NHKからの請求が、来なくなる方法・請求書代理受領サー ビス」対象弁護士がウェブサイトを開設し、同ウェブサイト上で、NHK の放送受料を不払いにすることを紹介し、その援助業務を自身に依頼するよ ら勧誘したことが、違法行為を助長するものであるなどとして、対象弁護士に 対し懲戒が申し立てられた事案で第二東京弁護士会綱紀委員会は懲戒委員会に事案の審査を求めることを相当と認める。」 とした。

この後、懲戒委員会で処分(戒告・業務停止・退会命令・除名)時に処分しないという議決もあります。

令和5年(コ)第168号 

議 決 書 

懲戒請求者  〇〇 

対象弁護士 村岡徹也 (登録番号39230) 

東京都千代田区神田小川町2-4-14 フィールドクレストビル8階 村岡総合法律事務所 

主 文 

対象弁護士につき、懲戒委員会に事案の審査を求めることを相当と認める。 

理 由 

第1 事案の概要 

本件は、対象弁護士がウェブサイトを開設し、同ウェブサイト上で、NHK の放送受料を不払いにすることを紹介し、その援助業務を自身に依頼するよ ら勧誘したことが、違法行為を助長するものであるなどとして、対象弁護士に 対し懲戒が申し立てられた事案である。 

第2 前提となる事実

1.対象弁護士は、「NHKからの請求が、来なくなる方法 請求書代理受領サー ビス」と表示されているウェブサイト(以下「本件ウェブサイト」という。)を

運営する者である(甲1。なお、該表示は本懲戒請求申立て当時のものである)。対象弁護士は、本件ウェブサイトにおいて次のとおり掲示していた(甲2)。 なお、その後下記(1)につき下線部が削除されている(Z1)。 (1) サービス内容 

「(注:対象弁護士が受任する業務は)お客様に代わりまして、弊所(注: 対象弁護士の法律事務所及び対象弁護士と連名で記載されている司法書 土の事務所と解される)がNHKから送付される請求書類等を代理受領し、 請求書払いに変更し、必要に応じNHKに対し受備料の消滅時効の援用をし、弊所がNHKと放送受信料の支払に関して裁判外でNHKと代理で交 渉し、裁判外においてNHKから請求される放送受信料の不払いを援助するサービスです。本サービスの主任及び責任者は弁護士村岡徹也となりま す。

弁護士村岡徹也が死亡、資格停止、その他業務を遂行できない事情が 生じた場合、本サービスを継続できるよう司法書士〇〇は補助代理人の地位にとどまります。 

このサービスを利用しましても、消滅時効の適用を受ける場合を除いて、 原則としてお客様の実体法上の受信料債権が消滅するものではありません。 

また、弊所で受任してもNHKの判断でお客様に請求書が送付される場合や支払督促、訴訟をNHKから提起された場合は直接お客様の自宅等にNHKからの訴状等が送達される場合があります。」 

(2)利用料金 

「このサービスについては、原則、お客様は、無償で本サービスを利用することができます。ただし、申込や必要書類の送付に要する通信料、郵送料や必要な証明書の発行手数料等はお客様にご負担頂きますので、ご了承をお願い致します。」 

2 裁判外においてNHKから請求される放送受信料の不払いを援助するサービ スについて、対象弁護士は委任契約を締結したことがある。 

第3 懲戒請求事由の要旨 

1懲戒請求事由1 

対象弁護士は、NHKから請求される放送受信料の不払いを援助するサービ ス(以下「本件サービス」という。)を本件ウェブサイトにおいて運営している。 かかる対象弁護士の行為は、放送受信契約締結者であるNHKに対する債務不履行という違法行為を助長するものであり、弁護士職務基本規程第14条に違反する。 

2懲戒請求事由2 

本件サービスは前記のとおり違法行為を助長する内容であるから、本件ウェ ブサイトを作成して公表することにより依頼を勧誘する行為は、弁護士として の品位を損なう方法による事件の依頼の勧誘であり、弁護士職務基本規程第1 0条に違反する。 

