東京高裁
被告 高木良平 弁護士
令和4年(ワ)20984 603号法廷 民事7部
13時20分、定刻に被告入廷。当事者本人が在廷。原告、訴状陳述。被告、答弁書陳述。証拠関係ー準備書面
①(投稿の特定)を提出。請求原因に関して、令和4年8月3日を投稿日 裁判官は直ちに主張立証を整理。原告が問題とする投稿は、原告の準備書面①に記載している。
訴状では、別の弁護士の書き込みがあり、被告の最初の投稿が不法行為だとして、相当度因果関係のある違法行為が発生ししたと原告は主張する。
裁判官は「原告準備書面①にあたる投稿が名誉毀損にあたる場合、問題は『評価』だけになる。」といい、その次に、被告は「判決で結構です」と一言。
原告は、「ちょっと意外ですけど」と付け加え、判決でいいです」と答えた。
判決11月24日(木)13時10分
10月27日(木)13;20 第一回期日 損害賠償請求事件
原告 石井敏宏 原告代理人 杉山程彦弁護士(神奈川)
被告 高木良平 弁護士 第二東京
令和4年(ワ)20984 603号法廷 民事7部 判決11月24日
主 文
1 原告の請求を棄却する
2 訴訟費用は原告の負担とする
第3 争点に対する判断
1 争点1(本件投稿が原告の名誉権又は名誉感情を侵害する違法なものか)について
(1)原告は本件投稿について、原告の事ことをDV(ドメステックバイオレンス)夫と断定したものであるとした上で、これが原告の名誉権又は名誉感情を侵害する違法なものであると主張する。
前提事実記載のとおり、本件投稿は原告が令和4年8月3日午後3時40分、ツイッターに《別居親は何でも反対するから共同親権はできない論の間違い》と題して、「別居親がしたいのは子どもとの生活、ぶっちゃけ、それ以外どーでもいい。メンドクサイことは任せる、やならこっちがやる」「お任せでいいが、そちらに独裁親権を持たせると前のように親子断絶しようだから「念のため親権」ね。」との投稿をしたところ、「ぽい過ぎんか。」との投稿をしたところ、これに対して小魚さかなこが「ぽい過ぎんか。」と投稿し、また被告が「つまり」この人は「育児は丸投げするけど良いところ取りさせろ」「逆らったときのために拒否権をよこせ」と言ってるわけですね」などと投稿し、さらに被告が「こんな自己中心的なことを大々的に自白する意味が分からないですね、それが恥ずかしいという自覚がないのでしょう」と投稿したのに対し小魚さかなこが「その自覚のなさがDV事件を思い起こさせます。」と投稿したのを受けてされたものである。
以上の経過に照らせば、本件投稿は被告が原告について自己中心的発想をする人物でありドメテックバイオレンスを行うような男性はそのような自己中心的な発想をするような人物ばかりであると評価することができる。
上記のような原告の投稿内容から推察される原告の親権に対する考え方は相当に偏ったものであって、およそ市会議員の発想とは考え難いものであるところ、被告は、法律の専門家たる弁護士という立場から批判的な投稿をすることによって反対の意見を表明したにすぎないものということができる。
原告が仮に、被告の意見に対して異論があるのであれば、容易にツイッター上で反論することが可能であるし市会議員の立場にある者が上記のような偏った考え方を意見として投稿した以上、これに対する反論がされるのは当然に予想されるところであるから、反論の投稿をして対抗すべきである。
本件投稿は原告がDV夫すなわちドメステックバイオレンスをしているとの事実を摘示したものとは到底認めがたく、事実の摘示を欠いている上、一般人の読者の普通の注意と読み方を基準として判断したときに原告の社会的評価を低下させる違法なものではあると認められないから、名誉権侵害を理由とする原告の主張は理由がない
(2)また原告は本件投稿が原告の名誉感情を侵害するものであるとも主張する、この点、前記に判示したとおり、そもそも本件投稿は原告がDV夫であると断定するものではないし前提事実記載の原告の投稿内容から推察される原告の親権に対する考え方についての偏った考え方に対して被告が法律の専門家たる弁護士という立場から批判的な投稿をすることにちょって反対の意見を表明したものに過ぎず、市議会議員の立場にある原告としてはツイッター上で反論することが容易かつ可能であったということができる。そうすると本件投稿が原告の受任限度の範囲を逸脱した屈辱行為であるとは到底いえないから名誉感情を違法に侵害するとの原告の主張にも理由がない
(3)したがって本件投稿は違法なものであるとは認められない。
2 結 論
以上によればその余の点について判断するまでもなく、原告の本件請求には理由がないから原告の請求を棄却することとして本文のとおり判決する。
