このポストは大阪弁護士のベテラン弁護士さんがお友達の福永活也弁護士(東京)が東弁綱紀で「懲戒相当」の議決を受け懲戒委員会に審査が付された時の投稿です。徳永先生も一度戒告処分を受けておられます、活動、業務に支障がない。支障が、なかったからと述べておられるのでしょう。

【弁護士に対する懲戒処分】条解弁護士法第5版 P461

1戒告とは、対象弁護士に対し、その非行の責任を確認させ反省を求め、再び過ちのないよう戒める懲戒処分であり、懲戒の中でも最も軽い処分である。戒告は対象弁護士の弁護士たる資格や身分に全く消長を及ぼさず、また、その活動に何らの制限を加えられることはない。但し、戒告の処分を受けたものは3年間は日弁連会長選挙の被選挙権を失う。

戒告はその処分告知とともにその効力を生じ、かつ処分は終了するので執行停止(行審法25条2項の余地はないものと解される。戒告についても官報及び日弁連の機関雑誌による公告がなされるが(会則68条)他の懲戒処分の場合と異なり、裁判所及び検察庁に対する通知は行われない(会則68条3)

ベテラン弁護士の方は戒告であっても官報に公告として掲載されることを知らない方もおられます。(10年ほど前から)日弁連広報誌「自由と正義」にも懲戒処分の要旨が公告として掲載されます。(1990年頃から)

注意と処分は違います。戒告処分は注意ではありません。

弁護士会長が君ちょっと会長室まで来なさい。注意するなどありません。弁護士に注意はできません。懲戒の申出があり綱紀委員会に付し議決を経て懲戒委員会で処分を決定する。手続を踏んだ懲戒処分ですから処分が不当であれば日弁連に審査請求を求めることができるのです。

当会に、弁護士の事件処理に不満があり弁護士会に懲戒ではなく注意してもらうと手紙を出した。という内容がいくつかあります。実際に会長や役員が注意をすることなどあり得ません。

弁護士会の指導と懲戒手続きの関係 弁護士懲戒手続の研究と実務 第三版 日弁連調査室

弁護士会は弁護士の使命及び職務に鑑み、弁護士の品位を保持し、弁護士事務の改善進歩を図るため、弁護士の指導、連絡及び監督に関する事務を行うことを目的としている。(法31条1項)

右の規程のもとでも、弁護士の具体的職務に関して懲戒事由が存在する疑いがある場合に、弁護士会がどの程度指導監督を発揮しうるかについては議論の余地がある。

思うに弁護士会の懲戒権は弁護士会の弁護士に対する監督を全うさせるために法が特別に与えた権能であり右懲戒権の行使は弁護士会内の独立委員会である綱紀委員会及び懲戒委員会の判断に基づいて公正に行われていることが厳格に規程されていることからすると、ある特定の弁護士の活動について、違法又は不当な点が存在する疑いがあり、その点につき弁護士会が検討して懲戒事由に該当すると思料される場合は、原則として綱紀委員会に対し法52条2項に基づき調査を命じるべきであって、懲戒手続のような厳格な規定が存在しない弁護士会としての一般的な指導連絡監督権に基づく指導を安易に行うのは相当でないと解される。

しかし、いかなる場合にも弁護士会が指導連絡監督権を行使しえないと解すべきではなく、例えば明らかに違法な弁護活動、実質的に弁護権を放棄したと認められる行為、あるいは職業的専門家である弁護士としての良識を著しく逸脱した行為が認められ、懲戒手続を待っていたのでは回復しがたい損害の発生が見込まれる等の緊急を要する場合には、当該違法又は不当な行為を阻止し、あるいはこれを是正するための必要な限度で指導連絡監督権を行使することができると解すべきである(中略)

しかし、そのような指導連絡監督権の行使についても、懲戒処分に類似するような処分(例えば、戒告に類似する「注意」業務停止に類似する強制力のない「謹慎韓国」退会命令・除名に類似する強制力のない退会勧告は絶対に許されない。(中略)

