弁護士の懲戒処分を公開しています。
日弁連広報誌「自由と正義」2019年10月号に掲載された弁護士の処分公告、茨城県弁護士会・野武興一弁護士の懲戒処分の要旨
野武興一弁護士は4回目の処分で退会命令となりました。
1回目 1996年12月 戒告
2回目 2011年8月 業務停止2月
3回目 2018年8月 業務停止1月
4回目 2019年10月 退会命令
処分理由・預り金の杜撰な管理・業務停止中の業務
茨城県弁護士会が懲戒処分の公表を行いました。
茨城県弁護士会 会長 根 本 信 義
本会は懲戒委員会の議決に基づき,下記のとおり弁護士である会員の懲戒処分を決定し,同処分を執行したので,これをご通知いたします。
記
第1 懲戒処分について
1 懲戒処分をした弁護士会 茨城県弁護士会
2 対象弁護士氏名 野 武 興 一(77歳)
登録番号 第17776号
事務所 茨城県土浦市川口1-9-11 プラウドビル6階
野武法律事務所
3 懲戒処分の内容 退 会 命 令
4 懲戒処分の効力が生じた日 令和元年6月18日
第2 懲戒処分(退会命令)の効果の概要-参考
①依頼者との委任契約・顧問契約は全て解除する。
②事務所を法律事務所として使用してはならない。
③弁護士及び法律事務所であることを表示する表札,看板等の一切の表示 を除去する。
④弁護士肩書,法律事務所名を表示した名刺の使用は不可。
⑤直ちに,弁護士記章,身分証明書を弁護士会に返還する。
また,懲戒処分を決定し,これを執行した事実及び懲戒処分の内容については,裁判所,検察庁及びその他関係機関に通知いたします。
第3 懲戒処分の理由の要旨
1 事 実 関 係
(1) 対象弁護士は,懲戒請求者から依頼を受けて訴訟を提起した。当該訴訟は,平成28年12月21日,和解の成立により終了した。懲戒請求者は,当該和解条項中,解決金100万円を,平成29年1月31日限り屋号を付した対象弁護士名義の普通預金口座へ振り込む方法により支払を受けることとされていた。当該100万円は,平成29年1月10日,当該普通預金口座へ振り込まれた。
然るに,対象弁護士は,当該普通預金口座から事務所経費を引き落としにより支払い,当該普通預金口座へ振り込む方法により他の依頼者からの着手金,報酬等の支払を受けていた。当該普通預金口座の残高は,平成29年1月10日に当該100万円が振り込まれた後,同日,インターネット料金が引き落とされることにより100万円を下回り,以降,通帳の履歴が確認できる平成29年3月22日までの間に100万円を上回ることは無かった。対象弁護士が懲戒請求者に対して当該100万円を引渡したのは,平成30年5月28日であった。
(2)ア 対象弁護士は,屋号に自らの姓を冠した法律事務所で業務を行っていた。当該法律事務所には,法律事務所であることを示す看板又は表示が合計4件存在した。対象弁護士は,平成30年4月6日,茨城県弁護士会より,業務停止1か月の懲戒処分を受け,直ちに弁護士及び法律事務所であることを表示する表札,看板等の一切の表示を除去するよう指示を受けた。しかのみならず,対象弁護士は,平成30年4月20日,茨城県弁護士会より,当該看板及び表示を除去すべき履行指示を受けた。
然るに,対象弁護士は,平成30年4月20日以降においても,当該看板又は表示4件中3件を除去せず,弁護士及び法律事務所であることの表示が外部から認識し得る状態のままにした。
イ 対象弁護士は,当該業務停止1か月の懲戒処分を受けたことにより,受任している法律事件について直ちに依頼者との委任契約を解除する必要があった。
然るに,対象弁護士は,平成30年5月17日時点においても,依頼者1名との委任契約を解除しなかった。
2 懲戒事由及び理由
(1)ア 対象弁護士は,依頼者たる懲戒請求者のための預り金である当該100万円を自己の金員と区別せず,かつ,預り金であることを明確にしないまま保管していた。 これは,弁護士職務基本規程第38条及び預り金等の取扱いに関する規程第4条第1項に反する。
イ 対象弁護士は,当該100万円を事務所の費用や私的な支出のために用いた際に,その使途を記録しなかった。
