高知弁護士会 横川英一弁護士 登録番号16073 横川法律事務所
東京弁護士会 太田真也弁護士 登録番号37657 神田のカメさん法律事務所
◆時系列
①2023年(令和5年)3月8日 東弁弁護士 高知弁護士に懲戒請求(令和5年第1,2号)
②2023年(令和5年)6月30日 高知弁護士会綱紀委員会棄却
③2024年(令和6年)2月27日 日弁連異議申立棄却
④2024年(令和6年)8月7日 綱紀審査申出 棄却
⓹2024年(令和6年)12月18日 高知弁が東弁に懲戒請求申立(令和6年東綱406号)
⑥2025年(令和7年)4月21日 東弁 高知弁の懲戒を棄却
⑦2025年(令和7年)5月19日 東弁弁護士 高知弁護士に不当懲戒だと懲戒請求
⑦2025年(令和7年)5月19日 東弁弁護士 東京地裁に提訴
ざくっというと
①太田真也弁護士が依頼先より受けた事件の処理に高知の弁護士がクレーム、
②太田弁護士が横川弁護士に懲戒請求申立、(棄却)すると、横川弁護士が太田弁護士に懲戒請求(棄却)
③太田弁護士が横川弁護士に懲戒請求2回目
2025年5月19日横川弁護士の懲戒請求は不当懲戒にあたると太田弁護士が東京地裁に横川弁護士を被告とする損害賠償請求を提訴(第1回 東京地裁 618号法廷 7月24日10時30分
ここで興味があるのは懲戒支給者の弁護士として懲戒書の書き方。高知、東京の弁護士会の議決書の書き方です。過去に双方の懲戒書、議決書を公開は初、なおファクタリングに関する懲戒請求は何件もありますが、全て棄却です。
懲戒請求者 神田のカメさん法律事務所
太 田真也
對象弁護士 横川法律事務所
横川 英一 (登録番号 16073)
対象弁護士 横川誠二 (登録番号44771 )
第1 懲戒請求の趣旨
懲戒請求対象弁護士横川英一及び懲戒請求対象弁護士横川誠二は、令和2年11月30日付の通知書 (甲第1号証の1) 及び令和3年1月2 5日付の提案書 (甲第1号証の2)において、 法律の専門家である弁護士 の見解として、 「実質的には貸金である」、「真実のファクタリング取引 とは評価できない」 などと、 原告会社A及び原告会社代表者Bを欺罔するような主張をあえて述べた上で て述べた上で、「利息制限法のみなら出資法にも違反している可能性があり 仮に出資法に違反している場合は、 刑事告訴を検討せざるを得ません。」、「貸金業違反及び出資取締法違反に より告発する」 などと刑事告訴をする旨まで述べて、原告会社及び原告 会社代表者齋藤正を畏怖させるような表現までしている。
したがって、このような懲戒請求対象弁護士横川英一及び懲戒請求対象弁護士横川誠二の行為は、 原告会社A及び原告会社代表者Bに対して、不法行為(民法709条) る欺罔行為及び強迫行為にあたるものとして、不法行為 (民法709条) に該当するものといえる。
懲戒請求対象弁護士横川栄一及び懲戒請求対象弁護士横川誠二による これらの不法行為は、 弁護士法56条1項に規定されている 「品位を失うべき非行」 に該当することは明らかであるものと思料されるので、 すみやかに調査の上、 適切な懲戒処分がなされるよう懲戒請求を申し立てる
第2 懲戒請求の理由
1 当事者
株式会社A社(以下、「原告会社A」という。)と株式会社C(以下、「被告会社C」という。)とは、 東京地方裁判所令和3年(ワ)第3678号損害賠償等請求事件及び令和3年(ワ)第17062号供託金還付請求権確認請求事件、 並びに高松高等裁判所令和5年 (ラ) 第3号債権差押命令に対する執行抗告事件 (原審 高知地方裁判所令和4年 (ル) 第425号)の当事者である。
懲戒請求対象弁護士横川栄一及び懲戒請求対象弁護士横川誠二は、上記各事件において、 被告会社Cの代理人を務めた弁護士である。
2懲戒請求対象弁護士横川栄一及び懲戒請求対象弁護士横川誠二作成 の通知書の内容
懲戒請求対象弁護士横川栄一及び懲戒請求対象弁護士横川誠二は、令和2年11月30日付の通知書 (甲第1号証の1) において、 「責社と被告会社Cとの間では、 債権売買契約ないし債権譲渡契約が締結されていますが 実質的には貸金であることは貴社も十分ご承知のことと存じます。 責社との間の取引を小職らにおいて調査中ですが、 利息制限法のみなら ず、出資法にも違反している可能性があり 仮に出資法に違反している場合は、刑事告訴を検討せざるを得ません。」 と主張していた。
また、 令和3年1月25日付の提案書 (甲第1号証の2)において、 「A社との取引は真実のファクタリング取引とは評価できない。」と明言した上で、 被告が、原告に対し、 不当に廉価な支払いのみをするこ とで解決とする合意案を提示し、 さらに、「以上で解決できないときは、 これまでの過払金返還請求及び供託金還付請求権がITSに属する旨の 訴訟をするとともに、 貸金業違反及び出資取締法違反により告発するこ ととする。」とまで述べている。
3 懲戒請求対象弁護士横川一及び懲戒請求対象弁護士横川誠二作成 の準備書面の内容 (主張の変遷 )
ところが、 懲戒請求対象弁護士横川栄一及び懲戒請求対象弁護士横川誠二は、 東京地方裁判所令和3年(ワ)第3678号損害賠償等請求事件 において提出した令和3年9月13日付の「被告会社C第1準備書面」(甲第2号証) では、一転して、 「A社との取引は真実の債権売買 (債権譲渡)であることを認める。」と主張を変遷させた。
そして、その後、 懲戒請求対象弁護士横川栄一及び懲戒請求対象弁護士横川誠二からは、「実質的に貸金であった」、 「真実のファクタリング 取引とは評価できない」といった主張は一切なされず、 「ファクタリング取引」 であることを前提とした主張しかなされなかった。
4 裁判所の判断の内容
そして、 東京地方裁判所令和3年(ワ)第3678号損害賠償等請求事 件及び令和3年(ワ) 第17062号供託金還付請求権確認請求事件の判 決 (甲第3号証)においても、 原告会社と被告会社との間の契約について は債権売買 (債権譲渡) であり 「ファクタリング取引」の性質を有するものであるとの判断がなされている。
懲戒請求対象弁護士横川栄一及び懲戒請求対象弁護士横川誠二によ る不法行為について
上記の訴訟の時点での主張内容 (甲第2号証)、 及び東京地方裁判所令 和3年(ワ) 第 3 6 7 8 号損害賠償等請求事件及び令和3年(ワ)第170 62号供託金還付請求権確認請求事件の判決の内容 (甲第3号証)に照らせば、 原告会社と被告会社との間の契約については債権売買 (債権譲渡) であることは明らかである。
そして 「原告会社と被告会社との間の契約については債権売買 (債権 譲渡)であること」に関しては、 令和2年11月30日付の通知書(甲第 1号証の1) 送付時点、 令和3年1月25日付の提案書 (甲第1号証の2)送付時点において、懲戒請求対象弁護士横川英一及び懲戒請求対象 弁護士横川誠二にとっても、 容易に認識することができた事柄であるといえる。
