自由と正義 弁護士懲戒処分の要旨 2025年上半期ベスト10

2025年上半期1月号~6月号 弁護士懲戒処分の要旨 ベスト10とおまけ

① 連絡ミスがミスを呼び 1月号
大森健一弁護士 41721(東京)戒告

処分の理由の要旨 

被懲戒者は弁護士法人Aの使用人として、弁護士法人Aの代表社員であるB弁護士とともに、弁護士法人AがCの相続人から依頼を受けたCが所有していた建物の売却手続及び上記建物内に残置されている動産類一式の廃棄処分を担当していたところ、2020年7月21日に上記建物内部を検分していたところ2020年7月21日に上記建物を検分した後、B弁護士に対し、同じ住居表示の場所に所在する懲戒請求者Dが所有する建物とCが所有していた建物とを取り違えて伝えた結果、B弁護士は懲戒請求者Dが所有する建物が対象物件であることを示した資料を作成し上記資料とCが所有していた建物内部の写真等を動産類一式の処分を依頼したE株式会社に提供した。

また、被懲戒者は同年9月4日、E社が上記資料等から懲戒請求者Dが所有する建物をCが所有していた建物と考えて懲戒請求者Dが所有する建物と考えて懲戒請求者Dが所有する建物の玄関先を撮影した写真をE社から受信したB弁護士が、これを弁護士法人A内部のチャットツールに共有したものの、上記写真を確認しなかった。

さらに、被懲戒者は同月12日、廃棄処分作業に着手しようとしたE社が渡された鍵では開錠できなかったこと等を伝えるべく事務所に電話をしたが、業務時間外にE社が作業を行う場合における緊急連絡体制について事前に取り決めをしておらず、業務時間外であったため誰も電話に出なかった。

加えて被懲戒者は、同月14日、E社から開錠することができず渡された写真とは異なっていたことを電話で言いつけられた弁護士法人Aの事務員が同法人内部のチャットツールより上記言付けを伝えたところ、上記言付けは確認しておらず、B弁護士に対して上記言付けを確認したか否かすら問うこともしなかった。

その後、被懲戒者は同日、E社から直接電話で伝えれたにもかかわらず、この時点でも懲戒請求者Dが所有する建物とCが所有していた建物とを取り違えていたとは考えず、現地に自身が行くかあるいはB弁護士を行かせることもせず、懲戒請求者Dらの動産を廃棄処分せしめた。

② 生活保護の不正受給者とポスト 1月号

 浦川祐輔 登録番号 594432 第二東京 懲戒の種別 戒告

処分の理由の要旨 

被懲戒者は、ツイッター上で、弁護士資格を有する者による行為であることを広く明示した上で、2020年7月26日、新型コロナ感染症の後遺症を訴えるアカウント保有者Aとのやり取りにおいて、後遺症が長引いている人のことを、十分な根拠もなく、また適切に検討した形跡を示さずに、うそつきであると断定するツイートを投稿し、同年9月頃までにアカウント保有者Bに対してツイートばかりで勉強せず、司法試験に落ちている等といたずらに揶揄し愚弄するツイートの投稿を繰り返し、また、アカウント保有者Cのツイートに対し、多数の死傷者を出し、いまだ直接の被害者が現存するテロ事件を引き起こした団体及び人物を引き合いに出すとともに、性行為を連想させる表現等を用いて後遺症をいたずらに揶揄し愚弄するツイートを投稿し、さらに、新型コロナ後遺症患者への人格攻撃とも受け止められ得る表現を用いて、新型コロナ感染症及びその後遺症をいたずらに茶化し揶揄するツイートを投稿し、同年9月3日懲戒請求者が保有するアカウントによるツイートに対し「生活保護の不正受給者」との表現で上記アカウントを使用する者が不正な行為をしているとの印象を与えるツイートを投稿した、

③ 判決文偽造 通帳偽造  退会命令 2月号
竹内祐記弁護士55781(福岡) 退会命令 

処分の理由の要旨 

(1)被懲戒者は2022年3月頃、Aから地上権設定登記抹消手続請求訴訟を受任したが、Aの子である懲戒請求者Bに対して、訴訟提起していないにもかかわらず、訴訟が進行している旨及び同年12月16日に判決が出たとの虚偽の報告を行い、それを隠蔽するために、自ら作成した判決文に別の事件で取得した判決書の実在する裁判官署名と印鑑を張り付ける方法で判決書を偽造した。

