令和7年ワ5545号 16部乙平井直也
原告 日本保守党 代理人小澤一仁
被告 飯山陽こと●●●● 代理人 安田修、野中信敬

3月4日提訴
3月13日訴状受領
3月21日菊竹進が閲覧 同日「裁判所から合法的に飯山の住所をゲット!これでいつでもカンパ詐欺の訴状が送れるね」とのYouTube動画
3月24日菊竹進が閲覧
3月24日 A子が閲覧
3月25日 安田修が閲覧
3月25日 答弁書 3行
3月26日閲覧制限申立
4月4日(3日付) 原告準備1
4月7日 B氏が閲覧

「このLGBТ理解増進法に反対して、2,023年10月に設立されたのが、日本保守党という政党である。(中略)ところが、日本保守党は、結党から1年半が経過し、選挙を経て国政政党になったにもかかわらず、LGBТ理解増進法の問題には一切取り組んでいない。少なくとも、一般有権者にはその気配すら窺い知ることができない。」

訴 状

第1 請求の趣旨
1 被告は、原告に対し、330万円及びこれに対する令和7年2月26日から支払い済みまで、民3%の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
 との判決並びに仮執行宣言を求める。

第2 請求の原因
1 当事者

原告は、東京都江東区に主たる事務所を置く、国政政党である。
被告は、東京都〇〇区に居住する個人である。被告は、元原告の東京都第15区支部長の地位にあった者であり、2024年に行われた、衆議院東京15区補欠選挙においいて、原告の公認候補として立候補した者であるが、同年5月に同支部長を退任した。
2 事案の概要

本件は、2,025年2月26日発売の「月間Hanada」(以下「本件雑誌」という。)において被告が寄稿した記事(以下「本件記事」という。)が、原告の名誉権を侵害するものとして、原告が被告に対し、本件記事により生じた無形損害等の賠償を求めるる事案である。
3 被告の不法行為
(1) 名誉権侵害
 ア 公然性
   本件雑誌は一般に販売されているから、公然性はある。
 イ 事実摘示等
本件記事154頁最上段の「このLGBТ」から始まる段落以下では、被告が原告に対する批判を行っている(甲2の赤枠部分)。そこに記載されていることを一般閲覧者の普通の注意と読み方を基準にして判断すると、本件記事は、「原告は、LGBТ―理解増進法に反対して2023年10月に設立された政党であるが、結党から1年半が経過し、国政政党になったにも関わらず、LGBТ理解増進法の問題には一切取り組んでいない」との事実を摘示するものと解釈される。
 ウ 社会的評価の低下
原告は、自由民主党岸田政権下で成立したLGBТ理解増進法の、第3条(基本理念)「ジェンダーアイデンティティを理由とする不当な差別はあってはならない」との規定の不明確さから、特にトランス女性(生まれた時に「男性」と診断され、自分自身を「女性」だと思っている人々)の理解を求める反面、シス女性(生まれた時に「女性」と診断され、自分自身を「女性」だと思っている人々)の安全が不当に脅かされる可能性があること等を理由に、反対の立場を打ち出して設立されたものであり、主として亡安倍晋三内閣総理大臣亡き後の自由民主党に対し不満を持つ保守層の支持を得て、結党後初の衆議院議員選挙で政党要件を得るほどの票を獲得した。
  すなわち、原告にとって、LGBТ理解増進法反対に対する取り組みは、党の存在意義そのものと言ってよいほど重要なものである。
  それにもかかわらず、党設立以後現在に至るまで、全くLGBТ理解増進法に対する取り組みをしてこなかったとなれば、原告は有権者をだまして支持を得てきたことになり、これに対して、特に支持者から非難が向けられることは必至である。被告は東京都第15区の支部長の地位にあった者であり、日本保守党に関する言説について一定の信用性を得るであろうことも考慮すると、原告の社会的評価の低下の程度は極めて大きいというべきである。
 エ 違法性阻却事由
  (ア) 公共性
     国政政党という原告の立場に鑑み、公共性については積極的には争わない。
  (イ) 公益目的