これは,預り金の取扱いに関する規程第7条第1項に反する。
ウ 対象弁護士は,平成29年1月10日に当該100万の入金があった旨を,遅滞なく懲戒請求者に通知しなかった。
これは,預り金等の取扱いに関する規程第5条に反する。
エ 対象弁護士は,預り金を事務所経費等に流用し,もって私的に流用した。
これは,刑法第253条所定の業務上横領罪が成立する可能性を否定できない。
オ 対象弁護士の以上の各行為は,弁護士法第56条第1項所定の弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
(2)ア 対象弁護士は,当該表示3件を除去しなかった。
対象弁護士は,平成30年4月6日より前にも業務停止の懲戒処分を受けていたことから,弁護士及び法律事務所であることを表示する表札,看板等の一切の表示を除去すべきことを当然認識し得ていた。また,対象弁護士は,遅くとも平成23年ころから本件建物内にて業務を行っていたことから,看板又は表示がどこにあるのか当然認識し得ていた。
それにもかかわらず茨城県弁護士会の履行指示に従わない対象弁護士の行為は,猶更悪質と評価せざるを得ない。
イ 対象弁護士は,当該依頼者1名との委任契約を解除しなかった。 辞任しなかった理由については判然としないものの,業務停止の懲戒処分に伴い受任している法律事件全てを辞任すべきことは当然認識すべきである。 それにもかかわらず辞任しない対象弁護士の行為は,認識がどうであれ非難を免れない。
ウ 対象弁護士の以上の各行為は,弁護士法第56条第1項所定の弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
(3) 対象弁護士の行為は,業務上横領罪が成立する可能性もあることから,その悪質性は際立っている。対象弁護士には,過去3回の懲戒処分歴があり,その中には業務停止処分があったにも関わらず,所属会からの懲戒処分に伴う履行指示に従うことは無く,反省の様子は全く見られない。加えて,懲戒委員会からの弁明書提出依頼にも応じず,審査期日への呼出状も受け取らない。
かかる行状に鑑みれば,対象弁護士が最終的に依頼者に預り金を返還していることを考慮しても,対象弁護士に厳しい処分を下すことも止むを得ない。
よって,対象弁護士を退会命令とすることを相当と認める。
以 上
茨城県弁護士会がなした懲戒の処分について同会から以下の通り通知を受けたので懲戒処分の公告公表に関する規定第3条第1号の規定により公告する
1 処分を受けた弁護士氏名 野 武 興 一 登録番号17776
事務所茨城県土浦市川口1-9-11 野武法律事務所
2 処分の内容 退会命令
3 処分の理由の要旨
(1)被懲戒者は、懲戒請求者から受任した医療法人を相手方とする雇用関係存在確認請求事件が2016年12月21日に高等裁判所において上記医療法人が懲戒請求者に対して解決金として100万円を支払うことを内容とする和解により終了し、2017年1月10日に上記解決金が屋号を付した被懲戒者名義の口座に振り込まれたにもかかわらず、そのことを懲戒請求者に遅滞なく通知しなかった。
(2)被懲戒者は上記(1)の解決金を自己の金員と区別せず、かつ預り金であることを明確にしないまま保管した。
(3)被懲戒者は上記(1)の解決金を事務所経費等に私的に流用した。
(4)被懲戒者は上記(3)の支出につき、その使途を記録しなかった。
(5)被懲戒者は2018年4月6日所属弁護士会から業務停止1月の懲戒処分を受け、その後複数回にわたって弁護士及び法律事務所であることを表示する表札、看板等の一切の表示を除去することを指示されていたにもかかわらず、これを行わず、弁護士及び法律事務所であることの表示が外部から認識し得る状態のままにし、また上記懲戒処分を受けた時点で受任していた事件のうち1件について、直ちに委任契約を解除しなかった。
