弁護士への懲戒請求は所属弁護士会綱紀委員会が先ず審査をし、処分しないと議決されたら、懲戒請求者は日弁連に「異議申立」をすることができます。(棄却から3月以内)
懲戒が決了していない場合、審査中でも弁護士を辞めることはできます。弁護士に出す処分ですから弁護士でないものに処分はできません。辞めた弁護士に処分は出せません。懲戒の審査は終了します。
野尻裕一弁護士は懲戒が決了していないにもかかわらず、弁護士登録を取消した。そして1年で戻ってきました。懲戒逃げをやったのです。
これを見つけた懲戒請求者は、弁護士に戻ったのだからともう一度異議申立てを行いました。
異議申立てができるのは所属弁護士会が棄却してから3月間だけです。
さて日弁連はこの異議申立てを、どうするでしょうか?
① 受理する。
② 異議申立てができる期間が過ぎたので却下
③ 何もせず、異議申出書をゴミ箱に入れ知らんぷりする、
日弁連が異議申立期間が徒過していると門前払いした場合は「懲戒逃げ」はこうしてやるんだというお手本になる。
さあ、どうするでしょうか??
異議申出書
日本弁護士連合会 御中
令和5年9月5日
異議申出人A
懲戒請求対象弁護士(第一東京弁護士会)
〒101-0051 東京都千代田区神田神保町2-3-1岩波書店アネックス8階
新千代田総合法律事務所
懲戒請求対象弁護士 野尻 裕一 (登録番号40732)
懲戒請求者は、上記懲戒請求対象弁護士について、第一東京弁護士会に対して、懲戒請求をしたところ(東京第一弁護士会2020年一綱第17号綱紀事件)、2022年7月14日、第一東京弁護士会から上記懲戒請求対象弁護士について「対象弁護士(会員 野尻裕一弁護士)につき、懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当とする」旨の通知を受け取ったが、不服があるため異議申出をする。
なお、異議申出人は、第一東京弁護士会より、別紙通知において「貴殿からの懲戒の請求について調査した結果、別添のとおり決定しましたので通知します。この決定に関して不服があるときは、弁護士法第64条の規定により、日本弁護士連合会に異議を申し出ることができます。なお、異議の申出は、この通知を受けた日の翌日から起算して3か月以内に書面によってしなければなりません。」という旨の教示を受けた。
ところが上記懲戒請求対象弁護士は2022年7月14日から2022年10月14日までは日本弁護士連合会へ異議申出ができる期間にも関わらず、2022年7月29日付けで上記懲戒請求対象弁護士が弁護士登録が抹消されており、日本弁護士連合会への異議申出ができなかった。しかしながら上記懲戒請求対象弁護士は2023年7月1日に弁護士登録をし、再び弁護士となったため、異議申出をする。
第1 異議申し立ての趣旨
弁護士会の決定の取消しを求める。また、対象弁護士の懲戒を求める。
第2 原 議 決 の 表 示
対象弁護士につき,懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当とする。
第3 異議申立の理由
第一東京弁護士会綱紀委員会は,要するに,上記懲戒請求対象弁護士は何らの違法行為にも該当せず,懲戒事由に当たらないと判断した。
しかし,同綱紀委員会は明白な違法行為について事実適時を恣意的に外している。すなわち,上記懲戒請求対象弁護士は,受任通知の中で,「通知人とその家族への電話連絡,面会要請,その他いかなる手段によっても貴殿が通知人に連絡を取ることはお避け下さい。~通知人の実家に訪問するというお話があったようですがこれもお控えいただき」と記載し,弁護士介入後,事件当事者並びに代理人は相互に自宅への訪問は慎むべきという意識を持っていながら,自ら依頼者である向江陽子を異議申出人宅に訪問させ,住居侵入行為をさせていることである。
そもそも,弁護士介入後は当事者同士による連絡訪問は控えるべきものである。さらに,弁護士職務基本規定52条により,相手方に代理人が着いているとき、直接交渉は禁じられる。
2 本件は,平成30年7月25日に上記懲戒請求対象弁護士は相手方当事者Bの代理人となり、異議申出人に受任通知を発送し,同月26日に,異議申出人は、C弁護士に委任をし,同弁護士の受任通知が29日には上記懲戒請求対象弁護士のもとに配達されているので,上記懲戒請求対象弁護士及び相手方当事者Bは異議申出人に直接交渉したり,訪問したりすることは許されない状態なのである。かかる常態化での住居侵入行為であることを,第一東京弁護士会綱紀委員会は見逃している。あまりに恣意的,身びいきな判断である。