それにもかかわらず、 懲戒請求対象弁護士横川英一及び懲戒請求対象 弁護士横川誠二は、 令和2年11月30日付の通知書(甲第1号証の1) 及び令和3年1月25日付の提案書(甲第1号証の2)において、 法律の専門家である弁護士の見解として、 「実質的には貸金である」、「真実の ファクタリング取引とは評価できない」 などと、原告会社A及び原告会社 代表者Bを欺罔するような主張をあえて述べた上で、 「利息制限法のみならず、出資法にも違反している可能性があり 仮に出資法に違反している場合は、刑事告訴を検討せざるを得ません。 」、 「貸金業違反及 び出資取締法違反により告発する」 などと刑事告訴をする旨まで述べて、 原告会社及び原告会社代表者齋藤正を畏怖させるような表現までしてい る。
したがって、このような懲戒請求対象弁護士横川英一及び懲戒請求対 象弁護士横川誠二の行為は、 原告会社A及び原告会社代表者Bに対するとして、不法行為(民法709 る欺罔行為及び強迫行為にあたるものとして、不法行為 (民法709条) に該当するものといえる。
結語
よって、懲戒請求対象弁護士横川一及び懲戒請求対象弁護士横川誠 二によるこれらの不法行為は、 弁護士法56条1項に規定されている「 品位を失うべき非行」に該当することは明らかであるものと思料される ので、すみやかに調査の上、適切な懲戒処分がなされるよう懲戒請求を 申し立てる
以上
懲戒請求者 神田のカメさん法律事務所 太田真也
対象弁護士 横川法律事務所 横川英一(登録番号16073)
対象弁護士 横川法律事務所 横川誠二 (登録番号44771)
主 文
対象弁護士らにつき, 懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当とする。
理 由
第1 事案の概要
本件の前提となった事件の当事者は,ファクタリング業務を目的とする株式 会社A社(以下,「A社」) と大工工事の施工及び施工管 理等を目的とする株式会社C社 (以下, 「C社」)である。
前提となる事件は,A社とC社の間で, C 社の第三者に対する債権を買い受ける債権譲渡契約を締結し、 また, C社が上記各債権の回収業務を受託する旨の回収業務委託契約を締結するなどして,C社の第三者に対する債権の売却及び当該債権の回収業務の受託が繰り返され, その際にA社の代金債務と C社の回収金銭交付債務を合意により順次相殺した結果, C社の 回収金銭交付債務に残債務があると主張して,A社が, C社に対し, 金銭請求を行ったものである。 対象弁護士らは、 同事件において,C社の代理人を務めその事件処理を行っていたところ, 訴外交渉時において, 作成した書面の記載が,A社及び同社の代表者(以下,「A社ら」) に対する欺罔行為, 強 迫行為にあたり, 弁護士法56条1項の 「品位を失うべき非行」に該当するとして, 懲戒申立がなされた。
なお、懲戒請求者は,A社及びC社のいずれの関係者でもない。
第2 懲戒請求事由の要旨
対象弁護士らが作成してA社にFAX送信した令和2年11月30日付 通知書(甲1の1), 令和3年1月25日付提案書 (甲102) において, 「実質的に貸金である」 「真実のファクタリング取引とは評価できない」 などと, A社らを欺罔するような主張をあえて述べた上で、 「利息制限法のみならず, 出資法にも違反している可能性があり、 仮に出資法に違反している場合は, 刑事告訴を検討せざるを得ません。」 「貸金業法違反及び出資取締法違反により告発す る」 などと刑事告訴をする旨まで述べて, シンキ社らを畏怖するような表現をし たことが, シンキ社らに対する欺罔行為及び強迫行為にあたるものとして, 不法 行為に該当することから, 対象弁護士らの当該行為は、弁護士法56条1項の 「品位を失うべき非行」に該当する。」
第3 対象弁護士らの弁明の要旨
ファクタリング取引と称する事実関係について, 実質貸金と主張することは法的評価の問題であって, 欺罔行為などにはあたらない。 また、解決のために, 一定の提示をし, 解決できないときは民事上, 刑事上の手続をとることを予告することは通常の弁護士業務の範囲内である。
第4 証拠関係
別紙証拠目録記載のとおり。
第5 当委員会の認定した事実及び判断
1 前提となる事実関係 ((1)~(3)の事実認定について甲3)
(1)A社は,ファクタリング業務を目的とする株式会社であり, C社は, 大工工事の施工及び施工管理等を目的とする株式会社である。
(2) ファクタリングとは, 売掛金債権等を買い取ることによって債権の売主に資金を提供する業務をいう。
(3) A社とC 社は,別表1~9項各号の「日付」欄の日にITS社の第三 者に対する「金額」欄記載の債権額の金銭債権をA社が「代金」 欄記載の代金で買い受ける旨の債権譲渡契約(以下、個別の契約を別表の項番号に従い 「債権譲渡契約 1」 などという。)を締結し, また, C社が上記各債権の回収業務 を受託する旨の回収業務委託契約(以下,債権譲渡契約及び回収業務委託を併せて 「譲渡回収契約」 などということがある。) を締結した。 債権譲渡契約の代金の支払期限は,別表9項a号の「日付」欄の日 (令和2年10月29日) とさ れていた。
A社は,C社に対し, 債権譲渡契約 1,2及び9の代金として別表 1; 2 及び 9 項各a 号の「支払額」欄の金銭を支払った。C社は,A社に対し, 別表 1~7, 9項各号の「日付」欄の日に 「交付額」欄の金銭を支払った。 (4) 対象弁護士らは, 令和2年11月30日C社の代理人として, 甲1号証の 1の通知書をA社に送付した。 同通知書には,上記譲渡回収契約について, 「実質的に貸金である」 「真実のファクタリング取引とは評価できない」, A社の行為について、「利息制限法のみならず, 出資法にも違反している可能性があり, 仮に出資法に違反している場合は, 刑事告訴を検討せざるを得ません。」 との記載がなされていた。
(5) 対象弁護士横川英一は, 令和3年1月 25 日, 甲1号証の2の提案書をA社に送付した。 同提案書には,上記譲渡回収契約について, 「真実のファクタリ ング取引とは評価できない」 「実質は貸金である」,C社側の和解案に対する回答期限を同年1月28日午後5時までとしたうえで、 「以上で解決できないとき は、これまでの過払金返還請求訴訟及び供託金還付請求権が C社に属する旨の 訴訟をするとともに, 貸金業違反及び出資取締法違反による告発することとす る。」 との記載がなされていた。
(6) その後,A社は,令和3年9月までに,C社に対し, 回収業務委託契約に基づく残金 488 万9377 円及びその遅延損害金の支払いを求めて訴えを提起 した。
(7) 対象弁護士らは,同訴訟において,C 社の代理人として, 「A社との取引 は真実の債権売買 (債権譲渡) であることを認める。」 (甲2) と主張するととも に,本件譲渡回収契約が公序良俗に反する旨の主張をした (甲3)。
(8) 同訴訟については,令和4年10月14日に, C社が,A社に対し, 483万9377円及びその遅延損害金の支払うよう命ずる旨の判決がなされた (甲 3).
