10月16日 「日本保守党」対「日本保守党の言論弾圧から被害者を守る会」
判決(当事者の主張を除く)
令和7年ワ22970号 12部乙
原告 日本保守党 代理人 小澤一仁
被告 日本保守党の言論弾圧から被害者を守る会 代理人 安田修、野中信敬
令和7年8月7日Facebook投稿
● 日本保守党幹部による暴行事件について
8月6日、日本保守党が一国民を訴えた「LGBТ訴訟」の第2回口頭弁論が東京地裁で開かれました。閉廷後、被告・飯山陽氏を応援する立場で法廷を傍聴していた20人ほどの集団に、著名なユーチューバーが率いる6人ほどのグループが走ってきて衝突し、3人の人にきずを負わせる暴行事件が発生しました。そのうちの1人は、上腕部に傷を負い、流血の事態となりました。ターゲットとなったのは私(藤岡)で、被害者は私の身代わりになって下さったのです。深くお詫びをし、感謝いたします。このような事態をもたらしたことについて責任を感じております。昨夜リリースした「日本保守党の言論弾圧から被害者を守る会」の公式ユーチューブを転載します。
主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
1 被告は、原告に対し、330万円及びこれに対する令和7年8月7日から支払済みまで、年3%の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用の負担
3 仮執行宣言
第2 事案の概要
本件は、原告が、当時被告の会会長であった分離前相被告藤岡信勝(以下「藤岡」という。)が自己のFacebookのアカウントで投稿した別紙投稿記事目録記載の記事(以下「本件記事」といい、その投稿を「本件投稿」という。)が、原告の社会的評価を低下させたと主張して、被告に対し、藤岡との共同不法行為又は一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般法人法」という。)78条類推適用に基づく損害賠償として、330万円及びこれに対する遅延損害金(始期は、本件投稿をした日であるとして原告が主張する令和7年8月7日。利率は民法所定の年3%)の支払を求めるものである。
なお、本訴においては、当初、藤岡も相被告として訴えられていたが、本件第5回弁論準備期日において、その弁論が分離され、和解により終了した。
1 前提事実
争いのない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実を容易に認定することができる。
(1) 当事者等
ア 原告は、政治活動を行うことを目的とする国政政党である。
イ 被告は、原告による言論弾圧から国民を守る必要があるとして設立された任意団体(権利能力なき社団)である。
ウ 藤岡は、本件投稿当時、被告の会長の地位にあった者である。
エ 菊竹進(以下「菊竹」という。)は、原告の支持者の1人であるが、原告に所属する国会議員や地方議員ではなく、執行部に属する役員でもない。
(2) 本件投稿
ア 藤岡は、令和7年8月7日又は8日、自己のFacebookのアカウント(以下「Facebook」という。)に、本件記事を投稿した。
イ 本件記事は、1行目に「●日本保守党幹部による暴行事件について」と記載され、2行目以降において、原告が当事者(原告)となっている別件訴訟(東京地裁令和7年(ワ)第5545号。以下、単に「別件訴訟」という。)の令和7年8月6日の口頭弁論期日後に、6人ほどのメンバーが、藤岡を含む集団に走り寄り、同集団の3人に怪我を負わせる暴行事件(以下「本件暴行事件」という。)が発生したことを説明するとともに、被告の公式YouTubeに記載された動画(以下「本件動画」という。)を紹介するものである。
本件Facebook上には本件動画のサムネイル(以下「本件サムネイル」という。)も表示されており、本件サムネイルには、「日本保守党の言論弾圧から被害者を守る会より 2025年8月6日に東京地裁にて起きた暴行事件に関する藤岡会長『緊急会見』 会長 藤岡信勝」などと表示されている。
ウ 本件動画では、藤岡が、要旨、以下の様な発言をしていた。
・ 藤岡は、別件訴訟を傍聴した後、自らを先頭に、20名くらいの集団で歩いていたところ、原告側の立場で裁判を傍聴していた人たちであり菊竹を含む6人くらいのグループが、ものすごい勢いで駆けてきた。