3 そもそも,紛争当事者双方に代理人が就いた場合、紛争当事者は,事件の相手方と直接交渉されたり,訪問を受けたりしないということについて安心感を受けられるものである。この安心感は法的保護を受けるべきものである。
その法的保護に値する安心感を,上記懲戒請求対象弁護士は,向江陽子に住居侵入窃盗行為疎唆すことで,破壊したのであるから,上記懲戒請求対象弁護士は,刑法130条前段,61条住居侵入教唆をしたのである。そして,相手方当事者に窃盗行為をさせたところ,教唆犯となる上記懲戒請求対象弁護士には親族相盗例は不適用なので,上記懲戒請求対象弁護士は,窃盗教唆行為をしたことになる。
これは,弁護士職務基本規定,14条(違法行為の助長)52条違反となることは明白である。
したがって,上記懲戒請求対象弁護士は懲戒なされるべきである。
4 ゆえに,本件は懲戒相当なので,第一東京弁護士会綱紀委員会の判断を破棄し,懲戒委員会の審査に付するべきである。
以 上
議 決 書
懲戒請求者 夫A 子の父親
対象弁護士 弁護士(登録番号40732)
記対象弁護士にかかる頭書綱紀事件について、当委員会は調査審議のうえ、次のとおり議決する。
主 文
対象弁護士につき、懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当とする。
理 由
第1 事案の概要
1 対象弁護士は、懲戒請求者●●(以下「懲戒請求者夫A」という。)と●●(以下「妻B」という。)との間の夫婦関係に関する問題につき、妻Bの代理人であった弁護士である。 懲戒請求者C(以下「懲戒請求者子C」という。)は懲戒請求者夫Aの父である。
2 懲戒請求者らは、対象弁護士が妻Bと共に、懲戒請求者らに無断で懲戒請求者夫Aが居住しているマンション(以下「本件マンション」という。)に不法侵入し、懲戒請求者夫Aが占有する財物を窃取した、あるいは、かかる妻Bの違法行為を教唆幇助した等として、本懲戒請求に及んだものである。
第2 懲戒請求事由の要旨
1 懲戒請求事由1(住居侵入行為)
対象弁護士は、平成30年8月22日、妻Bと共に、懲戒請求者らに無断で、懲戒請求者夫Aが居住している本件マンションに不法侵入した(あるいは妻Bの不法侵入を教唆・幇助した)。対象弁護士のこのような行為は、刑法第130条の住居侵入罪の構成要件を充たし、違法性も有するものといえるので、 弁護士法第56条1項に定める品位を失うべき非行に該当する。
また、懲戒請求者夫Aには、当時、代理人弁護士が付いていたのであるか ら、かかる行為は、相手方本人との直接交渉を禁止する弁護士職務基本規程第52条にも抵触する。
2 懲戒請求事由2(窃盗又は違法な自力救済行為)
対象弁護士は、前項記載のとおり、懲戒請求者夫Aが居住している本件マンションに不法に侵入した(あるいは妻Bの不法侵入を教唆・幇助した)が、その目的は、パソコンや銀行の預金通帳等の回収であり、実際に妻Bと対象弁護士は、妻Bが使用していたパソコンやiPad、妻B名義の預金通帳等のほか、懲戒請求者夫A名義の預金通帳やキャッシュカードまで持って行ってしまった。
対象弁護士のこのような行為は、窃盗(違法な自力救済)にほかならないの 、弁護士法第56条1項に定める品位を失うべき非行に該当する。
3 懲戒請求事由3(プライバシー権侵害)
対象弁護士は、既に妻Bの代理人を辞任しており、何らの関係もないにもかかわらず、妻Bやその後任の代理人弁護士に対して、本件懲戒請求がなされた事実を連絡している。このような対象弁護士の行為は、懲戒請求者らのプライ バシーを侵害する不法行為であり、弁護士法第56条1項に定める品位を失うべき非行に該当する。
4 懲戒請求事由4(父子関係の断絶の教唆、子を利用した脅迫行為)
対象弁護士は、妻B及び妻Bの父親による、子の連れ去り、親子の引き離し 行為を教唆した。また、平成30年8月22日、対象弁護士は、懲戒請求者らの自宅を訪問して、懲戒請求者夫Aに対し、子を利用した脅迫行為を行った。 これらの対象弁護士の行為は、弁護士法第56条1項に定める品位を失うベき非行に該当する。