2 当委員会の判断
(1) 甲1号証の1の記載について
ファクタリング取引は,債権の売買 (債権譲渡) 契約であるものの、経済的に 貸付けと同様の機能を有しているものは貸金業に該当するおそれがあるものとして、 金融庁もファクタリング取引の利用に関して注意喚起をしているところ である。 本件取引も単純な債権譲渡取引ではなく,上記事実関係のもとで, 対象弁護士らが,本件譲渡回収契約についてその法的な評価の一つとして実質的な貸金であると主張することは, 正当な弁護士活動の範囲内であるといえる。このことは、後に訴訟においてファクタリング取引であることを争わなかったとしても,それ以前の交渉の段階において実質的な貸金と主張することが許されな いとまではいうことができないうえ、 対象弁護士らは訴訟において本件取引に ついて公序良俗違反である旨の主張を行っていることからすると, 対象弁護士 らの行為を欺罔行為等ということはできない。
また,「利息制限法のみならず, 出資法にも違反している可能性があり、仮に出資法に違反している場合は,刑事告訴を検討せざるを得ません。」との表現に ついても, 「可能性があり」 「検討せざるを得ません」 との比較的穏当な表現であ り, 前記のとおり, 実質的な貸金であるとの主張は許容されるところ、 仮に本件 取引が実質的な貸金と評価される場合には,シンキ社の行為について出資法に 違反する可能性があることから刑事手続をとることも考えられるため, 仮定の 法的手続きの一つとして刑事告訴を示唆することは,正当な弁護士活動の範囲 内であって, 強迫行為に該当するものということはできない。
(2) 甲1号証の2の記載について
甲1号証の2の記載のうち, 本件譲渡回収契約について実質的な貸金である と主張していることについては, 前記同様に正当な弁護士活動の範囲内であり、 欺罔行為ということはできない。
「以上で解決できないときは, これまでの過払金返還請求訴訟及び供託金還付 請求権がITS に属する旨の訴訟をするとともに, 貸金業違反及び出資取締法違反による告発することとする。」 との記載は, 和解できなければ刑事告発すると断定的に表現するものであって, 穏当な表現とは言い難いところはあるものの、 前記のとおり,仮に本件取引が実質的な貸金と評価される場合には,A社の 行為について貸金業法及び出資取締法 (出資の受入れ, 飛鳥利金及び金利等の取 締りに関する法律) に違反する可能性があることから刑事手続をとることも考えられる。 加えて, A社はファクタリング取引という特殊な取引を取り扱う業種であること, その後民事訴訟を提起していること, 及びその他A社及び 代表者らが実際に畏怖したとの事情は見受けられないことなどからすれば,当該表現は,正当な弁護士活動の範囲内であって、 強迫行為に該当するものということはできない。
3 結論
以上のとおり, 懲戒請求者が主張する対象弁護士らの行為等について, 欺罔行 為及び強迫行為にあたるものということができず, 対象弁護士に品位を失うべ き非行があったとはいえない。
2023年(令和5年) 6月30日
高知弁護士会綱紀委員会 委員長
懲戒請求者 弁護士 横 川 英 一
懲戒請求者弁護士横川英一(以下横川という) は、 下記懲戒対象弁護士太田真 也 (以下太田という)は、以下の懲戒請求の理由のとおり、 懲戒の事由があると 考えるので、 太田に対し懲戒処分をするよう請求する。
記
事務所所在地: 〒101-0032 東京都千代田区岩本町三丁目11番8号イワモトチョービル2階 225号室
事務所名:神田のカメさん法律事務所
懲戒対象弁護士 : 太田真也
第2、 懲戒請求の理由
1、 太田は、 横川作成の株式会社A社 (以下A社とい う) に対する通知書(甲1の1) で、 横川が 「利息制限法のみならず、 出資法にも違反している可能性があり、 仮に出資法に違反している場合は、刑事告訴を検討せざるを得ません」 と主張し、 提案書 (甲1の2) の2頁で、「貸金業違反及び出資取締法違反により告発することとする」 とまで述べ ているとして、 令和5年3月8日、 高知弁護士会に対し、 横川を懲戒処分せよと懲戒申立をした (甲2:懲戒請求書)。
2、 高知弁護士会は、 甲1の1についても、 甲1の2についても、欺罔行為でもなく、 強迫行為でもなく、正当な弁護士活動の範囲内であると判断した (甲3:懲戒請求事案の決定について(通知)、 甲4: 議決書)。
3、 太田は令和5年9月13日、 高知弁護士会の判断は誤っているとして、 日 本弁護士連合会に対し、 異議申出をしたが、 日弁連は異議申し出を棄却し た(甲5: 決定書)。
4、 太田は上記3を不服として、令和6年4月8日、 日弁連に対し、 綱紀審査申出をしたが、 日弁連は綱紀審査の申出を棄却した (甲6:決定書)。
1、 A社とその代表者であるBを原告とし、 太田はその代理人として、 横川外2名を被告として、 A社に34万円余を、Bに1100万円の 支払請求訴訟を東京地方裁判所に提起したが、同裁判所は横川の活動は正当な弁護士活動の範囲内の行為として許されると判断し、 原告らの請求は 全て棄却となった (甲7: 東京地裁判決)。
2、 A社らは控訴したが、 控訴棄却となった (甲8: 東京高裁判決)。
3、 A社らは上告、上告受理申立をしたが、 上告は受理されなかった(甲 9: 最高裁調書(決定))。
三、 上記一、 二のとおり、 横川の弁護活動は正当なものであること、 弁護士にとって明白であるのに、 太田は悪意を以て懲戒申立及び代理人として訴提起をしたものであり、これらの行為は正当な弁護士活動を委縮させかねないものであり、 弁護士として品位を失うべき非行に該る。
懲戒請求者 横川英一
被調查人 太田真也
(登録番号37657)
主 文
被調査人につき、 懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当とする。
第1 事案の概要
事実及び理由
被調査人が、高知弁護士会所属の弁護士である懲戒請求者に対して、不当な目的のもと、懲戒申立てをしたなどとして、懲戒請求された事案である。
