令和7年ワ7669号 42部 橋爪信裁判長
原告 百田尚樹 代理人 福永活也弁護士(東京)
被告 飯山陽こと●●●● 安田修、野中信敬(東京)

3月25日(24日付) 提訴 4月21日 答弁書 3行
5月26日第1回 7月16日 進行協議 8月26日 進行協議10月20日10時20分弁論103
7年12月22日判決

令和7年3月2日、Youtub
「【百田「85歳のおじいちゃんにできへん?」?!日本保守党またデマ!】藤岡の日本保守党批判は9割が飯山の手直し?長谷川と花田と飯山も打ち合わせ?!」
ライブ配信の19:04以降において、

「この日本保守党の百田尚樹っていう人」「これで、ベストセラーだっていうんですからね」「なんかね、私聞いたんですよ。百田尚樹にはゴーストライターがいるって。まあ、聞いた話なんでね。ま、証拠がないんですけど。でねこれ聞いた時はね、いやまさかと思ったんですけれども、もしこれが本当だとしたら、ああ、やっぱりそうやったかと、腑に落ちるんですよね。」と発言した(以下「本件発言」という。)。

主文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
1 被告は、原告に対し、220万円及びこれに対する令和7年3月2日から支払い済みまで、民法3%の割合による金員を支払え。
2 被告は、原告に対し、本判決の確定した日から30日以内に、被告が運営する別紙1記載のYoutubeチャンネル上に、別紙の第2記載の謝罪広告を、別紙の第3記載の要領で一年間掲載せよ。

第2 事案の概要
 略

第3 当裁判所の判断
1 認定事実  
  前記前提事実のほか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実がみとめられる。
 (1) 被告は、令和6年4月の選挙で落選したが、その後、原告と被告との間で対立が生じ、本件配信時には相互に避難し合う状況となっていた。
 (2) 原告は、令和7年3月1日、自らが管理する本件サイト上のアカウントを用いてライブ動画の配信(以下「本件ライブ配信」という。)を行った。この先行配信において原告は、陽(あかり)という名前の被告のことを「暗がり」と呼ぶと共に、藤岡信勝(以下「藤岡」という。)名義の日本保守党を非難する内容の雑誌記事(以下「藤岡名義の記事」という。)について、85歳の藤岡が執筆できるものではなく、被告が内容の9割をを手直ししたものであるという趣旨の発言をした。
 (3) 被告は、本件配信において、日本保守党やこれに属する島田洋一議員に対する批判を行った後、先行配信の内容を詳細に紹介した上で、「百田は昨日ぐらいからですね私のことをですね、飯山暗がりって呼ぶことにしたんだって」、「そういえばね。私小、学校の時にね、その男子が中でね、そういう風に呼んでる男子いました」、「だから昭和の小学生ぐらいの発想ってことですよね」などと発言し、その直後に、本件発言をした。
 (4) 被告は、本件発言の後、すぐに話題を転じて、嶋田洋一議員について、被告に対して散々政策論争を仕掛けておきながら被告との対談のオファーは断って逃走しているとか、原告と一緒になって、被告が自由民主党から選挙に出たくて公募に申し込んだが日本保守党のせいで落とされたと言って日本保守党への恨みを募らせているとの「デマ」を流しているなどと発言した上で、再び、先行配信の内容を取り上げ、藤岡名義の記事の9割を被告が手直ししたという原告の発言内容は虚偽であり、そのような事実がない旨を、約30分にわたり説明した。
 (5) 一時間を超える本件配信の中で、本件発言を除き、被告が「ゴーストライター」に言及した発言はない。

