「棄却された懲戒の議決書」
棄却となった懲戒の議決書を公開しています。
離婚事件・子どもの親権問題について妻側の代理人の行為に数多くの懲戒請求が申立てられていますが、「子どもを連れ去った」、「子どもと面会させない」という処分理由はありません。弁護士は依頼者の要望とおりに弁護活動・事件処理をしたと弁明すれば弁護士会は処分しません、
今回の懲戒請求については弁護士会が受理した後、懲戒請求者から相談がございました。処分を求める理由よりも対象弁護士の行動でした。対象弁護士は懲戒申立時は自身の名前を冠にした法律事務所を九段に設けていました。しかしその後、九段の事務所を閉め千代田区二番町のワンルームマンション(家賃8万円)に転居しました。日弁連弁護士検索にも法律事務所の記載はありません。いったいどうしたことでしょうか?そして、約1年後の2022年7月14日、第一東京弁護士会綱紀委員会が棄却の議決を出したにもかかわらず、対象弁護士は登録を抹消しました。棄却であれば弁護士を続けることも可能であったのですが処分が出てすぐに登録を取り消したのです。
懲戒請求の審査中であっても登録取消をして弁護士を辞めることもできます。まさか処分しない棄却の議決を出すから弁護士を辞める取引を第一東京綱紀委員会との交わした??とも考えにくいですが、まだ若い弁護士が登録を取消して弁護士を辞めたのは事実です。
いったい何があったのでしょうか?
第一東京弁護士会の「決定書」には日弁連に異議申立ができるとの記載がありますが弁護士を辞めた人間には異議申立はできません。
野尻裕一 登録番号 40732 62期 所属会 第一東京弁護士会
事務所名 野尻法律事務所住所 東京都 千代田区九段南3-8-10 いちご九段南ビル3階
↓2021年夏ごろから
議 決 書
懲戒請求者 夫A 子の父親
対象弁護士 弁護士(登録番号40732)
記対象弁護士にかかる頭書綱紀事件について、当委員会は調査審議のうえ、次のとおり議決する。
主 文
対象弁護士につき、懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当とする。
理 由
第1 事案の概要
1 対象弁護士は、懲戒請求者●●(以下「懲戒請求者夫A」という。)と●●(以下「妻B」という。)との間の夫婦関係に関する問題につき、妻Bの代理人であった弁護士である。 懲戒請求者C(以下「懲戒請求者子C」という。)は懲戒請求者夫Aの父である。
2 懲戒請求者らは、対象弁護士が妻Bと共に、懲戒請求者らに無断で懲戒請求者夫Aが居住しているマンション(以下「本件マンション」という。)に不法侵入し、懲戒請求者夫Aが占有する財物を窃取した、あるいは、かかる妻Bの違法行為を教唆幇助した等として、本懲戒請求に及んだものである。
第2 懲戒請求事由の要旨
1 懲戒請求事由1(住居侵入行為)
対象弁護士は、平成30年8月22日、妻Bと共に、懲戒請求者らに無断で、懲戒請求者夫Aが居住している本件マンションに不法侵入した(あるいは妻Bの不法侵入を教唆・幇助した)。対象弁護士のこのような行為は、刑法第130条の住居侵入罪の構成要件を充たし、違法性も有するものといえるので、 弁護士法第56条1項に定める品位を失うべき非行に該当する。
また、懲戒請求者夫Aには、当時、代理人弁護士が付いていたのであるか ら、かかる行為は、相手方本人との直接交渉を禁止する弁護士職務基本規程第52条にも抵触する。
2 懲戒請求事由2(窃盗又は違法な自力救済行為)
対象弁護士は、前項記載のとおり、懲戒請求者夫Aが居住している本件マンションに不法に侵入した(あるいは妻Bの不法侵入を教唆・幇助した)が、その目的は、パソコンや銀行の預金通帳等の回収であり、実際に妻Bと対象弁護士は、妻Bが使用していたパソコンやiPad、妻B名義の預金通帳等のほか、懲戒請求者夫A名義の預金通帳やキャッシュカードまで持って行ってしまった。