第2 前提事実
1 懲戒請求者は、高知弁護士会所属の弁護士である。
2 株式会社A社(以下「A社」という。) と株式会社C社ー(以下「C社」 という。)は、令和2年2月19日から同年10月30日までの間に、別表の1~9項各号の「日付」 欄記載の年月日に、A社がC社からC社の第三者に対 る「金額」欄記載の債権額を「代金」欄記載の代金で買い受ける債権譲渡契約(以下、個別の債権譲渡契約を別表の項番号ごとに 「債権譲渡契約1」 などという。)を締結し、C社がA社から各債権譲渡契約に基づく債権の回収を受託する債権回収契約を締結した。 そして、 A社はC社に対し、 債権譲渡契約1 2及び9の代金として別表1、2 及び9項各号の「支払額」欄記載の金額を支払い、C社はA社対して、 別表 1 ~ 7,9項各号の「日付」欄の日に「交付額」欄記載の金銭を支払った(以下、 A社とC社との間で行われた取引を「本件取引」という。)。
3 令和2年11月、 A社とC社との間で、本件取引は、いわゆるファクタリング契約ではなく、実質的には消費貸借契約ではないかという解釈を巡る紛争が生じた。 そして、 C社は、A社とそして、C社はの交渉を高知弁護士会に所属する弁護士である懲戒請求者及び横川誠二弁護士(以下「懲戒請求者ら」という。)に委任した。 当時、A社の代理人はDが務めていた。
4 令和2年11月30日、懲戒請求者らはA社に対して受任通知書(以下「本件受任通知書」という。甲1の1) を送った。 懲戒請求者らは、本件受任通知書の中で、 本件取引に関して、「実質的には貸金であることは貴社も十分ご承知のことと存じます。」とか、「貴社との間の取引を小職らにおいて調査中ですが、 利息制限法のみならず、 出資法にも違反している可能性があり、仮に出資法に違反している場合は、刑事告訴を検討せざるを得ません。」とか、「貴社との間で円満合意できる場合は、C社は刑事告訴まではしません。」と記載した(以下、これら記載を「本件記載1」という)。
5 令和3年1月25日、懲戒請求者らはA社に対して 「提案書」を送った(以下「本件提案書」という。 甲1の2)。 懲戒請求者らは、本件提案書の中で、「そもそも、A社との取引は真実のファクタリング取引とは 評価できない。」 とか、「(令和2年4月から10月までの金銭の授受については)
羞
順次弁済を受けているという貸金そのものである。」とか、「以上で解決できな いときは、これまでの過払金返還請求及び供託金還付請求権がITSに属する 旨の訴訟をするとともに、 貸金業違反及び出資取締法違反により告発すること とする。」と記載した(以下、これら記載を「本件記載2」という。)。
6 被調査人が懲戒請求者らにつき懲戒を申し立てたこと
(1) 令和5年3月8日、被調査人は、懲戒請求者らが本件記載1及び本件記載 2をしたことは、シンキコーポレーションに対する欺罔行為や強迫行為(不 法行為)にあたり、ひいては、 弁護士の品位を失うべき非行行為であると主
張し、懲戒を申し立てた(以下「本件懲戒申立」という。)。
懲戒請求者に関わる綱紀懲戒手続は、令和5年 (綱) 第1号事件として、
横川誠二弁護士に関わる綱紀懲戒手続は、 令和5年(網) 第2号事件として
高知弁護士会綱紀委員会にて調査されることとなった (甲3、 甲4 以下、 懲戒請求者に関わる綱紀懲戒手続を「本件懲戒手続」という。)。
(2)令和5年6月30日、 高知弁護士会綱紀委員会は、懲戒請求者らが、本件
受任通知書などで、本件記載1及び本件記載2の記載をしたことは、正当な 弁護士活動の範囲内にあるとして、懲戒請求者らにつき、懲戒委員会に事案 の審査を求めないことを相当とするとの議決をした
(甲4、以下「本件議決」 という。)。
(3)令和5年9月13日、 被調査人は、本件議決を不服とし、日本弁護士連合 会(以下「日弁連」という。)に異議申出をしたが (甲5)、令和6年2月2 7日、日弁連は被調査人のした異議申出を棄却する決定をした。
(4)令和6年4月8日、被調査人は、 日弁連の決定を不服とし、日弁連の綱紀 審査会に綱紀審査の申出をしたが、 同年8月7日、日弁連は被調査人のした 綱紀審査の申出を棄却する決定をした (甲6)。
7 A社が懲戒請求者らを被告とする損害賠償請求訴訟を提起したこと
(1)令和5年、A社その代表者代表取締役であるB (以下、Bことを単に「B」といい、A社とBを合わせて「A社」という。)は、原告として、 東京地方裁判所に、懲戒請求者らを被告とし、損害賠償請求訴訟(和5年(ワ) 第4145号、以下「本件訴訟」という。)を提起した。
本件訴訟における、Bの主張は、懲戒請求者らから本件記載1及び本件記載2のある本件受任通知書等を送りつけられたことで多大な精神的苦痛を受けたとし、懲戒請求者らに対して、慰謝料金1000万円の支払いを求めるというものであった。また、本件訴訟におけるA社の主張は、A社は本件通知書等への対応を弁護士に委任せざるを得ず、弁護士費用として金34万9265円の支出を強いられたというものであった。
(2)被調査人は、本件訴訟においてA社らの訴訟代理人を務めた。
(3)令和5年10月26日、東京地方裁判所は、本件訴訟について、 A社らの請求を棄却する判決を下した(甲7)。
(4) A社らは、同判決を不服とし、 東京高等裁判所に控訴したが、令和6年4月18日、東京高等裁判所はA社の控訴を棄却する判決を言い渡した。 控訴審においても、被調査人はA社らの訴訟代理人を務めた。
(5)A社らは、控訴審判決を不服とし、 最高裁判所に上告及び上告受理申立てをしたが、令和6年12月5日、最高裁判所は、本件訴訟に関する上告を棄却し、上告審として受理しない旨の決定をした(甲9)。
被調査人は上告に際しA社らの訴訟代理人を務めた。
第3懲戒請求事由の要旨
懲戒請求者らが、 C社の代理人として、 A社に対して、本件受任通知書等を送付した行為は正当な弁護活動である。被調査人が令和5年に懲戒請求者らにした本件懲戒申立や本件訴訟の提起は、悪意に基づくものであり、手続の濫用である。 被調査人の行為は、正当な弁護士活動を萎縮させかねないものであり、弁護士の品位を害する行為である。
