弁護士自治を考える会

AV製作会社の顧問弁護士で18歳未満の女性にAV・DVDに騙して出演させる行為を止めなかった、第二東京弁護士会・菅谷幸彦弁護士の懲戒処分(戒告)が懲戒請求者の異議申立により業務停止1月に変更になりました。報道が先にありましたが異議申立人(懲戒請求者)に決定書が届きましたので公開します。なお異議申立人(懲戒請求者)は当時者である被害者でも女性の性被害を救済する目的のNPO法人の者ではありません。この後、官報公告があり自由と正義12月号か2021年1月号に処分の変更の要旨が公告として掲載されます。

報 道

「戒告軽すぎる」AV出演助長の弁護士に業務停止処分 日弁連  11月16日 産経

日弁連は16日、アダルトビデオ(AV)制作業の男がAV撮影目的で女性を募集していると知りながら、やめさせなかったとして、第二東京弁護士会から戒告の懲戒処分を受けた菅谷幸彦弁護士の処分を、より重い業務停止1カ月に変更したと明らかにした。 日弁連は、職業安定法が禁じる「有害業務に就かせる目的での募集」に加担し、助長していたと認定。「若い女性の被害を生じさせており、戒告は軽すぎる」とした。

 日弁連によると、菅谷弁護士は平成24年、児童買春・ポルノ禁止法違反事件で弁護人を務めたのをきっかけに男と顧問契約を結んだ。男が未成年を含む女性をAVに出演させていたと認識しながら、やめるよう助言しなかったほか、出演を強要されたと主張した女性と男のトラブル処理にも従事した。 第二東京弁護士会が今年1月に戒告とし、懲戒請求者が異議を申し出ていた。

引用産経 https://www.sankei.com/affairs/news/201116/afr2011160036-n1.html

懲 戒 処 分 の 公 告 自由と正義 2020年7月号

第二東京弁護士会がなした懲戒の処分について、同会から以下のとおり通知を受けたので、懲戒処分の公告及び公表等に関する規程第3条第1号の規定により公告する。

          記

1 処分を受けた弁護士 氏名 菅谷幸彦  登録番号 24173

事務所 東京都港区赤坂2-2-21永田町法曹ビル406

菅谷・来司法律事務所 

2 懲戒の種別  戒告  

3 処分の理由の要旨

被懲戒者は、成人向けDVDの製作、販売を業とするAと2012年3月に顧問契約を締結したところ、A自身が上記DVDに出演する女性をウエブサイト上で直接募集していることを上記契約時締結当初から認識していたにもかかわらず、上記募集が公衆道徳上有害な業務に就かせる目的での労働者の募集として職業安定法違反にならないかについて必要な調査を行わず、Aに対し違法行為を行うことをやめさせるよう助言等しなかった。

被懲戒者の上記行為は弁護士職務基本規程第37条第1項に違反し、弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。

4処分が効力を生じた日 2020年1月22日 2020年7月1日 日本弁護士連合会

 

業務停止 24173 弁護士 菅谷 幸彦 第二東京
会員情報
懲戒 業務停止 2020年 11月 13日 ~ 2020年 12月 12日
事務所名 菅谷・来司法律事務所
郵便番号 〒 1070052
事務所住所 東京都 港区赤坂2-2-21 永田町法曹ビル406

日弁連懲戒委員会 処分変更 議決書

《異議申出の理由》

異議申出人の本件異議申立理由は要するに対象弁護士の行為は、弁護士職務基本規程第37条のほかにも、同規程第14条に違反し対象弁護士は○○の違法行為を止めることもせず、結果的に被害を多数発生させたのであり、処分が不当に軽いということにある。

弁護士職務基本規程 第14条  (違法行為の助長)  弁護士は、詐欺的取引、暴力その他違法若しくは不正な行為を助長し、又はこ(品位を損なう事業への参加)これらの行為を利用してはならない

《当委員会が認定した事実》

1当委員会が審査したところ、下記の事実が認められる。

(1)対象弁護士は平成24年に〇〇の児童ポルノ禁止法違反の刑事事件の弁護人になった後、同年3月29日付けで、〇〇との間で法律顧問契約を締結したが、同契約締結当初から、〇〇が(ア)成人男性向けのDVDに出演させるという本当の目的を隠し、コスプレモデル募集等の虚偽のウエブサイトを開設して18才19才を含む若年女性を反復継続して募集していたこと(イ)応募してきた女性に、性交あるいは性交類似行為を伴うアダルトDVDに出演させていたことを認識していた。

(2)それにもかかわらず、対象弁護士は、〇〇の顧問弁護士として上記(ア)のような違法又は不正な募集行為を止めるよう〇〇に助言せず、その結果、〇〇は判断能力が十分とはいえない18歳等の未成年者をターゲットにして採用して、中には意に反してアダルトDVDに出演させられたという被害を訴える未成年者の被害者を生じさせた。

2 原弁護士会の多数意見では対象弁護士は〇〇が職業安定法第63条第2項に該当する違法行為である『公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で労働者の募集を行っていた』という外形的事実を認識していたのであるから、〇〇の顧問弁護士として、同法による規制について必要な調査を行うべきであったにもかかわらず、これを行わず、○○に対して違法行為を止めることを助言しなかったことは、弁護士職務基本規程第37条第1項に反し、品位を失うべき非行に該当するが、職業安定法第63条第2項の規定を知らなかったので〇〇の行為が違法であるという認識を欠いていたと判断し対象弁護士を戒告処分とした。

3 しかしながら、対象弁護士は上記第3の1(1)(ア)の事実を知りながら〇〇に対しこのような違法行為又は不正な行為を止めるよう助言等することなく、平成24年3月に締結した法律顧問契約を維持し、また〇〇が当該DVDに出演した女性の間で強要されたという主張がなされてトラブルになった際には顧問弁護士としてその処理に当たるつもりでいたのであり、実際にもその処理に従事した。

したがって対象弁護士は職業安定法第63条第2号の規定を知らなかったとしても、○○の行っていた上記第3の1(ア)の違法行為は不正な募集行為に加担し、それを助長していたと認められ、対象弁護士の行為は、弁護士職務基本規程第14条に違反するものである。 

《結 論》

対象弁護士の行為は、〇〇の違法行為に加担し助長して若年女性の被害を生じさせたものであり、また弁護士一般の社会的信用を著しく棄損する行為であり、戒告の処分は軽きに過ぎて不当であり、変更せざるを得ないものがある。業務停止1月とするのが相当である。 

よって主文のとおり議決する。 

2020年11月9日 日本弁護士連合会懲戒委員会委員長 高 博一 印

          (14名の懲戒委員の署名押印)