弁護士が登録換えを申請した時に懲戒請求の申立があり異動できない問題

(登録換等の請求の制限) 第六十三条 懲戒の手続に付された弁護士は、その手続が結了するまで登録換又は登録 取消の請求をすることができない。

懲戒を出された弁護士が必ずいうのが「登録換えの機会が失われた」「登録換えが出来ない」と反論してきます。実は弁護士はこれしか言うことがないのです。

登録換えの実態

弁護士の登録についてみてみましょう。弁護士が司法試験に合格し弁護士会への登録はどういう理由で行うのか、

(弁護士として仕事をするのは単位弁護士会と日弁連に入会しなければなりません。)

大学卒業した馴染みの土地。司法試験の合格地、司法修習地の弁護士会、法律事務所の採用試験で合格となった事務所の所在地の弁護士会、学生時代から世話になった事務所があり採用されたのでその地域の弁護士会

だいたい、このような感じでしょう。地方は問題なくその地域にある弁護士会に入ります。地域には弁護士会はひとつしかありません。問題となるのが、東京です。東京には3つの大きな弁護士会があります。

東京弁護士会・第一東京弁護士会・第二東京弁護士会

3つに何か違いがあるでしょうか、特にありません。会費も同じようなものです。役員に変な奴がいて会を牛耳っていると気が付くのは入会してそこそこしてから、懲戒の審査が甘いというのは入会して懲戒を出されるくらい仕事をしてからです。新人が登録時にここは懲戒が甘いから決めましたということはあり得ないでしょう。

所属を決定するのは事務所のボス弁

新人弁護士の登録でいちばん影響力があるのは、法律事務所長の弁護士、いわゆるボス弁です。法律事務所に就職したら、そこのボス弁の所属の会に入会するのが一般的です。弁護士会費も事務所持ち。事務所の先輩も同じ弁護士会、派閥もボス弁と同じ、ボス弁も新人を登録させれば弁護士会や派閥で存在感が増していきます。独立して自分の事務所を持っても元の事務所や派閥の繋がりもあり引越して遠方に行かない限り登録換えすることはありません。

結婚、離婚、親の介護等々で登録換えすることもよくあります。東京から地方へ、地方から逆に東京三会に登録換えするのもよくあります、毎月、自由と正義に登録換えの公表だけで50件から60件掲載されます。

自由と正義7月号 登録換え申請

登録換えまでにかかる月数

書類をそろえて、現在所属する弁護士会と登録換え先の弁護士会に申請します。移動先の弁護士会の常議委員会の承認を得なければなりません。事務所の移転先を先ず決めなければなりません。早くても半年程度はかかるとのこと。

登録換えを考えていたら懲戒を出された

懲戒の事由にもよりますが、裁判負けたのは弁護士のせいだとか単なる苦情、嫌がらせのようなものであれば登録換えの申請終了までは約半年ありますから、その間に綱紀委員会は懲戒請求棄却を出してくれるはずです。懲戒請求の結了の書面を次の弁護士会事務局に提出します、

「懲戒相当」になりそうな事案であれば、弁護士会が登録換えさせない場合があります。懲戒を出されたため拘束されていると述べているようですが、自業自得です。

処分しなければならない弁護士を喜んで迎い入れてくれる弁護士会はありません。もし懲戒が出されていて登録換えした場合は次の弁護士会綱紀委員会が大変なのです。何をやってきたんだかさっぱりわからんということです。

「今度、東京からきた弁護士はなんだ、懲戒の土産がついてきた。弁当持ちかよ」

前の会で懲戒出されても、棄却取って来い。それから来いということです。

根も葉もない懲戒ならば、1枚棄却を求める弁明だけでよく、留め置きされることなどありません。登録換えで急ぐのであればしっかり答弁書を提出して綱紀を納得させればいいのです。一番だめなのが放置しておくことです。これは弁護士会も議決を出せません。懲戒の答弁書を出さない弁護士は登録換えなど考えていないいうことです。

前の弁護士会で不祥事を起こしに逃げてきた弁護士の後始末を関係のない弁護士会がせねばなりません。こういうことを避けるために改正されたのです。これは懲戒請求者のために改正されたのではなく綱紀委員会の審査のためだと解しています。10年くらい前は綱紀委員会の「懲戒相当」の議決、懲戒委員会に付された場合は登録換えできず、綱紀の議決前は登録換えできたという時期もあったそうです。この時の反省から綱紀に付されたら登録換えできないとなったようです。

不祥事事件の報道後、即登録換えした弁護士、懲戒を出したが間に合わず

議 決 書

主 文

対象弁護士の登録換えにより本件審査を終了する。

理 由

青森県弁護士会会員であった対象弁護士に対し、平成28年4月14日懲戒請求がなされたが、日本弁護士連合会から対象弁護士は懲戒請求がなされる前の同月4日、埼玉弁護士会へ登録換えの請求を行い、平成28年6月2日付けで同弁護士会へ登録した旨、青森県弁護士会に対し通知された。登録換えにより、青森県弁護士会は対象弁護士に対する懲戒権限を喪失したため、当委員会は本件請求につきもはや審査を得ないことになった。

