懲 戒 処 分 の 公 告 (裁決の公告・処分取消)

日弁連広報誌「自由と正義」2019年1月号に掲載された弁護士の懲戒処分「裁決の公告」処分取消公告、第二東京弁護士会、新保義隆弁護士の処分取消公告

業務停止1月が「処分取消」に変更されました。
弁護士の懲戒処分が日弁連の審査請求により取消になることが多くなりました。
しかし、取消しなった処分は、「戒告」「処分取消」になったものです。

懲戒処分の変更のケースでも退会命令が業務停止2年に変更、業務停止3月が業務停止2月になったもの、業務停止6月が戒告に変更されたものがありますが、今回の業務停止1月が戒告に変更ではなく処分取消になったケースはたいへん珍しいケースです。

第二東京弁護士会から処分を受けた被懲戒者が処分は不当であると日弁連に審査請求を出して、これが認められたものですが2016年4月25日に処分がなされ2019年4月8日に処分取消になりました。取消まで3年かかりました。二弁で懲戒処分されたものが日弁連で完全に覆されました。二弁の綱紀委員会、懲戒委員会はいったいどういう判断で業務停止1月を下したのか、と疑問はありますが所属弁護士会の懲戒の審議は、懲戒請求者から出された懲戒請求書と被調査人の答弁書で審議し判断をします。この時の判断はこれで間違いなかった。推測ですが被調査人(審査請求人)は所属弁護士会の懲戒審議にはしっかりとした書面、重要な証拠を提出せず、処分を受けてから、これは大変なことになったと日弁連懲戒委員会に懲戒の判断が決定される重要な証拠書類を提出したのではないかと思います。常に甘い審議をやってくれた二弁がまさか業務停止を選択するとは思ってもみなかったのかもしれません。

3年経って処分取消になって業務停止中の損害はどうしてくれるのか、と審査請求人が二弁に対し損害賠償請求訴訟の提起も考えられますが、そこまではしないでしょう。二弁はその時に出された書面での判断しただけと弁明するからです。
懲戒請求者に対して損害賠償請求を申し立てることもほとんど無いでしょう。懲戒請求者は弁護士会に弁護士の非行容疑を通報しただけです。まったく根も葉もない弁護士を陥れるだけの目的の懲戒請求ではないからと思います。二弁が業務停止の処分を出すような懲戒請求書や証拠書面が明かな虚偽、偽造ということであれば別ですが、弁護士の懲戒制度とはこういう仕組みです。この懲戒は結了となりました。

 

先に取消された第二東京弁護士会の懲戒処分の要旨 2016年8月号

懲戒処分の公告
第二東京弁護士会がなした懲戒の処分について同会から以下のとおり通知を受けたので、懲戒処分の公告公表に関する規定第3条第1号の規定により公告する
1 処分を受けた弁護士
氏名 新保義隆  登録番号 21768
事務所 東京都千代田区内幸町1-1
新保法律事務所
2 処分の内容   業務停止1月(2019年4月12日 審査請求 処分取消)

3 処分の理由の要旨
被懲戒者は、2007年以降A株式会社の取締役会の主導権を確保したA社の株主であるBらが代表者である米国のC社に対するA社の他の株主からの損害賠償請求を免れ、またA社のBらと対立する株主の権利を失権させるために、2008年6月にA社の自己破産申立て等をして破産手続開始決定を得ることを企画して事を進めていた経緯を認識した上で同年5月24日、A社との間でA社の使途不明金の支出先に対する不当利得返還請求訴訟事件について着手金を315万円とする委任契約書を作成し、同年6月2日A社の準自己破産申立事件について報酬を735万円とする委任契約書を作成し同年5月26日に上記両事件の弁護士報酬及び諸費用の預り金としてA社から先行して被懲戒者の銀行口座に2500万円を送金させる等して破産原因を存在が疑わしいA社について破産原因を演出して破産手続開始決定の取得を容易ならしめる行為に協力し、またBらの上記事情に乗じて、弁護士報酬として適正かつ妥当とはいえない過大な報酬を提示し受領した。
被懲戒者の上記行為は、弁護士職務基本規定第14条及び第24条に違反し、弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
4 処分が効力を生じた年月日2016年4月25日 2016年8月1日  日本弁護士連合会
【弁護士職務基本規定】
(違法行為の助長)
第十四条弁護士は、詐欺的取引、暴力その他違法若しくは不正な行為を助長し、又はこれらの行為を利用してはならない。
(弁護士報酬)
第二十四条 弁護士は経済的利益事案の難易時間及び労力その他の事情に照らして 適正かつ妥当な弁護士報酬を提示しなければならない。

