「弁護士裁判情報」裁決取消請求事件 9月20日 第1回
弁護士が原告・被告となった裁判  詳細は民事部にお問い合わせください。
弁護士が所属弁護士会から懲戒処分を受けて処分は不当であるとした場合、日弁連に審査請求を申立てすることができます。審査請求が棄却また変更となった場合、まだ不服である場合に行政不服審査法に基づき東京高裁に「裁決取消請求訴訟」を提起することができます。
ただし、処分取消になった例はありません。業務停止1月が戒告に変更された事例が1件(第二東京弁護士会)あるだけです。
弁護士法人べリーベスト法律事務所は東弁から業務停止6月を受けて審査請求で業務停止3月に変更されましたが、これも納得できず裁決取消請求訴訟を提起されました。

東京高裁

裁決取消請求事件 令和4年行ケ7号 第4特別部 822号法廷 9月20日第1回 14時
請求者    弁護士法人べリーベスト法律事務所(東京)
被請求者   日本弁護士連合会
裁 決 の 公 告(処分変更) 2022年1月号

東京弁護士会が2020年3月12日に告知した同会所属弁護士法人 弁護士法人ベリーベスト法律事務所(届出番号486) に対する懲戒処分 (業務停止6月)について、同法人から行政不服審 査法の規定による審査請求があり、本会は、 2021年10月19日、弁護士法第59条の規定によ り、懲戒委員会の議決に基づいて、以下のとおり裁決したので、懲戒処分の公告及び公表等に 関する規程第3条第3号の規定により公告する。 

1 裁決の内容 

(1) 審査請求人に対する懲戒処分 (業務停止6月) を変更する。 

(2) 審査請求人の業務を3月間停止する。

2 裁決の理由の要旨 

(1) 東京弁護士会(以下「原弁護士会」という。)は、審査請求人が2014年12月25日 から2017年3月31日までの間、報酬を得る目的で業として訴額が140万円を超える過払金返還請求事件を周旋していた司法書士法人Aから継続して上記事件の紹介を受け、 少なくとも事件紹介の対価を含むものとして1件当たり19万8000円(消費税別。以「本件対価」という。)を支払ったことにつき、弁護士法(以下「法」という。) 第30条の21により準用される法第27条及び弁護士職遜基本規程(以下「規程」という。) 第69条により準用される規程13条第1項に違反するとして、審査請求人を業務停止6月の処分に付した。法の規定による審査請求があり、本会は、2021年10月19日、弁護士法第59条の規定により、懲戒委員会の議決に基づいて、以下のとおり裁決したので、懲戒処分の公告及び公表等に関する規程第3条第3号の規定により公告する。 

1 裁決の内容

(1) 審査請求人に対する懲戒処分 (業務停止6月)を変更する。 

(2) 審査請求人の業務を3月間停止する。

2 裁決の理由の要旨 

(1) 東京弁護士会(以下「原弁護士会」という。)は、審査請求人が2014年12月25日から2017年3月31日までの間、報酬を得る目的で業として訴額が140万円を超える過払金返還請求事件を周旋していた司法書士法 人Aから継続して上記事件の紹介を受け 少なくとも事件紹介の対価を含むものとして1件当たり19万8000円(消費税別。以下「本件対価」という。)を支払ったことにつ き、弁護士法(以下「法」という。) 第30条 の21により準用される法第27条及び弁護士 職務基本規程(以下「規程」という。) 第69 条により準用される規程第13条第1項に違反するとして、審査請求人を業務停止6月の処分に付した。

(2) これに対し、審査請求人らは、審査請求人から司法書士法人Aに対し支払われた本件対価は、司法書士法人Aが行った業務の成果である物品ないしデータ(以下「業務 成果物」という。)を審査請求人が譲り受けるに当たっての対価であって、これに引継 ぎ後に審査請求人が司法書士法人Aに委託して行った裁判書類作成支援業務にかかる対価も含まれており、全体として上記紹介を受けたことの対価には当たらない旨主張している。

