弁護士の懲戒処分を公開しています。日弁連広報誌「自由と正義」2023年11月号に掲載された弁護士の懲戒処分(処分取消)の公告・福岡県弁護士会・蓑田孝行弁護士の懲戒処分の要旨
日弁連広報誌「自由と正義」は毎月発行です。特集の読み物も充実しています。
あなたが取った懲戒処分の記念にぜひ1冊。お申込みは、日弁連広報課 自由と正義担当 03(3580)9840年間購読費12000円(税別)1冊でも購入可能です。
元福岡地裁所長 簑田孝行 (みのだたかゆき) 21期 東大
在任期間:平成17年6月2日~平成20年2月6日
元の処分要旨
福岡県弁護士会がなした懲戒の処分について、同会から以下のとおり通知を受けたので、懲戒処分の公告及び公表等に関する規程第3条第1号の規定により公告する。
記
1 処分を受けた弁護士氏名 蓑田孝行 登録番号 37389
事務所 福岡市中央区薬院1-6-9 福岡ニッセイビル703
名和田法律事務所
2 懲戒の種別 戒告 (2023年8月28日 処分取消)
3 処分の理由の要旨
被懲戒者は、医療法人Aの理事であり、A法人の社員は被懲戒者と懲戒請求者の2名であったところ、2018年3月29日の社員総会における社員1名の増員及びそれに基づくBの社員選任手続が定款に違反し無効であることを認識しており、懲戒請求者が欠席し、定足数に達しないため社員総会を開催できないことを知りながら、同年8月24日の社員総会では新たな社員の追加等を、同年9月21日の社員総会では出資額限度法人とするという定款変更を決議しようとした。
被懲戒者の上記行為は、弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する
4処分が効力を生じた日 2021年12月13日 2022年6月1日 日本弁護士連合会
福岡県弁護士会が2021年12月13日に告知した 同会所属弁護士 簑田 孝行 会員(登録番号 37389) に対する懲戒処分 (戒告) について、 同 人から行政不服審査法の規定による審査請求が あり、 本会は、 2023年8月22日、 弁護士法第59 条の規定により、懲戒委員会の議決に基づい て、以下のとおり裁決したので、懲戒処分の公 告及び公表等に関する規程第3条第3号の規定に より公告する。
1 裁決の内容
記
(1) 審査請求人に対する懲戒処分 (戒告) を 取り消す。
(2)審査請求人を懲戒しない。
2 裁決の理由の要旨
(1) 原議決書において、 法人Aが開催した4つの社員総会について 「問題総会 1ないし 4」と定義し、2016年9月12日開催の問題 総会 1については、 有効に開催されたものであるが、問題総会 2 ないし4について は、いずれも2008年に変更された定款に基 づいた総会での議事進行ではなく、各議事進行に関与した審査請求人の行為には問題 があったと言わざるを得ないとした。 その 上で、審査請求人は、 2018年4月20日に、 2008年に定款変更がなされたこと及び変更された定款の内容を認識したものと認定 し、この2018年4月20日の時点で、同年3月 29日開催の問題総会2 における社員1名増 員及びこれに基づくBの社員選任が無効で あることを認識していたと考えられるか ら、それ以降である同年8月24日開催の問題総会 3 及び同年9月21日開催の問題総会 4において、その総会での各手続が定款違 反であることを知りながら積極的にこれら に関与した審査請求人の行為は「職務の 内外を問わずその品位を失うべき非行」に 当たるものと判断した。
(2)懲戒請求者を原告、法人Aを被告、審査 請求人らを参加人とする社員総会決議不存在等確認請求事件、 独立当事者参加争けについて、 原議決後に言い渡された第一審判決は、問題総会 2ないし4については、 大要、次のとおり認定及び判断をした。
問題総会2については、懲戒請求者は、 問題総会 2においてBが議長となることを 容認したものと解すべきである以上、Bを議長として行われた問題総会 2での決議 が、2008年に変更された定款21条2項に違 反するとはいえないし、Bが可否同数の場合の議長として議事を決したことが、 定款24条に違反するということもできない。
問題総会 3については、 問題総会 1での 決議で社員に選任された審査請求人及び問題総会 2での決議で社員に選任されたBが 出席し、 議決が行われたことになるから、 これが存在しない旨の懲戒請求者の主張には理由がない。
問題総会4についても、 社員3名が出席し、議決が行われたことになるから、これ が存在しない旨の懲戒請求者の主張は理由がない。
(3)上記事件の控訴審判決は、第一審判決の 認定及び判断をほぼ踏襲して控訴を棄却し、懲戒請求者の主張は退けられている。
(4) 原議決書が採用した証拠並びに審査請求 人及び懲戒請求者から本会懲戒委員会に新 たに提出された証拠等によっても、本会懲 戒委員会は、第一審判決及び控訴審判決の 認定及び判断を覆す理由を見いだすことができない。 この第一審判決及び控訴審判決 に従えば、問題総会 2ないし 4について、 原議決書が示した結論が維持できないこと になる。 第一審判決及び控訴審判決は、 社員総会決議の存否という対世的効力を有す る事項についての判断であり、実際に現在、法人Aは、第一審判決及び控訴審判決 の判断を前提として運営されている。こう した状況からすれば、裁判所の認定及び判 断とは明らかに反する原議決書の認定及び 判断を基にして、審査請求人に対する戒告 処分を維持することは困難であるものと考 えられる。
(5) よって、審査請求人を戒告に付した原弁 護士会の処分を取り消し、 審査請求人を懲しないこととするのが相当である。
3採決が効力を生じた日 2023年8月28日 2023年11月1日日本弁護士連合会