弁護士自治を考える会

弁護士の懲戒処分を公開しています。日弁連広報誌「自由と正義」2021年8月号に掲載された弁護士の懲戒処分の採決の公告(処分取消)第二東京弁護士会・佐藤光則弁護士の処分取消の要旨

2020年7月に処分になりましたが、日弁連懲戒委員会に審査請求を申立て請求が認められ処分取消となりました。1年に1件か2件処分取消又は処分変更(退会命令から業務停止、業務停止から戒告・業務停止月数の変更)があります。

懲 戒 処 分 の 公 告 2020年11月号(2) 処分取消

第二東京弁護士会がなした懲戒の処分について、同会から以下のとおり通知を受けたので、懲戒処分の公告及び公表等に関する規程第3条第1号の規定により公告する。

          記

1 処分を受けた弁護士氏名 佐藤光則  登録番号 20599

事務所 東京都港区新橋2-13-10SKI虎ノ門6階

佐藤光則法律事務所 

2 懲戒の種別  戒告 (2021年6月21日処分取消)

3 処分の理由の要旨

被懲戒者は交通事故に起因する損害賠償請求事件の加害者側の代理人としての交渉過程において、被害者に対して説明する必要性があるとまでいうのは困難であるにもかかわらず、懲戒請求者について別事件において架空通院、不正請求が問題となって訴訟が係属している事実につき事件番号等まで記載した2017年5月2日付け回答書を被害者に送付した。

被懲戒者の上記行為は弁護士法第23条に違反し同法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。

4処分が効力を生じた日2020年7月8日  2020年11月1日日本弁護士連合会

裁決の公告(処分取消)2021年8月号

第二東京弁護士会が2020年7月8日に告知した同会所属弁護士 佐藤光則 会員(登録番号20599)に対する懲戒処分(戒告)について、同人から行政不服審査法の規定による審査請求があり、本会は2021年6月15日、弁護士法第59条の規定により、懲戒委員会の議決に基づいて、以下の通り議決したので懲戒処分の公告及び公表に関する規程第3条第3号の規定により公告する。          

             記

1 採決の内容 

(1) 審査請求人に対する懲戒処分(戒告)を取り消す。

(2) 審査請求人を懲戒しない。

2 採決の理由の要旨

(1)本件は、交通事故による損害賠償請求事件の加害者側であった審査請求人が、被害者及びその治療に当たった懲戒請求者に対して送付した文書(以下「本件文書」という。)において、秘密保持義務違反、営業妨害、権限踰越等があるとの理由で懲戒請求者された事案であるところ、第二東京弁護士会(以下「原弁護士会」という。)は、これらのうち、秘密義務違反について、弁護士法第23条及び弁護士職務基本規程第23条に規定する「秘密」とは、一般人に知られていない事実であって、本人から見て特に秘匿しておきたいと考える性質の時効に限らず、一般人の立場から見て秘匿しておきたいと考える性質を持つ事項と解した上で、本件文書に記載されている懲戒請求者についての別件訴訟の係属裁判所、係属部、裁判官、(反訴も含む)事件番号、原告被告の氏名及び架空通院、不正請求が問題となった事実はいずれも「秘密」に該当するものであり、懲戒請求者について架空通院、不正請求が問題となって訴訟が係属している事実まで被害者に説明する必要性があるとまでいうのは困難であるとして、本件文書を被害者に送付したことは守秘義務遠反に当たると認定して、審査請求人を戒告の処分に付した。

(2)日本弁護士連合会懲戒委員会が審査した結果、本件文書に記載されている別件訴 訟の係属裁判所、係属部、裁判官、事件番号、原告被告の氏名及び架空通院、不正請求が問題となったという事実はいずれも懲戒請求者についての「秘密」に該当し、また、弁護士職務基本規程第23条は「正当な理由」がある場合には秘密保持義務が解除される旨規定するところ、秘密保持義務が弁護士の職務上の義務として最も基本的かつ重要な義務であることからすれば、「正当な理由」の存否は安易に解釈されてはならず、審査請求人が本件文書に前記内容の記載をしたことは直ちに「正当な理由」があったと認めることはできない。

(3)しかしながら、本件においては、懲戒請求者の施術については一括対応を行わないという方針が保険会社によって決定され、被害者に対して伝えられていたのであるから、審査請求人は、被害者に対して一括対応できないことの理由を示す必要があり、そのためには、懲戒請求者について架空通院、不正請求を内容とする訴訟が具体的に存在することを指摘せざるを得なかったとの事情があり、かかる事情を総合的に考慮すれば、審査請求人が本件文書に前記内容の記載をしたことは、弁護士としての品位を失うべき非行とまでいうことはできない。

(4)よって、審査請求人を戒告に付した原弁護士会の処分を取り消し、審査請求人を懲戒しないこととする。

(5)なお、審査請求人が本件文書に前記内容の記載をしたことに「正当な理由」がない以上は、弁護士としての品位を失うべき非行に当たるとして、戒告処分を相当とする意見が一定数あったことを付言する。

3 裁決が効力を生じた日:2021年6月21日  2021年8月1日 日本弁護士連合会 

「書庫」審査請求と異議申立、処分変更例

https://jlfmt.com/2019/01/04/32069/