《弁護士懲戒手続の実務と研究》日弁連調査室編 ⑰

 『弁護士会』の組織を懲戒請求できるか!

東京弁護士会、第一東京弁護士会、第二東京弁護士会そして最上階に日本弁護士連合会が入る、弁護士会館ビル

弁護士懲戒手続の実務と研究》(日弁連調査室編)は全国の弁護士会の綱紀委員、懲戒委員のためにまとめられたマニュアル本です。(日弁連広報課で販売)

 

弁護士会の組織に対し懲戒請求できるか、結論は、『できない』

 

このマニュアル本に「弁護士会」組織自体に対する懲戒請求の手続きの仕方という項目もありません。そのような懲戒請求など、そもそも存在せず、懲戒請求などあり得ませんから実務の仕方、必要書類などの項目、記載はありません。

 

弁護士(弁護士法人)に対する懲戒請求の申立てができ、弁護士会から弁護士(弁護士法人)が懲戒処分を受けるのは以下のとおりです。

1 業務に関する行為での非行、(双方代理・事件放置・守秘義務違反・報酬が高い・委任契約書を締結しない)等々

2 弁護士会の会規、規約違反 (会費滞納・業務停止中の業務・非弁提携)

3 弁護士として品位を失う行為 (痴漢・盗撮・児童買春・レイプ・暴行・暴言)等々

 

 

弁護士法にも弁護士会の組織に対する懲戒請求について一切ありません。

 

弁護士法(目的及び法人格)

第三十一条 弁護士会は、弁護士及び弁護士法人の使命及び職務にかんがみ、その品位 を保持し、弁護士及び弁護士法人の事務の改善進歩を図るため、弁護士及び弁護士 法人の指導、連絡及び監督に関する事務を行うことを目的とする。

2 弁護士会は、法人とする。

 

 

弁護士会の会務をしない弁護士に懲戒処分を申し立てることができるか?

過去に会務をしなかったということで過去に処分された弁護士はいません。

 

 

《弁護士懲戒手続の実務と研究》に会務のことが書かれてあるのは業務停止になった時の会務についてのみです。

 

『懲戒処分と会務』 第2章 弁護士会懲戒制度

弁護士の業務停止の範囲には弁護士業務の他に、更に日弁連及び弁護士会の会務活動が当然含まれるか問題となる。この問題については、法57条の「業務」停止の対象は、法3条の弁護士会の職務に限られるとする考え方と、法3条の職務と同一に解すべき理由はなく弁護士の職務以外の会務も含まれるとの考え方がありうる

日弁連及び弁護士会は弁護士と使命と職務にかんがみ、その品位を保持し弁護士事務の改善進歩を図るため、弁護士の指導、連絡及び監督に関する事務を行うことを目的とする団体(法31条1項、45条2項)会員に対し指導的な立場にある日弁連及び弁護士会の会務が非行により懲戒を受けた弁護士により行われることは許容されるべきではないとして、懲戒処分の効力を広く解する見解も考えられなくない、しかしこの点については、弁護士法の文言上当然に懲戒処分の効果として会務活動が禁止されるまではいうことはできないと思われる。

しかし前説にたつ場合であっても、会務に携わる会員が懲戒処分を受けた場合、弁護士会が団体自治の観点から会務活動を行う適格性を欠くに至ったとみない、会員に対する指導監督権の行使として会務活動を禁止することは許されるであろう

つまり、業務停止処分になっても会務は禁止されてはいないが会務のために、わざわざ会務のため出て来ない方が無難であるという程度の解釈

 

弁護士のためにあるのが弁護士会、日弁連です。会員がどうすれば働きやすい環境になるか、ひいては会員が上手く報酬を得ることができるかというためにある組織です。弁護士としてメシ喰いたければ、最低限の業界の規律だけは守れというのです、もし規律違反をすれば弁護士会が懲戒権を行使するぞというのが目的の団体です。弁護士会が先ず考えることは、業界の秩序と名誉です。

そうすれば市民も弁護士に対して信頼を得るだろうという考え方です。

弁護士会、及び会長は不祥事の責任は取りません、

不祥事の責任をとるのであれば東京弁護士会の会長は年間5人程度必要です。談話という、どこに謝っているのかわからないような定型文を出すだけです。弁護士に責任があっても会には責任は無いという考え方です、何かあれば個人の問題であり、責任は無いとする弁護士会に懲戒請求を出しても無駄です。

