【棄却された懲戒の議決書】
令和4年(綱) 第6号,第7号 (併合) 議決書
懲戒請求者 個人
対象弁護士 香川県観音寺市坂本町1丁目3番17号グランシャトー坂本2階
有明法律事務所 香川県弁護士会所属
第6号 安藤修二 (登録番号: 39548)
第7号 秋月智美 (登録番号: 38135)
主 文
対象弁護士らにつき, 懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当とする。
第1懲戒請求事由の要旨
理 由
対象弁護士らは、懲戒請求者との間で, 遺産分割事件の処理を受任することを内容とする委任契約を締結し、懲戒請求者を申立人, 対象弁護士らを申立人代理人とする遺産分割調停事件 (高松家庭裁判所観音寺支部平成29 年 (家イ) 第93号, 同第130号) を申し立て、 同事件は調停成立をもって終結したところ、 同事件の終結後、 同事件の契約締結及び事件処理等に関し、懲戒請求者が原告となって第6号事案対象弁護士を被告とする民事訴訟 (高松地方裁判所観音寺支部令和2年(ワ)第38号損害賠償等請求事件) (以下「本件民事訴訟」という。)を提起した。
その過程等において対象弁護士らとった以下の言動等が,弁護士法等の定める誠実義務に反し、弁護士としての品位を失う非行に当たる。
ア 第6号事案対象弁護士が,本件民事訴訟において,
1 法廷での本人尋問の際に記憶に反するする, あるいは, 虚偽の供述を意図的に行ったり,
2 陳述書の作成にあたって意図的に記憶に反する,あるいは, 虚偽の事実を記載して証拠提出したりして, 虚偽の事実を法廷顕出した (弁護士職務基本規定第75条違反に当たる行為に及んだ。)。
イ 第6号事案対象弁護士及び第7号事案対象弁護士が, 「部分」と表記 すべきところを 「場合」 とする等して, インターネットにおいてする業務広告において, 一般消費者を誤認させ、その自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある広告を掲載した (日本弁護士連合会の弁護士等の業務広告に関する規程第3条等に違反する広告を掲載した。)。
ウ 第6号事案対象弁護士が,本件民事訴訟において, 録音反訳書を改ざんして証拠提出した。
第2 対象弁護士らの弁明の要旨
第1のアイについて, 懲戒請求者の本件懲戒請求は, 香川県弁護士会平 成30年(綱) 第6号, 同第7号事件(以下「既決事件」という。)及び本件民事訴訟において認められなかった懲戒請求者の主張に反する対象弁護 士の供述等を虚偽であると主張するものであり、実質的に見て、不当な蒸し返しであり、懲戒不相当との議決を求める。
第1のウについて, 改ざんを否認し、同様の議決を求める。
第3 証拠
懲戒請求者提出分
(1) ボイスレコーダーのコピー
(2)反訳書 (おとのは工房作成)
(3) 懲戒請求者とおとのは工房の間のメール
(4)陳述書 (第6号事案対象弁護士作成)
(5) 本人尋問調書と思料される文書
(6) 位置関係図と思料される文書
(7) 遺産分割調停申立書(高松家庭裁判所観音寺支部平成29年(家イ) 第93号)
(8) 進行に関する照会回答書(同上)
(9) 主張書面1(同上)
(10) 第2回期日調書 (高松家庭裁判所観音寺支部平成29年 (家イ) 第9 3号,同第130号)
(11) 答弁書(香川県弁護士会平成30年 (綱)第7号)
(12) 2019年10月5日付け対象弁護士ら事務所のホームページ印刷物
(13) 有利誤認表示の証拠書類送付と題する文書
(14)2020年5月16日付け対象弁護士ら事務所のホームページ印刷物
(15) 懲戒請求者と公正取引委員会の間のメール
(16)2020年4月13日付け第7号事案対象弁護士のインターネット サイト広告印刷物
(17)2020年5月12日付け第7号事案対象弁護士のインターネット サイト広告印刷物
(18) 録音反訳書(一般財団法人司法協会作成)
(19) 懲戒請求者と有限会社コミュニティプラザとの間のメール
(20) 反訳 (有限会社コミュニティプラザ作成)
(21) 領収書 (対象弁護士第6号事案対象弁護士発行)
(22) 控訴理由書 (高松高等裁判所令和4年(ネ) 第75号損賠賠償等請求 控訴事件