 

裁決の公告(処分取消) 2019年6月号

第二東京弁護士会が2016年4月25日に告知した同会所属弁護士新保義隆会員(登録番号217686)に対する懲戒処分(業務停止1月)について同人から行政不服審査法の規程による審査請求があり本会は2019年4月8日弁護士法第59条の規程により、懲戒委員会の議決に基づいて、以下のとおり裁決したので懲戒処分の公告及公表等に関する規程第3条第3号の規程により公告する。
                記

1 採決の内容

(1)審査請求人に対する懲戒処分(業務停止1月)を取り消す。

(2)審査請求人を懲戒しない。

2 採決の理由の要旨

(1)本件は審査請求人が2007年1月から同年8月までA社の株主である米国B社らの代理人としてA社を相手方として弁護士業務を行っていたところ2008年5月から同年6月まで、今度はA社の代理人として不当利得返還請求事件(以下)「本件不当利得請求事件」という)及び自己破産申立事件(以下「本件自己破産申立事件」という)を受任したことが利益相反による職務禁止に違反しA社の自己破産申立に際し破産原因を粉飾して破産開始手続開始決定に導いた行為が違法又は不正な行為の助長に該当し、さらにA社が近日中に自己破産申立てをすることを知りながら本件不当利得返還請求事件を受任して両事件にかかる過大な弁護士報酬を提示義務違反に該当するとしてA社の別の株主らから懲戒請求がなされた事案である。
(2)審査請求人に係る本件懲戒請求につき第二東京弁護士会(以下「原弁護士会」という)は利益相反の点については、双方の同意があることから弁護士職務基本規定(以下「職務基本規程」という)第27条第3号や同28条第3号の違反には該当しないとしたが、米国B社の代表取締役であるCらの違反又は不正な行為に関する他の株主からの責任追及を免れるためA社の破産原因を演出して破産開始決定を得ようとする行為について、審査請求人がこれらCらによる行為の意味を十分に認識の上、本件破産申立事件を受任して強力することは、違法又は不正な行為を助長する行為(職務基本規程第14条)と判断せざる得ないとし、かつ、本件破産申立てを近日中にすることを十分認識しながら、本件不当利得返還請求事件の着手金315万円及び本件破産申立事件の報酬735万円を約定し、両事件の弁護士報酬及び諸費用の預り金として2500万円を送金させた行為は敵さえい妥当な報酬の提示とはいえず、過大な報酬額を提示して受領した審査請求人の行為は、職務基本規程第24条に違反すると判断し、審査請求人を業務停止1月の処分に付した。
(3)日本弁護士連合会懲戒委員会は審査請求人から新たに提出された証拠も含め審査した結果、以下のとおり判断した。
(4)違法又は不正な行為の助長について、原弁護士会懲戒委員会の議決書(以下「原議決書」という)はCらには、米国B社に対する義務違反に基づく責任追及を免れるためにA社を破産させようとの方針により事を進めていた経緯が認められると認定したが、この判断の前提となったCの利益相反取引は認められず、米国B社の義務違反を認めることも困難であり、またC自身はA社のDらに対し、破産申請に反対するとのメールを送っていた事実も認められるので、この原議決書の認定もまた維持することはできない。
なお、原議決書は、審査請求人のメモを根拠に、既にA社の破産申立てを行うことが協議されていたとの事実を認定しているが、A社の社内会議議事録や関係者のメール等の証拠に照らせば、このメモは次から次と書き足していった可能性もあり、このメモを根拠に、計画的にA社を破産させようとの方針により事を進めていたと認めることはできない。