・ 藤岡らの集団と、菊竹を含むグループとの間で暴行事件(本件暴行事件)が生じた。本件暴行事件の結果、藤岡らの集団のうち3名が、けがをした。
・ 本件暴行事件の際、菊竹は、藤岡に対し、動画の削除を求める発言をしていた。ここにいう動画とは、第三者のアカウントにおいて投稿されていたものであり、当該動画において、藤岡は、菊竹が別件訴訟の被告(以下「別件当事者」という。)の居住するマンションの写真や住んでいる階数に加えて、別件当事者の娘の名前や学校などについても公にしようとしている旨の発言をしていた。
(3) 菊竹による投稿
菊竹は、令和5年4月3日ごろ、X(SNSの一つ)における自身のアカウントで、別件当事者の居住するマンションの広さや家賃についての情報を発信していた。
2 争点
(1) 本件投稿が原告の社会的評価を低下させるか(争点1)
(2) 被告の責任原因(争点2)
(3) 違法性阻却事由の有無(争点3)
(4) 損害(争点4)
3 争点に対する当事者の主張
略
第3 当裁判所の判断
本件投稿が原告の社会的評価を低下させるか(争点1)について判断する。
前提事実(2)イのとおり、本件記事は、本件Facebook上に投稿され、本件記事とともに本件動画が紹介されていることからすると、本件記事の意味内容は、それ単体で理解すべきではなく、本件動画の内容とともに理解するのが相当といえる。
そして、本件記事及び本件動画の内容を、一般人の普通の注意と読み方を基準として理解すると、本件記事は、原告の幹部である菊竹らが、別件訴訟の口頭弁論期日後に、藤岡らに走り寄ってきて、怪我を負わせる暴行事件(本件暴行事件)を起こしたという事実を摘示するものであり、これを超えて、原告が組織ぐるみで本件暴行事件を起こしたとか、原告の指示で菊竹が本件暴行事件を起こしたという事実を摘示するものではない。
原告は、前記のとおり、本件記事においては、原告の幹部である菊竹が引き起こしたものであると記載されており、原告の活動の一環として本件暴行事件を起こしたという印象を与えるものであるなどと主張している。
この点、肩書を記載することによって、当該行為者の行為が、当該行為者の属する団体その者の行為である、ひいては当該団体の社会的地位を低下させるといえるかについては、摘示に係る肩書が当該行為者の属する団体においていかなる位置づけであったか、また、当該行為者の行為が当該団体の活動と密接に関連しているのか、また、それが計画的に実行されたものか、それとも突発的に生じたものかなどの事情も総合考慮して判断すべきものと考えられる。
そして、本件において摘示された肩書は「幹部」というものにすぎず、原告の上層部に属するものと言う印象を与えるものであるが、それにとどまり、原告の行為そのものであると一般人が同視するほどの肩書ではない。また、摘示に係る事実も、菊竹が本件暴行事件を起こしたというものであり、国政政党である原告の活動と密接に関連しているとはいえず、また、別件訴訟の口頭弁論期日後に生じたものであることからすれば、突発的に生じた事象であるということがうかがわれ、実際に、本件動画内で藤岡が述べる本件暴行事件に至る経緯(前提事実(2)ウ)に照らせば、本件暴行事件の原因は、菊竹と藤岡との間の個人的なトラブルにあるものと理解される。
以上の事情を総合考慮すると、本件記事においては、本件暴行事件の菊竹の肩書として、原告の幹部であるという事実が摘示されているものの、一般人の普通の注意と読み方を基準として理解すると、菊竹が、原告の活動の一環として本件暴行事件を起こしたという印象を与えるものではない。
以上検討したとおり、本件投稿により原告の社会的評価が低下したとは認められないから、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求は理由がないといえる。
第4 結論
原告の請求はいずれも理由がないから、これらを棄却する。
よって、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第12部
裁判長裁判官 神吉 康二
裁判官 澤野真未
裁判官 栗原健
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