九弁連元理事長が詐取
成年後見を悪用・女性4400万円被害
県弁護士会発表
【西日本新聞10月26日朝刊】
 

福岡県弁護士会は25日、元九州弁護士会連合会理事長の島内正人弁護士(66)=北九州市=が、成年後見監督人の立場を利用し、後見を受けていた県内の女性の財産約4400万円をだまし取り、使い込んだと発表した。弁護士会は同日、懲戒処分に向け調査を開始。刑事告発も検討する。
 島内弁護士は1972年弁護士登録。2004年度の九弁連理事長を務め、99年から同弁護士会の綱紀委員=25日辞任。
 弁護士会によると、島内弁護士は10年8月、県内の女性の成年後見人として、財産を管理していた男性の業務をチェックするため、福岡家裁小倉支部から成年後見監督人に選任された。翌月から今年9月までの2年間、8回にわたってこの男性に「裁判所からの指示があり、女性の財産を私の口座に移してほしい」とうそを言い、計約4400万円をだまし取ったという。
 今月11日、男性が弁護士会に「裁判所に確認すると『そんな指示はしていない』と言われた。早く現金を返してほしい」と相談して発覚。弁護士会の事情聴取に対し、島内弁護士は事実関係を認め「事務所経費や生活費に使ってしまった。理事長時代の業務が忙しく、仕事ができずに収入が減ったことから、お金に困っていた。申し訳ない」などと説明。現金は返還されていないという。
 福岡県弁護士会では昨年3月以降、弁護士による詐欺や横領、依頼放置などの不祥事が相次いでいる。記者会見した同弁護士会の古賀和孝会長は「重要な役職も務めた会員がこのような不祥事を起こし申し訳なく、言葉も出ない」と話した。
 重鎮の背信「異常事態」
 福岡県弁護士会の弁護士による不祥事が止まらない。業務上横領、詐欺、業務の放置。25日は、北九州部会の島内正人弁護士(66)が成年後見監督人の立場を悪用して、約4400万円をだまし取ったことが判明。不祥事は昨年3月以降、5件目で、いずれも法曹経験が長いベテランがかかわった。弁護士仲間からは「前代未聞の異常事態」「弁護士の信頼がなくなる」と悲愴(ひそう)な声が漏れる。弁護士を信用して仕事を頼み、裏切られた市民は「ひどい」と怒り心頭だ。

 これまで不祥事が明るみに出た4人のうち3人は、依頼人の預かり金を着服したり、うそをついて依頼人から裁判費用をだまし取ったりした。2人は刑事事件に発展し、業務上横領や詐欺の罪で有罪判決を受けた。もう1人は元福岡高裁の裁判官で、依頼を多数放置した。
 いずれも40~80代の経験豊富なベテランで、今回、問題となった島内弁護士も九州弁護士会連合会理事長を務めた「重鎮的存在」(県弁護士会長経験者)。会所属弁護士の不祥事を調査する綱紀委員を務める一方で、不祥事が次々と明らかになった時期に送金を求めており、ある弁護士は「一体何を考えているのか。理解に苦しむ」と切り捨てた。若手弁護士は「ベテランのせいで弁護士の信頼がなくなって困る」と声を落とす。
 80代の元弁護士に依頼を放置された50代の男性は「お金を取ろうと考える弁護士がいると思うと、誰に頼んでいいのか分からない」と弁護士への不信を口にした。詐欺罪などで懲役14年の判決を受けた弁護士から被害に遭った男性は、弁護士会の在り方にも言及。「弁護士会に自浄能力がないといえ、第三者に再発防止策を考えてもらうべきだ」と指摘した。
 「信頼損なう」 日弁連会長
 日本弁護士連合会の山岸憲司会長は25日、長崎市で記者会見し、成年後見監督人に選任されていた福岡県弁護士会の島内正人弁護士が女性から現金をだまし取ったとされることについて「後見人監督制度の信頼を損なうもので遺憾」と述べた。
 福岡県弁護士会で不祥事が相次いでいることは「厳粛に受け止める」とし「職務倫理、行為規範を徹底したい」と再発防止に努める考えを示した。山岸会長は26日の九州弁護士連合会定期大会に出席するため、長崎市を訪れている。

 
以上が西日本新聞10月26日朝刊です。
私の住む京都ではこの事件は新聞掲載はありませんでした。