2 本件発言によって原告の名誉権が侵害されたか
 (1) 本件発言は事実を摘示するものか
問題とされている表現が事実の摘示を含むかについては、一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方を基準として、それが証拠をもってその存否を決することが可能な他人に関る特定の事項を明示的又は黙示的に主張するものと理解されるかによって決すべきである(最高裁平成6年(オ)第978号同9年9月9日第3小法廷判決・民集51巻8号3804頁)。
被告は、本件発言の中で、「百田尚樹にはゴーストライターがいる」との事実について、具体的な内容や根拠となり得る事実を何ら述べていないばかりか、自ら「聞いた話」、「証拠がない」との発言をしているのであるから、本件発言の内容それ自体として、原告がゴーストライターを利用しているとの具体的な事実を摘示しているということは困難である。
 また、本件配信は、原告と被告との対立が先鋭化する状況下において、先行配信その他の機会に原告が被告を揶揄したり、非難したりする発言等を行ったことを受けてされたものであり、本件配信全体の中で、被告が「ゴーストライター」に言及した発言はごく一部にとどまるものである上、「暗がり」等の原告の発言を小学生レベルの発想であると揶揄した直後になされたものであって、これらの事情からすれば、本件発言は非難の応酬としてされたものとみとめられる。
 以上を前提に、一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方を基準とすると、本件発言は、「暗がり」等の表現を用いて被告への揶揄や非難を続ける下刻の態度について、著名なベストセラー作家であるとのイメージとかけ離れた稚拙なものであるとの被告の感想わ非難を込めて表現したものと理解されるといえる。よって、本件発言は、証拠等をもってその存否を決することが可能な事項の主張を含まないから、本件発言をもって拳固がゴーストライターを利用している事実が摘示されたとはいえない。
   これに対し、原告は、本件発言が本件配信のタイトル名(「日本保守党代表またデマ!」という文言を含む)からして原告が虚偽の言動に及んでいることを批判する目的でされたものであること、被告が原告の事情を知り得る近しい人物であったことなどから、一般の視聴者は本件発言の内容を事実として受け止める旨主張する。
 しかし、本件発言の内容、文脈、経緯等に鑑みれば、一般の視聴者が具体的な事実の摘示があったと受け止めることがないことは前記説示のとおりであるし、本件配信のタイトル「デマ」という表現も、その一般的な意味合いからすれば、ゴーストライターを利用しているとの事実を指しているものとは解し得ず、当該タイトル名全体や本件配信の構成内容も踏まえると、主として、藤岡名義の記事の9割を被告が手直しした旨の先行配信における原告の発言や、自由民主党の公募に関連する原告らの発言を指していることは明らかである。
  よって、原告の主張は採用できない。
 (2) 本件発言により原告の社会的評価が低下したか
   前記(1)で説示したところによれば、本件発言は、原告と被告が激しい対立関係にあることを前提に、原告に対する非難ないし揶揄を込めた感想が述べられたものと理解すルのが通常であって、本件配信を視聴した一般の視聴者が、「ゴーストライターがいる」との発言で部分だけを切り取って、その内容を真に受けることは考え難いから、本件発言によって原告の社会的評価が低下するということもできない。
   これに対し、原告は、本件発言により、本件サイト上の他の動画で原告がゴーストライターを利用しているとの疑惑が取り上げられ、SNS上の投稿を見ても、原告がゴーストライターを利用していると信じた者がいるなどとして、原告の社会的評価が低下した旨主張する。
 しかし、対立関係にある原告と被告が相互に相手を非難する動画配信を行い、多数の者がこれら動画配信を視聴する中で、被告に賛同・支持する一部の者が、本件発言の「ゴーストライター」といいう部分を殊更に取り上げた表現行為を行っているとしても、必ずしも、それらの者が、本件発言によって原告がゴーストライターを利用していることを意味するとは限らないし、いずれにしても、一般の視聴者を基準とすれば、そのように信じるのが一般であるとは認め難いことは、前記説示した通りである。
   よって、原告の主張は認められない。
 (3) 以上によれば、本件発言によって原告の名誉権が侵害されたとはいえない。

3 結論
  よって、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求はいずれも理由がない。
  東京地方裁判所民事第42部
    裁判長裁判官 橋爪信
       裁判官 飯塚謙  裁判官 森下宏輝

★原告百田尚樹・被告飯山陽 損害賠償請求事件(東京地裁)令和7年12月3日反訴答弁書