第3 対象弁護士の答弁の要旨 1
懲戒請求事由1(住居侵入行為)
本件マンションは、妻Bの勤務先が賃借し、これをいわゆる借り上げ社宅として妻Bが転借していたものであり、懲戒請求者らが、住居侵入と主張する平成30年8月22日時点において、妻Bは本件マンションに入室する権限を有していた。
また、妻Bは出産・育児のために一時的に里帰りをしていたに過ぎず、本件マンションの共同生活から離脱したとも評価できないため、妻B及び対象弁護士の行為が不法な住居侵入に該当する余地はない。
そして、対象弁護士が妻Bに付き添って本件マンションを訪問した行為は弁護士職務基本規程第52条に抵触するものではない。
2 懲戒請求事由2(窃盗又は違法な自力救済行為)
妻Bが自己の住居にある自己の所有物を持ち出しただけであり、何ら違法な 行為ではない。
3 懲戒請求事由3(プライバシー権侵害)
懲戒手続が非公開であっても、対象弁護士の防御に必要な事実の調査・確認 を行うことは当然であり、対象弁護士は、懲戒請求者らのプライバシーを何ら 侵害していない。
4 懲戒請求事由 4(父子関係の断絶の教唆、子を利用した脅迫行為)
対象弁護士が、父子関係の断絶を教唆した事実も、子を利用した脅迫行為を した事実も一切存在しない。
第4 判断の資料、
別紙資料目録記載のとおり。
第5 当委員会が認定した事実及び判断
1 当委員会が認定した事実
(1)懲戒請求者夫Aと妻Bは、平成28年9月3日に婚姻し、以後、本件マンションにて同居していた。本件マンションは、妻Bの勤務先が賃借し、これをいわゆる借り上げ社宅として妻Bが転借したものであった、 (乙第3号証及 び乙第4号証)。
(2) 平成30年7月6日、懲戒請求者夫Aと妻Bの間に長女D(以下長女Dという)が誕生した。
(3)平成30年7月14日、妻Bは退院し、長女Dと共に、妻Bの実家に身を寄せ、いわゆる「里帰り育児」を開始した。その際、妻Bの貴重品や生活用品のほとんどは本件マンションに残置されていた。また、妻Bと懲戒請求者夫Aとの間では、事前に「里帰り育児」の期間を2週間とする旨のやり取りがなされていた。
(4) その後、妻Bは、懲戒請求者夫Aとのやりとりに不安を抱え、本件マンションに戻る時期について、当初予定していた平成30年7月29日から延期したいと考えるに至り、対象弁護士に相談した。
(5) 平成30年7月25日、対象弁護士は、妻Bの代理人として、懲戒請求者夫Aに対して受任通知を発信した(乙第2号証)。
(6) 平成30年7月26日、懲戒請求者夫Aは、妻Bとの夫婦関係調整につい て、●●●弁護士に委任し、同弁護士は、同月29日、対象弁護士に対し、円満解決を求める連絡をすると共に、懲戒請求者夫Aから妻Bに宛てた手紙を提示した。
(7) 対象弁護士は、妻Bから、本件マンション内にある自らの洋服、妻B名義 の通帳を取りに行きたいとの要望を受け、平成30年8月22日午後1時過ぎころ、妻Bに付添い、オートロックエントランスから本件マンションの共用部分に立ち入った。その際、オートロックエントランスの施錠は妻Bが保有していた鍵により開錠された。
その後、対象弁護士は、妻Bに付添い、本件マンションのエレベーターを利用して7階まで上がったが、懲戒請求者夫Aと妻Bの居室である70×号室には入ることなく、妻Bのみが70×号室の中に入った。その際、対象弁護士は、70×号室の玄関付近で待機していた。
(8) 平成30年8月29日、対象弁護士は、懲戒請求者夫Aの代理人である●●●弁護士に対し、妻Bの代理人を辞任し、新たな代理人として〇〇〇 弁護士が就任する旨を通知した(甲第5号証)。
(9)令和2年2月4日頃、懲戒請求者らは、対象弁護士について第一東京弁護士会に懲戒請求を申し立てた。
(10) その後、対象弁護士は、本懲戒請求がなされた事実を、後任の妻Bの代理人である〇〇〇弁護士に伝えた。
2 当委員会の判断 (1)
懲戒請求事由1(住居侵入行為)
ア 対象弁護士は、本件マンションの居室内に侵入したものではなく、居室の玄関前まで妻Bに付き添ったに過ぎないものであるところ、かかる対象弁護士の行為が違法な住居侵入行為あるいはその教唆・幇助に該当するか否かについて検討する。