(23) 控訴答弁書(同上)
(24) 判決書 (同上)
(25) 観音寺東ロータリークラブに関する文書
(26) 三豊市空家等対策推進協議会議事録(要約)
(27) 時系列表
対象弁護士ら提出分
(1) 懲戒請求書(香川県弁護士会平成30年(綱)第6号,同第7号)
(2) 決定書謄本(同上)
(3) 紛議調停申立書
(4) 異議請求書 (日弁連綱紀事案番号第2034号, 同第2035号) (5) 決定書(同上)
(6) 綱紀審査申出書 (日弁連綱紀審査申出事案番号 2020年 (コシ)第 89号)
(7) 決定書(同上)
(8) 訴状 (高松地方裁判所観音寺支部令和2年(ワ) 第38号損害賠償等 請求事件)
(9) 判決書(同上)
(10) 控訴状(高松高等裁判所令和4年(ネ)第75号損賠賠償等請求控 訴事件)
(11) 判決書(同上)
第4 当委員会の認定した事実及び判断
1 懲戒請求者及び対象弁護士の提出にかかる関係証拠等によれば, 次の事実が認められる。
既決事件は,本件懲戒請求者を懲戒請求者に, 本件対象弁護士らを対象弁 護士とするものであるところ, 平成30年12月5日に 「対象弁護士らにつき, 懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当とする。」 との議決がなされた。
本件民事訴訟は,本件懲戒請求者を原告 控訴人) に,第6号事案対象弁護士を被告(被控訴人)とす 護士を被告 (被控訴人) とするものであるところ、 第一審において本件懲戒請求者の請求が棄却され, 控訴審においても本件懲戒請求者の控訴が棄却された。
2 本件懲戒請求の主たる事由は,第6号事案対象弁護士が既決事件と事実関係の基礎を共通にする本件民事訴訟において,
1 法廷での本人尋問の際 に記憶にする, あるいは, 虚偽の供述を意図的に行ったり、
2 陳述書の作成にあたって意図的に記憶に反する, あるいは、虚偽の事実を記載して証拠 提出したりしたとするもの (第1のア) や, 改ざんした書証を証拠提出した とするもの (第1のウ) である。
この点, 前者 (第1のア) は,第6号事案対象弁護士の法廷での本人尋問 の内容や陳述書記載内容が,既決事件においても主張されて認められなか った懲戒請求者の事実主張や認識と異なることを理由に, 虚偽の事実を述 べたとするものである。
しかし, 第6号事案対象弁護士が自身の記憶に反する事実を述べたとか, 敢えて虚偽の事実を述べたと認定するに足りる証拠はない。 なお,本件民 事訴訟においても, 第6号事案対象弁護士の陳述書や供述が虚偽であると 認定されていない。
なお, 懲戒請求者は,本件懲戒請求において、 既決事件や本件民事訴訟に おいて認められなかった懲戒請求者の主張に反する対象弁護士の供述等を虚偽であるとして懲戒事由にしているところ,これは既決事件や本件民事訴訟の蒸し返しともいえる。
3 また,後者(第1のウ) について, 改ざんの事実があったと認定するに足 りる証拠はない。
4 対象弁護士らが、 業務広告において, 一般消費者を誤認させ、 その自主的 かつ合理的な選択を阻害するおそれのある広告を掲載したとの点(第1の イ)について,当該広告はあくまで「着手金と報酬金のめやす」として示され、 「事件の内容により変わる場合があります」 「具体的な費用については, 個別に検討して, 法律相談の際などにお伝えします」 と付記されているので あって,「場合」 との記載であっても, 「部分」 との記載であっても、そのことのみをもって, 日本弁護士連合会の弁護士等の業務広告に関する規程第3条等に違反するとはいえない。
なお,懲戒請求者は,既決事件において懲戒事由としたものと同一の広 告に関し,同様の問題を指摘しており、この点についても蒸し返しともい える。
5 以上のとおり,本請求で懲戒請求者が主張する懲戒事由を認めるに足りる証拠はない。
したがって, 対象弁護士の行為に弁護士法第1条2項の誠実義務違反や同 法第56条1項に定める品位を失うべき非行があったとは認められない。 よって, 主文のとおり議決する。
令和5年3月15日
香川県弁護士会綱紀委員会第1部会部会長 古川慎一郎
上記は謄本である
令和25年3月22日 香川県弁護士会 会長 古屋時洋