ざくっと

懲戒請求者は引っ越し当初から隣接する土木会社の騒音に悩まされていた。4回目の苦情を申立てると、対応した地元警察から会社に天下りした元副署長があなた以外から苦情がないと騒音問題を否定、その後、会社側の交通違反を警察に通報、すると会社側の代理人弁護士(対象弁護士)から通知書が届いた。それには、警察が懲戒請求者に行動を慎むよう指導されたと記載(懲戒請求者は虚偽と主張)、警察に確認をとると懲戒請求者に指導したという事実はなかった。

>会社側の交通違反 フォークリフトで公道を走行外

懲戒請求者 A 

対象弁護士  神奈川県弁護士会 登録番号4万番代

主文 

対象弁護士につき、懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当とする。 

理由 

第1 事案の概要 

本件は、懲戒請求者が以前居住していた家屋に隣接する土木会社に騒音の被害を申し入れた際に、 上記会社の代理人となった対象弁護士から、 重大な人権侵害や、強い精神的苦痛を受けたとして懲戒を求めるものである。 

第2 前提となる事実 

懲戒請求者は、 令和4年3月以降、当時住んでいた自宅敷地に隣接する土木会社に騒音の被害を訴えていた。土木会社は訴えに対応したが、懲戒請求者は納得せず、警察署に土木会社の違反行為、騒音被害を申告した。 

さらに、土木会社が所属する業界団体に、 土木会社の違反行為や騒音被害を連絡した。 

土木会社は、対象弁護士に対応を依頼し、 対象弁護士が代理人に就任した。 

対象弁護士は令和6年2月29日付け 「ご通知」(以下「本件通知書」 という (甲1)を懲戒請求者に送付し、電話でも懲戒請求者に直接対応した。 

第3懲戒請求事由の要旨 

1 本件通知書には、懲戒請求者が警察署から注意を受けたという虚偽の事実が記載されている。 懲戒請求者は、警察から注意を受けた事実は一 切なく、対象弁護士から不名誉な扱いを受けた。 

2 本件通知書には、懲戒請求者と業界団体とのやりとりについて、 虚偽の記載をしている。 

3 対象弁護士は、電話でも、警察にも否定されている内容を事実であるかのように扱った発言をしており、 懲戒請求者について違反行為をした者として扱い、重大な人権侵害に当たると考える。 

対象弁護士は「偽計業務妨害に相当する刑事事件である」 といった断定的発言も行っており、 弁護士として不適切な対応であり、弁護士から 犯罪行為であるかのように言われることにより強い精神的苦痛を受けた。

4 通知書には「貴殿」 という言葉が合計26回使われており、 女性である懲戒請求者に対して、この表現が繰り返し使われていることに懲戒請求者は強い不快感を覚え、 屈辱的な気持ちになった。 

5 電話対応において対象弁護士は非常に高圧的で、誠実に聴く姿勢とはほど遠いもので、 これらの対応によって懲戒請求者は適応障害の症状が悪化した。 

第4対象弁護士の弁明の要旨 

1 対象弁護士は、 依頼者である土木会社から、 警察が懲戒請求者へ警告したとの報告を受けた上で、 本件通知書に記載しており、 虚偽の記載をしていない。 

2 懲戒請求者は、 土木会社の所属する業界団体宛に、複数回にわたり土木会社に関する苦情メールを送信している。この件に関する本件通知書の記載内容も事実である。 

3 対象弁護士は、 本件通知書において、依頼者や業界団体に対して根拠のない苦情の申し出や苦情メールの送信等を懲戒請求者が継続する場合には偽計業務妨害罪等で告訴・告発する可能性がある旨を指摘したが、 直ちに偽計業務妨害罪等に該当すると断定したものではない。 

4 現在では性別に関係なく「貴殿」が使用される例もあり現在では性別に関係なく 「貴殿」 が使用される例もあり、 少なくとも受け手を侮辱するような不適切な表現とはいえない。 

5 対象弁護士が懲戒請求者に対し、 高圧的であったり、礼節を欠いていたり、人格を否定したりするような発言を行ったことはない。 

第5 証拋 

1 懲戒請求者 

甲1 令和6年2月29日付け対象弁護士作成 「ご通知」 

甲2 懲戒請求者と対象弁護士との電話反訳書 

甲3 懲戒請求者から業界団体宛メール 

甲4 業界団体から懲戒請求者宛文書 

甲5 診斷書 

甲6 警察への相談記録 

甲7 音声データ(CD–R) 

2 対象弁護士 

乙1 会社現在情報 

乙2 土木会社作成資料 

第6 当委員会の認定した事実及び判断 

1  対象弁護士は、依頼者である土木会社から、 警察が懲戒請求者に注意をしたとの報告を受けたことにより、本件通知書にその旨を記載している。 

対象弁護士は、 上記報告について、 土木会社社員にも直接確認を取っており対象弁護士は、対象弁護士が殊更に虚偽の内容を通知書に記載したとはいえない 

2  対象弁護士は、業界団体と土木会社とのやりとりの経緯について、土木会社から報告を受けた上で本件通知書に記載しているもので、 対象弁護士が殊更に虚偽の内容を通知書に記載したとはいえない。 

3  対象弁護士は、本件通知書において、懲戒請求者の行為が直ちに偽計業務妨害罪等に該当すると断定しておらず、書面及び証拠についても、 今後の懲戒請求者の対応によっては、 土木会社として講じる可能性があ る措置を提示したものであることは甲1号証より明らかであるから、 問題があるとはいえない。 

4  本件通知書において対象弁護士は 「貴殿」 を使用しているが、性別に 関係なく 「貴殿」が使用される例もあり、 侮辱するような不適切な表現とはいえない。 

5  電話対応について、 対象弁護士は懲戒請求者に対して高圧的であったり、礼節を欠いていたと認めるに足る証拠はない。 

第7 結論 

以上のとおり懲戒請求事由はいずれも理由がないことから、懲戒委員会に事案の審査を求めないのが相当である。 

よって、 主文のとおり議決する。 

2026年5月11日 神奈川県弁護士会綱紀委員会第一部会 部会長 記載省略 

2026年6月5日 神奈川県弁護士会 会長 三浦 修