第4 被調査人の答弁及び反論の要旨
本件懲戒申立には、事実上の根拠及び法律上の根拠があり、適法な懲戒申立てである。A社らの訴訟代理人として本件訴訟を提起したことにも違法性はない。
第5 証拠の標目
別紙証拠目録記載のとおり。
第6 当委員会第4部会の認定した事実及び判断
1 前提事実は証拠により認められる。
2 次に、被調査人が本件懲戒申立をしたことが弁護士の品位を失わせる非行といえるか検討する。
(1)弁護士法第58条第1項は、『何人も弁護士又は弁護士法人について懲戒の事由があると思料するときは、その事由の説明を添えて、その弁護士又は 弁護士法人の所属弁護士会にこれを懲戒することを求めることができる。』 と規定する。
しかしながら、 他方、懲戒請求を受けた弁護士は、懲戒請求されたことに より、 その名誉、信用等を不当に侵害されるおそれがあり、 また、綱紀懲戒手続において弁明を余儀なくされる負担を負うなどの不利益を受けること、 同項が、請求者に対し恣意的な請求を許容したり、広く免責を与えたりする 趣旨の規定でないことは明らかであることからすると、同項に基づく請求を する者は、懲戒請求を受ける弁護士の利益が不当に侵害されることがないよ うに、当該弁護士に懲戒事由があることを事実上及び法律上裏付ける相当な 根拠について調査、検討をすべき義務を負うものというべきである。
そして、同項に基づく懲戒請求が事実上又は法律上の根拠を欠く場合にお いて、請求者が、そのことを知りながら又は通常人であれば普通の注意を払 うことによりそのことを知り得たのに、あえて懲戒を請求するなど、懲戒請 求が弁護士懲戒制度の趣旨目的に照らし相当性を欠くと認められるときに は、違法な懲戒請求として不法行為を構成すると解されている(最判平成19年4月24日)。
さらに、 弁護士自らが、 他の弁護士について懲戒請求をする場合には、 自身が法律の専門家である以上、 なおいっそうの慎重さを求められるというべ きである(同判決の田原睦夫裁判官の補足意見)。 そして、自らがした懲戒請求が事実上又は法律上の根拠を欠くことを、弁護士であれば普通の注意を払うことによりそのことを知り得たのに、あえて懲戒を請求したような場合には、それは違法な懲戒請求であるとともに、 弁護士の品位を失うべき非行であるというべきである。
(2)これを本件懲戒請求についてみると、本件記載1は「貴社との間の取引を小職らにおいて調査中ですが、利息制限法のみならず、 出資法にも違反している可能性があり、仮に出資法に違反している場合は、刑事告訴を検討せざるを得ません。」 などと、 A社とC社Sとの取引については、出資法にも違反しているとの法律解釈も可能であるとの見解を示したうえで、違反している場合には、刑事告訴を検討せざるを得ないと述べている 、に過ぎず、懲戒請求者らが本件記載1をすることは正当な弁護活動の範囲内といえ、弁護士の品位を失うべき非行とはいえない。
従って、 弁護士が本件記載1のみを理由に懲戒請求をしたとするならば、軽率であるとの誹りは免れないというべきである。 しかし、本件懲戒申立は、本件記載1のみでなく本件記載2をも理由としてなされたものである。 そして、本件記載2は、本件記載1とは異なり、A社とC社との取引が貸金業法及び出資取締法に違反していると断言しつつ、「解決できないときは、これまでの過払金返還請求及び供託金還付請求権がITSに属する旨の訴訟をするとともに、貸金業違反及び出資取締法違反により告発することとする。」 という内容である。
このような内容の本件記載2については、それが正当な弁護活動の範囲内にある行為といえるか強迫行為として不法行為を形成するか否かはさておき、諸般の事情を総合考慮した場合には弁護士の品位を失うべき非行と評価 される余地が皆無とまではいえないところ、 被調査人が、本件記載1だけでなく本件記載2をも理由として懲戒請求をしたことは、直ちに、弁護士としての品位を失うべき非行であるということはできない。
3 次に、被調査人がA社らの訴訟代理人として、本件訴訟を提起したことが、 弁護士の品位を失うべき非行といえるか検討する。
弁護士が、 依頼を受けて、依頼者のために、 紛争解決の手段として訴訟等の 司法手続を利用した場合には、それが明白な訴権の濫用に該当する場合であるなど特段の事情がない限り、 非行であると評価をすることはできないというべ きである。
この点、被調査人は、 A社らの訴訟代理人として本件訴訟を提起しているが、 その過程において、それが明白な訴権の濫用に該当する場合であるなどの特段の事情は認められない。
よって、主文のとおり議決する。
令和7年3月21日
東京弁護士会綱紀委員会第4部会部会長 (記載省略)
高知弁護士会会長殿
懲戒請求者 神田のカメさん法律事務所
太 田 真 也
対象弁護士 横川法律事務所
横 川 英 一 (登録番号16073)
第1 懲戒請求の趣旨
横川法律事務所の横川英一弁護士(以下、「懲戒請求対象弁護士」という。)は、令和6年12月18日、「懲戒請求者が懲戒請求対象弁護士に対して懲戒請求をしたこと、および訴外A社らの訴訟代理人として訴訟を提起したことが、弁護士として品位を失うべき非行に該当する。」ことを理由として主張して、東京弁護士会に対し、懲戒請求者についての懲戒請求(以下、「本件懲戒請求」を申し立てた。
ところで、本件懲戒請求の懲戒請求書(甲第10号証)には、「弁護士による懲戒請求が『違法な懲戒請求として、弁護士の品位を失うべき非行に該当する』ことになる場合の基準も記載されていないことから、本件懲戒請求は、少なくとも「法律上の根拠を欠く場合」に該当する。
また、この弁護士による懲戒請求が「違法な懲戒請求として、弁護士の品位を失うべき非行に該当する」ことになる場合の基準については、弁護士であれば、当然に認識しているべき基準であるといえることから、懲戒請求対象弁護士は、本件懲戒請求について、法律上の根拠を欠くことを知りながら又は通常の弁護士であれば普通の注意を払うことにより、法律上の根拠を欠くことを知り得たのに、あえて懲戒を請求したものといえる。
