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京都弁護士会綱紀委員会
綱紀調査もせず懲戒処分ナシの決議を出す
弁護士の非行・懲戒請求に関して記事を書いています
京都弁護士会所属の弁護士の非行に対して出した懲戒請求が処分ナシとなりました。それはよくあることです。珍しいことではありません。
問題は綱紀委員会が綱紀調査をせずに決議を出したことです。
【綱紀調査とは】
弁護士に非行があれば所属弁護士会に懲戒請求書を出します。
よほどの事がなければ綱紀委員会での審査が開始されます。
2~3か月ほどすると弁護士会から呼び出しがあります。懲戒請求者に対して弁護士会側が事情を聞くのです。綱紀調査といいます。
綱紀委員会から2名の担当委員がなぜ懲戒を出したのですか?証拠はありますか?綱紀委員から質問が出され懲戒請求者が答えます。
綱紀委員は懲戒請求者からの意見を聴取したものを文書化して他の綱紀委員に見せ懲戒をすべきかの参考にします。私も京都・大阪・兵庫の綱紀調査に行ったことがあります。近く新潟にも行く予定です。懲戒請求では綱紀調査とは必ず行わなければならないものです。懲戒請求者は誰なのかという本人確認の意味もあるのです。弁護士会と依頼者が問題があっても顔を見て事情を聞くことが大事です。興奮していた懲戒請求者が弁護士の意見を聞いて気持ちが納まることもあります。逆もありますが・・・
日弁連の弁護士懲戒手続きの研究と実務にも綱紀調査が触れられています。
(後述)
京都弁護士会はなぜ綱紀調査をしなかったのか
事件番号 平成24年(綱)第1号  平成2423日提出
          議決書
          主文
対象弁護士につき、懲戒委員会の審査を求めないことを相当とする
平成24115日 京都弁護士会綱紀委員会委員長職務代行副委員長
                国松 治一
対象弁護士は元京都弁護士会長を務め現在は法科大学の教授でもあり京都弁護士会では今もって実力者です。ある会社の更生管財人となりました。平成13年の事件です。会社は立ち直りましたが対象弁護士はその会社の株式を不正に取得したのではないかという懲戒請求者の懲戒事由です。(現在も株式は対象弁護士の名義)
京都弁護士会の議決した処分は弁護士法第63条の除斥にあたるということで処分しないということです。
(除斥期間)
弁護士法第63 
懲戒の事由があつたときから3年を経過したときは、懲戒の手続を開始することができない
除斥とは弁護士の非行があっても3年経過していれば懲戒すべきではないということです。除斥とはわかりやすく言えば刑事事件の時効といってもいいでしょう。綱紀委員会は除斥であるから処分ナシとしたのです
ここからが問題です。
除斥だというのは対象弁護士が一方的に主張していることです。
更生会社の株の取得に関して平成14年に取得をしたのであるから既に除斥だという事ですが、しかし今現在も対象弁護士が株を持っているとするなら除斥期間の適用は判断の分かれるところです。非行が継続しているとなれば除斥期間は延長されるでしょう。除斥の開始日、いつから除斥期間になるか専門家でも判断は分かれます。だから綱紀調査日を設けて懲戒請求者の声を聞くのです
綱紀委員が懲戒請求者に質問をするのです。これを省くわけにはいきません。
除斥であるから綱紀調査をしなかったという京都弁護士会の態度です。
除斥であるから懲戒請求はできないという対象弁護士からの意見しか聞かずなぜ懲戒請求者の意見を聞かなかったのでしょうか。
除斥というならはっきり言って門前払いです。しかし綱紀委員会が議決したのは115日です。懲戒請求が出されたのは23日です。法律の専門家が除斥だというにはあまりにも時間がかかりすぎていませんか?
懲戒請求者は2月に懲戒を出してから毎月のように綱紀調査はまだでしょうかと京都弁護士会に問い合わせをしています。懲戒請求書では説明できなかった点やいかに対象弁護士の行為が非行に該当するか説明したかったのです。
京都弁護士会の担当は今まだ調査中ですとしか答えませんでした。業を煮やした懲戒請求者は日弁連に相当期間経過の異議申立を出しました。そしてすぐに出されたのが今回の対象弁護士を懲戒しないという議決です。
万一出された懲戒が除斥であるとしても綱紀調査はすべきです。
懲戒請求者から意見を聴取すべきです。除斥の疑いがあっても今までずっと綱紀委員会は綱紀調査をしてきました。なぜ今回だけ綱紀委員長が独断で判断したのでしょうか
この懲戒しないという議決書が私の手元にあります。
議決されたというのでしたら綱紀委員会に議案がかけられたということになります。綱紀委員会に何の資料を出したのでしょうか。綱紀調査書を見ないで議決したことになります。結局元弁護士会長の弁明書しか見ていないということです。懲戒請求者の声も聴かずに判断してしまったのです。
日弁連の綱紀委員会の手引きでは除斥についても綱紀調査をおこない調査すべきと指導しています。
【平成7928日付け日弁連事務総長回答】
綱紀委員会の委員全員に除斥原因があると解される場合でも一旦綱紀委員会に調査を請求するべきでありそのうえで全員に除斥原因があるならば綱紀委員会における手続きが停止されることになるとしている
除斥であろうと一旦は綱紀で調査をしてからでないとダメだと指導しているのです。綱紀委員会の調査とは綱紀調査をして全員が除斥か除斥でないかと判断する。それならば綱紀の手続きが停止される。つまり議決まで不要という判断もできるのですが京都弁護士会は議決をしています。綱紀調査もせず綱紀委員会にかけています。
たった1日で済む綱紀調査をなぜ京都弁護士会は省いたのでしょうか
いったいどうしたことでしょうか。誰を守ろうとしているのでしょうか?