懲戒処分以外に弁護士会が当該弁護士に対して何らかの指導監督を指導監督を行う必要がある場合はほとんどあり得ないと思われる、弁護士会から当該弁護士に対する名目で当該行為の問題点について注意を与え反省を促したり、当該会員に始末書を書かせるといった対応が考えられるが、このような対応は許されないと解され利る。

すなわち懲戒処分の戒告は「対象弁護士に対し、その非行の責任を確認させ反省を求め、再びあやまちのないよう戒める懲戒処分」と解されるが、弁護士の問題行動について弁護士会が注意するということは、この戒告に極めて類似する処分と解さざるを得ず、懲戒手続を経ずにこのような処分を弁護士会がなしうるとすることは、違法の疑いが濃いからである。

どうせ戒告程度だろう!という弁護士! 

懲戒される弁護士さんは気が付いていませんね。弁護士会は「戒告」にしてくださっているのです。懲戒処分の要旨を何件も見ておりますが、業務停止が下されても仕方がないが、戒告になったものは、対象弁護士が謝罪・反省し今回は戒告に処すということではないでしょうか。

本来なら業務停止だが戒告にしておいてやる。そのかわり弁護士会には逆らうなよ!では!

戒告に処されても何ら問題ないと考えておられますが、戒告処分で会長選挙に出られない!俺には関係ないわという弁護士さんもいますが、こういう処分がありました、

高山俊吉弁護士(東京)懲戒処分の要旨 2010年2月号

日弁連会長選挙に立候補すると処分。弁護士会は、いざという時にネタ持ってます。

奈良弁護士会は戒告であっても記者発表をします。

弁護士を戒告処分=奈良 2023年9月27日
奈良弁護士会は26日、同会所属の馬場裕弁護士(36)を戒告の懲戒処分にしたと発表した。処分は21日付 初表では、馬場弁護士は2021年7月、成年後見制度に基づく後見等開始の審判を申し立てる手続きの依頼を受けたが、約8か月放置、手続きが進行していると虚偽の説明をしていた。依頼から22年11月に同会へ寄せられた苦情を受け調査、弁護士として品位を失うべき非行にあたると判断した。馬場弁護士は同会の調査に「反省している」と述べたという、山口宣恭会長は「改めて会員に弁護士倫理・弁護士職務基本規程の徹底を求める」とコメントした。讀賣新聞・9月27日付 
懲 戒 処 分 の 公 告 2024年1月号

奈良弁護士会がなした懲戒の処分について、同会から以下のとおり通知を受けたので、懲戒処分の公告及び公表等に関する規程第3条第1号の規定により公告する。

          記

1 処分を受けた弁護士氏名 馬場 裕 登録番号50888 事務所 奈良市角振町28 まあぁろービル609

馬場法律事務所 2 懲戒の種別 戒告

3 処分の理由の要旨 被懲戒者は2021年7月14日、懲戒請求者から、同人の実母についての後見等開始の審判申立手続を受任したところ、申立に必要な資料を収集し、遅くとも2022年3月頃までには申立ができる状況となったものの、その後、合理的な理由がないにもかかわらず、申立てを遅滞した。

また被懲戒者は2022年5月頃、懲戒請求者からの進捗状況の問合わせに対し、実際には申立てを行っていないにもかかわらず、既に申立を行ったかのように説明し、その後の事件の進捗状況の問合せに対しても、申立てをを行ったことを前提とするような進捗状況の説明を行った。被懲戒者の上記行為は弁護士職務基本規程第5条、第6条及び第35条に違反し、弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。4処分が効力を生じた日 2023年9月21日 2024年1月1日 日本弁護士連合会

奈良で巨額横領事件があった時に弁護士会に懲戒がなされており、懲戒が出ていればその弁護士に委任しなかった。と弁護士会を相手に裁判になったことからの反省です。

弁護士会によって違いますが、戒告処分を受けると弁護士会主催、行政主催の相談会に3年間出禁、当番弁護士もできない措置があります。(法テラスは業務停止以上)

俺はそんな仕事やってないという弁護士さんもおられるでしょうが、

戒告はあくまでも懲戒処分で「注意」ではないということです。