よって、以上のことから、本件懲戒請求は、違法な懲戒請求であるとともに、弁護士の品位を失うべき非行(弁護士法56条1項)であるといえるものと思料されるので、すみやかに調査の上、適切な懲戒処分がなされるよう懲戒請求を申し立てる。
第2 懲戒請求の理由
1 懲戒請求者による懲戒請求対象弁護士に対する懲戒請求懲戒請求者は、懲戒請求対象弁護士が訴外A社(以下
、「訴外A社」という。)に送付した「受任通知書」(以下、「本件受任通知書」という。甲第1号証の1)、及び「提案書」(以下、「本件提案書」という。甲第1号証の2)の記載内容(以下、本件受任通知書の記載内容を「本件記載1」、本件提案書の記載内容を「本件記載2」という。)が、訴外A社に対する欺罔行為や強迫行為(不法行為)にあたり、ひいては、弁護士の品位を失うべき非行行為であると主張し、懲戒請求(高知弁護士会令和5年(綱)第2号 甲第2号証)を申し立てた (高知弁護士会令和5年(綱)第2号 甲第2号証)。この懲戒請求者が申し立てた懲戒請求については、令和5年7月3日に、高知弁護士会から「懲戒委員会に事案の調査を求めない」という決定がなされ(甲第3号証、甲第4号証)、その後、日本弁護士連合会に対する異議の申出(甲第5号証)、綱紀審査会への綱紀審査の申出(甲第6号証)のいずれも棄却された。
2 訴外A社らによる懲戒請求対象弁護士らに対する損害賠償請求訴訟の提起
令和5年、訴外A社とその代表者代表取締役である訴外Bは、訴訟代理人として懲戒請求者を選任し、東京地方裁判所に、懲戒請求者らを懲戒請求対象弁護士とする損害賠償請求訴訟(令和5年(ワ)第4145号損害賠償請求事件 甲第7号証)を提起した。
令和5年10月26日、東京地方裁判所は、上記訴訟について、訴外A社らの請求を棄却する判決を下したため(甲第7号証)、訴外A社らは、引き続き、懲戒請求者を訴訟代理人として、東京高等裁判所に控訴したが、控訴は棄却となり(甲第8号証)、その後、引き続き、懲戒請求者を訴訟代理人として、最高裁判所に上告及び上告受理申立をしたが、上告は棄却となり、上告審として受理しないとの決定がなされた(甲第9号証)。
3 懲戒請求対象弁護士による懲戒請求者に対する懲戒請求
上記の懲戒請求及び訴訟の結果を受けて、懲戒請求対象弁護士は、令和6年12月18日、「懲戒請求者が懲戒請求対象弁護士に対して上記の懲戒請求をしたこと、および訴外A社らの訴訟代理人として上記の訴訟を提起したことが、弁護士として品位を失うべき非行に該当する。」ことを理由として主張して、東京弁護士会に対し、懲戒請求者についての懲戒請求(以下、「本件懲戒請求」を申し立てた(甲第10号証)。
この本件懲戒請求について、東京弁護士会は、以下のように述べて、「懲戒委員会に事案の調査を求めない」という決定をした(甲第11号証)。
すなわち、まず懲戒請求の申立について、「弁護士法第58条第1項は、『何人も弁護士又は弁護士法人について懲戒の事由があると思料するときは、その事由の説明を添えて、その弁護士又は弁護士法人の所属弁護士会にこれを懲戒することを求めることができる。』と規定する。
しかしながら、他方、懲戒請求を受けた弁護士は、懲戒請求されたことにより、その名誉、信用等を不当に侵害されるおそれがあり、また、綱紀懲戒手続において弁明を余儀なくされる負担を負うなどの不利益を受けること、同項が、請求者に対し恣意的な請求を許容したり、広く免責を与えたりする趣旨の規定でないことは明らかであ
ることからすると、同項に基づく請求をする者は、懲戒請求を受ける弁護士の利益が不等に侵害されることがないように、当該弁護士に懲戒事由があることを事実上及び法律上裏付ける相当な根拠について調査、検討をすべき義務を負うものというべきである。そして、同項に基づく懲戒請求が事実上又は法律上の根拠を欠く場合において
、請求者が、そのことを知りながら又は通常人であれば普通の注意を払うことによりそのことを知り得たのに、あえて懲戒を請求するなど、懲戒請求が弁護士懲戒請求の趣旨目的に照らし相当性を欠くと認められるときには、違法な懲戒請求として不法行為を構成すると解される(最判平成19年4月24日)。
さらに、弁護士自らが、他の弁護士について懲戒請求をする場合には、自身が法律の専門家である以上、なおいっ
そうの慎重さを求められるというべきである(同判決の田原睦夫裁判官の補足意見)。そして、自らがした懲戒請求が事実上又は法律上の根拠を欠くことを、弁護士であれば普通の注意を払うことによりそのことを知り得たのに、あえて懲戒を請求したような場合には、それは違法な懲戒請求であるとともに、弁護士の品位を失うべき非行で
あるというべきである。」と述べて、「被調査人が、本件記載1だけでなく本件記載2をも理由として懲戒請求をしたことは、直ちに、弁護士としての品位を失うべき非行であるということはできない。」と判断している。
また、訴訟代理人としての訴訟の提起についても、「弁護士が、依頼を受けて、依頼者のために、紛争解決の手段として訴訟等の司法手続を利用した場合には、それが明白な訴権の濫用に該当する場合であるなど特段の事情がない限り、非行であると評価をすることはできないというべきである。」と述べて、「被調査人は、A社らの訴訟代理人として本件訴訟を提起しているが、その過程において、それが明白な訴権の濫用に該当する場合であるなどの特段の事情は認められない。」と判断している。
4 懲戒請求対象弁護士による懲戒請求者に対する本件懲戒請求が違法な懲戒請求となること
(1) 上記の東京弁護士会の議決書(甲第11号証)においても記載されているとおり、弁護士による懲戒請求が「違法な懲戒請求として、弁護士の品位を失うべき非行に該当する」ことになるのは、「自らがした懲戒請求が事実上又は法律上の根拠を欠くことを、弁護士であれば普通の注意を払うことによりそのことを知り得たのに、あえて
懲戒を請求したような場合」に限られる。 そして、この弁護士による懲戒請求が「違法な懲戒請求として、弁護士の品位を失うべき非行に該当する」ことになる場合の基準については、懲戒請求が不法行為となる場合についての基準を示した最判平成19年4月24日を敷衍したものであり、弁護士であれば、当然に認識しているべき基準であるといえる。
