弁護士法人べリーベスト法律事務所(東京)酒井将弁護士らが受けた業務停止6月の懲戒処分は不当であると日弁連に審査請求を申立し、令和3年8月10日に日弁連に於いて審査期日が公開で開催されました。その調査期日調書(議事録)が審査請求人からネット上に公開されました。

https://www.gyotei6m.com/common/pdf/press_20210913.pdf  (全54頁)

検証 第2回 会請求
審査請求人の酒井将弁護士は東京弁護士の下した業務停止6月は不当であり懲戒手続に不備があったと申し立てています。私たち部外者は懲戒手続に不備や不当であったかどうかを判断する材料を持っていません、報道、東弁会報『リブラ』、日弁連広報誌『自由と正義』に掲載さる処分要旨のみです。
今回、審査請求人(酒井将弁護士ら)が公開した審査期日調書を読めば確かに東弁の懲戒手続きいついていくつか疑問が沸いてきます。
今回の懲戒は一般人(弁護士含む)が申し立てた懲戒とは違い弁護士会が懲戒請求者となる『会請求』『会立件』と呼ばれるものです。
会費滞納・横領事案などは会請求です。横領事件で警察に逮捕され起訴された弁護士に一般人からの懲戒の申立てがあっても『会請求』にして『除名』などを下します。
一般人に武士の首ははねることはさせてくれません。
弁護士法第58条(懲戒の請求)、調査及び審査)第58条1 何人も、弁護士又は弁護士法人について懲戒の事由があると思料するとき、その事由を添えて、その弁護士又は弁護士法人の所属弁護士会にこれを懲戒することを求めることができる。                                          2 弁護士会は、所属の弁護士又は弁護士法人について、懲戒の事由があると思料するとき又は前項請求があったときは、懲戒の手続に付し、綱紀委員会に事案の調査をさせなければならない。
第1項は、広く一般の人が弁護士会に対し懲戒請求を求めることができる規定、本条第2項は、第1に、弁護士会自身が懲戒の手続の開始を求めることができること(会請求)第2に会請求や懲戒請求があった場合に弁護士会は懲戒手続の第1段階として、懲戒の手続に付して、弁護士会の中に設置された綱紀委員会に事案の調査をさせることを定める。
『会請求』は弁護士会、弁護士会長が綱紀委員会に事案の調査をさせる。あくまでも弁護士会が受けて綱紀委員会は自ら綱紀委員会が立件することは許されていない。
職権立件の可否   【条解弁護士法605ページ】
法は、綱紀委員会に対し具体的懲戒事案については法58条2項の調査権限のみを認めており、他に自ら立件して調査する権限を与えていない。本条2項にいう「綱紀保持に関する事項」には具体的事案いついての調査は含まれていないとするが妥当である。
もし職権立件を認めるならば、綱紀委員会に捜査機関的役割を与えることとなり、ひいては綱紀委員会がその裁量で会員の懲戒探しをすることも許容せざるを得なくなるが、綱紀委員会は基本的には濫請求の弊害除去のために設置されているのであるから、職権立件のごとき積極的な役割は予定されていないものと考えるべきである。
審査請求人らが東弁の懲戒手続きが不正というのは・・・
期日調書 43ページ~  代理人 辻 洋一   東京 13834 先端法法律事務所  25期
「辻代理人」  代理人の辻です。今回の懲戒処分が手続の上からも違法であり、取り消されるべきものであることについて、以下、私の方が意見を述べます。(略)
会立件がなされたという重さ 
東京弁護士会が行った本件懲戒処分は一般人誰でもが行うことができる弁護士法58条1項の懲戒請求と弁護士会が独自に行うことができる会立件を受けて出された処分です会立件というのは、弁護士会自らが進んで会員の処分を求めるわけですから、普通は相当な根拠がありその結果として処分は間違いなく業務停止以上となります。本件でも本件の1項懲戒請求はベリーベストに産業スパイもどきの人物を潜りこませて機密を抜き取らせ東京弁護士会及び神奈川県弁護士会に一斉に懲戒を求めるというとんでもない請求ではありましたが、会立件という重さが、このとんでもないなさに目をつむらせてしまったのです。
会立件は違法 
東弁の今回の会立件は文句なしに違法です。なぜか、それは弁護士法58条第2項に明確に違反した立件だからです。
まず、今回の会立件は東京(東弁)の非弁提携委員会によるベリーベストに対する事情聴取から全てが始まっています。
この時東弁はベリーベストに対し、非弁防止会規の条項を示して、これを根拠に自分たちの調査に協力してもらう義務があると殊さら強調して調査に応じさせました。その上でベリーベストから資料や供述を取り、これを基に会立件が行われました。
