『弁護士自治を考える会』のブログです。このブログは多数の会員によって記事を投稿しています。
記者の中で弁護士自治に関しての見解が相違することがあります。
今回はその相違点を記事にします。
(事案の概要)
2015年9月2日産経ニュース
着手金未返還で懲戒の弁護士が自殺 金沢
金沢弁護士会は2日、依頼人から返金を求められた着手金を返さなかったとして、押野毅弁護士(57)を業務停止2カ月の懲戒処分にしたと発表した。弁護士会によると、押野弁護士は懲戒処分を受けた1日、金沢市の自宅で自殺したという。
(1)懲戒処分を受けた9月1日に自殺をした。記事には懲戒処分を受けてから自殺をした?もし懲戒を受けたのであれば、処分を受けた弁護士に対し、官報の公告、日弁連広報誌自由と正義に懲戒処分の要旨が掲載されなければなりません。
しかし今も被処分者の官報の公告等はありません。
(2)懲戒請求制度
弁護士の懲戒処分は会長名で懲戒請求を受けて、綱紀委員会で審議を求め、『懲戒相当』になれば「懲戒委員会」に処分の審議が付され処分が決定したら(戒告・業務停止。退会・除名)懲戒書が書かれ弁護士会長名で処分されます。
(3)処分
戒告の処分は郵送された『懲戒書』を受け取った瞬間に処分は終わります。業務停止の場合は各弁護士会で違いますが、弁護士会館に出頭させて会長が直接被懲戒者に懲戒書を手渡します。懲戒書が交付された日が効力の生じた日つまり処分された日となります。
(4)対象弁護士が死亡した場合
綱紀委員会、懲戒委員会で審議中に対象弁護士が死亡した場合、懲戒の審議は終了となります。処分はありません。懲戒請求者が死亡した場合、審議は続行されます。
(5)報道
弁護士会が業務停止以上の処分を行った場合、記者クラブへ記者発表する約束となっています。記事にするかどうかは記者クラブ会員会社の判断
『弁護士自治を考える会』のA会員の意見
懲戒処分をしたのは9月1日、処分をしたのであれば被懲戒者が死亡しても官報、自由と正義に掲載しなければならない。被懲戒者が弁護士登録を抹消したのは懲戒処分を受けた後になっている。官報の公告がないのであれば、自殺をしたのは9月1日の懲戒処分を受ける前に死亡したのではないか
「9月1日 懲戒の効力が生じた日」ではないから処分がされていないのです
業務停止2月の懲戒処分の情報が被懲戒者に漏れたのではないか
新聞報道では1日に処分を受けたとなっているが、実際はどうだったか?懲戒処分を行った日は『処分が効力を生じた年月日』である。9月1日に処分が効力を生じたのであれば官報、自由と正義に掲載し懲戒処分を受けた弁護士にならなければならないしかし、金沢弁護士会は処分をしていないということになる。つまり懲戒処分はなかったとなる。
金沢弁護士会の懲戒処分に詳しい誰かが情報を漏えいした。または、事前に処分を聞いた報道関係者が弁護士に取材をしたのではないか、9月1日に処分をしたという記事を9月1日の朝刊に間に合わせるには前日に取材をしておかねば記事は書けません。記者が情報漏えいした可能性は十分にあります。
宮崎県弁護士会の事務局には、綱紀の議決について、会長からの通知までに気楽に教えてくれる事務員さんもいます。
(実例)
懲 戒 処 分 の 公 告(自由と正義 2010年12月号)
大阪弁護士会がなした懲戒の処分について同会から以下の通り通知を受けたので懲戒処分の公告公表に関する規定第3条第1号の規定により公告する
1 懲戒を受けた弁護士 氏名 橋下徹 登録番 25196 大阪弁護士会
事務所 大阪市北区西天満3 弁護士法人橋下綜合法律事務所
2 処分の内容 業務停止2月
3 処分の理由の要旨