依頼者の預り金を横領した容疑で逮捕者を出した弁護士会が反省して事務所を1日も閉めたことはありません。

 

弁護士会が出した声明文が違法の疑いがあり気にくわないから弁護士会に懲戒請求を出したい。

例えば「死刑反対声明」など会長声明が気にくわないので弁護士会を懲戒請求したい。

各弁護士会が出した声明、会規、規約について変更、中止させることができるのは日弁連しかありません

弁護士会会長を解任、解職させたい。懲戒請求で解任はできません。弁護士会長が弁護士の業務で非行行為を行った場合に懲戒処分を受けることはありえますが、それ以外で会長職を辞任させる解職させるには常議委員会での解任決議しかありません。実際にはこれもあり得ないでしょう。会長の任期は1年しかありませんので辞任決議とか総会の議決とか行っているより任期切れが先にきます。当然過去に一度もありません。

声明文も常議委員会での決議を経て発表されていますから、会員以外の一般人が口を挟むことはできますが、弁護士会を懲戒請求して声明を取消す、また組織を処分するということはできません。

 

仮に、「〇〇弁護士会」が懲戒処分により業務停止を受けたとしましょう

どのようなことになるか想像してみましょう

会が行う無料相談会の中止。破産管財人の選任中止、会所属弁護士の裁判、調停等の業務停止、当番弁護士の派遣中止、後見人の選任中止、業務停止、弁護士会事務所の使用禁止、登録変更、入会審査等中止、綱紀委員会、懲戒委員会、各業務委員会の開催中止、等々

東京には3つの弁護士会、北海道にも地域に弁護士会がありますが、他の地域ではその地域にひとつしかありません。

例えば警察官が不祥事を起こし当該警察官は懲戒処分を受ける。上司も警察署長も懲戒を受けることがあるかもしれないが、地域の警察署が閉鎖になるような処分はできないというのと同じです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

弁護士法(総会の決議の取消)

第四十条

弁護士会の総会の決議が公益を害するときその他法令又はその弁護士会若し くは日本弁護士連合会の会則に違反するときは、日本弁護士連合会は、その決議を 取り消すことができる。

 

単位弁護士会が公益を害する声明、規約を改正したときには先ず日弁連の常議委員会へ議案を上げ決議し日弁連会長が単位弁護士会へ通知するということになると思いますが過去に経験がありません。

単位弁護士会が弁護士としての品位が保持できないという状態にあったときに改善命令を出せるのは日弁連しかないということになります。

 

そういう事態に陥ったとしても弁護士会自体を懲戒請求することは制度上できないということになっています。

 

 

 

弁護士会への懲戒請求

弁護士懲戒手続の実務と研究に「弁護士会」への懲戒請求の手続の項目は一切ありません。

弁護士が懲戒処分を受けるのは

 

1 業務に関する非行、(双方代理・事件放置・守秘義務違反・報酬が高い・委任契約書を締結しない)等々

2 弁護士会の規約違反 (会費滞納・業務停止中の業務)

3 弁護士として品位を失う行為 (痴漢・盗撮・児童買春・レイプ・暴行・暴言)等々

懲戒請求は個人(又は弁護士法人)に対して処分を求めるのが趣旨です。

弁護士会自体に

 

(目的及び法人格)

第三十一条 弁護士会は、弁護士及び弁護士法人の使命及び職務にかんがみ、その品位 を保持し、弁護士及び弁護士法人の事務の改善進歩を図るため、弁護士及び弁護士 法人の指導、連絡及び監督に関する事務を行うことを目的とする。

2 弁護士会は、法人とする。

第六章 日本弁護士連合会 (設立、目的及び法人格)

第四十五条 全国の弁護士会は、日本弁護士連合会を設立しなければならない。

2 日本弁護士連合会は、弁護士及び弁護士法人の使命及び職務にかんがみ、その品 位を保持し、弁護士及び弁護士法人の事務の改善進歩を図るため、弁護士、弁護士 法人及び弁護士会の指導、連絡及び監督に関する事務を行うことを目的とする。

3 日本弁護士連合会は、法人とする。

(総会の決議の取消) 第四十条

総会の決議の取消) 第四十条 弁護士会の総会の決議が公益を害するときその他法令又はその弁護士会若し くは日本弁護士連合会の会則に違反するときは、日本弁護士連合会は、その決議を 取り消すことができる。