対象弁護士のこのような行為は、窃盗(違法な自力救済)にほかならないの 、弁護士法第56条1項に定める品位を失うべき非行に該当する。
3 懲戒請求事由3(プライバシー権侵害)
対象弁護士は、既に妻Bの代理人を辞任しており、何らの関係もないにもかかわらず、妻Bやその後任の代理人弁護士に対して、本件懲戒請求がなされた事実を連絡している。このような対象弁護士の行為は、懲戒請求者らのプライ バシーを侵害する不法行為であり、弁護士法第56条1項に定める品位を失うべき非行に該当する。
4 懲戒請求事由4(父子関係の断絶の教唆、子を利用した脅迫行為)
対象弁護士は、妻B及び妻Bの父親による、子の連れ去り、親子の引き離し 行為を教唆した。また、平成30年8月22日、対象弁護士は、懲戒請求者らの自宅を訪問して、懲戒請求者夫Aに対し、子を利用した脅迫行為を行った。 これらの対象弁護士の行為は、弁護士法第56条1項に定める品位を失うベき非行に該当する。
第3 対象弁護士の答弁の要旨 1
懲戒請求事由1(住居侵入行為)
本件マンションは、妻Bの勤務先が賃借し、これをいわゆる借り上げ社宅として妻Bが転借していたものであり、懲戒請求者らが、住居侵入と主張する平成30年8月22日時点において、妻Bは本件マンションに入室する権限を有していた。
また、妻Bは出産・育児のために一時的に里帰りをしていたに過ぎず、本件マンションの共同生活から離脱したとも評価できないため、妻B及び対象弁護士の行為が不法な住居侵入に該当する余地はない。
そして、対象弁護士が妻Bに付き添って本件マンションを訪問した行為は弁護士職務基本規程第52条に抵触するものではない。
2 懲戒請求事由2(窃盗又は違法な自力救済行為)
妻Bが自己の住居にある自己の所有物を持ち出しただけであり、何ら違法な 行為ではない。
3 懲戒請求事由3(プライバシー権侵害)
懲戒手続が非公開であっても、対象弁護士の防御に必要な事実の調査・確認 を行うことは当然であり、対象弁護士は、懲戒請求者らのプライバシーを何ら 侵害していない。
4 懲戒請求事由 4(父子関係の断絶の教唆、子を利用した脅迫行為)
対象弁護士が、父子関係の断絶を教唆した事実も、子を利用した脅迫行為を した事実も一切存在しない。
第4 判断の資料、
別紙資料目録記載のとおり。
第5 当委員会が認定した事実及び判断
1 当委員会が認定した事実
(1)懲戒請求者夫Aと妻Bは、平成28年9月3日に婚姻し、以後、本件マンションにて同居していた。本件マンションは、妻Bの勤務先が賃借し、これをいわゆる借り上げ社宅として妻Bが転借したものであった、 (乙第3号証及 び乙第4号証)。
(2) 平成30年7月6日、懲戒請求者夫Aと妻Bの間に長女D(以下長女Dという)が誕生した。
(3)平成30年7月14日、妻Bは退院し、長女Dと共に、妻Bの実家に身を寄せ、いわゆる「里帰り育児」を開始した。その際、妻Bの貴重品や生活用品のほとんどは本件マンションに残置されていた。また、妻Bと懲戒請求者夫Aとの間では、事前に「里帰り育児」の期間を2週間とする旨のやり取りがなされていた。
(4) その後、妻Bは、懲戒請求者夫Aとのやりとりに不安を抱え、本件マンションに戻る時期について、当初予定していた平成30年7月29日から延期したいと考えるに至り、対象弁護士に相談した。
(5) 平成30年7月25日、対象弁護士は、妻Bの代理人として、懲戒請求者夫Aに対して受任通知を発信した(乙第2号証)。
(6) 平成30年7月26日、懲戒請求者夫Aは、妻Bとの夫婦関係調整につい て、●●●弁護士に委任し、同弁護士は、同月29日、対象弁護士に対し、円満解決を求める連絡をすると共に、懲戒請求者夫Aから妻Bに宛てた手紙を提示した。
(7) 対象弁護士は、妻Bから、本件マンション内にある自らの洋服、妻B名義 の通帳を取りに行きたいとの要望を受け、平成30年8月22日午後1時過 ぎころ、妻Bに付添い、オートロックエントランスから本件マンションの共用部分に立ち入った。その際、オートロックエントランスの施錠は、妻Bが保有していた鍵により開錠された。