(2)被懲戒者は、2020年11月4日、家庭裁判所より被後見人Cの成年後見人に選任されたところ、その職務のため預り保管中であった成年後見人名義の預金口座から2022年7月1日から2023年4月28日までの間に合計122万4000円を引き出し、このうち55万5000円をCの夫に生活費として支払ったが、その差額の56万9000円を自己のために費消し、Cの夫から上記預金口座の通帳の写しを見せてほしいと言われたことから、預金の着服を隠蔽するために、2023年4月に上記通帳の取引履歴の一部を偽造した。

(3)被懲戒者は、2022年4月21日、Dより自己破産申立事件を受任し、同月22日、Dより着手金50万円及び管財予納金等としての預り金50万円の合計100万円が被懲戒者名義の預金口座に振り込まれたが、被懲戒者の預り金50万円のうち49万9155円を預り金口座に振り替えず、上記預り金50万円のうち49万9155円を弁護士会の会費等の目的外に使用した。

(4)被懲戒者は2022年8月8日、家庭裁判所より被後見人Eの成年後見人に選任されたところ、同年9月16日Eの子から現金8万8170円を預かったが、自己のため費消し、E名義の預金口座から同年10月17日から2023年4月14日までの間に合計138万9000円を引き出し、Eの入居する施設利用料等に合計86万5783円を支出したが、その差額の52万3217円を自己のために費消した。

また、被懲戒者はEの成年後見人に選任された当初よりEの亡くなった妻に負債がありEのために相続放棄をする必要があることを認識していたにもかかわらず、相続放棄の手続を放置し、熟慮期間を経過させた。

被懲戒者の上記行為はいずれも、弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。

④ 国際ロマンス詐欺被害救済詐欺 2月号
川口正輝弁護士54970(大阪) 業務停止2年

処分の理由の要旨

(1)被懲戒者は、弁護士又は弁護士法人ではないにもかかわらず、広告業務委託料の名目で報酬を得る目的で、国際ロマンス詐欺等に関する法律事務を周旋することを業としていたと疑うに足りる相当の理由のある者である株式会社Aを利用した。

(2)被懲戒者は、所属する法律事務所のウエブサイト上に、国際ロマンス詐欺等に関し「返金の可能性は必ずあります」「返金実績多数」「相談者様の詐欺被害ケース」等の表示を掲載した。

(3)被懲戒者はA社から紹介された業務委託契約を締結した事務員に対し、上記(2)のウエブサイト閲覧者からの事情聴取、報酬額の決定、委任契約締結手続、銀行充口座凍結要請文書や弁護士会照会書面の作成、返還請求先との和解交渉等を被懲戒者の名義を利用して行うことを許諾した。

(4)被懲戒者は、2023年6月頃、懲戒請求者から国際ロマンス詐欺に関する法律事件を受任し着手金22万円を受領したが、懲戒請求者に対する事件の見通し、処理の方法並びに弁護士報酬及び費用の説明を上記(3)の事務員に委ね、自らは依頼者である懲戒請求者から得た情報に基づき、事件の見通しや処理の方法について適切な説明をしなかった。

(5)被懲戒者の上記(1)の行為は弁護士職務基本規程第11条に上記(2)の行為は同規程第9条第1項及び弁護士等の業務広告に関する規程第3条第1号から第3号に、上記(4)の行為は同規程第29条第1項に違反し、いずれも弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。

⑤ PCの不調で報告できないと言い訳 2月号
藤井博文(東京)登録番号 39734 東京 戒告

処分の理由の要旨 

被懲戒者は2020年10月20日、懲戒請求者から損害賠償請求についての調停申立事件を受任し、着手金11万円を受領したが、2021年9月10日、パソコンの不調で書面作成ができないこと及び詳細は後日連絡する旨を電子メールで伝達したのみで、それ以外に、上記調停申立の進捗状況について具体的な説明を行わず、受任事務についての報告を怠り、事件を放置した。