(6)被懲戒者の上記(1)の行為は預り金等の取り扱いに関する規程第5条に、上記(2)の行為は弁護士職務基本規定第38条及び預り金の取扱いに関する規程第4条第1項に違反し、上記各行為はいずれも弁護士法第56条第1項に定める弁護士として品位を失うべき非行に該当する。
4処分が効力を生じた日 2019年6月18日
2019年10月1日 日本弁護士連合会
1 処分を受けた弁護士氏名 野 武 興 一 登録番号17776
事務所 茨城県土浦市川口1-9-11 武法律事務所
2 処分の内容 業 務 停 止 1 月
3 処分の理由
(1)被懲戒者はAを被告とする訴訟事件において原告である懲戒請求者の訴訟代理人であったとところ、2004年10月20日に上記事件について和解が成立し、上記和解に基づきAから被懲戒者名義の銀行口座に毎月5万円振り込まれていたが、上記口座には被懲戒者の事務所の事務経費の支払のための引き落としがあり、他の依頼者からの着手金、報酬金なども含まれており、預り金を自己の金員と区別して保管しなかった。
被懲戒者は懲戒請求者や懲戒請求者代理人B弁護士から被懲戒者に対して預り金の保管、処理状況について説明を求める通知がなされたが、何ら回答しなかった。
(2)被懲戒者はCから受任した訴訟事件において成立した訴訟上の和解の和解条項に従って2016年12月7日限り和解金200万円を支払うためにあらかじめCから送金された和解金原資200万円を日常的に着手金、報酬金等の入金や事務所経費の出金に利用していた自己の銀行口座に預り保管し、この結果、預り金に不足を生じるに至り、和解金支払期日に和解金全額の支払を懈怠する結果を招来し、Cに不足金の支払を余儀なくさせた。
(3)被懲戒者は2017年3月分から同年9月分までの7カ月分の所属弁護士会の会費並びに日本弁護士連合会の会費及び特別会費合計29万8000円を滞納した。
(4)被懲戒者の上記(1)の行為は預り金の取扱いに関する規程第4条第1項並びに弁護士職務基本規程第38条に違反し、上記(3)の行為は所属弁護士会の会則第113条第1項に違反し、いずれも弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する
4処分が効力を生じた年月日 2018年4月6日
2018年8月1日 日本弁護士連合会
1 処分を受けた弁護士 野武興一 登録番号 17776
2 処分の内容 業務停止2月
3 処分の理由
被懲戒者は2009年1月初旬頃、株式会社Aについて破産申立を視野に入れた債務整理事件の依頼を受け同月23日及び2月14日付で債権者に対しÅ社の債務整理を受任した旨の通知をした際に受任していないA社の代表取締役B個人の債務整理事件を受任した旨の虚偽の受任通知を発送した。被懲戒者は同年11月頃A社が所有するマンションを売却した際に売買代金2億8000万円の中から弁護士費用内金として420万円を受領し、また被懲戒者が監査役を務める株式会社Cに仲介手数料として740万2500円を受領させた。さらに被懲戒者はA社が所有する土地及び建物を売却した際に売買代金2500万円の中から仲介手数料として85万500円をC社に受領させた被懲戒者は資産と負債の状況を迅速かつ正確に把握し資産の確保を図り事案にふさわしい処理方針を立てて実行するという倒産事件を受任した弁護士として当然行うべき基本的な職務遂行を怠りÅ社に数千万円の売掛金があると認識しながら受任後1年以上に渡って特に回収の努力をせず債権者集会その他の債権者に対する説明の機会も設けず不動産売却以外は実質的にはほとんど事件処理を進めていない上、今後の事件処理の方針もいまだ曖昧であった。被懲戒者の上記行為は任意の債務整理事件において本来公正であるべき債務者代理人としての立場を忘れて被懲戒者自身若しくはその関係者の利益を図ろうとしているなか債権者の利益、立場を無視しているなどと批判されてもやむ得えないものであり弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する
4処分が効力を生じた年月日 2011年5月26日
2011年8月1日 日本弁護士連合会
1回目 1996年12月 戒告