令和4年11月24日 東京地方裁判所第7民事部 裁判官 長尾 崇
第1 被告は原告に金330万円及びこれに対する令和4年8月4日より支払い済みまで年3分の割合による金員を支払え。
第2 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決及び仮執行宣言を求める。
請求の理由
第1 原告は館山市市議会議員である。
被告は弁護士である。
第2 原告は,SNSサイトTwitterに2022年8月3日午後3時40分に
【別居親は何でも反対するから、共同親権はできない論の間違い】 別居親がしたいのは子どもとの生活。ぶっちゃけ、それ以外はどーでもいい。メンドクサイことは任せる。やなら、こっちがやる。 お任せでいいが、そちらに独裁親権を持たせると前のように親子断絶しそうだから「念のため親権」ね。
との投稿をした(甲1)。
これに対し,弁護士を自称するアカウント名小魚さかなこが,同日午後9時30分に上記原告投稿を引用した上,
と投稿した(甲2)。
この「小魚さかなこ」のツイートに続け,被告は同日午後9時33分に つまりこの人は、
と投稿した(甲3)。
さらに,「小魚さかなこ」は同日午後9時35分に
と投稿した(甲4)。
被告はこれに続き,同日午後9時37分に
と投稿した(甲5)。
さらに,同日午後9時41分に小魚さかなこは
とツイートした(甲6)。
第3 以上のツイートに続いて,被告は,同日午後9時41分に
との投稿をした(甲7)。
第4 つまり,被告は,原告のことをDV夫と断定したのである。DVとはすなわちドメスティックバイオレンスであり,「配偶者や恋人など親密な関係にある、又はあった者から振るわれる暴力」のことである。
ことにそこに「夫」が着いた場合,一般的に肉体的に不利な女性である配偶者に暴力を振るう夫という意味にあり,社会的に不名誉であることは著しいものである。ことに,原告は市議会議員であり,市民の信用が日常の政治活動や選挙時の信用の基盤である。 そのような立場にある原告にとって,DV夫と評されることは信用低下もはなはだしい。また,被告は弁護士なので,他の者が同様のツイートをした場合と比して,専門家である以上その投稿内容は信用されるので,原告の受ける害は通常人行った場合よりも害悪は大きい。
第5 念のため,被告の上記投稿に違法性阻却事由があるか検討する。
根拠も具体的な中身もなく,原告のことをDV夫と誹謗する行為は公益性も公共の利害もない。
そして,原告は暴力をふるったことはない。のみならず,原告は独身なので,そもそも配偶者に暴力を振るうことは不可能である(甲8)。
ゆえに,違法性が阻却されることはありえない。
第6 また,仮に名誉毀損に当たらない場合でも少なくとも侮辱には該当する。
第7 その後の投稿では,「田貫の六畳敷き」となのる人物が,同日午後10時17分に
(甲9)。と,「ガテン 地道にマスクと手洗いしようぜ」と名乗る人物が,同月4日午前4時に
(甲10)
被告の投稿に誘発され侮辱行為している。
これは損害の拡大と評価できる。なお,これらの投稿からして,DV「夫」とは誤解されていないとの指摘が考えられるも,被告の投稿のみで,原告がDV夫と誤解される危険はある。
また,夫でなくても,原告はDVをする男性であると評価されることは間違いなく,原告の信用低下は甚だしいものがある。
ゆえに,被告の行為は不法行為に該当する。
第8 上述したように,原告は市議会議員であり,被告は弁護士である。
一般人同士の行為と比して,その損害は大きい。
原告の受けた損害は少なく見積もって,金300万円である。
また,原告は訴訟を提起するにあたり,弁護士への委任が不可欠であったから,弁護士費用も相当因果関係の範囲内で損害に当たる。
その金額は少なく見積もって金30万円である。
第9 よって,被告は不法行為による損害賠償請求権に基づき,金300万円及びこれに対する令和4年8月4日より,支払い済みまで年3分の割合による遅延損害金を支払えとの判決を求める。
証拠方法
甲1 Twitter投稿
甲2 Twitter投
甲3 Twitter投稿
甲4 Twitter投稿
甲5 Twitter投稿
甲6 Twitter投稿
甲7 Twitter投稿
甲8 戸籍謄本
甲9 Twitter投稿
甲10 Twitter投稿
添付書類
訴状副本 1通
証拠説明書 2通
甲1~9号証 各2通
委任状 1通
以 上
(注)文中『小魚さかなこ』は岡村晴美弁護士 登録番号34964 愛知県弁護士会 弁護士法人南部法律事務所平針事務所