⑥ 事務員さんに対し「おまえは給料泥棒!」 3月号 年間優秀候補
加藤真人弁護士 41793(兵庫)戒告

処分の理由の要旨

(1)被懲戒者は2022年5月16日、被懲戒者が経営する法律事務所において、懲戒請求者を事務職員とする雇用契約を締結したところ、在職中、休憩時間である昼休み中の外出を認めず、電話対応を要求した。

また、被懲戒者はこれについて、労働時間に当たるとした懲戒請求者の主張を真摯に受け止めず、調査すれば容易に判明する法令の調査、確認を怠り、同年7月21日に労働基準監督署の是正勧告を受けて同月29日に支払うまでの給与の一部未払を生じさせた。

さらに、被懲戒者は、休憩時間に関する懲戒請求者の議論の際に、懲戒請求者の人格を否定する不適切な発言を行った。

(2)被懲戒者は、2022年6月30日、懲戒請求者との雇用契約を終了するに当たり、就業期間を定めておらず懲戒解雇することができないにもかかわらず、懲戒解雇通知書との表題の書面を懲戒請求者に交付した。

また、被懲戒者は、法令の解釈を誤り、解雇予告手当の支払が不要であると主張し、上記(1)の是正勧告を受けて同年7月29日に支払うまで解雇予告手当を支払わなかった。

さらに、被懲戒者は、同年6月30日、懲戒請求者の人格を否定する不適切な発言をし、事務所に来た被懲戒者の妻が懲戒請求者に対して不適切な発言をするのを制止しなかった。

⑦ 何かセクハラしたらしいが! 3月号

海堀崇弁護士 43172 和歌山 戒告

処分の理由の要旨 

被懲戒者は2022年3月3日、被懲戒者から指導を受ける立場にあったAに対し、飲酒の席で、同日午後11時頃から翌日午前0時頃までの間に、同人の意思に反し、セクシャルハラスメントに該当する行為を繰り返した。

⑧ 木刀もってもみ合い 5月号 年間優秀候補
植田忠司弁護士14923(広島) 戒告 

処分の理由の要旨 

被懲戒者は2023年8月10日、懲戒請求者からの電話で言われたことをきっかけに憤慨し、懲戒請求者を制圧するために、全長約103センチメートル、直径6センチメートル、重量1,49キログラムの木刀を携行して懲戒請求者が居住していた建物に向かい、懲戒請求者を呼び出し、これに応じて居室を出てきた懲戒請求者と口論及びもみ合いになった際にも上記木刀を所持していた。

(植田忠司弁護士は埼玉に所属していた時に業務停止処分を受けています!)

懲 戒 処 分 の 公 告 2012年4月号 埼玉

処分を受けた弁護士氏名 植田忠司 登録番号 14923 事務所 上尾市谷津2   太陽綜合法律事務所  

懲戒の種別  業務停止1月

処分の理由の要旨

被懲戒者は2008年8月26日、同年7月6日に採用した勤務弁護士である懲戒請求者との間で、雇用条件に関する認識の相違に端を発し、感情的な激しい言い争いとなり事務室廊下において、懲戒請求者に対し、両上腕等をげん骨で多数回殴り、足を数回蹴る暴行を加え、全治3週間を要する左肩、両上腕、左下腿打撲の傷害を負わせた

 ⑨ 親族に後見人弁護士が就任 5月号 年間優秀候補

 石井精二弁護士 登録番号 14935 長崎 戒告→業務停止1月

処分の理由の要旨(戒告)

(1)被懲戒者は、被懲戒者の親族Aの手続代理人として、2020年12月24日、Aの成年後見開始審判の申立てを行ったものの、申立書の財産目録にA名義の普通預金口座及び定期預金口座を記載せず、また、2021年4月8日、Aの成年後見人である懲戒請求者B弁護士から上記各預金口座の通帳及び銀行印の引渡しを求められたにもかかわらず、上記普通預金口座から50万円を払い戻し、同月12日、上記通帳の引渡しを拒んだ。

(2)被懲戒者は、2021年4月9日、成年後見人が選任されているにもAの住所を被懲戒者の自宅住所に変更する届出をした。

(3)被懲戒者は、2021年4月9日、成年後見開始審判の申立ての結果、Aが事理を弁識する能力を欠く常況にあると裁判所から判断されて、成年後見人が選任されていたにもかかわらず、2021年4月14日、Aと財産調査等を内容としる委任契約を締結し、同日、懲戒請求者B弁護士から上記委任契約を取り消された後も、Aの代理人として懲戒請求者B弁護士に対し数々の要求行為等を繰り返した。