第4 対象弁護士の弁明の要旨 

本件サービスには弁護士懲戒処分として認められる非行と判断できる余地はないので、懲戒請求者の請求は理由がない。 

第5証拠 

別紙証拠目録記載のとおり。・ 

第6 当委員会の判断 

1懲戒請求事由 1(弁護士職務基本規程第14条違反)について 1)放送法第64条第1項は、NHKの放送を受できる受備設備の設置者 に受情契約の締結義務を課し、日本放送協会放送受備規約第5条は放送受借契約者に放送受信料の支払義務を課している。また、同法第64条第2項は、「あらかじめ総務大臣の認可を受けた受信料の免除の基準」(具体的 には、日本放送協会放送受信料免除基準。以下「免除基準」という。)によるのでなければ、「受信料を免除してはならない」としている。 したがって、NHKの放送を受情できる受情設備の設置者は、免除基準に該当しない限り、放送法上は放送受備料の支払義務を免れることはでき ず、また、放送受信料の不払いは、放送法に基づく受信契約上の債務不履 行(民法第415条第1項)に当たることになる。 

2) 本件ウェブサイトは、本件サービスが「裁判外でNHKから請求される 放送受料の不払いを援助するサービス」であると記載している(甲21)。免除基準の該当性や消滅時効の完成の可能性を検討することそれ自体は適法であり不正でもない。 

しかし、本件ウェブサイトの主目的は放送受信料を支払わないための支援に置かれている以上、免除基準に該当せず、消滅時効も完成していない個人については、本件ウェブサイトは、正当な理由のない債務不履行の誘引又は継続を助長するものと評価せざるを得ない。 

3)放送受信料の不払いの誘引又は継続は、本件ウェブサイトにより対象弁 護士に依頼した依頼者に、法定利率ないし約定利率(日本放送協会放送受 言規約第12条の2によると、3分以上延滞したときは1期(2か月)あたり20%の割合)による遅延損害金や訴訟費用等の負担という不利益を発生させる可能性がある。 

4) 以上より、本件ウェブサイトは、正当な理由のない債務不履行の誘引又は継続を助長させるものであり、弁護士職務基本規程第14条にいう「違法若しくは不正な行為を助長」する行為に該当する。 

よって、本件ウェブサイトに基づく対象弁護士の業務提供は、弁護士職 務基本規程第14条に違反する。

 2懲戒請求事由2 (弁護士職務基本規程第10条違反)について

1)本件サービスは、放送受情料を支払わないことを前提に依頼者を募り、対象弁護士は「裁判外」での「交渉のみ」を受任するというものである。 対象弁護士は「交渉代理」に範囲を限定して受任している。しかし、放送受信料債務の免除は、前記第611)のとおり、免除基準に該当する場合に限られるにもかかわらず、「裁判外」における「不払い」の交渉のみを広く勧誘することは、実質的な解決よりも単なる放送受信料の不払いの 長期化・紛争化を誘発する危険性が高い。 

本件ウェブサイトは、NHKに対する放送受料情務の交渉という面を前面に押し出しつつも、その内実はNHKに対して単に放送受信料を支払わないとするものと捉えることができる。 

2)本件サービスにおける依頼者にとって最善の利益は、①放送受信料債務 の有無の検討、②適法な免除・減額・分割の検討、③消滅時効援用の可否 の検討である。ところが、本件サービスはこれらよりも「NHKに払わな い」ということを優先し、本件ウェブサイトにより前記(1)のような性質を有する本件サービスの提供を無差別に働きかけることによって、免除 や消滅時効完成が認められない依頼者に法的に達成不能又は不利益のある 結果をもたらす可能性がある。その結果、法定利率ないし約定利率による 遅延損害金や訴訟費用等の負担を増幅させ、依頼者の正当な利益を害して いる。 

