弁護士懲戒制度の手続の実務と研究 

会に弁護士懲戒請求制度や手続き、について質問が寄せられていますので日弁連調査室編の弁護士懲戒手続の実務と研究を引用してお答えします。

重複する懲戒請求について

第2章 弁護士会の懲戒制度

 

② 重複する懲戒請求

すでに懲戒請求がなされている弁護士に対して、まだ弁護士会の結論が出ていない段階で、別途同一の事実に関して懲戒請求がなされた場合、後発事件は新たな案件として綱紀委員会に調査を求めるべきである。調査を求められた綱紀委員会では先行事件が綱紀委員会の段階であるときには先行事件と併合して調査すべきである。
先行事件と後発事件が同一の内容である場合に、両者を別個独立の手続で調査することは不合理であるあためである。

他方先行事件が懲戒委員会で審査されているときには、実質的な調査を行わずに直ちに『懲戒委員会に事案の審査を求めることを相当とする』旨の議決をすることが相当である。この場合、後発案件について、民事訴訟の二重起訴の禁止と同様に考えて不適法と評価し「懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当とする」旨の決議をすることが相当であるとの見解がありうる。
しかしこのような取扱いを認めると、後発事件の懲戒請求者が日弁連に異議の申出をすることにより同一の案件が懲戒委員会と日弁連の綱紀委員会に継続することになり両者の判断が食い違った場合に複雑な問題が生じ相当ではない。
そして懲戒委員会で審査された場合は、懲戒委員会では先行事件と併合して審査することになろう。
なお弁護士会において法58条5項または6項に規定する結論(懲戒すること又は懲戒しないことを相当と認める旨の決議)が出ている事案について、再度の懲戒請求があった場合には、一事不再理ないし二重の危険の禁止の趣旨、あるいは二重処罰の禁止の趣旨から、再度懲戒手続を行うことは相当でない(同旨平成3年4月1日付日弁連事務総長回答)ただし、同一の案件かどうかを判断するにあたっては、同一人から同一の事件に関する請求のような場合を除き、実質的な判断を必要とする場合が多いであろうから、綱紀委員会に調査を求め、その判断を待つべきである。

以上引用

被調査人が同じで同じ懲戒事由の懲戒請求の申し立てがあった場合は『併合』するとしたが、同一かどうかの判断は綱紀委員会で調査を求めるべきである。併合した場合は懲戒請求者にその旨を通知するとなっているが、議決書で併合を知る事が多い。