弁護士の懲戒処分を公開しています。日弁連広報誌「自由と正義」2025年11月号に掲載された弁護士の懲戒処分の公告・東京弁護士会・井原智生弁護士の懲戒処分変更の要旨
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処分理由・依頼者の多額の預り金をFX投資に費消
当初、東京弁護士会は業務停止1年の懲戒処分としたが、懲戒請求者が処分は不当に軽いと日弁連に異議を出し認められた事案処分時(令和6年5月16日)は井原智生法律事務所でしたが、東弁会報公表後に名称を千代田二番町法律事務所に変更しています。
東京弁護士会がなした懲戒の処分について、同会から以下のとおり通知を受けたので、懲戒処分の公告及び公表等に関する規程第3条第1号の規定により公告する。
記
1 処分を受けた弁護士氏名 井原智生 登録番号 23236
事務所 東京都千代田区二番町9-3 THE BESE麹町 千代田二番町法律事務所
2 懲戒の種別 業務停止1年
3 処分の理由の要旨
被懲戒者は、2021年4月9日、警察署に逮捕されていた懲戒請求者Aから、刑事事件の弁護を受任し、上記刑事事件の示談金、弁護士費用、実費に充てるために、懲戒請求者Aの子である懲戒請求者B及び懲戒請求者Cのキャッシュカードを預かったところ、同月12日から同年5月13日までの間、懲戒請求者Bのキャッシュカードを用いて、同人の銀行口座から合計13回にわたり合計1150万円を引き出し、同日から同年8月31日までの間、懲戒請求者Cのキャッシュカードを用いて同人の銀行口座から合計48回にわたり合計4797万4150円を自己の口座に送金し、総額594万74150のうち約200万円から約300万円を上記刑事事件の経費に費消したものの、それ以外は自己の外国為替証拠金取引に費消した。
被懲戒者の上記行為は、弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
4処分が効力を生じた日 2024年5月16日 2024年11月1日 日本弁護士連合会
本会は下記会員に対して、弁護士法第57条に定める懲戒処分をしたので、お知らせします。
記
被懲戒者 井原智生(登録番号23236)
登録上の事務所 東京都千代田区二番町9-3THEBASE麹町
井原智生法律事務所
懲戒の種類 業務停止1年
効力の生じた日 2024年5月16日
懲戒理由の要旨
被懲戒者は、令和3年4月12日から同年8月31日にかけて、逮捕勾留中の依頼者から示談金や弁護士費用等に使用する目的で預かったキャッシュカード等を不正に利用し、依頼者が管理する銀行口座から61回にわたり合計5947万円を引き出し、そのうち5647万円もの大金を自己の外国為替証拠金取引(FX投資)に費消したものであり、その行為は悪質かつ重大で、弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
被懲戒者が、膨大な時間を費やして依頼者の刑事事件の弁護を上告審まで担当したにもかかわらず全く報酬を受領していないこと、依頼者に対し合計6001万6616円の返済をしていること、被懲戒者にこれまで懲戒処分歴がないこと等有利な状況をもってしても、被懲戒者に対して重い処分をすることは避けられない。
2024年5月24日 東京弁護士会会長 上田智司
東京弁護士会がなした2024年5月16日付けでなしづ実に効力を生じた被懲戒者に対する業務停止1年の懲戒処分について、懲戒請求者から異議の申出があった。本会は、上記懲戒処分を変更して、以下のとおり懲戒の処分をしたので、懲戒処分の公告及び公表等に関する規程第3条第6号の規定により公告する。
記
1 処分を受けた弁護士氏名 井原智生 登録番号23236
事務所 東京都千代田区二番町9-3 THE BESE麹町 千代田二番町法律事務所
2 懲戒の種別 業務停止1年6月
3 処分の理由の要旨
(1) 被懲戒者は、自己が預かった異議申出人Aの子である異議申出人B名義及び同じく 異議申出人Aの子であるC名義のキャッ シュカードを用いて金融機関から金員を引き出すなどして、 当該金員を自己のために費消した等の理由で懲戒請求され、 原弁護士会は、 被懲戒者を業務停止1年の処分に付した。
(2) 本件は、被懲戒者が、刑事事件の依頼者である異議申出人Aから信頼されていることをよいことに、 同人から業務上預かった キャッシュカードを不正に使用して、 異議申出人Aの子である異議申出人B名義及び 同じく異議申出人Aの子であるC名義の各預金口座から合計5947万4150円もの多額の金員を引き出し、あるいは被懲戒者名義の 預金口座に送金し、 そのうち約5647万円な いし約5747万円を自己のFX投資に費消したものである。
C名義の預金口座は障害年金が振り込まれる口座であったことに加え、被懲戒者による引出金額が巨額であり、また非常にハ イリスクな投資に使用されたことに鑑みれば、被懲戒者の本件非行の情状は極めて悪質であって、弁護士に対する社会の信頼を著しく損なうものと言わざるを得ない。
したがって、被懲戒者が、
① 異議申出人 Aに対し、その子らの預金口座から引き出すなどした金額を超える6001万6616円を返済していること、
② 異議申出人Aの刑事事件の弁護を上告審まで担当しその業務は膨大な時間を費やすもので、相当に困難で あったと、うかがえるにもかかわらず、 全く報酬を受領していないこと、
③ 過去に懲戒 処分を受けたことがないことなど、 被懲戒者に有利な情状を最大限考慮しても、原弁護士会の被懲戒者を業務停止1年とするとの処分は軽きに過ぎて不当であり、変更を免れず、上述した諸般の事情に鑑みると、 原弁護士会の処分を変更し、被懲戒者の業 務を1年6月間停止することが相当である。
4 処分が効力を生じた年月日 2025年9月11日 2025年11月1日 日本弁護士連合会