 [3) しかし、審査請求人は依頼者と業務成果物をワンセットとして引き継いでおり、依頼者の紹介と業務成果物の引継ぎは仕組み として一体化されていることから、両者を 分離して議論することは非現実的であると 言わざるを得ない。したがって、この引継ぎに当たって支払われた本件対価は、審査請求人と司法書士法人Aとの間では業務成 果物の対価という趣旨であったとしても、それは同時に依頼者紹介の対価としての意 味を包含すると解するのが相当である。仮に審査請求人らの主張を採用すれば、依頼者の紹介に際して何らかの業務成果物を介在させれば、その対価という名目で金銭授受が可能となり、規程第13条第1項を容易 に潜脱できることになるので、所論は採用できない。 

また、本件対価には、引継ぎ後の裁判書類作成支援業務の対価が含まれるという主張についても、裁判書類作成支援業務を司 法書士法人Aに委託することの必然性・合理性が認められず、一体として紹介料と評価されないために装ったものであるとの原弁護士会の認定は首肯できる。 

本件対価の金額が一律に決められ、司法書士法人Aの個々の事件の業務量に対応したものでないことも本件対価が紹介料に当たるとの判断を裏付ける事実といえる。加えて、本件対価の支払について、審査請求人も司法書士法人Aも依頼者に対し一切説明していない。法律紛争に関して何らかの 作業を行った者が存在し、仮にその作業の成果物の対価が発生したような場合、その対価の支払はあくまでも依頼者自身の意思に基づいて支払われるべきであり、依頼者の意思を何ら考慮せずに、事件を紹介された弁護士がこれを支払うことは正に規程第 13条第1項が禁止する紹介料の支払にほかならない。

(4) 司法書士法人Aは、認定司法書士であっても、140万円を超える法律事務の取扱い 及び法律事件の周旋(周旋については金額 の多寡を問わない。) については、法第72条後段の適用上、弁護士又は弁護士法人でない者に当たり、自らが取り扱うことので きない弁護士業務となる事件を審査請求人 に紹介することにより、多額の紹介料を得 てきたものであり、審査請求人が、司法書 士法人Aに対して本件対価を支払って、司法書士法人Aから140万円超過払事件の周 旋を受けたことは法第27条に違反る行為である、との原弁護士会の認定と判断に誤りはない。

(5) 原弁護士会は、処分の量定事情として、本件対価を伴う事件の紹介が2年以上の間に反復継続して7000件ないし8000件と大量に行われたこと、また、本件懲戒請求の審査中に、審査請求人が別法人を設立して 業務を移管し、懲戒逃れ」と見られてもやむを得ない行動をしたこと等を指摘したが、これらの事情のほかに、次の酌むべき 事情を認める。

1 審査請求人らの行為が依頼者の利便性に寄与していた側面があることも否定で きない。また、本件引継ぎによって、依頼者に対し、追加の経済的負担や不利益 が生じた事情は見当たらない。

2 司法書士法人Aは、弁護士と一部重なる法律事務を行う者であり、本件は事件屋などが介入する非弁提携事案とは異なる。 

3 審査請求人らは規程第13条第1項及び 法第27条の解釈を誤ったものであり、本件スキームが両規定に違反すると明確に 認識した上で、あえて本件非行行為を 行ったものと認めることはできない。

4 140万円超過払事件について認定司法 書士から弁護士への事件引継ぎの在り方、両者の協力関係の在り方について 弁護士会等においても検討と提言等が望 まれるところ、本件はそれがない状況下で発生したものである。

(6) 審査請求人は、懲戒手続等の違法性について主張するが、いずれについても違法性は認められない。

(7) 以上のとおり、原弁護士会の認定と判断に誤りはないが、情状を更に料酌し、これを業務停止3月の処分に変更するのが相当である。ただし、原処分の業務停止6月を 維持すべきあるとの意見が相当数あったことを付言する。

採決が効力を生じた日 2021年10月25日 2022年1月1日 日本弁護士連合会