◆「赤字続き…」
「仕事が減って困っていた。月50万円という言葉に飛びついてしまった」
平成22年から約2年間、元代表と提携していた50代の男性弁護士は、産経新聞の取材にこう振り返った。「近年は弁護士が増えて仕事が取れなくなった。事務所は赤字状態が続いていた」とも打ち明けた。
当初、先輩弁護士から「債務整理の仕事をしないか」と誘われた。週3、4件のペースで払い過ぎた利息(過払い金)の返還交渉などを手がけ、多重債務者から手数料などで月300万円を得たこともあったが、実際には事務員が大半を元代表へ送金していたという。
この弁護士は「実務は自分でやっていたので違法性はないと思っていた」と訴えた。
別の40代男性弁護士には「月100万円の報酬」が提示された。当時、弁護士は仕事があまり得られない状況だったという。「事務員に経理を任せていた。帳簿上、全て自分の報酬になるのかと思っていた」と釈明する。
◆懲戒者を標的
23年3月まで元代表と提携していた70代男性弁護士は「経理をNPO側に任せるのは危険だと思った」と振り返る。
同僚弁護士の業務を引き継いだが、元代表との提携が違法だと気付き約1年で提携を打ち切った。「飛びついて抜け出せなくなる弁護士も多いのではないか」と振り返る。
元代表は20年以降、少なくとも7人の弁護士と提携。多くは仕事量が減ったり、懲戒処分を受けたりして経済的に困窮していたという。「そうした弁護士に定期的な報酬を確約することで人員を確保し、債権回収をビジネスとして成立させていた」(検察幹部)
日弁連の調査(22年)によると、平均的な弁護士の年間所得(中央値)は、12年の1300万円から10年間で959万円にダウン。「10年前に比べて弁護士間の競争は厳しくなったか」との質問には、4割以上が「そう思う」と回答した。
別の検察幹部は「弁護士数の急増もあるのかもしれないが、弁護士には高いモラルが求められる。困窮しているといって、法に抵触した行為をするのは言語道断だ」と話している。
関係者によると、国税局は小林元代表が少なくとも弁護士7人に報酬を支払って名義を借り、債務整理をしていたと判断。東京地検特捜部は、無資格者の弁護士業務を禁じた弁護士法違反(非弁提携など)の疑いでも元代表や弁護士らを調べる。
7人のうち、取材に応じた弁護士4人は「自分で債務整理を行っていた」などと話し、いずれも名義貸しを否定した。小林元代表も取材に「債務整理はしていない。弁護士事務所の広告に関するコンサルタント料について、申告していなかった」と主張した。