その後、対象弁護士は、妻Bに付添い、本件マンションのエレベーターを 利用して7階まで上がったが、懲戒請求者夫Aと妻Bの居室である70×号室には入ることなく、妻Bのみが70×号室の中に入った。その際、対象弁護士は、70×号室の玄関付近で待機していた。
(8) 平成30年8月29日、対象弁護士は、懲戒請求者夫Aの代理人である●●●弁護士に対し、妻Bの代理人を辞任し、新たな代理人として〇〇〇 弁護士が就任する旨を通知した(甲第5号証)。
(9)令和2年2月4日頃、懲戒請求者らは、対象弁護士について第一東京弁護士会に懲戒請求を申し立てた。
(10) その後、対象弁護士は、本懲戒請求がなされた事実を、後任の妻Bの代理人である〇〇〇弁護士に伝えた。
2 当委員会の判断 (1)
懲戒請求事由1(住居侵入行為)
ア 対象弁護士は、本件マンションの居室内に侵入したものではなく、居室の玄関前まで妻Bに付き添ったに過ぎないものであるところ、かかる対象弁護士の行為が違法な住居侵入行為あるいはその教唆・幇助に該当するか否かについて検討する。
イ 本件マンションは、妻Bがその勤務先から借上げ社宅として転借していたものであり、妻Bの貴重品や生活用品も本件マンションに置いたままで あったこと、平成30年8月22日当時、妻Bは、本件マンションで懲戒請求者夫Aと寝食を共にしていなかったものの、同年7月14日の退院後 に「里帰り育児」のために実家に戻っていたに過ぎないこと、妻Bにおいて本件マンションの鍵を保有していたこと等の事情に鑑みれば、妻Bが本 件マンションにおける懲戒請求者夫Aとの共同生活から離脱したものと評価することはできず、妻Bは、依然として本件マンションに入室する正当な権限を有していたものと認められる。 ウ そうすると、平成30年8月22日当時、妻Bにおいて、本件マンショ ン(居室及び共用部分)に立ち入ること自体、違法な住居侵入行為であると評価することはできず、本件マンションの共用部分たる玄関前まで妻Bに付き添った対象弁護士の行為を、違法な住居侵入行為あるいはその教唆・幇助に該当すると認めることもできない。
エ また、対象弁護士において、妻Bに付き添って本件マンションを訪問した際に懲戒請求者夫Aと直接交渉を行ったことを認めるに足りる資料はなく、対象弁護士の行為が弁護士職務基本規程第52条にも該当すると認めることもできない。
オ 以上より、懲戒請求事由 1 について、対象弁護士に弁護士法第56条1項に定める品位を失うべき非行があったとは認められない。
(2) 懲戒請求事由2 (窃盗又は違法な自力救済行為)
ア 平成30年8月22日に対象弁護士は本件マンションの居室内には立ち入っておらず、対象弁護士の行為を窃盗又は違法な自力救済であると認めることはできない。
イ また、妻Bにおいて本件マンションの居室内に立ち入る正当な権限を有していたと認められる以上、妻Bにおいて本件マンション居室内から自らの私物を持ち去ることが窃盗又は違法な自力救済に該当するとは言えない。
そして、妻Bにおいて、本件マンションの居室内に立ち入った際に、懲戒請求者夫Aの所有物を持ち去ったことを認めるに足りる資料はなく、妻Bによる窃盗又は違法な自力救済がなされたと認めることはできない。
したがって、対象弁護士において、妻Bの窃盗又は違法な自力救済を教唆・幇助したと認めることもできない。
ウ 以上より、懲戒請求事由2について、対象弁護士に弁護士法第56条1項に定める品位を失うべき非行があったとは認められない。
(3)懲戒請求事由3 (プライバシー権侵害)
ア 対象弁護士において、懲戒請求者らから懲戒申立てがなされた事実を、妻Bの後任の代理人弁護士に伝えた事実は認められるものの、対象弁護士は、本懲戒申立ての防御のために必要な事実の調査・確認を行う権利を有しており、妻Bの代理人弁護士に対して、本懲戒請求がなされたことを前 提として、事実関係の照会を行うことは、その正当な権利行使の範囲を逸脱するものでない限り、許容されるものである。