3) 以上より、本件サービスは弁護士職務基本規程第10条が禁じる「不当 な目的」ないしは「品位を損なう方法」による事件の依頼勧誘又は事件の誘発に該当する。

3結論 

以上より、本件ウェブサイトに基づく対象弁護士による本件サービスは、弁護士職務基本規程第10条及び第14条に違反しており、懲戒すべき事由に該当する。 

よって、主文のとおり議決する。 

令和7916日 

第二東京弁護士会綱紀委員会第1部会部会 岡村英郎 印

【別紙】 証拠目録  省略令和5年10月16日

第二東京弁護士会 御中 

懲 戒 請 求 書

懲戒請求者 〇〇

住  所  〇〇 

対象弁護士氏名 村岡徹也

住  所 〒105-0001 東京都港区虎ノ門5丁目11-15 虎ノ門KTビル2

申 立 の 趣 旨

第二東京弁護士会所属の村岡徹也弁護士を懲戒することを求める。

懲 戒 事 由 の 説 明

1 懲戒請求者は,対象弁護士とは何らの利害関係もない第三者である。

2 対象弁護士は,第二東京弁護士会所属の弁護士で,「NHKからの請求書代理受領サービス」を運営する者である(甲1,甲2)。

3 「NHKからの請求書代理受領サービス」は,「日本国内に居住する個人の方において,日本放送協会と放送受信契約を締結している方」(甲2)を対象として,対象弁護士が日本放送協会(以下「NHK」という。)との関係で利用者の代理人に就任したとして,「NHKから送付される請求書類等を代理受領し,請求書払いに変更し,必要に応じNHKに対し受信料の消滅時効の援用をし,弊所がNHKと放送受信料の支払に関して裁判外でNHKと代理で交渉し,裁判外においてHKから請求される放送受信料の不払いを援助するサービス」である(以下,「本件サービス」という。)。

対象弁護士は,令和5年5月26日に,本件サービスを開始した(甲2)。

4 ところで,NHKと放送受信契約を締結した者は,日本放送協会放送受信規約に則り,NHKに対し,私法上の受信料支払義務を負うものである(甲3)。

また,放送受信契約を締結した者は,受信機を廃止すること等により放送受信契約を要しなくなったときは,直ちにNHKに対しその旨を届け出ることとされており(甲3,第9条第1項),NHKがその事実を確認し次第,届け出た日をもって放送受信契約を解約できることとされている(同第2項)。

NHKは,いわゆるスクランブル化を導入しておらず,テレビ受信機を設置しながらNHKと放送受信契約を締結しない場合でも,放送を受信すること自体は可能であるが(甲4),少なくともNHK-BS1,BS2,BSハイビジョンの放送については,「受信機設置のご連絡のお願い」と題するメッセージが表示されるようになっており,この表示は,NHKに対し個人情報を添えて受信機を設置したことを届け出ない限りは,消去できないものとなっている(甲5)。

 そうして,NHKに対し個人情報を添えて受信機を設置したことを届け出ると,NHKと放送受信契約を締結することとなる(甲3の第3条,第4条,甲5)。

5 対象弁護士は,前項のようにNHKに対し受信料支払義務を負っている放送受信契約の契約者を対象として,NHKから請求される放送受信料の不払いを援助するサービスを提供しているものである。

 つまり,NHKと放送受信契約を締結した者にとり,NHKから請求される放送受信料の「不払い」は,債務不履行に該当するところ,対象弁護士は,これを「援助」する「サービス」を提供するというのである。

6 ところで,弁護士職務基本規程第14条では,弁護士が「詐欺的取引,暴力その他の違法若しくは不正な行為」を「助長」すること,及びこれらの行為を「利用」することを禁止している。

ここで「詐欺的取引」とは,「正常な取引のごとき外形を装っているものの,実質は相手方を欺罔し錯誤に陥し入れ,不当な利益を図る取引」を指すものとされている(甲6,31頁)。

 また,「助長」とは,「違法・不正であることを知りながら,これを第三者に推奨したりすることによって,違法・不正の実現に手を貸したり,その存続又は継続を支援したりすること」とされている(甲6,32頁)。

7 NHKと放送受信契約を締結した者は,受信機を廃止してNHKに届け出ること等により,いつでも,NHKとの放送受信契約を解約することができる(甲3の第9条以下)。

しかるところ,あえてNHKとの放送受信契約を維持しつつ,その放送受信料を「不払い」とする行為は,もっぱら,受信機を設置し,NHKと放送受信契約を締結することにより,NHKの放送を,放送受信料が未払であれば本来は免れない「受信機設置のご連絡のお願い」と題するメッセージに苛まれることなく快適に受信し,享受しながら,その対価である放送受信料を支払わないことにより不当な利益を得ることを専ら目的とするものといわざるを得ない。

