弁護士の懲戒処分を公開しています。日弁連広報誌「自由と正義」2025年10月号に掲載された弁護士の懲戒処分の公告・(採決の公告)処分取消 第一東京弁護士会・今村 誠弁護士の懲戒処分の要旨
所属弁護士会(戒告)→日弁連審査請求(棄却)→東京高裁(処分取消判決)→日弁連懲戒委員会(処分取消)
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第二東京弁護士会が2022年9月6日に告知した同会所属弁護士 今村 誠 会員(登録番号 20634) に対する懲戒処分 (戒告) について 同人から行政不服審査法の規定による審査請求があり、 本会は、2023年10月30日、 弁護士法第59 条の規定により、 懲戒委員会の議決に基づいて、本件審査請求を棄却する旨の裁決を行った ところ (同年11月7日告知) 同人から裁決取消しの訴えが提起され、2025年2月13日、東京高等裁判所において前記裁決を取り消す旨の判決がなされ、 同判決は同月28日確定した。 本会は、同年8月19日、同条の規定により、審査請求人にかかる前記懲戒処分 (戒告) について審査した懲戒委員会の議決に基づいて、以下のと おり裁決したので、懲戒処分の公告及び公表等に関する規程第3条第3号の規定により公告する。
1 裁決の内容
記
(1) 審査請求人に対する懲戒処分 (戒告) を取り消す。
(2) 審査請求人を懲戒しない。
2 裁決の理由の要旨
(1) 本件は、審査請求人が、原弁護士会から 戒告の懲戒処分 (以下「本件懲戒処分」という。)を受け、 本会に対し、審査請求をしたところ、 本会から審査請求を棄却する 旨の裁決 (以下「本件裁決」という。)を受けたため、東京高等裁判所に本件裁決の取消しを求める訴えを提起し、 同裁判所は、本件決を取り消す旨の判決(以下「本件 判決」という。) をなし、本件判決が確定したものである。
(2) 本件裁決の概要は以下のとおりである。
一般に、企業、大学等の法人 (以下「企業等」という。) がハラスメント行為、公益 通報、 不祥事等について、 その調査、 対応等のために設置する委員会、 調査会、相談窓口等の機関(以下「委員会等」という。) において、 弁護士が中立公正な立場で一定の事実調査、法的判断等の職務を行った場合に、弁護士の職務の公正さやそれに対する信頼への観点から、その後に企業等の代理人となったことに問題はなかったかど うかを考えるに当たっては、その委員会等が設置された目的や態様への考慮のみならず、 当該弁護士の委員会等における立場、申立てをした者及び申し立てられた相手方に対する説明内容、 その後に代理した事件 の性質や審理状況、その事件における当該弁護士の活動内容等、それぞれの案件に現 れた諸般の事情を総合的に勘案、考慮して判断する必要がある。
審査請求人は、同じ法律事務所に所属するA弁護士が、 懲戒請求者の雇用主である 法人(以下「本法人」という。)が設置する ハラスメント相談窓口の代行者として懲戒請求者から事情を聴取したことを、認識し、 又は認識し得たにもかかわらず、 懲戒請求者が本法人を被告として提起した地位確認等請求訴訟 (聴取した事実関係と同一 の事実を含む事実関係に基づく損害賠償請 求を含む。) の本法人訴訟代理人弁護士として、懲戒請求者の主張を争ったことは、審査請求人が当然期待されるべき弁護士の職務の公正さやそれに対する信頼を損なう ものであり、 弁護士職務基本規程第5条に違反する。
(3)これに対し、 東京高等裁判所は、 A弁護士が本法人の設置する委員会等において、中立公正な立場で一定の事実調査、法的判断等の職務を行ったものであるとは認め難いとし、本件裁決は 重要な事実関係について、事実の基礎を欠くものであり、違法なものであるとした。
(4) 本会懲戒委員会は、 本件判決の趣旨に従い、改めて審査した結果、 本件判決の判断に依拠して、次の各事実を認定した。
1 、A弁護士は、2017年7月5日及び同年9月1日の2回、審査請求人及びA弁護士が当時所属していた法律事務所において、 懲戒請求者と面談し (以下2回の面談を併せて 「本件面談」という。)、 その際に聴取した内容を客観的に整理して本法人に伝えた。
2 、A 弁護士は、懲戒請求者が申告したハラスメントについて、 本法人の依頼を受 けて、その事実関係の有無等を調査したり、法的判断等を行ったりしたことをうかがわせる証拠は見当たらない。
3 、以上より、 A 弁護士が、本法人の設置する委員会等において、中立公正な立場で一定の事実調査、法的判断等の職務を行ったものであるとは認められない。
4、 懲戒請求者は、本件面談時、 A 弁護士の役割について、 ハラスメントの被害を 申告する者及びその相手方並びに本法人 との間において一定の中立公正な立場 に立つものであると認識していたとは認 められず、本件面談の前後に懲戒請求者と本法人の人事部との間でやり取りされた電子メールの内容からも、懲戒請求者 がそのような認識をしていた事実は認め られない。
(5)以上の事実認定に基づき、審査請求人に対する懲戒処分の要否について改めて検討するに、A弁護士が本法人の設置する委員会等において、 中立公正な立場で一定の事実調査、法的判断等の職務を行ったものであるとは認め難いとされた本件については、本件懲戒処分を維持することは相当ではない。 したがって、審査請求人を懲戒しないことを相当と判断した。
3 裁決が効力を生じた年月日 2025年8月25日
2025年10月1日 日本弁護士連合会
第二東京弁護士会がなした懲戒の処分について、同会から以下のとおり通知を受けたので、懲戒処分の公告及び公表等に関する規程第3条第1号の規定により公告する。
記
1 処分を受けた弁護士氏名 今村誠 登録番号 20634
事務所 東京都千代田区内幸町1-2-2 日比谷ダイビル6階 潮見坂綜合法律事務所
2 懲戒の種別 戒告(2025年3月3日 処分取消)
3 処分の理由の要旨
被懲戒者は、同じ事務所に所属するA弁護士がB法人から法人の設置したハラスメント相談窓口の担当者の代行を受任し2017年と同年9月1日にA弁護士が懲戒請求者から事情徴収をしたことを知りつつA弁護士が聴取した事実関係と同一の事実を含む事実関係に基づき懲戒請求者がB法人を被告としてA弁護士とともにB法人の訴訟代理人として懲戒請求者の主張を争った。被懲戒者の上記行為は弁護士職務基本規程第5条に違反し、弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
4処分が効力を生じた日 2022年9月6日 2023年1月1日 日本弁護士連合会
