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弁護士の懲戒制度、懲戒の仕組みなどを公開しています。

別書庫で「元被告人が語る裁判員制度なんかやめてしまえ。」を連載しています。
これは、約10年前に裁判員裁判のモデルケースとなった強盗致傷の盛岡地裁であった裁判、元服役囚が懲役を終えて社会復帰しています。彼とは山形刑務所で服役していたときから文通をしていました、服役後東京で2回会いました。彼はため息交じりに言いました。「弁護士もピンからキリまで、私はほんとに運が悪かった。」「これから裁判員裁判の弁護人になるのであれば、先ず、どこかのアナウンス学院に行き発声と滑舌、そして、どこかの劇団に入り、人前でも上がらない訓練、とにかく頭が真っ白にならない訓練をすべき」と笑って言いましたが、内心はむかむかしていたと思います。
 
「塀の中からの懲戒請求 裁判員裁判なんかやめてしまえ!と元被告人」

 

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彼の裁判の国選弁護人は岩手でも中堅事務所の弁護士でしたが、裁判の判決の後に即長崎に登録換えしました。登録換えというものではなく岩手に居れなくなって逃げたというのが正解でしょう。その後、元被告人から長崎に逃げたのが分かり長崎県弁護士会に懲戒請求が出されましたが、棄却(処分しない)となって、今度は直ちに福島県弁護士会に登録換えしました。現在は福島県いわき市に自分が設立した事務所のボス弁です。
 
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             覚悟なき士業
 
岩手の裁判員裁判のモデルケースの弁護方法に恥じることが何もなければ、岩手から長崎、福島と登録を換えする必要はありません。堂々としていればよいのです。この登録換えの事務手続きについても不正があったことが判明しました。いわゆる「懲戒逃げ」です。弁護士だけでは「懲戒逃げ」はできません。弁護士会の協力が無ければできません。
その記事を書く前に「登録換え」について《日弁連調査室偏》の「懲戒請求の実務と研究」から一部引用してご説明します。
 
 調査開始に伴う登録換え等の制限
 
「懲戒の手続に付された」の意味
平成15年改正前の法63条(現法621項)(登録換等の請求の制限)
第六十二条 懲戒の手続に付された弁護士は、その手続が結了するまで登録換又は登録取消の請求をすることができない。

 

この解釈については、綱紀委員会の手続に付されたときをいうのか(非限定説)懲戒委員会の手続に付されたときをいうのか(限定説)、考え方が分かれていたが。平成1169日付けで日弁連会長から各弁護士会会長宛に通知した「弁護士法第63条及び第64条の解釈について(通知)」と題する文書により、非限定説を採ることが明確にされ、平成1191日以降そのように取り扱われていた。その後、平成15年の法改正により、法582項が「弁護士会は所属の弁護士又は弁護士法人について、懲戒の事由があると思料するとき又は前項の請求(懲戒請求があったときは懲戒の手続に付し綱紀委員会に事案の調査をさせなければならない」と規定され綱紀委員会に事案の調査をされることをもって「懲戒の手続に付された」ときであることが条文上明らかとなった。より具体的には「懲戒の手続に付された」とは弁護士会の会長が綱紀委員会に事案の調査を命じる旨の決済をしたときと解される。
 
「手続が結了する」の意味
 
621項の「その手続が結了するまで」とはどの時点を指すのかについて、弁護士会又は日弁連において対象弁護士等に対し処分又は不処分の通知をした時点と解する見解、対象弁護士等、懲戒請求者その他法が定めた全ての者に対し処分又は不処分の通知をした時点と解する見解及び懲戒処分が確定した時点と解する見解がある。
 第一の見解をとれば、対象弁護士が弁護士会から処分又は不処分の通知を受けた後、異議の申出により日弁連の綱紀委員会に付議されるまでの間及び原弁護士会の綱紀委員会の「懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当とする」議決に対する異議の申出に対して日弁連が原弁護士会の処分を取り消して対象弁護士等に通知をした後、原弁護士会の懲戒委員会に付議されるまでの間は法621項の規約を受けないこととなる。
 
第三の見解は、この点を重視し、この間にいわゆる「懲戒逃れ」をする余地を残すことは望ましくなく、「結了」とは「確定」を意味すると解釈するのである。しかしながら、原弁護士会が処分の告知をしている場合には、少なくとも右処分の効力は発生しており、懲戒処分を全く逃れてしまうわけではなく、第一の見解を採った場合の「懲戒逃れ」の可能性はさほど大きいものではない。更には弁護士会が不処分の決定をした場合には、対象弁護士は綱紀委員会の手続に付されてから不処分の通知を受けるまでの間身分の制約を加えられていたのであるから、それ以上に当該弁護士に身分に制約を加えることは妥当ではない。
また、第二の見解は懲戒手続が結了するとは法が定める全ての手続が終了するときと解するのが素直であること、通知について規定する法64条の7は「その懲戒の手続に関し・・・通知しなければならない」としていることを根拠とするが、この見解によれば、例えば、懲戒請求者が所在不明となり、同人に対する通知が到達しない場合には、懲戒手続は、長期間結了しないことになり、対象弁護士等の権利を不当に制限することになりかねず妥当ではない。したがって第一の見解が妥当と考えられる、
なお、第一の見解によると、弁護士会の綱紀委員会で「懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当とする議決」がなされ、その後、異議の申出がなされ、日弁連の綱紀委員会に付議された場合に、対象弁護士は綱紀委員会の手続に付された時点で登録換え等の制限が加えられ、不処分の通知を受けた時点でこの制約が解除されるものの、日弁連の綱紀委員会に付議された時点で再度登録換え等の制限が加えられることになるが、現行の法の解釈上はやむおえない結果であるといわざるをえないであろう。
以上引用
 
つまり、懲戒の結了とは、所属弁護士会が不処分と決定した後に3か月の(以前は60日)異議申立期間があり、日弁連に異議申立があって日弁連綱紀委員会が不処分とし日弁連会長(事務総長)の決定があるまで結了とはならず、その間は登録換えはできないということです。

 

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所属会を経て日弁連綱紀委員会で棄却になるまで登録換えはできず、へたをすれば、2年から3年は他の会に登録換えできない事になりますがこれは国が決めたのでもなく、「弁護士自治」で、ご自分達が決められたとこです。
 
弁護士の懲戒権を弁護士会・日弁連が持つために法58条の「何人」でも懲戒が可能と懲戒が結了するまでは登録換えはできないことは自治を得るための条件のようなものでした。