しかし、弁護士法58条第2項は弁護士会が会員について懲戒事由があると知ったときは、弁護士会の独立委員会である綱紀委員会に調査させなければならないと規定しています。他の委員会い調査させて懲戒を求めるなどは綱紀委員会の独立した判断の侵害であり手続の違法そのものです。
(中略)
さらなる手続違法は東弁がいきなり会立件に及んだことです、東弁が調査を行った結果できることとして非弁防止会規が定めているのは立件ではありません。できるのは是正だけです。本件で東弁が新宿事務所(司法書士事務所)への支払いがよろしくないと考えたのであればベリーベストに説明して是正措置を行えばそれで足りた。それにもかかわらず、東弁はそうした前処理を一切行わず、問答無用の会立件、そして業務停止にしたのです。ベリーベストは一罰百戒、見せしめの対象にされました。
以下(略)
審査請求人が不当な手続によって行われた懲戒だということが少し分かってきましたが、一般人にはなかなか理解しにくい内容です、懲戒のマニュアル本から検証してみましょう。
弁護士懲戒手続の研究と実務 日弁連調査室編第2章 弁護士会の懲戒制度 6弁護士会による請求 96頁
(1)弁護士会による請求の判断権者 
綱紀委員会に調査を命ずるのは、もちろん弁護士会の執行機関としての会長であるが「懲戒の事由があると思料するとき」に調査を命じることが義務づけされているわけであるから、懲戒事由があるか否かを誰が判断するかが問題となる。この判断機関として考えられるのは次の三つであろう。
第一に会の執行機関としての会長 
第二に会の議決機関としての総会又は常議員会 
第三に弁護士法上会員の「綱紀保持に関する事項をつかさどる」とされる綱紀委員会
(第一第2の説明 略)第三の考えは「綱紀保持に関する事項」は特定会員の具体的懲戒事件についての権限というより会員一般の綱紀保持に関する後述のような権限を意味していると解するのが妥当であるし、法58条2項の規定上よりも弁護士会の綱紀委員会に調査を命ずるか否かの判断を当該綱紀委員会自身が下すことができると解するのは不合理であろう。 
(2)懲戒事由の存否の判断 
・・・少なくとも会請求の時点で判断機関の手元にある資料に照らせば最終的に懲戒処分がなされることについて確実な心証が得られなくとも、相当の見込みがあれば足りるのであり、そのような意味において懲戒請求事実の存在について蓋然的な心証があれば足りるものと解される。
次に、綱紀委員会又は懲戒委員会のいわゆる請求外事案に関する通知や紛議調停委員会、非弁護士活動取締委員会、あるいは弁護士業務に関する市民窓口等から懲戒事由に該当する事実の報告があった場合の対応が問題となるが、これらの委員会からの報告があれば、原則として直ちに会請求をするという取り扱いはできない。
会請求をするかどうかの判断はあくまで常議員会の判断機関の専権に属することであり、前記の委員会等からの通知報告があっても会請求をすべきかどうかについては会請求の判断機関による独自の判断が必要だからである。
また委員会等からの通知報告があれば、原則として直ちに会請求をするという取り扱いがなされるならば、委員会等が自らが行う通知あるいは報告が会請求に直結することを心配して通知あるいは報告することいついて慎重になり過ぎることが予想されるが、そのような結果は、本来各委員会等に期待されている役割を損ねることになりかねない。
審査請求人や代理人の方が述べたいのは綱紀委員会に会請求を審議させるのであれば、常議員会の議決が必要であったにもかかわらず、拙速に綱紀委員会が調査を開始した。そのように仰りたいのだと思います。常議員会(常務理事会)の決議があったのかどうか、常議員会の議決がなければ、この処分は変更せざるを得ないのではないでしょうか、また、懲戒のマニュアル本に示してあるように各委員会の通知・報告で会請求は難しいとあります、
審査請求人は書面で提出していると思いますが調査期日でこの点について突っ込んで聞けばと思いますが、日弁連懲戒委員会は関係ない懲戒の実務は各弁護士会に任せてあるというのでしょう。
阿部代理人 (阿部秦隆兵庫32480大瀧法律事務所 57期)神戸大学名誉教授
 今回の懲戒処分は、懲戒処分権の濫用です。もしそうではなくて、本件懲戒処分を維持されるのであれば、我々は裁判所を説得して、勝訴した暁には、懲戒委員の弁護士は「非行」を犯したとして懲戒請求することになります。そのときは「非行」ではないと反論されるとすれば、矛盾であることを御承知ください。
おおっ!すごいこと言いましたね!
(ひとつ気が付いたことがあります。やはり今回の東弁の下した懲戒処分は少し無理があったように思えます、次の記事にします。)
弁護士法人べリーベスト法律事務所・酒井将弁護士ら(東弁)業務停止6月の処分は不当であると日弁連に審査請求・日弁連懲戒委員会審査期日調書8月10日・検証(1)
https://jlfmt.com/2021/09/19/51604/