2024年9月30日、第28代自由民主党総裁の石破茂氏は、「(翌10月1日に召集される第214回国会で自身が内閣総理大臣に指名された場合には)10月9日に衆議院を解散し、15日公示、27日投開票の日程で衆議院議員選挙を行う」と表明し、同年10月1日に第102代内閣総理大臣に就任した。
被告は、衆議院議員解散の前日である2024年10月8日に「【緊急】日本保守党の衆議院議員選候補者に飯山陽がいない件について」と題するYouTube動画を投稿し、候補者に選任されなかったことに対する不満等を述べた。以後被告は現在に至る5か月弱の間に、原告を批判、揶揄する内容の動画を100本以上投稿している。
以上によれば、被告は専ら衆議院議員選挙候補者に選ばれなかったことの私怨を晴らすために本件記事和寄稿したというべきであるから、公益目的はない。
 (ウ) 真実性

たとえば、原告は、国政政党となったあと、所属する国会議員である島田洋一氏が法務委員会において、経済産業省に勤めるトランスジェンダー女性が、就業する庁舎のうち執務する階とその上下の階の女性トイレの使用を認められないという処遇を受けており、職場の女性トイレを自由に使用させることを含む行政措置の要求をしたことに対し、人事院が平成27年5月20日付でした、当該要求を認めない旨の判定をしたことについて、当該判定が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法であると判断した最高裁判所令和5年7月11日第3小法廷判決を引き合いに出し、LGBТ問題に関する懸念事項を指摘している(なお、LGBТ理解増進法を所管する内閣委員会には原告の国会議員は所属していないため、法務委員会が所管する、最高裁判所の違憲立法審査権に関する議案や、性同一性障害特例法に関する議案に紐づけて、LGBТに関する懸念事項を指摘するものである。)。
 また、嶋田洋一氏は、2025年1月22日、インターネットSNSサービスXにおいて、衆議院法制局に、LGBТ理解増進法を廃止する法律案の骨子の作成を依頼し、具体的に各所に働きかけていきたい旨表明しているし、本件記事が寄稿された本件雑誌においても、上記最高裁判例の問題点等に触れる島田洋一氏の記事が寄稿されている。
  以上によれば、前記イの摘示事実は真実ではない。
 (エ) 小括
  よって、本件記事には違法性阻却事由が存在しない。

(2) 損壊及び因果関係
 ア 無形損害
前記(1)ウで述べた通り、LGBТ理解増進法反対に対する取り組みは、党の存在意義に関わる極めて重要なものであるが、原告の要職にあった被告が、著名な月刊誌という媒体で本件記事を投稿したことによる社会的評価の低下は著しく、これによって原告に生じた無形損害を金銭に評価すると300万円を下らない。
 イ 弁護士費用
   前記アの10%相当額である30万円は、弁護士費用として原告の損害に含まれる。

第3 結語
 よって、原告は、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償請求権として、330万円及びこれに対する本件記事が公表された日(本件雑誌の発売日)である令和7年2月26日から支払い済みまで、民法所定の年3%の割合による遅延賠償金の支払いを求める。

第4 本件訴訟提起に至る経緯
 前記第2の3(1)エ(イ)で述べた通り、被告は直近5か月間にわたり、原告を批判、揶揄する動画を大量に投稿している。
 原告は、政治団体あるいは国政政党として、相応な批判は受忍すべき立場にあるが、被告が投稿した動画の中には、この点を考慮しても、意見論評としての域を超えるもものが散見される。
 このような状況の中で、本件記事によって原告の根幹となる部分について、虚偽の事実を公表され、さらには、当該虚偽の事実に基づき、「偽善者に騙されるな」とまで非難されたことを受け、原告としては、本件記事をこのまま放置することは、原告が本件記事の正当性を認めたと社会的に評価されかねないこと、これまでにも被告が投稿した動画を視聴したと思われる人物が、原告の事務所を突然訪れ活動を妨げようとするなどの出来事が複数回起こっていることから、被告の発信内容が必ずしも正しい者ではないことを公的な場で認定してもらう必要があると考えたこと、原告の支持者からも、被告への対応を求める声が多数寄せられていることなどの理由から、本訴訟提起に至ったものである。
      以 上