弁護士自治を考える会

弁護士の懲戒処分を公開しています。日弁連広報誌「自由と正義」2012年1月号に掲載された弁護士の懲戒処分の公告・東京弁護士会・鈴木正巳弁護士の懲戒処分の要旨

処分理由・預り金を返還せず

懲 戒 処 分 の 公 告

 東京弁護士会がなした懲戒の処分について、同会から以下のとおり通知を受けたので、懲戒処分の公告及び公表等に関する規程第3条第1号の規定により公告する。

1 処分を受けた弁護士氏名 鈴木正巳

登録番号 18121

事務所 東京都千代田区神田小川町1丁目

2 懲戒の種別  業務停止3月

3 処分の理由の要旨

被懲戒者は懲戒請求者から懲戒請求者の出資法違反事件の弁護及び同容疑で逮捕された10数名の弁護人の手配を依頼され示談用資金、弁護人報酬、実費等の弁護費用として2003年1月15日から同年6月25日までの間に懲戒請求者及び関係者から合計7012万円を預かった。被懲戒者は依頼された事件が終了した後、遅くとも2005年7月頃には預り金の収支明細と金銭を報告し、預り金を返還しなければならなかったにもかかわらず懲戒請求者からの預り金残金763万4242円について2009年1月まで返還せず関係者からからの預り金719万5138円については返還しなかった。また被懲戒者は2009年9月30日の紛議調停期日において収支明細書を提出するまで預り金の収支の全体像がわかる報告をしなかった

被懲戒者の上記行為は弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。

4 処分の効力を生じた年月日 2011年10月3日 2012年1月1日   日本弁護士連合会

          

懲戒処分の公表【東京弁護士会会報リブラ】
 本会は下記会員に対して弁護士法第57条定める懲戒処分をしたので、お知らせします
                       記
被懲戒者         鈴木 正巳 (登録番号18121)
登録上の事務所      東京都千代田区神田小川町1丁目
懲戒の種類        業務停止3月
効力の生じた日      2011年10月3日 
        懲戒理由の要旨
1) 被懲戒者は、2002年春頃、高利金融グループの統率責任者(懲戒請求者)と個人的な顧問契約を締結した。懲戒請求者は2003年2月に出資法違反で逮捕され  被懲戒者に刑事弁護を依頼するとともに、同容疑で逮捕された十数名の従業員の弁護人の手配も依頼した
2) 被懲戒者は懲戒請求者及びその関係者であるAから懲戒請求者及び従業員全員の刑事事件の弁護費用(示談用資金、弁護人報酬、実費等)の資金として、合計7021万円を預かった
3) 従業員の裁判は2003年8月頃までにすべて終了し、懲戒請求者の裁判も2004年6月に懲役2年の実刑判決の言い渡しがあり確定した。
懲戒請求人は2005年7月に仮釈放になった後、被懲戒者に対し、刑事事件で預けた資金の収支明細の説明を求めた。
被懲戒者は預り金の収支の全体像の説明を明確にしないまま2009年1月に借入金の返還名下に950万円を懲戒請求者に支払った。しかし懲戒請求者は、被懲戒者から明確な収支報告の説明がないとして2009年3月に紛議調停を申し立てた。
2009年9月の同調停で刑事事件の預り金につき懲戒請求人からの預り金の残金が763万円 Aからの預り金残金が約719万円、合計1482万円であることが判明した。
本来この預り金残金は被懲戒者の金銭とは明確に区別しておくべきものであり、遅くとも懲戒請求者が仮釈放され、同人から預り金の説明を求められた2005年7月の時点で返還すべきものであった
4) 懲戒請求者と被懲戒者との間において、前述の支払金950万円の趣旨の争いから、Aからの預り分の残額について対立はある(懲戒請求者は約719万円、被懲戒者は約500万円と主張する)ものの 被懲戒者は、返還すべき資金を有していないと供述し預金返金が500万円であるとしても、被懲戒者はAらに対し預り分残金を返金できない状況にある。
5) 被懲戒者は、懲戒請求人らからの刑事事件の預り金残金を単に返還しなかったというだけでなく、その行為は、業務上横領行為ということができる
6) 被懲戒者の行為は明らかに弁護士法第56条第1項の非行にあたり、同法第57条第1項所定の懲戒処分のうちから、3月の業務停止の処分とした
 2011年10月3日東京弁護士会    会長 竹之内 明