弁護士自治を考える会

弁護士の懲戒処分を公開しています。日弁連広報誌「自由と正義」2010年7月号に掲載された弁護士の懲戒処分の公告・東京弁護士会・中西義徳弁護士の懲戒処分の要旨

処分理由・報道 交通事故 保険金二重請求 3月18日 読売新聞の記事 

川越市内で2004年に起きた交通事故の損害賠償を巡り医療過誤と 事故の賠償金を二重に請求し、実際の損害以上の額を受け取ったとして、担当弁護士が所属する東京弁護士会から業務停止6か月の懲戒処分を受けていたことが17日、分かった。弁護士は病院側から示談金が支払われたことを伏せたまま、加害者側からも賠償金を受け取っており、同弁護士会は「詐欺と訴えられてもおかしくないケース」としている処分を受けたのは、東京都内の弁護士事務所に勤める中西義徳弁護士(58)。処分は12日付。同弁護士会などによると、事故は04年1月5日、川越市内の市道で発生。乗用車同士が衝突し、被害者の男性(当時60歳)が搬送先の埼玉医科大学総合医療センターで死亡した。 遺族から弁護を依頼された中西弁護士は同年6月、「医療過誤により死亡に至った」として病院側に約1億500万円の損害賠償を請求。協議の結果、病院側が「解決金」として6600万円を支払うことで示談が成立した。遺族側は06年12月、加害男性に対しても約1億100万円の損害賠償を求めて提訴。業務上過失致死罪で加害男性の実刑判決が確定した後、9000万円の支払いで和解した。中西弁護士は訴状に解決金のことを明記せず、裁判でも伏せていた。しかし、加害男性も事故で重傷を負って同じ病院に搬送されていたため、医師が二重請求に気付き、同弁護士会に懲戒請求を申し立てた。同弁護士会綱紀委員会は昨年7月「遺族側が受け取った金額は、発生した損害以上の額」と指摘。その上で「解決金は医療過誤の損害賠償金と言える。裁判で解決金に言及しなかったのは極めて問題」として、懲戒委員会での審査を求める決定をしていた。処分について、同弁護士会の黒岩哲彦副会長は詐欺と訴えられてもおかしくないケース。極めて重い処分」としている。

中西弁護士は、同弁護士会に対し、「病院側から受領したのは解決金名目の慰謝料で損害は含まれていない。裁判では病院側との示談は問題とされておらず、言及しなかった」などと説明したという。読売新聞の取材に対しては「自分の考えは弁護士会に伝えてある。処分は不服であり、審査請求する予定」と話している。懲戒請求を申し立てた医師は「病院の医療過誤は公にされないことが多い。弁護士が悪用すれば、このような二重請求は、ほかでも起こりうるのではないか」と指摘している。

懲 戒 処 分 の 公 告

 東京弁護士会がなした懲戒の処分について、同会から以下のとおり通知を受けたので、懲戒処分の公告及び公表等に関する規程第3条第1号の規定により公告する。

          記

1 処分を受けた弁護士氏名 中西義徳

登録番号 19753

事務所 東京都港区虎ノ門4 純法律事務所

2 懲戒の種別  業務停止6月

3 処分の理由の要旨

被懲戒者は交通事故と医療事故が順次競合し2004年1月7日に死亡した被害者の遺族代理人として医療事故の加害者であるA医科大学と交通事故の加害者であるBに対する損害賠償請求の交渉、訴訟を担当した。被懲戒者は同年12月10日A医科大学との間でA医科大学が6600万円の支払い義務を認め、これを同月15日限り支払う旨の示談を成立させ、その支払いを受けたその後被懲戒者はBに対する損害賠償請求訴訟を提起したがA医科大学との間の上記示談の成立を秘したまま2007年12月25日Bが9000万円の支払義務を認めこれを2008年1月31日限り支払う旨の訴訟上の和解を成立させその支払いを受けた被懲戒者は上記訴訟提起により損害賠償金の二重請求、二重受領を行いA医科大学Bに同時に請求した場合には到底許容されなかった高額の損害賠償額を得たものであって被懲戒者の当該行為は弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する

4 処分の効力を生じた年月日 2010年3月12日 2010年7月1日   日本弁護士連合会