また原弁護士会はA社に破産原因が存在していたか疑問があると認定したが、破産開始決定に対する抗告審である裁判所の決定も一応の合理性が認められるとしたほか、A社の破産管財人からも問題視されていない。さらに、多数の破産管財人からも問題視されていない。さらに、多数の投資家被害の可能性もある事件であって、負債額は更に膨れ上がる可能性があったことからすれば、早期に破産手続により処理する必要性は高かったものと認められ、A社に破産原因があったが疑問だとする原議決書の認定を認めることはできない。
さらに、原議決書は、本件破産申立ての直前に2500万円を審査請求人の口座に移動する行為及び租税債務約4200万円を発生させる修正申告をする行為が少なくともA社について破産原因を演出する行為であると認定したが、上記のとおりCの利益相反行為や、米国B社の義務違反、Cらが不当な意図により計画的にA社の本件破産申立てを行った事実は認められず、またA社は支払不能の状態にありさらに、多数の投資家被害の可能性もあって破産処理の必要性も高かったことからすると、本件破産申立てが破産申立てが破産原因を演出することよりなされたものと認めることはできない。
結局、本件破産申立てにつきCらの違法又は不正な意図に基づき破産原因を演出してなされた行為であると認められないので審査請求人が職務基本規程第14条に違反する行為を行ったものと認めることはできない。
(5)弁護士報酬の過大について、原議決書は、審査請求人がCらの違法又は不正な行為に助力し、かつ、破産申立てを近日中にすることを認識しながら、本件不当利得返還請求事件の着手金315万円及び本件破産申立事件の報酬735万円を約定し両事件の弁護士報酬及び諸費用の預り金2500万円を送金させた行為は適正妥当な報酬の提示とはいえず、過大な報酬額を提示して受領したものと認定した。
しかし、上記のとおり審査請求人が本件破産申立てにおいてCらの違法行為又は不正な行為に助力したとの事実は認められない。また上記のとおり、審査請求人のメモを根拠に、審査請求人がその時点で本件破産申立てを近日中にすることを認識していたと認めることはできない。
なお、原議決書はE弁護士の意見を前提に、本件不当利得返還請求事件及び本件破産申立事件は弁護士だけが利得を得る事件であると指摘しているが、これも妥当な判断とはいえない。本件不当利得返還請求事件は、外部の公認会計士の調査を受けて不明朗な資金流出の返還を求めるために提訴されたものであり、A社の破産手続開始決定後は破産管財人に引き継がれ、約2200万円の認容判決や和解等で解決していることから、提訴の必要性があったことは否定できない。A社の破産申立ても上記のとおり必要な手続であったと認められる。
弁護士報酬の金額については本件不当利得返還請求事件の着手金は、訴額が約3億円であるが裁判所が遠方であること、被告の徹底抗戦が予想されること、回収可能性を考慮して、実質1億円の請求として着手金約300万円という数字を出したことが認められ、また、本件破産申立事件の報酬は多数の投資家被害が予想される事件で予納金も高いこと、破産開始手続開始決定に対して徹底抗戦が予想されることなどから、800万円から1000万円が妥当だが、本件不当利得返還請求事件で着手金約300万円を受領していることから、それを差引いても約700万円としたことが認められる。これら弁護士報酬の金額については裁判所も特に問題としておらず、破産管財人も特に返金を求めていないのであるから、弁護士報酬の金額それ自体が適正かつ妥当な範囲を超える過大なものであったということはできない。
以上から本件において審査請求人がA社に請求し受領した弁護士報酬が職務基本規程第24条に違反するものであったとは認められない。
(6)よって、本件は、審査請求人の非行事実は認めることができず、原弁護士会の処分を取り消し、審査請求人を懲戒しないこととする。
3 採決が効力を生じた年月日 2019年4月12日
2019年6月1日日本弁護士連合会