(2) ところで、本件懲戒請求についての懲戒請求書(甲第10号証)を見ると、「懲戒請求者による懲戒請求対象弁護士に対する懲戒請求の経緯」と「訴外A社らによる懲戒請求対象弁護士らに対する損害賠償請求訴訟の経緯」の記載があるだけで、「弁護士による懲戒請求が『違法な懲戒請求として、弁護士の品位を失うべき非行に該当する』ことになる場合の基準も記載されてなければ、当然、その基準についての当てはめもなされておらず、単に、「懲戒請求者が懲戒請求対象弁護士に対して上記の懲戒請求をしたこと、および訴外A社らの訴訟代理人として上記の訴訟を提起したことが、弁護士として品位を失うべき非行に該当する。」との記載がなされているだけである。
(3) 上記の東京弁護士会の議決書(甲第11号証)においても記載されているとおり、「懲戒請求が事実上又は法律上の根拠を欠く場合において、請求者が、そのことを知りながら又は通常人であれば普通の注意を払うことによりそのことを知り得たのに、あえて懲戒を請求するなど、懲戒請求が弁護士懲戒請求の趣旨目的に照らし相当性を欠くと認められるときには、違法な懲戒請求として不法行為を構成すると解される(最判平成19年4月24日)」。
そして、上記のとおり、本件懲戒請求の懲戒請求書(甲第10号証)には、「弁護士による懲戒請求が『違法な懲戒請求として、弁護士の品位を失うべき非行に該当する』ことになる場合の基準も記載されていないことから、本件懲戒請求は、少なくとも「法律上の根拠を欠く場合」に該当する。
また、この弁護士による懲戒請求が「違法な懲戒請求として、弁護士の品位を失うべき非行に該当する」ことになる場合の基準については、弁護士であれば、当然に認識しているべき基準であるといえることから、懲戒請求対象弁護士は、本件懲戒請求について、法律上の根拠を欠くことを知りながら又は通常の弁護士であれば普通の注意を払うことにより、法律上の根拠を欠くことを知り得たのに、あえて懲戒を請求したものといえる。
よって、以上のことから、本件懲戒請求は、違法な懲戒請求であるとともに、弁護士の品位を失うべき非行(弁護士法56条1項)であるといえるものと思料されるので、すみやかに調査の上、適切な懲戒処分がなされるよう懲戒請求を申し立てる。
令和7年5月19日 東京地方裁判所民事部 御中
原 告 太 田 真 也
損害賠償請求事件
訴訟物の価額 168万円
貼用印紙額 1万4000円
当事者目録
原告 神田のカメさん法律事務所
太 田 真 也
被告 横川法律事務所
横 川 英 一
第1 請求の趣旨
1 被告は、原告に対し、金168万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は、被告らの負担とする
との判決並びに仮執行の宣言を求める。
第2 請求の原因
1 原告による被告に対する懲戒請求
原告は、被告が訴外株式会社A社(以下、「訴外A社」という。)に送付した「受任通知書」(以下、「本件受任通知書」という。甲第1号証の1)、及び「提案書」(以下、「本件提案書」という。甲第1号証の2)の記載内容(以下、本件受任通知書の記載内容を「本件記載1」、本件提案書の記載内容を「本件記載2」という。)が、訴外A社に対する欺罔行為や強迫行為(不法行為)にあたり、ひいては、弁護士の品位を失うべき非行行為であると主張し、懲戒請求(高知弁護士会令和5年(綱)第2号 甲第2号証)を申し立てた (高知弁護士会令和5年(綱)第2号 甲第2号証)。この原告が申し立てた懲戒請求については、令和5年7月3日に、高知弁護士会から「懲戒委員会に事案の調査を求めない」という決定がなされ(甲第3号証、甲第4号証)、その後、日本弁護士連合会に対する異議の申出(甲第5号証)、綱紀審査会への綱紀審査の申出(甲第6号証)のいずれも棄却された。
2 訴外A社らによる被告らに対する損害賠償請求訴訟の提起令和5年、訴外A社とその代表者代表取締役である訴外Bは、訴訟代理人として原告を選任し、東京地方裁判所に、懲戒請求者らを被告とする損害賠償請求訴訟(令和5年(ワ)第4145号損害賠償請求事件 甲第7号証)を提起した。
令和5年10月26日、東京地方裁判所は、上記訴訟について、訴外A社らの請求を棄却する判決を下したため(甲第7号証)、訴外A社らは、引き続き、原告を訴訟代理人として、東京高等裁判所に控訴したが、控訴は棄却となり(甲第8号証)、その後、引き続き、原告を訴訟代理人として、最高裁判所に上告及び上告受理申立をしたが、上告は棄却となり、上告審として受理しないとの決定がなされた(甲第9号証)。
3 被告による原告に対する懲戒請求
上記の懲戒請求及び訴訟の結果を受けて、被告は、令和6年12月18日、「原告が被告に対して上記の懲戒請求をしたこと、および訴外A社らの訴訟代理人として上記の訴訟を提起したことが、弁護士として品位を失うべき非行に該当する。」ことを理由として主張して、東京弁護士会に対し、原告についての懲戒請求(以下、「本件懲戒請求」を申し立てた(甲第10号証)。
この本件懲戒請求について、東京弁護士会は、以下のように述べて、「懲戒委員会に事案の調査を求めない」という決定をした(甲第11号証)。 すなわち、まず懲戒請求の申立について、「弁護士法第58条第1項は、『何人も、弁護士又は弁護士法人について懲戒の事由があると思料するときは、その事由の説明を添えて、その弁護士又は弁護士法人の所属弁護士会にこれを懲戒することを求めることができる。』と規定する。
しかしながら、他方、懲戒請求を受けた弁護士は、懲戒請求されたことにより、その名誉、信用等を不当に侵害されるおそれがあり、また、綱紀懲戒手続において弁明を余儀なくされる負担を負うなどの不利益を受けること、同項が、請求者に対し恣意的な請求を許容したり、広く免責を与えたりする趣旨の規定でないことは明らかであ
