判決批判を引用…実は自ら匿名で執筆 3弁護士を戒告
 民事訴訟の代理人を務めた弁護士が、匿名で判決を批判する記事を書き、他人の意見であるかのようにして控訴を申し立てる書類で引用した――。そんな行為があったとして、日本弁護士連合会が、国内最大手の弁護士事務所に所属する弁護士3人を戒告の懲戒処分にした。「フェアな姿勢が期待される弁護士として品位を失う行為だ」と批判した。一方、3人は「弁護士活動への過度な規制だ」として処分の取り消しを求めている。

処分を受けたのは「西村あさひ法律事務所」(主事務所・東京)に所属する3人の男性弁護士。このうち1人は50代で、国内外の大学で講師や客員教授を務め、企業の社外監査役もしている。別の1人は40代で裁判官出身。もう1人は30代。

日弁連が公表した処分理由などによると、3人の弁護士は、株の誤発注をめぐる損害賠償訴訟の原告側の代理人を務めた。東京地裁は2009年12月、請求の一部を認める判決を出したが、原告側は不服として控訴。3人は四つの法律雑誌に判決の論評を載せるよう働きかけ、批判的な記事を書いた。記事は、匿名や「編集部」の名義で掲載された。

その後、弁護士らは裁判所に出す控訴状に記事を引用。「すでに公刊物でも指摘されているが、一審判決は様々な矛盾点や疑問点を内包している」とした。

朝日新聞社
この懲戒処分は元々第一東京弁護士会綱紀委員会が棄却したものを日弁連で懲戒処分となったもの、日本で一番の法律事務所の西村あさひ法律事務所ですからよく懲戒になったなと思いました。
上の朝日新聞はよくわからない記事でしたが続報で分かりました3人の弁護士が懲戒処分の取り消しを求めて日弁連を相手に裁判を
起こしたということです。
 

 

日弁連、他人装い判決批判と戒告 取り消し求め弁護士提訴

 

 代理人を務めた民事訴訟の一審判決を批判する記事を匿名で書き、他人の意見と装って控訴状に引用したのは「品位を失う非行だ」として、日弁連が弁護士3人を戒告の懲戒処分にしていたことが7日、関係者への取材で分かった。3人は「理由に事実誤認がある」と処分取り消しを求め、弁護士法の規定で一審となる東京高裁に提訴した。
 3人は国内最大手の「西村あさひ法律事務所」(主事務所・東京)に所属し、企業合併や知的財産の分野で著名な男性弁護士も含まれている。
以上サンケイ
日弁連・懲戒の流れ

 

 
戒告処分を受けた弁護士
岩倉正和弁護士 20173

 

佐々木秀弁護士 31105

 

森 倫洋弁護士 32503
 
西村あさひ法律事務所という日本で最大の法律事務所です。

 

 

 

 
(3人の懲戒処分の要旨は同じです)

 

懲 戒 処 分 の 公 告

 

第一東京弁護士会が20131224日付でなし20131225日に効力を生じた被懲戒者に対する懲戒処分について、懲戒請求者から異議の申出があった。日本弁護士連合会は上記懲戒処分を変更して以下のとおり懲戒の処分をしたので懲戒処分の公告及び公表等に関する規程第3条第6号の規定により公告する

 

           記

 

1処分を受けた弁護士
 氏名     岩倉正和
 登録番号   20173
 事務所    東京都港区赤坂1
        西村あさひ法律事務所
2処分の内容  戒告
3処分の理由の要旨
  1. 本件は被懲戒者A弁護士、B弁護士及びC弁護士(以下「被懲戒者ら」という)が訴訟代理人として関与した事件の一審判決について批判する論評を法律雑誌であるD誌、E誌、F誌及びG誌に匿名又は編集部名義で掲載させた行為(懲戒事由1)並びに上記事件の控訴状にD誌の記事を引用して「既に公刊物(D誌○号○頁以下)においても指摘されているが原判決は様々な矛盾点、疑問点を内包している」と記載した行為(懲戒請求2.以下本件引用という)が問題とされた事案である。
  2. 懲戒請求事由(1)につき第一東京弁護士会(以下「原弁護士会」という)は被懲戒者らが自らに執筆させるよう要求したとは認められず、出版社側における執筆者名義の選択を困難にする不当な要求をしたとは認められない。公正中立な編集部などを装い批評記事を掲載したもので、妥当性が疑われるが組織的、計画的とはいえず執筆内容も訴訟を有利に導くとはいえない、等の理由から弁護士の品位を失うべき非行に当たらないと判断した。
    しかし、被懲戒者らが出版社へ送信したメールの内容や非顕名での執筆を前提に編集部とやりとりした事実からみれば判決文の提供だけでなく被顕名での論評の執筆、掲載をも目的として多数の法律雑誌に積極的に働きかけをしたと認めざるを得ない。執筆内容も被懲戒者の依頼者側に不利益な部分の問題点を指摘するものとなっていることは否定できず、そのような記事が複数の法律雑誌に匿名又は編集部名義で掲載されることが訴訟を有利に導くものではないとはいえず、行為の組織性、計画性も否定できない。懲戒請求事由1の行為は訴訟の一方当事者の関係者や
    編集部を装い、批評記事を掲載したもので、読者の信頼を裏切るものであり弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
  3. 原弁護士会は懲戒請求2につきフェアーな姿勢が期待される弁護士としての品位に悖るが、組織性や計画性はなく、裁判官の判断に影響することは考え難いとして弁護士の品位を失うべき非行に当たるとはいえないと判断した。
    しかし、控訴状は裁判所に提出する重要な書面であり慎重な検討に基づいて作成されたはずであるから、組織性や計画性を殊更に問題にするのは相当ではない。本件引用は裁判官に参照を求める趣旨であり、自ら執筆した記事を第三者によるは判決批判であるかのように引用しているから裁判官を誤解させる行為であり直ちに判決に影響する可能性は少ないとしてもフェアーな姿勢が期待される弁護士として品位を失うべき非行に該当する。
  4. 以上のことから被懲戒者を懲戒しないとした原弁護士会の決定を取消、被懲戒者を戒告とするのが相当である。なお本件には委員2名による懲戒しないことを相当とする反対意見がある。
    4処分が効力を生じた日
    20141114
    201511日 日本弁護士連合会