
https://x.com/kanebo162/status/1879301839688233300
東京弁護士会所属の福永活也弁護士について懲戒請求をした件で、請求をした山口三尊氏のツイッターの投稿では、東京弁護士会の綱紀委員会が懲戒委員会に審査を求める議決をしたとのことです。
この投稿の画像から、懲戒請求事件の番号によると令和3年中に請求した事件だと分かります。
懲戒請求事件の内容については、私は詳細を知りませんし、福永弁護士の言い分や山口氏の言い分のどちらが妥当かも分かりません。また、懲戒手続は、懲戒請求を受け付けた弁護士会の綱紀委員会が事案の調査をし、綱紀委員会が事案の審査を懲戒委員会に求めて懲戒委員会が懲戒するか否かの議決をしますから、今のところ福永弁護士が懲戒されることが決まったわけではありません。
今回、問題だと思うのは、令和3年に懲戒請求をした事案が、令和7年になって懲戒手続の第1段階である綱紀委員会の議決がようやく出たという遅さについてです。
懲戒請求の内容は、福永弁護士のツイッターでの投稿や弁護士会に営利業務の届出等をしていなかったことを問題にするものですから、事案そのものとして長期化するようなものには思えません。
懲戒請求の結論が出るのが不相当に長期化すると、弁護士会による弁護士の懲戒制度に対する信頼が失われ、弁護士会による懲戒制度の廃止ということにもつながると思います。
綱紀委員会や懲戒委員会のメンバーは、弁護士だけではなく、裁判官・検察官・学識経験者からそれぞれ選任されていますから、委員会そのものを頻繁に開催するのは困難です。
また、委員に特に日当などが賄われていないと思いますので、懲戒請求の事案への対応に時間と労力の負担を増すのも難しいでしょう(もしかしたら、日当等が出ているところもあるかもしれませんけど、仮に出ている弁護士会があったとしても十分なものではないでしょう。)。
そうは言っても、懲戒手続が遅延するのは問題ですから、弁護士の委員を増やすとか、弁護士から綱紀委員会の事案の調査を補助する嘱託(調査官のようなイメージ)を設けるなどで、処理の迅速化を図るべきと考えます。実際に作業を任せる弁護士には、弁護士会からそれなりの手当を出すべきでしょう。
弁護士会の存在意義は、第一には、弁護士への監督官庁を設けず、弁護士を強制加入させて弁護士会・日弁連が懲戒権を持って監督するというものと考えます。弁護士会が会員の弁護士から徴収している多額の会費は、弁護士会の本来的な目的に重点的につかわれるべきです。
弁護士会の懲戒制度が機能していないということになれば、弁護士の監督を弁護士会に行わせるという弁護士自治を廃止して、裁判所や法務大臣や第三者委員会に監督させて懲戒させるのが妥当ということになります。個人的には、裁判所や法務大臣等の監督に服するより弁護士会が懲戒する方がマシだと思っていますので、懲戒制度の機能マヒは避けてもらいたいと思います。
弁護士自治を考える会
弁護士懲戒制度・弁護士自治に関心をお持ちいただきありがとうございます。
当会にも懲戒制度の質問、弁護士の事件処理等の苦情を多く頂きますが、やはり自分の出した懲戒、自分が今やっている裁判のことへの不満が多く、「弁護士懲戒制度、弁護士自治」についてのご意見はあまりありません。
また弁護士の方々もあまり懲戒制度に詳しくないSNSの投稿、意見もあります。司法試験に懲戒制度や弁護士自治、弁護士の事件処理の実務が試験に出ないのが原因ではないかと思います。
林朋寛氏の指摘する
今回、問題だと思うのは、令和3年に懲戒請求をした事案が、令和7年になって懲戒手続の第1段階である綱紀委員会の議決がようやく出たという遅さについてです。
日弁連、単位弁護士会は綱紀委員会の審査は6か月をメドとするとなっていますが、6か月で綱紀委員会の審査が終了した場合は全て「棄却」(懲戒しない)です。
懲戒請求の申立をすると、約1週間程度で弁護士会から「受理書」が送られてきます。綱紀委員会に調査を付した。正式に懲戒の審査に入りますとなります。
対象弁護士に「懲戒書1通」が送付され、「答弁書」の提出を求められます。(弁護士会によって違いますが提出期限は1か月)
被調査人の1回目の答弁書には
「懲戒委員会に審査を付さないを求める」
「被調査人について懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当とするとの議決を求める」
「懲戒請求者の被調査人に対する請求を棄却するとの決定を求める」
つまり綱紀委員会で棄却せよ。処分するなという答弁書です。これを書いて処分を求める理由について反論、弁明が書かれます。
しかし、中には上記の一行だけしか書いてこない弁護士がおります。「懲戒委員会に・・・」の後に答弁がないものがあります。こんな答弁書が懲戒請求者に送られてくるのです。
再度、被調査人の答弁書を求めますと書面で請求しても「追って書面を提出する」という答弁書が来たりします。これで1年~2年放置されたことがあります。