イ このほか、対象弁護士において、正当な権利行使の範囲を逸脱して、殊更に懲戒請求者のプライバシー権を侵害したと認めるに足りる資料はない。
ウ したがって、対象弁護士が、本懲戒申立てがなされた事実を妻Bの代理 人弁護士に伝えたことは、違法なプライバシー権侵害に該当するものと評価することはできない。
エ 以上より、懲戒請求事由3について、対象弁護士に弁護士法第56条1項に定める品位を失うべき非行があったとは認められない。
(4)懲戒請求事由 4(父子関係の断絶の教唆、子を利用した脅迫行為)
対象弁護士において、父子関係の断絶の教唆、あるいは子を利用した脅迫行為に及んだと認めるに足りる資料はない。 したがって、懲戒請求事由 4について、対象弁護士に弁護士法第56条1 項に定める品位を失うべき非行があったとは認められない。
よって、懲戒請求事由はいずれも理由がないから、主文のとおり議決する。
2022年(令和4年)4月15日
第一東京弁護士会 会 長 松村 眞理子 殿
(別紙)
資料目錄
第1 懲戒請求者提出分 甲21号証まで (省く)
第2 对象弁護士提出分 乙4号証まで (省く)
以 上
これは、2022年(令和4年)4月15日付で当 会綱紀委員会が議決した2020年一綱第17号 綱紀事件の議決書の謄本である。
2022年(令和4年)7月14日 第一東京弁護士会 会長 松村 真理子
甲3号証 懲戒請求者が提出した書証
妻の代理人弁護士(対象弁護士)が夫(懲戒請求者)に出した通知書
子どもはこちらが引き取った。今後妻や妻の実家へは連絡するな。あなたが連れ戻しをすれば容赦しないとの内容、
妻側の代理人弁護士ならこの程度の通知書は当たり前ですが、初めてこのような書面を受け取れば親子断絶を指導・父子関係の断絶を教唆した、子を利用した脅迫行為だと感じても仕方がないところです。
ご 通 知
平成30年7月25日
〇〇様 (子の父親)
東京都千代田区九段南3丁目 いちご九段南ビル3階 野尻法律事務所
(旧姓●●)妻B代理人弁護士N
急 啓
(旧姓:●●)妻B氏(以下「通知人」といいます。)を代理して本書を差 し上げます。
本日のお電話でお伝えしたとおり、通知人は、貴方とのやりとりに、大きな不安を抱いています。また、通知人の家族(●●家)も、貴方からの連絡に大変困惑しています。つきましては、通知人とその家族への電話連絡、面談要請、その他いかなる手 段によっても、貴方が通知人及びその家族に連絡を取ることはお避けいただきたいと存じます。
貴方が7月29日 (日)に通知人の実家を訪問するというお話があったよ うですが、こちらもお控えいただき、さらに、貴方のご家族から●●家への連絡もお 控えいただければと存じます。もちろん、通知人及びその家族の職場へのご連絡等も、なさらないでください。
貴方は、私に、貴方と通知人との子が危険な状況にあると述べました。しかし、貴方の述べた内容は、2人の子が月齢1か月に満たないことを考慮しても、危険との評価には決して当たりません。このような状況で、あなたが通知人の実家を訪れて無理矢理に子を連れ去った場合、刑事事件として対応せざるを得ないことになりますので、 よくご検討いただき、決してそのようなことはなさらないでください。
今後、通知人として貴方にどのように対応するかについては、通知人と私とで熟考 の上、改めて私から貴方宛てにご連絡申し上げます。なお、今後のやりとりについて は、私が通知人を代理いたしますので、その旨ご承知おきください。
なお、貴方におかれてはご多忙と存じますので、お受取の便宜のため、簡易書留と特定記録の双方でお送りさせていただきました。2通同じお手紙をお送りしておりま すこと、ご容赦ください。 以上、取り急ぎご通知申し上げます。
早 々