「魔」という文字の一般的な語義(甲186の辞書では、「電話魔」等の用例と共に、「異常なほど、ある物事に執着する人」との説明がされている。)のほか、本件絵画表現4と相まって記載されていることも併せ考慮すると、控訴人による反復継続したレイプ行為の印象を与えるものと言わざるを得ない。他方で、本件前証拠によっても、控訴人が反復継続したレイプ行為に及んだとの事実を認めることはできないのであるから、本件表現4の「レイプ魔」という文字表現の公表は、上記認定の本件表現の趣旨、目的や主題を十分に考慮しても、控訴人が受忍すべき限度を超えて、違法にその名誉感情を害するものというほかない。この点に関する控訴人の主張は、理由がある。

 (5) 以上のとおりであるから、争点3に関する控訴人の主張は、本件表現4の「レイプ魔」という文字表現の公表による名誉感情の侵害を述べる限度で理由がある。

4 争点4(本件表現は、不正競争防止法2条1項15号の信用棄損に当たるか)について

いずれも言論活動を生業とする者であるとはいえるものの、その活動範囲や内容は異なり、言論活動自体も、原告・被告のそれぞれの視点・観点から行なっていたものといえることからすると、原告の信用が毀損されることによって、被告小林が不当な利益を得るような関係にあったとは認められないる。

 したがって、被告小林にとって原告が競争関係にあるとは認められない。

 略

5 争点5(損害)について

◆◆ 以下削除 上記争点1ないし4の認定・判断のほか、本件雑誌(紙媒体)の総発行部数が9万7000部に及ぶこと、及び本件雑誌(電子版)の閲覧数が少なくとも51万8651に及ぶことその他本件に現れた一切の事情を総合すると、被告らの原告に対する不法行為によって生じた慰謝料としては、120万円を認めるのが相当である。

また、原告は、本件訴訟の提起及び追行を弁護士に委任しているところ、その弁護士費用のうち12万円については、上記不法行為と相当因果関係のある損害と認められる。 以上削除◆◆

★★ 以下挿入 以上によれば、本件摘示事実1のうち、控訴人が睡眠薬を混ぜ入れた酒を女性に飲ませて意識をもうろうとさせたとの事実に関する部分と本件摘示事実2の摘示は、違法に控訴人の名誉を棄損するものであり、本件表現4の「レイプ魔」という文字表現の公表は、違法に控訴人の名誉感情を侵害するものであるから、被控訴人らは、以上の不法行為によって控訴人に生じた損害を賠償すべき義務を負う。

そして、以上の不法行為の内容、程度等争点1から争点4までの判断中にて認定・説示をした諸事情のほか、本件雑誌(紙媒体)の発行部数が9万7000部に及ぶことや、本件雑誌(電子版)の閲覧数が少なくとも51万8651に及ぶこと(弁論の全趣旨)その他本件に現れた一切の事情を総合すると、以上の不法行為によって控訴人が受けた精神的苦痛を慰藉すべき慰謝料としては、90万円と認めることが相当である。

また、控訴人が本件訴えの提起及び訴訟の追行を訴訟代理人に委任したことは、当裁判所に顕著な事実であり、弁論の全趣旨によれば、控訴人は訴訟代理人に対して報酬の支払いを約束したものと認めることができる。そして、本件の事案の内容、認容すべき額等本件にあらわれた一切の諸事情を併せ考慮すると、そのうち10万円が以上の不法行為と相当因果関係のある損害であるというべきである。 以上挿入★★

6 争点6(謝罪広告の当否)について

原告、各種メディアなどにおいて、自ら本件表現ないし本件漫画に対する反論を行うことにより、被害を回復することは一定程度可能であると考えられる。その他本件に顕れた一切の事情を考慮すれば、原告の被害を回復する手段としては、上記5で認定した金銭賠償を持ってたり、それに加えて謝罪広告の掲載を認める必要性までは認められない。

7 争点7(本件漫画の原稿のデジタルデータ削除請求の当否) について

同データが被告らの管理下から逸出し、原告の権利又は法律上保護される利益が侵害される危険性は、未だ抽象的なものにとどまると言わざるを得ない。したがって、本件表現の原稿データを被告らにおいて削除させる必要性は認められない。

以上引用

2 当審におる控訴人の主張に対する判断

3 当審におる控訴人の主張に対する判断

  略

第4 結論

 以上に説示したところに照らせば、控訴人の請求は、不法行為に基づく損害賠償請求とし、被控訴人らに対して、連帯して100万円及びこれに対する不法行為の日である平成29年7月4日から支払い済みまで改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払う限度で理由があるから、これと異なる原判決は、一部失当であり、その限度で変更を免れない。

 よって、被控訴人らの控訴に基づき、原判決を主文第1項記載のとおりに変更することとし、控訴人の本件控訴は理由がないから、これを棄却することして、主文のとおり判決する。

  東京高等裁判所第8民事部

    裁判長裁判官 三角 比呂

       知野  明

       大野 晃宏