多重債務者斡旋 競争激化で困窮の弁護士「報酬50万、飛びついた」
産経新聞 7月9日(水)7時55分配信
 東京都内の弁護士数人が、弁護士資格のないNPO法人元代表の紹介を受けて債務整理を行い、報酬の一部をNPO側が受け取っていた問題。“正義の味方”であるはずの弁護士が、なぜ違法な商売に手を貸したのか。弁護士への取材から浮かんだのは「経済的困窮」から違法行為に手を貸す様子だった。

◆「赤字続き…」

「仕事が減って困っていた。月50万円という言葉に飛びついてしまった」

平成22年から約2年間、元代表と提携していた50代の男性弁護士は、産経新聞の取材にこう振り返った。「近年は弁護士が増えて仕事が取れなくなった。事務所は赤字状態が続いていた」とも打ち明けた。

当初、先輩弁護士から「債務整理の仕事をしないか」と誘われた。週3、4件のペースで払い過ぎた利息(過払い金)の返還交渉などを手がけ、多重債務者から手数料などで月300万円を得たこともあったが、実際には事務員が大半を元代表へ送金していたという。

この弁護士は「実務は自分でやっていたので違法性はないと思っていた」と訴えた。

別の40代男性弁護士には「月100万円の報酬」が提示された。当時、弁護士は仕事があまり得られない状況だったという。「事務員に経理を任せていた。帳簿上、全て自分の報酬になるのかと思っていた」と釈明する。

◆懲戒者を標的

23年3月まで元代表と提携していた70代男性弁護士は「経理をNPO側に任せるのは危険だと思った」と振り返る。

同僚弁護士の業務を引き継いだが、元代表との提携が違法だと気付き約1年で提携を打ち切った。「飛びついて抜け出せなくなる弁護士も多いのではないか」と振り返る。

元代表は20年以降、少なくとも7人の弁護士と提携。多くは仕事量が減ったり、懲戒処分を受けたりして経済的に困窮していたという。「そうした弁護士に定期的な報酬を確約することで人員を確保し、債権回収をビジネスとして成立させていた」(検察幹部)

日弁連の調査(22年)によると、平均的な弁護士の年間所得(中央値)は、12年の1300万円から10年間で959万円にダウン。「10年前に比べて弁護士間の競争は厳しくなったか」との質問には、4割以上が「そう思う」と回答した。

別の検察幹部は「弁護士数の急増もあるのかもしれないが、弁護士には高いモラルが求められる。困窮しているといって、法に抵触した行為をするのは言語道断だ」と話している。

サンケイの丁寧な取材に基づいた記事です。
7人の弁護士が検察から事情を聴かれ3人の弁護士が在宅起訴になりました。一生懸命勉強して取得した弁護士資格をNPOとはいうものの、かなりややこしい人間に金に困ったと簡単に貸してしまったのです。
この事件は2月にNPOの元代表の脱税というところから表ざたになったのですが、国税は2年前から慎重に捜査をしていました。マスコミも2年間この事件を追っていました。
非弁提携や名義貸しが違法であることは当然弁護士会も知っていますが
弁護士会は動きませんでした。
結局、国税庁の査察から明るみに出たのです。
なぜ7月8日に発表されたというのも、官僚の事情に詳しい方ならお分かりだと思います。
7人の弁護士が事情を聴かれて3人の弁護士が在宅起訴です。
マスコミは在宅起訴の場合はなかなか氏名を公表しません。
裁判になるまで出てこないと思います。7人の弁護士の氏名は弁護士なら誰でも知っています。
これから弁護士会がどのような対応をするか見ていきしょう。
2月14日の報道
NPO代表、無資格で債務整理=14億円脱税容疑で告発―東京国税局
時事通信 214()1231分配信
 弁護士資格がないのに過払い金返還請求手続きなど多重債務者の債務整理をし、得た利益を申告せず所得税約14000万円を脱税したとして、NPO法人の小林哲也・元代表(48=東京都港区=が、所得税法違反容疑で東京国税局から東京地検に告発されていたことが14日、分かった。既に修正申告を済ませたとみられる。
 関係者によると、国税局は小林元代表が少なくとも弁護士7人に報酬を支払って名義を借り、債務整理をしていたと判断。東京地検特捜部は、無資格者の弁護士業務を禁じた弁護士法違反(非弁提携など)の疑いでも元代表や弁護士らを調べる。
 7人のうち、取材に応じた弁護士4は「自分で債務整理を行っていた」などと話し、いずれも名義貸しを否定した。小林元代表も取材に「債務整理はしていない。弁護士事務所の広告に関するコンサルタント料について、申告していなかった」と主張した。