8 以上により,対象弁護士が「援助」している「NHKから請求される放送受信料の不払い」は,NHKと放送受信契約を締結した者が,NHKと放送受信契約を締結しなくても(一部の放送では前記のとおり,受信契約締結メッセージが表示されるとはいえ)NHKの放送を受信することはできるにもかかわらず(甲4),あえてNHKと放送受信契約を締結することにより,NHKに対し受信料支払の意思があると仮装してNHKを錯誤に陥れ,受信契約締結を促すメッセージに苛まれない快適なNHK放送の享受という不当な利益の実現を図る取引である。

9 本件サービスは,NHKからの請求書その他の放送受信契約に関する通知書を,代理人に就任したと称して依頼者に代わり受領することで,依頼者が「NHKから届く請求書を受け取る事がなくなり,NHK問題を一切忘れて幸せな日々を過ごす」ことを主眼とするものであるところ(甲1),NHKから請求書が届くのは,受信機を設置しないことも,また廃止することも,さらには設置しながら放送受信契約は締結しないことも可能であったところ,依頼者が自らの意思により放送受信契約を締結したからであり,信義誠実の原則に則り,NHKとの放送受信契約に基づく受信料請求に応じなければならないことは当然である。

 ところが,対象弁護士は,依頼者がかかる法的境遇に置かれているものであることを認識しながら,依頼者が自ら意思して締結したはずの放送受信契約を「NHK問題」と非難しつつ,これを正当な手続により解約することではなく,対象弁護士を代理人に選任して「不払い」をすることにより「忘れる」ことを推奨し,対象弁護士への依頼を実現するべく,本件サービスを運営しているものである。

10 対象弁護士のかかる行為は,放送受信契約締結者のNHKに対する債務不履行(「不払い」)が違法であり,NHKを錯誤に陥れて放送を享受する点について詐欺的であり不正であることを知りながら,これを「幸せな日々を過ごす」と位置づけて不特定多数に推奨し,対象弁護士への依頼を促すものである。

 さらには,本来であればNHKからの再々の請求書の送達により一定程度抑止力が働くべき放送受信料の不払い(債務不履行)という違法行為の実現を,自らがそれを代理受領し依頼者に「忘れ」させることにより,その存続または継続を支援するものである。

11 すなわち,対象弁護士が本件サービスを運営する行為は,弁護士職務基本規程第14条に違反するものとなる。

12 ところで,弁護士職務倫理規定第10条では,弁護士が不当な目的のため,または品位を損なう方法にて,事件の依頼を勧誘してはならないこととされている。

上述のとおり,本件サービスは,甲1のウェブサイトを閲覧した者が対象弁護士に依頼することにより成立するものであるところ(甲2),甲1は,NHKに対する債務不履行という違法行為を助長する内容であるから,甲1を作成し,また公表することにより依頼を勧誘する行為は,弁護士としての品位を損なう方法による事件の依頼の勧誘といえる。

13 対象弁護士は,業務停止処分を含む過去3回もの懲戒処分を貴会から受けているにもかかわらず,自己に対する依頼を実現し名声を高めるべく,安易な気持ちで本件サービスの運営に及び,徒にNHKの法的に保護される権利ないし利益を侵害したものと評価せざるを得ない。

 仮に,対象弁護士に依頼をしたNHKと放送受信契約を締結した者たちが,NHKに対し放送受信料を支払う義務がなく,「不払い」は正当行為であると対象弁護士が考えるのであれば,NHKからの請求書を「忘れ」させるサービスではなく,NHKを被告として債務不存在確認の訴えを提起するサービスを対象弁護士は展開するべきである。

甲2を読むと,対象弁護士は,対象弁護士が想定しない者により本件サービスが利用されることを「詐欺利得罪」と位置づけて警戒しているようであるが,本件サービスの本質こそは依頼者によるNHKに対する詐欺利得の実現の助長であり,対象弁護士の活動は自家撞着的でかつ支離滅裂のものなのである。

このような者が弁護士として職務を執行することは,明らかに公益に適合しない。

 したがって,懲戒請求者は,本懲戒請求書の提出に及ぶものである。  以 上

村岡徹也弁護士 登録番号 39230 村岡総合法律事務所 第二東京

処分履歴 

① 2015年8月 業務停止1年 当初業務停止6月 依頼者に対し融資担保提供 アジア国際総合法律事務所

② 2017年10月 戒告 TV番組に事務員を被害者として出演 アジア国際総合法律事務所

③ 2019年11月 業務停止1月 土地取引の不正を助長 アジア国際総合法律事務所