懲戒請求者の意見を聞いて法律の専門家である綱紀委員がこれは除斥ですよとなぜ言えなかったのでしょうか?
あせりましたね。国松治一綱紀委員長代理副委員長殿
まさか、京都弁護士会綱紀委員会もこんなところまで突っ込まれると
思っていなかったでしょう。
懲戒処分が有る無しを問題にしているのではありません。
公平な審査になっているかの問題です。
(それでは次回に続く)
(資料)
『弁護士懲戒手続きの研究と実務』日本弁護士連合会調査室
2章 弁護士会の懲戒制度 綱紀委員会
 調査
(ロ) 綱紀委員会の調査は一般的に次のようにして行われる
まず、弁護士会から調査が請求された事案について、懲戒請求人、被懲戒請求人、懲戒事由に該当する事実がそれぞれ特定されているかどうか、懲戒請求人、被懲戒請求人について的確性があるかどうかを実質的に調査する。
特に懲戒事由に該当する事実が特定されているかどうかの点は綱紀委員会の調査段階では綱紀委員会の事実認定の対象を画するとともに被懲戒請求人の防御の対象を明示することになり、その後の手続きにおいても、懲戒処分の議決の効力が生じる範囲を画する等、極めて重要な意義を有するため、格別の留意が必要である。
次に被懲戒請求人に答弁書の提出を求める等して争点を整理する。争点が一応整理されたならば、調査期日を定めて懲戒請求人、被懲戒請求人、参考人等を呼び出してその供述を聴取して調書を作成(録音テープをとる会もある)したり証拠の提出を求める等して懲戒事由に該当する事実が存在するかどうか、それが懲戒に該当する非行といえるかどうかについての調査を進める。この調査の段階で除斥期間満了の有無等も調査する。調査が終了すれば議決をし、これを弁護士会に報告する。
調査期日については委員のうちから主査を決めてこれにあたらしめ、その結果を綱紀委員会に報告させてこれをもとに議決をする扱いをする会もある。
(中略)
(ハ)懲戒事由に該当する事実の存否について
懲戒事由に該当する事実が存在するか、また、その事実が懲戒事由たる非行に該当するか否か、調査の主力はこれに注がれる。(中略)
懲戒事由に該当する事実の説明が不十分で趣旨不明の場合であって、補正しうるものは懲戒請求人に対し補正を命じるべきである。
『綱紀委員会における事件配点後の調査の進行』
綱紀委員会は次の要領により配点から5週間以内に第1回呼び出しに至る等迅速に調査を進行するように努めるものとする
1 事件の配点を受けた担当委員、部会、小委員会等は配点を受けた後2週間以内に打ち合わせ期日を開いて調査方針を決定し打ち合わせ期日から3週間以内の期日をもって第1回の呼び出しをすること。ただし別添(進行要領)1に該当する事件であると判断したときは進行要領に従って簡略迅速に終結する。
2 第1回呼び出し後は別添進行要領の各号に依り調査の適正迅速な進行に務めること、
3 関係人の取調べ後原則として2か月以内には議決書を全体委員会に付するものとする。
議決書案はその作成と議決のため時間を費やすことのないように簡潔に務めること。
(進行要領)
1 簡略な処置による事件
2 懲戒不相当であることが明らかに予想できるとき
5 当事者、関係人が出頭しないとき
1及び2に該当しない事件において懲戒請求人が呼び出しに応じない場合には、原則として再呼び出しをするものとし、再呼び出しにも応じないときは呼び出しを打ち切ることができる
被調査人が呼び出しに応じない場合には再呼び出しをするものとし正当な理由なく再呼び出しにも応じないときは呼び出しを打ち切ることができる。
①②の呼び出しにあたっては不出頭の場合には再度の呼び出しをしないで調査を終了することがある旨を注記する。
6 当事者、関係人が主張、証拠を提出しないとき
当時者、関係人から主張、証拠の提出の申出があり又は委員会から提出方要請をした後不提出の非協力があったときは5に応じて取り扱うことができる
7 非協力による終結
5及び6により呼び出し、ないし主張、証拠等の提出を打ち切った場合においては次により当該事件を終結することができる。
懲戒相当とすべき心証が形成されず、他に調査の方法もないときは、これを理由として当該調査を終了し懲戒不相当とすることができる。
5の場合においても可能な限度において独自の調査を遂げ懲戒相当とすることができる
議決にあたっては当時者、関係人の非協力の経過を議決書中に必ず明記すること。
『相当期間内に懲戒手続きを終えないとき』
弁護士会が懲戒処分をなかなか出さない時には日弁連に異議申立ができ速やかに懲戒手続きを終えるよう督促ができます。
日弁連の実務書には早く懲戒処分を出せと督促があても綱紀調査をしなくてよいとの記述はありません
参考 (懲戒委員会の審査手続)
弁護士法67
 懲戒委員会は、事案の審査を求められたときは、速やかに、審査の期日を定め、対象弁護士等にその旨を通知しなければならない。
 審査を受ける弁護士又は審査を受ける弁護士法人の社員は、審査期日に出頭し、かつ、陳述することができる。この場合において、その弁護士又は弁護士法人の社員は、委員長の指揮に従わなければならない。
 懲戒委員会は、審査に関し必要があるときは、対象弁護士等、懲戒請求者、関係人及び官公署その他に対して陳述、説明又は資料の提出を求めることができる