弁護士自治を考える会
日弁連広報誌「自由と正義」2018年2月号に掲載された綱紀審査会の運用状況について、いくつかの審査相当の事案が紹介されています。
所属弁護士会で処分なし、日弁連で異議申立が認められず、最後に綱紀審査会で「審査相当」となりました。この後所属弁護士会に審議が付されます。処分になるかどうかはまだ分かりません。
顧問先を訴えたことが弁護士として非行となるか!?

弁護士職務基本規程  
第二十八条 弁護士は、前条に規定するもののほか、次の各号のいずれかに該当する事件については、その職務を行っては ならない。ただし、第一号及び第四号に掲げる事件についてその依頼者が同意した場合、第二号に掲げる事件についてその 依頼者及び相手方が同意した場合並びに第三号に掲げる事件についてその依頼者及び他の依頼者のいずれもが同意した場合は、この限りでない。
一 相手方が配偶者、直系血族、兄弟姉妹又は同居の親族である事件
二 受任している他の事件の依頼者又は継続的な法律事務の提供を約している者を相手方とする事件
三 依頼者の利益と他の依頼者の利益が相反する事件
四 依頼者の利益と自己の経済的利益が相反する事件
審査相当事案について(その4)
(1)綱紀審査申出人(法人)と顧問契約を結んでいた対象弁護士が、綱紀審査申出人の元職員の代理人として、綱紀審査申出人に対して損害賠償を請求する旨の通知書を送付したことが、継続的な法律事務の提供を約している者を相手方とする事件について職務を行ってはならないとする弁護士職務基本規程第28条第2項に該当し、弁護士としての品位を失うべき非行に当たるとされた事例
(2)綱紀審査会の議決の理由の要旨
①原弁護士会綱紀委員会議決書(以下「原議決書」という)は平成25年6月25日以降、綱紀審査申出人が対象弁護士に対して法律相談や書類の確認等の具体的な顧問業務を依頼していた旨の主張や証拠がなく、顧問料の支払をしていた旨の主張や証拠もないことを理由に、遅くとも平成27年6月24日に対象弁護士が綱紀審査申出人の元職員の代理人として綱紀審査申出人に対して損害賠償を請求する旨の通知書を送付した時点において、対象弁護士と綱紀審査申出人との顧問契約は終了していたものと考えられ、対象弁護士が綱紀審査申出人の顧問弁護士であったとは認めがたいした。
しかし原議決書も平成25年6月25日の時点では対象弁護士が自身を綱紀審査申出人の顧問弁護士と認識していたものとし、ただ顧問料の請求及び支払については対象弁護士及び綱紀審査申出人の双方とも失念していたものとしているのであって、顧問料の請求や支払がなかったことを理由に顧問契約が終了していたとするのは、矛盾している。
また、そもそも弁護士職務基本規程第28条第2号は「継続的な法律事務の提供をしている者を相手方とする事件」を対象としており、継続的に法律事務を提供することを約していれば、法律相談や書類の確認等の具体的な業務を行っていたか否かを問わず、これに該当することになる。
そして本件顧問契約には、契約の期間満了前に契約当事者のいずれからも異議がないときは同一条件で更新する旨の条項が設けられている。
②対象弁護士は平成25年7月6日頃、綱紀審査申出人の役員からの申し入れにより本件顧問契約が合意解除された旨を主張する。
しかし、綱紀審査申出人と対象弁護士との間で解約合意書等の書類は作成されておらず、上記の合意解除の事実を裏付ける証拠はない。
③その後、平成27年6月24日に対象弁護士が綱紀審査申出人の元職員の代理人として綱紀審査申出人に対して損害賠償を求めるまでには、本件顧問契約の終了を基礎づける事実は認められない。
平成27年6月24日当時、対象弁護士と綱紀審査申出人との間の本件顧問契約は依然として存続していたものと認められる。
対象弁護士の行為は継続的な法律事務の提供を約している者を相手方とする事件について職務を行ったものというほかなく、弁護士職務基本規程第28条第2項に該当するものといわざるを得ず、弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
(3)綱紀審査会の議決の年月日 2017年(平成29年)11月14日