よって本文のとおり議決する。

平成28年6月27日青森県弁護士会綱紀委員会委員長 三上稚通

平成28年7月4日 青森県弁護士会 会長 竹本真紀

懲戒が出されそうなら先に逃げるのです。しかし本来は申請が間に合わないはず。そこは次の弁護士会で力のある弁護士が強力してくれれば逃げられます。特急でやっても5か月要しています。しかも一旦退会して登録番号まで換えれば誰かわかりません。

2014年 7月31日 登録番号 41772  田坂源治  青森県  請求

さくら総合法律事務所

2014年 12月18日 登録番号 51588 田坂源治  宮崎県 登録

 ひなた法律事務所 

この懲戒の処分は棄却でした。

 

 

 

 

ある弁護士のツイート

もしこのまま、ずーっと懲戒請求がかかっていて東京弁護士会から移動できないという話になったら懲戒請求係属中は弁護士会を移動できないという規制の改正運動でもするか

 

>もし、このまま、ずーっと懲戒請求がかかっていて東京弁護士会から移動できない・・・・・

そんな規約を作ったのはあなたたち弁護士です。

この先生、東弁を辞めて他のたしか一弁か二弁に行きたいとか、言ってたように思いましたが、懲戒も棄却になったのなら、ぐずぐず言ってないで一弁に登録換えの申請をお出しになったらいかがでしょうか?

東京三会の1人事務所の弁護士が東京の別の弁護士会に登録換えしたことがあるか?

調査した結果、1人事務所が登録換えしてそのまま1人事務所を維持したケースは見つかりませんでした。そのような登録換えは無い。つまり、やることに意味が無い。東京も一弁も二弁も業務に関しては同じ。会費も変わらず。それなら今のままで会務をこなし、会の幹部や役員になっていった方が得。他の弁護士会に行き、新人のように、いろんなところで頭を下げ、また一から足場を作り、新しい人間関係を作ることは無駄、弁護士の仕事も意外に横の繋がりを大事にするので、東弁が気にらないから一弁や二弁に登録換えしたと業界の評判になれば、新人時のボス弁の顔を潰し、結局、仕事にプラスになることはないでしょう。

東京三会の中での登録換え(自由と正義より)

1 2020年3月1日 登録換え 東京⇒第二東京 登録番号5599× 70期

新人時に都内のボス弁東弁の法律事務所勤務、ボス弁が第二東京の事務所になり二弁に登録換え

2 2020年1月14日 登録換え 東京⇒第二東京 登録番号1809×

東弁で事務所を持っていたが解散、第二東京の大手法人に勤務、

3 2020年1月22日 登録換え 第二東京⇒東京 登録番号5458×

東弁の中堅弁護士法人に勤務したため

4 2020年1月31日 登録換え 東京⇒第一東京  登録番号4765×

第一東京の大手有名事務所に就職

5 2020年1月31日 登録換え 東京⇒第一東京 登録番号4700×

代表弁護士、他弁護士が第一東京の事務所に就職

6 2019年11月1日 登録換え 東京⇒第二東京 登録番号2727×

五大事務所パートナーを退職し自身の事務所開設数十人の勤務弁護士を要し、ほぼ二弁登録

7 2019年11月19日 登録換え 東京⇒第一東京 登録番号4399×

元検事、大手事務所に就職

8 2020年3月16日 登録換え 第二東京⇒東京 登録番号4524×4527×4537×

この3人の弁護士は、TVCMでもお馴染みの弁護士法人Mに所属、事務所を辞めたわけでもなく、二弁から東弁に登録換え。東弁所属のボス弁は「猿でもできる弁護士業」の著者。現在の大きな法人になる前に処分を受けた。この事が原因か不明であるが事務所の登録を一時、東弁から二弁に換えた、古くからいる弁護士は東弁、新しい弁護士は二弁とした。しかし、東弁と仲直りしたのか二弁所属弁護士を東弁に換えている。ボス弁の都合です。

以上のように東京三会の中の登録換えはボス弁の意向と大きな事務所に就職したため事務所の他の弁護士と登録を合せたためです。1人事務所の弁護士が東京三会の中で登録換えして、そのまま1人事務所を続けるたケースはありませんでした。

懲戒を出された弁護士が登録換えを予定していたのに言ってきたら、「先生はほんとうに登録換えを予定していたのですか?、今の弁護士会にいられなくなったのですか」と聞いてみましょう。

懲戒を出されて登録換えが出来なくてなとどい被害はありません。被害があるというのなら、そんな規約を作ったのはあなた方弁護士なのですから、文句や苦情をいうのなら懲戒請求者ではなく弁護士会、日弁連へ