被懲戒者は2007年5月27日テレビ番組において視聴者に、他の弁護士らの弁護活動及び刑事弁護に対する誤った認識と不信感を与え多数人の懲戒請求があれば懲戒の処分がなされるかのような誤った認識を与えた被懲戒者の上記行為は弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。被懲戒者の発言が多数の懲戒請求を惹起したこと刑事弁護及び弁護士会の懲戒請求について誤った認識を与え甚大な悪影響を及ぼしたことを考慮し業務停止2月を選択した。
4 処分の効力を生じた年月日 2010年9月17日
2010年12月1日 日本弁護士連合会
大阪弁護士会は業務停止2月の処分を前日に発表しました。
9月17日に効力を生じる、前日の9月16日に記者発表しました。
橋下徹弁護士(当時大阪府知事)の怒りを買います。
懲戒処分を前日に発表されて記者からのインタビューで『大阪の弁護士は道頓堀でケツ出す』『弁護士会長の知能指数は幼稚園程度』『北の新地に行けば下品な弁護士がうろうろしている』橋下氏は爆発してしまいました。
処分の効力が発生した前日の9月16日に報道各社が橋下弁護士に取材をしたのです。大阪弁護士会と記者のフライイングです。
大阪弁護士会は会長名で談話を発表しました。
会 長 談 話
当会会員の懲戒処分言渡前に、その処分内容が、一部マスコミに掲載された。懲戒情報は、会員の個人情報の重要なものであり、弁護士会として厳重な管理がなされるべきことはいうまでもない。当会においてこのような事態が生じたことは痛恨の極みである。当会は、重要な個人情報が漏洩したことについて遺憾の意を表明するとともに、会員に対して陳謝し、また、個人情報保護のため、再発防止のため最善の努力を尽くす所存である。
2010年9月17日 大阪弁護士会会長 金 子 武 嗣
A会員の意見は懲戒処分の情報漏えいの疑いがあり自殺した弁護士は弁護士会から正式に処分を受けていないのではないか。
自殺が先で処分が後であるという意見。
だから弁護士会は9月2日以降何もしていない。
この件の懲戒請求者にはどのうように対応したのか、情報を漏らした疑いのある弁護士会役員、事務員、報道記者に対しての抗議または処分をすべきである。
弁護士自治を考える会 B会員の意見
被懲戒者は懲戒処分を受けて自殺した。
報道では9月1日に処分をしたとある。なぜ、官報の公告や自由と正義に処分の要旨を公開しなかったかのか
① 仲間内の弁護士に情けをかけた
死亡したのだからもういいではないか、文句をいう奴、ここまで懲戒に詳しい人間などたぶんいないだろう、過去に処分の日に死亡した弁護士はいない。前例もないことだから。このままうやむやにしておけばよい。
というのが金沢弁護士会の考え方ではないのか、
懲戒処分を受けて弁護士を辞めた例はたくさんあります。懲戒処分を受けた後、死亡した例は数えきれないでしょう。まさか懲戒処分の当日に死亡するとは弁護士会も思っていなかった
こういう例もあります。
愛知県弁護士会の弁護士が所得隠しをしたので愛知県弁護士会に懲戒請求を申立てました。綱紀委員会で懲戒相当の議決が出てもなかなか処分がなされませんでした。結局、高齢だった対象弁護士は処分されることなく死亡しました。同じ頃に出した弁護士の処分はなされています。高齢の弁護士に情けをかけたとB会員は思っています。(懲戒請求時点平成25年で81歳)
2015年8月19日付官報 7月25日対象弁護士死亡により弁護士登録を抹消されましたのでこの懲戒請求はありません。
これも武士の情けではないのか!?
A会員は【正式に処分を通知される前に自殺をした】
B会員は【懲戒処分を受けた後に自殺したけれど金沢弁護士会は情けをかけた】
どちらにせよ。
金沢弁護士会はこの件についてはっきりしなければなりません。
自殺すれば処分しないという前例を作ってはいけません。