弁護士の懲戒処分を公開、研究しています。
弁護士に非行があれば懲戒請求を出すことができます。弁護士の所属する各弁護士会の綱紀委員会に書面で提出します。
綱紀委員会は申出のあった非行の事実について審議し非行と判断すれば「懲戒相当」と議決をします。懲戒請求者に「議決書」が送られてきます。簡単にいうと綱紀委員会が弁護士として非行だったか非行ではなかったかを判定します。
ここが第1関門です。出された懲戒請求の95%はここで棄却されます。
次に、この後綱紀委員会から懲戒委員会に審議が付され処分が決まります。
これが第2関門です。
懲戒委員会では『戒告』『業務停止』『退会命令』『除名処分』の中から処分を選択するのですが、もうひとつ『懲戒しない』という選択肢もあります。
弁護士として非行にあたるが懲戒処分をするまでもないという処分です。
こういう事もあります。
たとえば、弁護士が依頼者の預り金をなかなか返さないからとその弁護士に対し懲戒請求が出されて綱紀委員会で懲戒相当となった、対象弁護士が慌てて依頼者に返したら懲戒委員会では「懲戒しない」となります。弁護士界では、使い込み、流用、横領も返せば、『返すのが遅かった』で済みます。過去、多くの使い込み弁護士、流用弁護士は綱紀で懲戒相当となるまで返しません。弁護士は懲戒相当だ!となって『分かりました、ゴメンなさいすぐに返します』が。。。その人に返したら、恐らく誰かの分が遅くなっているのではないでしょうか、自転車操業の始まりです。
2014年の懲戒請求事案の報告(日弁連)
① 2014年に全国の弁護士会に出された懲戒請求の件数 2348件
② 綱紀委員会で懲戒相当となった件数 182件
③ 懲戒委員会で懲戒処分となった件数 101件
④ 綱紀で懲戒相当となったが懲戒委員会で取り消された件数 81件
(2014年は2348件の懲戒請求が出され綱紀委員会で懲戒相当という議決が182件出されたが 懲戒委員会では81件処分ナシとされ結局101件が懲戒処分となった)
綱紀委員会で懲戒相当となっても処分になる件数の割合は毎年約60%前後です。
過去6年間の懲戒請求の件数と、懲戒処分の件数。
(年) (新受懲戒請求件数) (懲戒相当) (懲戒件数)
平成21年 1402 132 76
平成22年 1849 132 80
平成23年 1885 137 80
平成24年 3898 134 79
平成25年 3347 177 98
平成26年 2348 182 101
綱紀委員会で懲戒相当と議決がなされ、やっと弁護士の懲戒を取ったと喜んでいたら懲戒委員会で処分ナシになるのが約4割程度はあると
いうことです。そして懲戒処分を取ったと思っていたら日弁連で取消しに
なるのも年間約2件ほどあります。