SNSで詐欺被害に遭った愛知県豊田市の男性が、被害金回収のため弁護士事務所に支払った着手金の返還などを求めた訴訟の判決が1日、名古屋地裁(小川卓逸裁判官)であった。同地裁は、被告の弁護士法人「丸の内国際法律事務所」(名古屋市)側が答弁書を提出せず、出廷もしなかったことから、男性の請求を認めた。
訴状によると、男性は昨年、SNS上で知り合った人物に計約8844万円をだまし取られ、同事務所のLINE相談窓口で相談したところ、「緊急性がある」などと説明され、その日のうちに着手金334万円などの内容で委任契約を結び、一部をクレジットカードで決済手続きした。
男性側は、被害回復が困難な上、着手金が高額で事務所側の説明にも問題があったとして、決済済みの34万円の返還を求め、決済保留中の200万円の支払い義務もないと訴えていた。
同事務所代表の瀬辺勝弁護士は、ロマンス詐欺の被害金回収業務を放置したとして、昨年、愛知県弁護士会から懲戒請求されている。
2024年3月13日 愛知県弁護士会
会長 小 川 淳
本日、愛知県弁護士会は、当会会員である瀬辺勝弁護士(登録番号12859)に対して弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行があると思料し、弁護士法第58条第2項の規定に基づき、綱紀委員会に調査命令を発したことを、懲戒手続に付されたことの公表に関する規程第2条第2項(懲戒の手続に付された事案の事前公表)により、下記のとおり公表しました。
対象会員の氏名 瀬辺 勝
登録番号 12859
登録上の事務所 〒460-0002
名古屋市中区丸の内三丁目4番12号
ワークビル丸の内3階
弁護士法人丸の内国際法律事務所
第1 懲戒の手続に付された事案の内容
1 対象会員は、詐欺被害事件に係る損害賠償請求事件を受任した際、実際には対象会員における被害回復の実施例がなかったにもかかわらず、対象会員による被害回復例があるとして複数件の開示をした。
対象会員の上記行為は、事件の受任にあたり、依頼者から得た情報に基づき、事件の見通しや処理方法について適切な説明をすることを義務付ける弁護士職務基本規程第29条第1項に違反するものである。
2 対象会員は、詐欺被害事件に係る損害賠償請求の受任にあたり、回収可能性を含む事件の見通しに関する説明をせず、また、委任契約の解約に伴う清算にあたり、委任契約締結時に事前の説明をしていなかった調査費用を控除した。
対象会員の上記行為は、事件の受任にあたり、依頼者から得た情報に基づき、事件の見通しや処理方法について適切な説明をすることを義務付ける弁護士職務基本規程第29条第1項に違反するものである。
第2 綱紀委員会に調査請求をした日
2024年2月14日
第3 事前公表の理由
前記第1記載の各事実は、関係証拠からその存在を認めることができ、対象会員による当該行為は、同会員の依頼者に重大な損害を与えている。
また、一般的に国際ロマンス詐欺事件や投資被害詐欺事件は、被害回復が極めて困難な事件類型に属し、被害回復額が弁護士に支払う着手金の額を下回るおそれも高いため、実質的に詐欺の二次被害を招来しかねないものである。
対象会員は、依頼者との面談を自ら行うことなく、事件の見通しの説明や弁護士報酬の説明に関与していない。さらに、事務職員によるこれらの説明もなされていないと評価すべき事態にある。
当会の市民窓口には、前記第1記載の各事実と同様に、説明がなされていないと評価すべき苦情が非常に多く寄せられており、現状のままでは、綱紀委員会の議決が行われるまでに一層被害が拡大することが予測される。
よって、当会は、対象会員について綱紀委員会の調査が開始され、かつ、当会が懲戒請求をしたことについて事前公表するものである。
過去に懲戒処分があり業務停止の処分を受けていたにもかかわらず弁護士業務を続けました
元の懲戒処分
愛知県弁護士会がなした懲戒の処分について、同会から以下のとおり通知を受けたので、懲戒処分の公告及び公表等に関する規程第3条第1号の規定により公告する。 記
1 処分を受けた弁護士氏名 瀬辺 勝 登録番号 12859 事務所 名古屋市南区呼続1-3-22 第2三和ビル203号
総合法律事務所ZERO
2 懲戒の種別 業務停止1年6月
3 処分の理由の要旨
(1) 被懲戒者は、2017年9月11日に死亡したAの遺言執行者に就任したところ、同年10月12日、A名義の普通預金口座を解約し、解約に伴う払戻金2399万3277円を同日付けで被懲戒者が通常業務で使用している被懲戒者名義の口座に入金して自己の金員と区別せずに管理し、遺言執行業務とは何の関係もない支払や預り金の返金に繰り返し流用した。
(2) 被懲戒者は、懲戒請求者Bから受任していた交通事故による人身損害についての損害賠償請求事件に関し、懲戒請求者Bに対し、2020年2月に上記事件を辞任する旨の書面を送ったが、懲戒請求者Bから預かった各書類をどこでどのように保管していたか明確にすることができず、また、懲戒請求者Bに対し、預かった書類の多くが存在すると思われる場所を伝えただけで書類の返還義務を果たさなかった。
(3) 被懲戒者は、上記(2)の交通事故による車両損害に関し、懲戒請求者Cから損害賠償請求事件を受任したが、2019年9月頃、車両の保管場所を変更したことを懲戒請求者Cに報告しないなど、適切に事件の経過を報告しなかった。また、被懲戒者は、懲戒請求者Cに対し、2020年2月に上記事件を辞任する旨の書面を送ったが、被懲戒者Cから預かった各書類をどこでどのように保管していたかを明確にすることができず、懲戒請求者Cに対し、預かった書類の多くが存在すると思われる場所を伝えただけで書類の返還義務を果たさず、また、委任の終了に当たり事件処理の状況の報告を適切に行わなかった。
(4) 被懲戒者の上記(1)の行為は預り金等の取扱いに関する規定第2条及び第4条並びに弁護士職務基本規程第38条に、上記(2)の行為は同規程第39条及び第45条に、上記(3)の行為は同規程第36条、第39条、第44条及び第45条に違反し、いずれも弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
4処分が効力を生じた日 2020年6月1日 2021年11月1日 日本弁護士連合会
愛知県弁護士会がなした懲戒の処分について、同会から以下のとおり通知を受けたので、懲戒処分の公告及び公表等に関する規程第3条第1号の規定により公告する。
記
1 処分を受けた弁護士氏名 瀬辺勝 登録番号 12859
事務所 名古屋市港区港楽1-1 港楽ハイツ1棟606
瀬辺法律会計事務所
2 懲戒の種別 戒告
3 処分の理由の要旨
被懲戒者は2021年6月1日から1年6月の業務停止処分の決定を受け、所属弁護士会から、業務停止の期間中は全ての弁護士業務を行ってはならない等の記載のある指示書を受領し指導を受けたにもかかわらずAから依頼を受け、同月27日、Aが他の相続人である懲戒請求者らから相続分譲渡証明書を取得するための話し合いに立ち会った。
被懲戒者の上記行為は、弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
4処分が効力を生じた日 2022年10月25日 2023年3月1日 日本弁護士連合会