(4)被懲戒者は、Aが入所するサービス付き高齢者向け住宅を運営する一般社団法人Cに対し、懲戒請求者B弁護士とAとの面会を拒否するよう指示、助言し、また懲戒請求者B弁護士が2021年4月28日にAと法人との契約一切を解除したにもかかわらず、これが無効であるとした上で、C法人に対し、同月30日のAの退所を拒否するよう指示、助言した。

(5)被懲戒者はAの代理人であるとして、懲戒請求者B弁護士にAの財産状況の報告を求め、それを拒否した懲戒請求者B弁護士に対し2021年8月6日付けで送付した書面において、背任罪として告発する旨を記載した。

懲戒の種別 業務停止1月に変更

処分の理由の要旨

(1)本件は、被懲戒者が、実母の成年後見人に選任された弁護士である懲戒請求者と後見事務の処理方針をめぐって対立し、懲戒請求者のなす財産管理や入所施設の決定等の療養看護の方針決定等の後見事務を次々に妨害したという事案である。

(2)原弁護士会は戒告よりも重い懲戒処分を科すことも十分に考えられると評価したが、他方、懲戒請求者が、被後見人の居住場所や介護方針の決定に当たって親族らや介護関係者の意見をよく聞いて決定すべきだったこと等を挙げて、懲戒請求者の対応に問題があり、それが被懲戒者の行き過ぎた行動を誘発した側面があるとして、被懲戒者の処分を戒告にとどめることを相当と判断した。

(3)しかし、かかる原弁護士会の判断には誤りがあり、その処分は不当に軽く変更は免れない。

(4)本件で、被懲戒者は、被後見人宛ての郵便物の転送先や住民票上の住所を被懲戒者の住所に変更し、被後見人をサービス付き高齢者住宅に入居させ、更には被後見人には判断能力があり、広範な委任を受けたと主張して、実母の代理人として懲戒請求者に対し、種々の要求を繰り返した。この間、懲戒請求者は、被懲戒者や他の親族から後見事務への協力を得られないだけでなく、次々と起こる事態に対応を余儀なくされており、懲戒請求者が被懲戒者や介護関係者から更に意見を聴取し、協議をするよう求められるのは、現実には極めて困難だった。

そして、その困難はむしろ被懲戒者の行為に起因しており、懲戒請求者の対応が被懲戒者の非違行為を誘発したと評価することはできない。

(5)被懲戒者には一定の反省もみられ、同様の非行が繰り返されるおそれはないと思われること等の事情を考慮しても、被懲戒者の各行為は、成年後見制度の基本的な趣旨を積極的に妨害するもので、その非行の程度は軽いとは言えない。したがって、本件異議の申出には理由があるものと認め、原弁護士会のなした戒告処分を変更し、被懲戒者の業務を1月停止することが相当である。4処分が効力を生じた日 2025年3月18日 2025年5月1日 日本弁護士連合会

⑩ 勤務弁護士の誤字に罰金 650万円 6月号 年間優秀候補
崎岡良一弁護士 22069 大阪 戒告
(報道)法律事務所代表の弁護士、部下から罰金18項目…誤字脱字1文字500円など半年で650万円
 自身が代表の法律事務所で、誤字や依頼者からのクレームに対する罰金制度を設け、部下の弁護士に計約650万円を支払わせたとして、大阪弁護士会が男性弁護士を戒告の懲戒処分にしたことが同会への取材でわかった。処分は1月21日付。 

処分の理由の要旨 

被懲戒者は、2015年11月に被懲戒者の法律事務所に入所した弁護士である懲戒請求者との間で提出書面の誤字又は脱字1文字当たり5000円やクライアントとのメールの送信先に懲戒請求者をCC又はBCCで加えることを懈怠場合に5000円といったように上記事象等を罰金の対象とした罰金制度を2021年6月24日から導入し、同日から同年12月27日までの約半年間にわたり合計656万6000円の罰金を懲戒請求者から収受した。