ることからすると、同項に基づく請求をする者は、懲戒請求を受ける弁護士の利益が不等に侵害されることがないように、当該弁護士に懲戒事由があることを事実上及び法律上裏付ける相当な根拠について調査、検討をすべき義務を負うものというべきである。そして、同項に基づく懲戒請求が事実上又は法律上の根拠を欠く場合において
、請求者が、そのことを知りながら又は通常人であれば普通の注意を払うことによりそのことを知り得たのに、あえて懲戒を請求するなど、懲戒請求が弁護士懲戒請求の趣旨目的に照らし相当性を欠くと認められるときには、違法な懲戒請求として不法行為を構成すると解される(最判平成19年4月24日)。さらに、弁護士自らが、他の
弁護士について懲戒請求をする場合には、自身が法律の専門家である以上、なおいっそうの慎重さを求められるというべきである(同判決の田原睦夫裁判官の補足意見)。
そして、自らがした懲戒請求が事実上又は法律上の根拠を欠くことを、弁護士であれば普通の注意を払うことによりそのことを知り得たのに、あえて懲戒を請求したような場合には、それは違法な懲戒請求であるとともに、弁護士の品位を失うべき非行であるというべきである。」と述べて、「被調査人が、本件記載1だけでなく本件記載
2をも理由として懲戒請求をしたことは、直ちに、弁護士としての品位を失うべき非行であるということはできない。」と判断している。
また、訴訟代理人としての訴訟の提起についても、「弁護士が、依頼を受けて、依頼者のために、紛争解決の手段として訴訟等の司法手続を利用した場合には、それが明白な訴権の濫用に該当する場合であるなど特段の事情がない限り、非行であると評価をすることはできないというべきである。」と述べて、「被調査人は、疎外A社らの訴訟代理人として本件訴訟を提起しているが、その過程において、それが明白な訴権の濫用に該当する場合であるなどの特段の事情は認められない。」と判断している。
4 被告による原告に対する本件懲戒請求が不法行為(民法709条)となること(1) 上記の東京弁護士会の議決書(甲第11号証)においても記載されているとおり、弁護士による懲戒請求が「違法な懲戒請求として、弁護士の品位を失うべき非行に該当する」ことになるのは、「自らがした懲戒請求が事実上又は法律上の根拠を欠くこ
とを、弁護士であれば普通の注意を払うことによりそのことを知り得たのに、あえて懲戒を請求したような場合」に限られる。 そして、この弁護士による懲戒請求が「違法な懲戒請求として、弁護士の品位を失うべき非行に該当する」ことになる場合の基準については、懲戒請求が不法行為となる場合についての基準を示した最判平成19年4月24日を敷衍したものであり、弁護士であれば、当然に認識しているべき基準であるといえる
。
(2) ところで、本件懲戒請求についての懲戒請求書(甲第10号証)を見ると、「原告による被告に対する懲戒請求の経緯」と「訴外A社らによる被告らに対する損害賠償請求訴訟の経緯」の記載があるだけで、「弁護士による懲戒請求が『違法な懲戒請求として、弁護士の品位を失うべき非行に該当する』ことになる場合の基準も記載されてなければ、当然、その基準についての当てはめもなされておらず、単に、「原告が被告に対して上記の懲戒請求をしたこと、および訴外A社らの訴訟代理人として上記の訴訟を提起したことが、弁護士として品位を失うべき非行に該当する。」との記載がなされているだけである。
(3) 上記の東京弁護士会の議決書(甲第11号証)においても記載されているとおり、「懲戒請求が事実上又は法律上の根拠を欠く場合において、請求者が、そのことを知りながら又は通常人であれば普通の注意を払うことによりそのことを知り得たのに、あえて懲戒を請求するなど、懲戒請求が弁護士懲戒請求の趣旨目的に照らし相当性を欠くと認められるときには、違法な懲戒請求として不法行為を構成すると解される(最判平成19年4月24日)」。
そして、上記のとおり、本件懲戒請求の懲戒請求書(甲第10号証)には、「弁護士による懲戒請求が『違法な懲戒請求として、弁護士の品位を失うべき非行に該当する』ことになる場合の基準も記載されていないことから、本件懲戒請求は、少なくとも「法律上の根拠を欠く場合」に該当する。
また、この弁護士による懲戒請求が「違法な懲戒請求として、弁護士の品位を失うべき非行に該当する」ことになる場合の基準については、弁護士であれば、当然に認識しているべき基準であるといえることから、被告は、本件懲戒請求について、法律上の根拠を欠くことを知りながら又は通常の弁護士であれば普通の注意を払うことにより、法律上の根拠を欠くことを知り得たのに、あえて懲戒を請求したものといえる、したがって、以上のことから、本件懲戒請求は、不法行為(民法709条)となるといえる。
4 被告の不法行為により、原告に発生した損害
(1) 原告は、被告による本件懲戒請求の申立てにより、綱紀委員会での審査手続において、答弁書(甲第12号証)を作成・提出して弁明することを余儀なくされた。 また、原告は、被告による本件懲戒請求により、名誉、信用等を不当に侵害されるおそれがあったため、名誉・信用等を回復するため、本件訴訟の提起をせざるを得なくなった。 ところで、原告は、事務所のホームページにおいて、タイムチャージの料金(4万円/1時間)を公に提示しており、タイムチャージにより書面を作成する場合については、訴状、答弁書、準備書面、証拠説明書その他の書面のいずれについても、1頁作成につき1時間とみなす旨も公表している(甲第13号証)。 したがって、本件懲戒請求の申立てにより、答弁書(甲第12号証)を作成・提出することを余儀なくされたこと、および名誉・信用等を回復するため、本件訴訟の提起をせざるを得なくなったことにより、原告に発生した実損害は、(懲戒請求答弁書5頁分+本件訴訟の訴状9頁分+本件訴訟の証拠説明書3頁分)×4万円=68万円となる
(2) 原告は、被告による本件懲戒請求の申立てにより、多大な精神的苦痛を被った。
原告が被った精神的苦痛を慰謝するに足りる慰謝料額としては、金100万円をくだらない。
5 結論
よって、原告は、民法709条の不法行為に基づく損害賠償請求権に基づいて、被告に対し、請求の趣旨記載の金員の支払いを求めて、本件訴訟を申し立てた次第である。