弁護士懲戒手続の研究と実務

 

タイトル自治的懲戒制度の根拠

弁護士に対する懲戒権行使が弁護士会・日弁連に委ねられていることは、次の理由に基づくものと考えられる。
まず第一に、弁護士は基本的人権の擁護・社会正義の実現という使命を有し、憲法上も国家機関による不当な人権侵害から国民の基本的人権を防御する任務が規定されており(憲法34条、37条3項)国家機関が国民の基本的人権を侵害するおそれのある場合には国家機関と鋭く対立することも予定されている。したがって弁護士と対立関係に立ちうる国家機関に懲戒権行使を委ねることは好ましくないばかりでなく、弁護士にその使命を全うさせることも困難になる。
そこで弁護士の職務に対する国家機関の監督を排除するため、その自治団体に懲戒権行使の権限を認めたものである。

第2に、訴訟において適正な裁判を実現し、国民に適正な裁判への信頼を与えるためには、裁判所や検察庁その他の国家機関の監督には服さない弁護士の存在が好ましいという機能的側面もある。

第3に弁護士に対する懲戒権行使を委ねるものとして、弁護士会・日弁連がそれに十分応えうる自治能力を有していると判断されたこともあげなければならない。
弁護士会は厳しい資格要件を備えた弁護士によって構成されていると判断されたこともあげなければならない。弁護士会は厳しい資格要件を備えた弁護士によって構成され戦前から弁護士自治を要求する声と努力の下に漸次、自律性・主体性を獲得してきた中で、その社会的信頼も徐々に高まり弁護士会の自治能力も培われてきたのである。
我が国の現行懲戒制度に対しては、これまで何度か、「同僚裁判」であるとか、弁護士会の自治能力が欠如しているなどという非難がなされたが、これらの非難は到底懲戒制度の運用の実態に即したものとはいえない

 

弁護士自治を考える会

以上、弁護士がいう弁護士自治における懲戒制度の根拠です。
弁護士が執筆したものですから、能書き、絵にかいた餅、仰っていることと実態が違う等々、様々な感想、ご意見があると思います。自治制度の根拠は正しいが現実の懲戒制度が機能していない、遅い、甘い、恣意的であるということはこれまでも当会ブログで多々主張してまいりました。

国家機関による監督排除、懲戒権行使は弁護士会・日弁連にしかないというのであれば、最近相次ぐ、懲戒請求を申し立てされて綱紀委員会の棄却の議決もないにもかかわらず裁判所にこの懲戒請求は不当と判断してください。そして賠償金も認めてくださいという報復的損害賠償請求訴訟を提起した事案はどう説明をするのでしょうか? 

弁護士会綱紀委員会より裁判所に判断を委ねるということは弁護士自らが「弁護士に対する懲戒権行使はもう弁護士会・日弁連に委ねることはできない、弁護士会は信用できない、裁判所が先」という弁護士の自治制度への反乱です、弁護士自治不要論です、

弁護士自治を認めるかわりに「何人」にも認められた懲戒請求制度ですが、弁護士自ら懲戒制度を崩壊させるという事態になっても弁護士会・日弁連は弁護士らに何ら指導もありません。これは弁護士会・日弁連、自らが自治を放棄したとみなされても仕方ありません。

これからは懲戒請求ではなく検察への告訴・告発、裁判所への訴訟提起を優先しなければなりません。懲戒請求を出して即訴えられるのですから今後は誰も弁護士への非行を訴えることはできません。

弁護士の不祥事、非行の処分を求めたければ国家機関に求めてくださいと、懲戒は出さないでくださいという日弁連・弁護士会のメッセージです。