実際は2つ目の答弁書を出していることもあります。懲戒請求者に送付しないだけです。また「上申書」を提出してくる被調査人もおります。この上申書は懲戒請求者に送付されません。この書面には、この懲戒請求者はクレーマーであるとか裁判負けたから腹いせで懲戒を出した等記載されているようです。
これが分かるのは綱紀委員会の議決書の最後に互いにどのような書面を提出したかの一覧が記載されます。懲戒請求者には1通か2通しか答弁書が来ていないのに上申書が何件も出されていて驚くこともあります。
大きな弁護士会は綱紀委員会の部会がいくつかあります。(東弁4部会)
先ず懲戒書が出されて部会にまわされて担当の委員2名が決まります。そこで双方の主張を整理して(被調査人からの答弁書や懲戒請求者の主張)綱紀調査を行います。懲戒請求者に綱紀委員が面会してなぜ懲戒の申立てを行ったか等事情を聴取します。
過去、大阪、京都、兵庫の弁護士会で綱紀調査を受けたことがあります。
最近は懲戒の申立ても数多く、懲戒請求者から事情を聴取することは少なくなったと聞いています。
弁護士会によって答弁の出し方が違います
第一東京弁護士会 被調査人の答弁書は初回のみ送られてきます。「懲戒委員会に審査を付さない・・」と答弁されたらその後の答弁書は送られてきません。次に懲戒請求者が主張書面を提出しても被調査人に送られません。つまり双方が相手の回答がないまま書面を送り綱紀委員会がどちらの主張が正しいか判断します。相手の主張、反論を見ないまま進むのです。
懲戒請求書に一気に書かないで2回目3回目に決定的な主張や証拠を提出した方が良いと思います。また処分を求める理由がいくつかあれば何回にも分けて懲戒の申立てをする場合があります。
東京弁護士会 民事裁判と同じように被調査人からの答弁書が送られてきます。次に懲戒請求者が反論を提出します。月に1回程度のやりとりが続きます。ここらで終わりかなとなれば綱紀が判断します。
その他 「答弁書を求めます」と懲戒書に記載しないと送ってきません。書いても送らない弁護士会もあります。この弁護士会の場合は一気に懲戒書、証拠を提出しなければなりません。
処分までに時間がかかるわけは、綱紀1年、懲戒1年なら早い方です
答弁と反論のやりとりが終わるまで綱紀の判断はでません。担当の綱紀委員(2名)が一定の結論が出れば、月1回開催の綱紀委員会(委員全員出席)にかけます。綱紀委員会で懲戒委員会に付すとの議決がなされた場合、懲戒委員会に審査になります。この間、1年は経過しているでしょう。
事案が訴訟になっている場合 事件放置、報酬が違法に高い、離婚事件で裁判中に懲戒の申立てがなされた場合、裁判所の判断も参考にする場合もあり判決が確定するまで綱紀の判断は出ません。
刑事事件になった場合 被調査人が横領、非弁提携で逮捕起訴された場合、綱紀の審査は止まります。
大きな裁判を抱えている場合 例えば、裁判員裁判事件、冤罪事件など大きな事件を担当している弁護人に処分は出せません。裁判が終わるまで判断しません。
弁護士会役員の場合 役員任期が終わるまで判断しません。
弁護士の監督を弁護士会に行わせるという弁護士自治を廃止して、裁判所や法務大臣や第三者委員会に監督させて懲戒させるのが妥当ということになります。個人的には、裁判所や法務大臣等の監督に服するより弁護士会が懲戒する方がマシだと思っていますので、懲戒制度の機能マヒは避けてもらいたいと思います。
過去、弁護士は検察の監督下にあった時代がありました。これでは国家や検察に物申すことができません。弁護士はどこからも指揮監督を受けない独立した自治を先人が勝ち取ったのですが、市民から遠い存在でした。
しかし改革は段々進み、自由と正義に処分要旨が掲載されるようになった、過去は処分が公告として掲載されましたが処分内容が記載されませんでした。
弁護士懲戒処分が官報に公告として掲載されるようになった。
綱紀審査会ができた。お見舞金制度ができた等々、
ネットの時代になり少しではありますが改革しています。
ただし、日弁連、弁護士会に非行弁護士の対策がないため懲戒件数、処分件数は減りません。特に事件放置、成年後見人弁護士による横領事件、非弁提携について日弁連は何の対策も対応もありません。そんな弁護士に依頼するあなたが悪い、運がないというだけです。横領弁護士には先に弁護士登録を取消しさせたり、破産させてから元弁護士として発表するのです。
綱紀委員会、懲戒委員会の委員についても、単位弁護士会では検察官、裁判官、地元大学の法学部教授、地元マスコミの論説委員ですが、多数決では弁護士の委員が1票多いように構成されています。ほんとうの一般市民の委員はいません。綱紀審査会(市民が委員)を作ったのは市民の意見を取り入れようということですが、審査相当となるのは年間1件あるかないかです。また、懲戒委員の中には検察官、裁判官は将来退官すれば弁護士になる方もおります。日弁連懲戒委員会に朝日新聞、毎日新聞は委員がいますが、産経、読売の委員は見たことがありません
綱紀委員会の判断が遅いという理由の中には、懲戒を出した時は弁護士の対応、言動に頭にきて、懲戒を申し立てたものの、あまりに判断が遅いので、熱も冷めて、「もうどうでもええわ!」となることを弁護士会は狙っているのではないかと!