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【塀の中から懲戒請求】塀の中から国賠訴訟勝ち取る
 
山形刑務所に服役中の受刑者と手紙のやりとりをしています。彼は強盗傷害で9年間の実刑となりました。強盗傷害で逮捕・起訴され裁判になりました。裁判員裁判のテストケースとなった裁判でした。
岩手県弁護士会の弁護士が国選弁護事件として彼の弁護活動をしました。
罪状を争うものはなく公判前手続きで弁護人と被告人は打ちあわせをして、なぜ事件に至ったのかなどを主張していくことになったのですが国選弁護人の若い弁護士が緊張したのか打ちあわせをした被告人はなぜ事件を起こしたのかの一部を飛ばしてしまいまいた。その内容を陳述すれば刑期が短くなったということはないと思いますが、本人は事件に至った需要な内容であったと認識しています。
 
山形刑務所の中から彼は元国選弁護人に懲戒請求を出しました。
パソコンも六法全書もなく十分な紙さえありませんが岩手県弁護士会に懲戒請求を出しました。ところが、国選弁護人は岩手から長崎へ登録換えをします。いわゆる懲戒逃げということです。長崎に懲戒を出しました。結果は棄却です。
国選弁護人に全てを委ねたのだからどのような証言、証拠を採用するかは弁護士の裁量に任される。そして懲戒を逃れるために長崎へ登録換えをしたのではないという棄却の内容でした。
彼は次に処分をしなかった弁護士会の綱紀委員長にも懲戒を出しました。また国選弁護人によって不利益を被ったと裁判もしていました。
 
私は、彼との手紙の中で弁護士会に懲戒を出しても無理、この内容では取れない返信をしました。違法・不法は処分を取れますが、無能は取れませんという内容です。懲戒逃げについても彼との見解は若干違いました。
しかし彼の憤懣はまったく収まりませんでした。
そうこうしているうちに刑務所に届いた弁護士会からの議決書(処分しない)を刑務所の人が彼にすぐに渡さなかったということがありました。これによって不服申立期間が過ぎて異議申立てができなくなりました。
そして今度は国賠訴訟を始めました。異議申立ができなくなったからその損害を賠償せよという内容です。60万円の慰謝料請求訴訟です。1審は棄却。2審でこの国賠は認められました。(この国賠には浦野修平弁護士が代理人に就任しています)
判決文の中に刑務官が彼に弁護士会からの議決書をすぐに渡さなかったのは、また異議申立をして弁護士に迷惑を掛ける、刑務所では静かに過ごして欲しかったという記述もありました。しかし公務員ですから渡されたものはすぐに受刑者に渡さないといけません。
 
国賠は取りましたが、彼の懲戒請求はこれで完全に終わりました。
今後は何もすることはありません
 
それでも彼との手紙のやりとりはこれからも続きます。これからは罪に向き合って反省の日々を過ごしましょう。
当初、裁判で岩手県の国選弁護人が被告人の心意をくみ取った弁護をしていれば、多くの懲戒請求や国賠訴訟もなかったのですが・・・
また弁護士会が懲戒請求を棄却するときに彼の気持ちを慰める言葉のひとつもあれば心を落ち着かせて服役できたのですが、弁護士会というところは弁護士のためにある組織ですから、受刑者の心に配慮した文章など書く訳もありません。長崎へ逃げた弁護士は今、福島に戻っています。
 山形新聞だけがこの件を記事にしてくれました。
(山形新聞 平成26827日付)
 
国に5万円賠償命令
山形刑務所文書送達訴訟  仙台高裁、一審判決取り消し
 
山形刑務所の職員が男性受刑者に送達された文書をすぐに渡さなかったため弁護士の懲戒請求に関する不服申し立ての機会を奪われたとして受刑者が国を相手に慰謝料60万円の損害を求めた訴訟お控訴審で、仙台高裁(水野邦夫裁判長)が請求を棄却した山形地裁の一審判決を取り消し国に5万円の慰謝料を命じていたことが関係者への取材で分かった。
訴状によると受刑者は20071月から収監され0812月、公判を担当した弁護士の懲戒請求を所属弁護士会に申し立てた。09319日弁護士会から届いた懲戒請求の棄却通知を刑務所職員はすぐに渡さなかったと主張。同23日になって文書とともに渡された封筒のコピーには「受109号(21323)」と記載されていたため、受刑者は同23日に送達されたと誤信した。申立期間は送達から60日で起算日を誤ったため期間内に不服申立てができなかったとしていた。
一審では封筒のコピーの記載内容が配達日を誤信する内容とはいえないなどとして受刑者の請求を棄却、一方、控訴審判決で水野裁判長はコピーの記載内容について「常識的に見て送達日が23日だと誤信を招く」と認定した。
消印が「同17日」とあったためコピーにある日付について受刑者が質問をしたが「職員は正確な回答をしていない」と指摘。
受刑者の信書を適正に管理する注意義務を怠り刑務所側には配達日を誤信させた過失があると判断した。受刑者からの質問に十分な調査をして答える義務も怠ったとした。
裁判時の読売新聞
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