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記者のつぶやき    

 

「判決書(判決文)の公開」

 

当会ブログには,日々質問が寄せられています。 その中でも直近で「判決文の公開について」、数件続いて質問等ご意見も寄せられておりましたので,一般論として配信したいと思います。
 
「判決文(判決書)の公開は問題ないのか」
「なぜ、判決文(判決書)は公開して良いのか
などについて,質問内容は要約されます。

 

一言で言えば  「判決文の公開は禁止」なる法規定は無い・・ではないでしょうか。 弁護士自治組織風?!に言えば「判決書の公開は特段と禁じられていない」ですね。

 

 
訴訟(裁判)は公開されており(一部対象を除く)誰でも閲覧できるのだから、その結果(判決文)を公開しても問題ない・・言葉で見ればその通りかもしれませんが,解釈は正確では無い と思います。

 

そもそも裁判の公開は・・

 

日本国憲法  第82条 裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。
に基づいて解釈されているものと考えられます。

 

 この主旨について最高裁判所は・・

 

 「裁判を一般に公開して裁判が公正に行われることを制度として保障し、ひいては裁判に対する国民の信頼を確保しようとするところにある」
と示しています。

 

また関係学会では・・

 

「公開原則は、裁判の公正さと裁判への国民の信頼を確保するため、民事刑事を問わず、裁判手続の核心的部分の公開を要求する原則」
と示しています。

 

つまり,「裁判所が公正に裁判を行っているか」などについて、「国民からの監視を認めた」ものであり「裁判の信頼を確保する」目的にあるものではないでしょうか。

 

そして訴訟にはざっくりと「民事訴訟」「行政訴訟」と「刑事訴訟」などがあります。
 今回は、民事訴訟の判決文(判決書)公開」について、絞ってみます。 

 

民事訴訟の判決文なども,裁判所もインターネット上で公開しています。

 

 
しかし「目的」は前述どおり「国民の監視」,加えて「判断の均衡を図る」にあるといえます。公益性があるものです。

 

 その為,当事者を特定する(一部の企業名は除く)情報には,イニシャル表記となります(被 告Aや訴外Bなど)。

 

 裁判当事者の姓であっても,個人に関わること特定することに対「国民の監視」「均衡」という目的からは,当事者を特定する表記は不要です。「公開」は正当な理由が成立しない,意義が無い,・・ではないでしょうか。

 

 判決文の公開は、決して  訴訟当事者の批評に用いる目的に無い  ということです。 また民事訴訟でも「争い」「攻防」「勝・敗」などと戦いに用いるような言葉が時折使われますが、如何様にも民事訴訟では対象行為の「善・悪を判断する制度ではない」です。

 

他方、民事訴訟とはいえ、社会性公益性があれば当事者の特定情報の公開についても「正当な理由」が成立する場合もあるでしょう。但し,この場合は「商い」などビジネス(不当行為)によるもの,刑事事件なども付随しており被 害拡大のおそれがあるなど、個人の主観にとらわれない、社会性に向けた事実が必要とされると考えます。

 

 
また,裁判には原告と被告が存在します。

 

 当然ながら「原告は公開裁判」を認識してのぞんでいますが、事前通告(法的措置を講ずる旨も無い場合の被告は「公開裁判」に同意しているとは言えません。(民事裁判)

 

 
「裁判は公開」なる言葉だけ捉えれば、ある意味この仕組みを悪用して個人情報の公開が合 法的にできることになりますよね。しかし、それはできない・・いけない・・何故でしょう。

 

「被告は○○払え」なる損害賠償を認容する民事訴訟の判決が下され確定しても「執行が必須」ではありません。原告が民事訴訟で損害賠償を勝ち取ろうが、原告の意思がこの回収(執行)行為を成さない限り、行政が勝手に執行するなどは有りえません。

 

更に日本の裁判では原則三審制であり、一審(地裁や簡裁)の判決に不服等あれば二審(控 訴審)が存在します。少なからず裁判所が公開する判例は「既判力を有する確定審」「終局判決」以降です。

 

 

既判力    とは・・

 

 ウィキペディア
 
コトバンク
 
 以上のことからすれば、控訴中もしくは上告中に、原審(一審)判決文を「非難や中傷を中心にした批評の目的」に公開利用などすれば「相応の責務」が発生するものと考えます。このように判決文(判決書)を公開するにあたっては、「目的」とその「公開」に導かれる経緯事実(帰趨)など統合的に判断した上で,「公開する責務」が発生するものと考えます。

 

 
昨今もツイッタではリツィートが問題視される同様の報道があります。 これらは公開(ツィート)した処の責務にとどまらず、誘導する内容や状況によってはこの引用発信(リツィート)の責務も付随するものとされています。少なからず「民事訴訟の終局判決を満たしていない判決書」を公開し、別の事象の被害という定義に利用、そのような経緯を以て  「刑事事件的な加害者のような揶揄を用いること」 には、相応な責務が発生するのではないでしょうか。

 

リツイートでも名誉毀損

 

 
        記者(札幌  S.S    東京  T.T)