イ 本件マンションは、妻Bがその勤務先から借上げ社宅として転借していたものであり、妻Bの貴重品や生活用品も本件マンションに置いたままで あったこと、平成30年8月22日当時、妻Bは、本件マンションで懲戒請求者夫Aと寝食を共にしていなかったものの、同年7月14日の退院後 に「里帰り育児」のために実家に戻っていたに過ぎないこと、妻Bにおいて本件マンションの鍵を保有していたこと等の事情に鑑みれば、妻Bが本 件マンションにおける懲戒請求者夫Aとの共同生活から離脱したものと評価することはできず、妻Bは、依然として本件マンションに入室する正当な権限を有していたものと認められる。
ウ そうすると、平成30年8月22日当時、妻Bにおいて、本件マンショ ン(居室及び共用部分)に立ち入ること自体、違法な住居侵入行為であると評価することはできず、本件マンションの共用部分たる玄関前まで妻Bに付き添った対象弁護士の行為を、違法な住居侵入行為あるいはその教唆・幇助に該当すると認めることもできない。
エ また、対象弁護士において、妻Bに付き添って本件マンションを訪問した際に懲戒請求者夫Aと直接交渉を行ったことを認めるに足りる資料はなく、対象弁護士の行為が弁護士職務基本規程第52条にも該当すると認めることもできない。
オ 以上より、懲戒請求事由 1 について、対象弁護士に弁護士法第56条1項に定める品位を失うべき非行があったとは認められない。
(2) 懲戒請求事由2 (窃盗又は違法な自力救済行為)
ア 平成30年8月22日に対象弁護士は本件マンションの居室内には立ち入っておらず、対象弁護士の行為を窃盗又は違法な自力救済であると認めることはできない。
イ また、妻Bにおいて本件マンションの居室内に立ち入る正当な権限を有していたと認められる以上、妻Bにおいて本件マンション居室内から自らの私物を持ち去ることが窃盗又は違法な自力救済に該当するとは言えない。
そして、妻Bにおいて、本件マンションの居室内に立ち入った際に、懲戒請求者夫Aの所有物を持ち去ったことを認めるに足りる資料はなく、妻Bによる窃盗又は違法な自力救済がなされたと認めることはできない。
したがって、対象弁護士において、妻Bの窃盗又は違法な自力救済を教唆・幇助したと認めることもできない。
ウ 以上より、懲戒請求事由2について、対象弁護士に弁護士法第56条1項に定める品位を失うべき非行があったとは認められない。
(3)懲戒請求事由3 (プライバシー権侵害)
ア 対象弁護士において、懲戒請求者らから懲戒申立てがなされた事実を、妻Bの後任の代理人弁護士に伝えた事実は認められるものの、対象弁護士は、本懲戒申立ての防御のために必要な事実の調査・確認を行う権利を有しており、妻Bの代理人弁護士に対して、本懲戒請求がなされたことを前 提として、事実関係の照会を行うことは、その正当な権利行使の範囲を逸脱するものでない限り、許容されるものである。
イ このほか、対象弁護士において、正当な権利行使の範囲を逸脱して、殊更に懲戒請求者のプライバシー権を侵害したと認めるに足りる資料はない。
ウ したがって、対象弁護士が、本懲戒申立てがなされた事実を妻Bの代理 人弁護士に伝えたことは、違法なプライバシー権侵害に該当するものと評価することはできない。
エ 以上より、懲戒請求事由3について、対象弁護士に弁護士法第56条1項に定める品位を失うべき非行があったとは認められない。
(4)懲戒請求事由 4(父子関係の断絶の教唆、子を利用した脅迫行為)
対象弁護士において、父子関係の断絶の教唆、あるいは子を利用した脅迫行為に及んだと認めるに足りる資料はない。 したがって、懲戒請求事由 4について、対象弁護士に弁護士法第56条1 項に定める品位を失うべき非行があったとは認められない。
よって、懲戒請求事由はいずれも理由がないから、主文のとおり議決する。
2022年(令和4年)4月15日 第一東京弁護士会 会 長 松村 眞理子 殿
甲3号証 懲戒請求者が提出した書証
妻の代理人弁護士(対象弁護士)が夫(懲戒請求者)に出した通知書
通知書の内容
子どもはこちらが引き取った。今後妻や妻の実家へは連絡するな。あなたが連れ戻しをすれば容赦しないとの内容、妻側の代理人弁護士ならこの程度の通知書は当たり前ですが、初めてこのような書面を受け取れば親子断絶を指導・父子関係の断絶を教唆した、子を利用した脅迫行為だと感じても仕方がないところでは、(当会の感想)